俺は料理人志望なんだけど…   作:イタクァ

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いやー準が書きやすくていいですねー

初の主人公以外のいじられキャラ。

実に動かしやすい!


2015/8/22 改稿


紹介と決意

 茂みの奥で出会った少女、小雪をみんなに紹介するために見つけたボールを片手に持ち、原っぱまで小雪を連れて戻った。

 

 すでに皆戻ってきていたようで、俺が最後だった。

 

 

 

「おや龍二君、ボールだけでなく女の子も拾ってきたのですか。流石ですね」

 

「バカなこと言ってるんじゃねえよ」

 

 

 

 冬馬の冗談を流しつつ、俺は全員の前に小雪を出した。

 

 

 

「あ、あの…」

 

「なあ皆、この子も仲間に入れていいか?どうにも一緒に遊びたいらしくてさ」

 

「フハハハハ!よかろう!王たる我はすべてを受け入れる!我が名は九鬼英雄!覚えておくがよい!」

 

「では私も。私は葵冬馬。よろしくお願いしますね、お嬢さん」

 

「若、そんなキザにしなくても…。俺は井上準、準と呼んでくれ」

 

「ハゲでも可」

 

「龍二クン!?俺の髪フサフサなんだけどなぁ!?」

 

「そろそろハゲるさ。具体的には数年以内には」

 

「早すぎんだろーが!」

 

「…クスッ」

 

 

 

 俺と準がくだらない掛け合いをやっているのを見て、初めて小雪が小さく笑った。

 

 

 

「おー、やっと笑ったな。少しは緊張もほぐれたろ?」

 

「あ…」

 

「ほれ、ゆっくりでいいから自己紹介してみ」

 

「…あの、小雪、です」

 

「うん、それでよし」

 

「さすが龍二君、うまく緊張をほぐしましたね」

 

「なるほどな。俺の髪の毛がなくなるなんてありえないからなぁ」

 

「あ、それは本気で言った」

 

「質悪いわ!」

 

 

 

 そういったくだらない話を交えながら、俺たちは小雪も交えて野球を続けた。驚いたことに小雪は運動神経が、というよりも足が抜群に早かった。見た目は小さな女の子なのに

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎる。次第に日が暮れてきて、英雄に迎えが来た。

 

 

 

「英雄様、お迎えに上がりました」

 

「うむ、ご苦労ヒューム」

 

 

 

 迎えに来たのはヒュームだった。リムジンの扉を開け、英雄を乗せたのちに俺に近寄り、耳元で

 

 

 

「龍二、そこの小娘のことは…」

 

「わかってるさ。体の動きが不自然だった。あれは多分全身を強く打った感じだ。」

 

「さすがにわかるか。それを知ってお前はどうするつもりだ?」

 

「まだ何も確証がない。もう少し様子を見てから場合によっちゃ動くよ」

 

「ふん、あまり面倒をかけるなよ」

 

「アンタに言われたくないね」

 

 

 

 お互いに憎まれ口をたたきながら小雪のことを話した。

 

 小雪はずっと怪我したところをを庇ってるような動きをしてた。普通の人が見たら気づかない程度のごくわずかなものだけど、俺の目やヒュームの眼力の前では一発でわかる。

 

 妙なのはそう言った打撲の部分が体の一部分だったらともかく、小雪のはそれが全身だった。となると考えられるのは事故にでもあったか、故意に、つまり人にやられたかの二択な。

 

 

 

 

「んじゃ英雄も帰ったし、俺らも帰るか」

 

「そうですね、だんだん暗くなってきましたし」

 

「え?もう帰っちゃうの…?」

 

 

 

 英雄が乗ったリムジンが走り去っていくのを見送り、俺たちも帰ろうとしたところ小雪が寂しげな顔でこちらを見ていた。

 

 

 

「あー、さすがにもう帰らないとまずい時間だからさ、今日はここまでだ」

 

「…明日も来る?」

 

「俺はいいけど…冬馬たちは?」

 

「私もかまいませんよ」

 

「若が行くなら俺も行くぜ」

 

「じゃあまた明日だ。明日ここで会おうぜ?」

 

「…うん」

 

 

 

 えらく懐かれてしまった自覚はあるけど、解散するだけでここまで寂しげな顔はしないな。俺の想像でしかないけどDVの可能性、頭に入れとくか。動くにしても一度冬馬たちと相談してからだな

 

 結局俺たちはそのまま解散したが、別れ際の小雪の顔がどうにも俺の頭に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ龍二、今日は川神院で一緒に稽古しよう!そのまま試合に…」

 

「悪いな、今日は先約があるんだわ。またいつかな」

 

「え~、最近付き合い悪いな~。かーまーえーよー」

 

「あーもうくっつくな。ちょっと気になることがあってな。それが片付いたらまた遊ぼうぜ」

 

「ん~、なんか力になれることがあるなら言うんだぞ?私はお姉さんだからな!」

 

「はっ!勉強で俺に勝ってから言うんだな」

 

「うぐっ!」

 

「ははは。ま、ありがとな。なんかあった時には頼らせてもらうわ」

 

 

 

 翌日の放課後、百代と一緒の下校中にこんな会話があった。なんだかんだで面倒見がいいからな、モモは。

 

 

 

 真っ直ぐ家に帰った俺は荷物を置き、すぐさま昨日の原っぱへ向かった。

 

 実はこの原っぱ、なかなか俺の家から距離がある。直線距離で五キロくらいかな?ほんとは俺の家からもっと近い原っぱもあるけど(むしろ俺の学校の連中はそっちで遊んでる。一度も誘われたことないけど…)、冬馬たちの学校との距離を考えるとそちらがベストなんだ。まあ俺には五キロなんてほとんど散歩感覚の距離なんだけどな。

 

 いつものように走り、数分で原っぱに到着。結構速く来たのに俺は二番目。俺よりも先に来ていた小雪が座っていた。その手には昨日と同じマシュマロの袋があった

 

 

 

「よお小雪。早いな」

 

「あ、龍二、マシュマロいる?」

 

「お、ありがとうな。…うん、うまい」

 

「えへへ」

 

 

 

 小雪の隣に座りながらマシュマロを食べる。照れている小雪は見ていて和むね。俺の中で子猫や義経と同レベルで和める存在だわ

 

 そんな時俺は、二人っきりしかいない今なら少しは話を聞けるんじゃないかと思い、ちょっと遠回しな質問をしてみた。

 

 

 

「なあ、小雪の親って何してるんだ?」

 

「っ!…お父さんには、あったことない」

 

「…ごめん、悪いこと聞いちまったな」

 

「お母さんは、あの人は…やさしいよ。僕を必要としてくれてるんだ」

 

「…そっか(あの人、ね)」

 

 

 

 こりゃほんとにDVっぽいなぁ。それも母親か、片親ならではのストレスってやつかねぇ。

 

 さすがにこれを見逃す気にはなれないなぁ。ま、女の子が困ってたら助けるのが男ってもんでしょ。冬馬たちも巻き込んで何とかしてみようか

 

 




次回で小雪編は終了

そろそろ風間ファミリー出せそうです

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