2015/8/19 改稿
「武士道プランとは九鬼財閥が提唱した教育プランの一つで、過去の偉人のクローンと共に学ぶことで競争意識の向上、若者の育成を目的としたものでございます」
何とも不本意な形でクローン組と仲良くなり、落ち着いた俺にクラウディオさんが武士道プランの説明をしてくれた。
言いたいことはわかるけどいいのか?主に倫理的なことで…
「九鬼でございますから」
「(読心術?)…納得です」
今更九鬼が何しても大して驚かねーなー
「ここにいる義経様達は武士道プランの要。未だ公表されていないプランですからここで教育をしているのでございます」
「なるほど。となると俺がここに来た理由ってのは…?」
「はい。この島での教育は本土と比べても最高レベルのものでございますが、どうしてもその地形上閉鎖的になってしまうのです。なので本土に住んでいらっしゃる龍二様との交流でそれを解消しようかと」
要は義経たちにいろんな話をして閉鎖的な性格にならないようにすればいいってことだな。
あーよかった。ヒュームからの話だからどんな無理難題が押し付けられるか内心ビクビクしてたんだわ
「というわけで、少しお話をなさって親睦を深めていてください。私は昼食の支度をしてまいりますので」
「あ!じゃあそれ俺がやります!俺のことを知ってもらうならそのほうが速いし」
「え?龍二君て料理できるの?」
「そう言えばヒュームも珍しく褒めていましたよ。わかりました、それでは私も同行させてもらいますが、お任せしましょう」
「はい!丁度さっき捕まえたタコがあるので…」
そう言って俺はクラウディオさんとメニューの相談をしながらキッチンに向かった。見てみると、こんな島にあるとは思えないような素晴らしいキッチンだな。さすがは九鬼
「もともと何を作るつもりだったんですか?」
「今日の昼食はトマトソーススパゲッティとコンソメスープにする予定でした」
「成程、あんまりそこから変えるのはあれだな…。よし!それじゃあ…」
クラウディオさんと相談しながら今日の献立を決めて、調理にかかる。
まずはトマトソースを作ってしまおう。まずは玉ねぎ、にんじん、セロリ、ニンニクをみじん切りに。タコは一口大の大きさにカット。トマトは湯むきして皮を取り、中の種も取り除いてから小さくカット。これでソースの下準備は完了だ。
フライパンに多めのオリーブオイル、ニンニクのみじん切り、唐辛子少々をいれて弱火にかける。香りが立ってきたらトマト以外の他の野菜を投入し、中火で炒める。野菜がしんなりしてきたら白ワインを入れてアルコールを飛ばしてからタコとトマトを入れる。これで後は煮詰めるだけだ。
みんな喜んでくれるかねぇ
SIDE 葉桜清楚
なんだかとんとん拍子に話が進んでしまったが、龍二君が私たちの昼食を作ってくれるみたいだね
「大丈夫なのか?あいつ私たちと同じくらいだろう?」
「クラウディオさんが一緒だから問題ないと思うけど…」
弁慶ちゃんの言葉に私は自信をもって返事ができなかった。
「気になるなら見に行けばいいと義経は思う」
「そうだね、僕もそう思うよ」
「ん~、いって見るか」
そうして私たちは全員でキッチンに向かった。私たちと同じくらいの年じゃまだ危なくて包丁も持てないと思うんだけど…
そうしてキッチンについた私たちに待っていたのは
「クラウディオさん!もうすぐソースできますよ!」
「わかりました。こちらももうすぐなので付け合わせの調理をお願いします」
「了解!」
クラウディオさん以上のスピードで調理をこなす龍二君の姿だった。
「す、すごい!義経はビックリだ!」
「うわ~!」
「あんなのアニメの中だけだと思ってたよ…」
「龍二君、すごい…」
すごいスピードで包丁で切られたものがそのまま鍋に入っていく様子を見て、義経ちゃんと与一君は目を輝かせていた。
あんな速さで人って動けるんだ…
それから少したって、テーブルに座る私たちの目の前にはおいしそうな料理が並んでいた。
「タコのトマトソーススパゲッティだ。スープには野菜たっぷりのコンソメスープを。クラウディオさんが作ってくれたデザートもあるぞ」
「龍二様、感服いたしました。あそこまで丁寧で素早い調理は見たことがありません。ヒュームが褒めるのもうなずけます」
「さっきから思ってたんですけど、ヒュームが褒めったのってどうにも信じられないんですが…」
二人が話している横で私たちの目は料理に釘づけだった。おいしそうに料理が盛られた皿からは湯気が立ち、いい匂いが漂ってくる。義経ちゃんなんてお預けされた犬みたいになってるよ
「それでは冷めないうちにいただきましょうか」
「「「「いただきます!」」」」
「この世のすべての食材に感謝をこめて、いただきます」
クラウディオさんの声で私たちは食べ始めた
スパゲッティをフォークに巻き付けて口に運ぶと…
「うまい!龍二君はすごいな!義経は感服した!」
「ハフッ、ハフッ!ホフホフ!」
「ほら与一、誰も取らないからゆっくり食べな」
おいしい!同じくらいの男の子が作ったとは思えない!
そんな風に食べてる私たちを龍二君は笑いながら見ていた
「どうしたの龍二君?」
「ん?いや、みんなが俺の料理をおいしいって笑いながら食べてるのがうれしくてさ」
「うん、本当においしいよ」
「ありがとうな、清楚」
その後、龍二君がデザートのプリンを義経ちゃんにあげてさらに感謝されるなどのことがあり、そのまま昼食は終わった。
「午後は自由時間ですので、皆さんでご自由にお過ごしください」
「「「「「はーい!」」」」
SIDE 石川龍二
みんなで昼食を食べた後、午後は義経たちと遊びまわった。まずは島の案内をしてもらい、そのあとは海で遊んだ。
やはり英雄のクローンということか、みんな運動神経がすさまじく良かった。驚いたのは清楚もかなり運動神経が良かったことだ。純粋な腕力じゃ弁慶と同じくらいあるんじゃないか?見た目文学少女なのに
みんなで遊びまわった後は勉強の時間。俺も一緒にやらされたがここは前世の記憶持ち、問題なくクリアできた。やってる内容は今の学校でやってることよりかなり進んでたけど…
クラウディオさんに帰りのことを聞くと、明日の夕方に船を出してくれるそうだ。帰りも走って帰れとか言われたらどうしようかと思ったよ。
あっという間に就寝時間になり、俺たちは割り当てられた部屋で眠りについた、が
「…眠れねえ」
そう、俺は枕が変わるとなかなか眠れない人間なのだ。いくら布団をかぶって目をつぶっていても、これっぽっちも眠気が来ない。俺は気分を変えるためにいったん部屋を抜け出し外に出た。
この島は電気があまりないためあたりが真っ暗だったが、その分星がとてもきれいに見えた。星の明かりだけで俺には十分すぎる
適当に歩き始めて数分、俺はこの島に最初に辿り着いた砂浜に来たが、そこには先客がいた。
「あれ?清楚?」
「…龍二君」
光源は星の光しかなくても、俺は清楚の目が赤くはれているのを見逃さなかった。
この頃のクローン組ってキャラ立ってるのが義経しかいない…