俺は料理人志望なんだけど…   作:イタクァ

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引っ越してから運が非常に悪くなった…

誰か俺に運を分けてください(切実に)



205/8/19 改稿


謝罪と覚醒

 初めて自分の手で殺した熊の肉をすべて食べつくし、夜が明けると同時に俺は森を出ようと動き出した。熊にやられた傷跡は右わき腹のものだけ跡が残っちゃったけどそれ以外は跡も残らずほぼ完治していた。あれだけの重傷がたったの一晩で治ったしまうあたり、自分の身体が人間離れしてきたなぁと実感。…今更か。

 

 と、とりあえずは川神に戻るために動き出した。でも、自分の現在位置なんてさっぱりわからずいきなり途方に暮れちまった。手の打ちようがないといわんばかりに闇雲に森の中を歩き回ること数時間、日も高くなってきた時に水の流れる音が聞こえた。俺って運がいいのやら悪いのやら…

 

 まあそれからのことは単純。見つけた川の流れに沿って歩き、人里を見つけて場所を聞いて、川神まで走って帰った。まあ軽く走った、なんて言ってるけど実際は結構な距離があって、川神についたのは日付が変わる直前だったりする。

 

 今の俺の状況を忘れて家に入ったら大騒ぎになった。両親が泣きだしたり、なぜかこんな時間までいた常連のおっさん達が叫びだしたり電話をかけたり…

 

 どうやら俺は森の中で丸一日意識を失っていたらしく、俺が川神院で鍛錬していた日から丁度三日ほど経っているらしい。両親が警察に届け出を出していたようで、さっきの電話は警察への電話だったようだ。

 

 そして心配をかけた罰として二人に一発ずつひっぱたかれた後、泣きながら抱き付かれてしまった。前世の記憶があるとはいえ今の俺は10歳にもなってない子供。二人が俺のことを心配してくれていることがわかり俺も一緒に泣いてしまった。

 

 常連のおっさん達は心配してこんな時間まで一緒にいてくれたらしい。たくさんの人達に心配をかけちゃったな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 心配かけたお詫びとしてお土産で俺が狩った熊の毛皮を見せた途端に両親にまた怒られた。  解せぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、いろんなところに心配をかけたことを謝りに周っている時に気になる話を聞いた。どうやら九鬼のほうでも俺の捜索をしてくれてたみたいだ。ちゃんとお礼を言いたいけど今の俺にはその手段がない。ヒュームが帰ってきたらちゃんと言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 そして一番迷惑をかけた川神院だけど、

 

 

 

「本当にすいませんでした!!」

 

「ふぉふぉふぉ、気にすることはない」

 

「私もまだまだ修行が足りなかったということネ」

 

「まあいつかうまい飯食わせてくれや」

 

「…」

 

 

 

 あんなにも暴れまわってしまった俺に気にするなと言ってくれた。みんな心が広くて俺感動だよ…

 ただモモが無言なのが気になった。 

 

 

 

「モモ?」

「…ふぇっ!?」

「(ふぇ?)いや、その、悪かったないろいろと…」

「い、いや、気にするな。お前がいなくなったら私の相手が誰もいなくなるからな!」

「素直じゃないのう、龍二君がいなくなって一番慌ててたのはモモじゃろうに」

「うわあああああああ!?何を言ってるんだジジイ!」

「あー、その、すまなかったモモ」

「う、うん(こいつ、なんか雰囲気変わったな…。)」

 

 

 

 なんかモモの顔が赤い気がするが大丈夫か?

 このまま帰るのはなんとなくはばかられたので、釈迦堂さんの願いどおりにキッチンを借りて修行僧含めた全員分の昼食を振舞ってみた。みんな俺の調理の様子を見て驚き、味もうまいと言ってくれた。みんなは許してくれたけど俺自身が納得いかないのでこれからちょくちょく川神院に罪滅ぼしとして手伝いにくることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだモモ。今までそっけなくしてて悪かったな」

「ん?どうしたんだ急に?」

「ちょっとした心境の変化ってやつだよ。流石にしょっちゅう戦うって訳にはいかないからさ、今度は普通に遊ぼうぜ?」

「…そうだな!」

 

 

 

 帰る前に今までのことをモモに謝っておいた。もう俺は前世の俺じゃない。今を生きている石川龍二なんだ。それを自覚したからこそ、これからはちゃんと人付き合いをしていこうと思い、そのための第一歩としてモモとちゃんと接することにした。

 

 

 

「だからさ、少しは俺と戦おうというのはおさえてくれよ?」

「うっ!?…わかったよ、少しは我慢する」

 

 

 

 よし、言質とった

 

 

 

 

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森での一件により、俺は自分の中で明らかに変わったことがある。

 

 

 

 バチッ!バチチチチチチチチチッ!!

 

「スタンガンいらずだなー…」

 

 

     

 思わず白目になりながら俺は自分の右手を見つめていた。俺の右手からは見ただけで危険とわかるほどの電気が放出されてるからだ

 断片的に覚えている暴走したときの出力には到底及ばないけど、それでも十分すぎる威力を持っていることがわかる。

 

 

 

「ついに完全戦闘用の力を使えるようになっちまった…」

 

 

 

 最近の俺は料理人志望って言っても信じてもらえない気がする…

 

 

 

「それに…」

 

 

 帰ってきてから変わったと実感するものが他にもある。それは目と耳だ。

 もともと身体能力、というか体のスペックがかなり高い俺は普通の人よりも高い五感を持っていたけど、森から帰ってきてから自分の感覚が今までよりもかなり研ぎ澄まされていた。特に視覚と聴覚は自分で言うのもなんだけどもはやおかしいレベルだ。

 

視覚:目を凝らすと細胞が見える

 

聴覚:4キロ先の猫の足音が聞こえる

 

 

 ……やったね更に人間離れしたよ!ハハッ…

 いや、正直喜べないって。目は見えすぎるし、耳は聞こえすぎる。夜寝るのも辛いんだぜコレ…。また慣れるまで時間かかるんだろうなぁ…

 ま、まぁ暗いことは置いとこう

 

 

 

「にしても、いくら動いても腹が減らないのってそういうことだよなぁ…」

 

 

 

 そう、俺はいつの間にか食義の奥義、食没を習得していたのだ。

 おそらくあの熊を食べた時だろ。自分の中で食事や食べ物に対する意識が熊を食べた時に変わったしな。

 

 

 

 

 食べるとは生きること、料理とは食べる側と食べられる側で成り立っているということ。そして何よりすべての食材に、相手に、境遇に感謝すること。

 自然を感じ、弱肉強食の世界を体験した今だからこそわかる。だからこそ自分の糧になってくれた者たちに至上の感謝を

 

 

 

 

 

 

 『食没』、その名の通り食に没頭すること。食材への心からの感謝、身体の一部となってくれた食材へ感謝することによって食材からエネルギーを理論上無限に近く取り出せるというもの。

 わかりやすく言うと、かなりの食い溜めができるようになりエネルギー切れがほとんどなくなったということだ。

 明らかに俺よりも体積が大きい熊肉が、全部俺の腹の中に入っていったからな。自分でも驚いたぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ?俺これならヒュームに勝てるんじゃね?」

 

 

 

 強化された体がどれくらいのことができるのか確認をしていた時にふと思いついた。

 そう、ヒュームは高齢のため、長期戦が苦手らしい。その分一瞬の鋭さは年々上がっているらしいが。

 俺は食没を習得したためかなりの長期戦になっても問題はない。ということはこれはヒュームに対して圧倒的なアドバンテージになりうる!

 

 

 

「ふ、ふふふ、ふはははははははは!待っていやがれヒューム!日頃の恨み、必ず晴らしてやるぜ!恨むんなら普段の行いを恨むんだな!あーはっはっはっはっは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は忘れていたのだ、ヒュームは俺に手加減しているということを…

 

 

 




主人公、超パワーアップしてました

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