この作品がゲームと違う所の1つ:
技を覚える方法は色々ある。ポケモンから教わるか真似するか、あと生まれたときからの遺伝もある。
6/23:また誤投稿してしまいました。本当にすみません。
「はぁ……仕事の後のきのみジュースってなんでこんなに美味しいんだろうか……」
労働の後の一杯は趣味(ガーデニング)の後の一杯と比べたら格別に美味しい。
けど穴を埋めて綺麗になった畑を一望しながら飲むこの一杯もたまらない。ポケモン達も(1匹を除き)幸せそうだ。特にサンちゃん。
今日は水曜日。世間的には平日だが、我が大きな庭のきのみ屋さんは定休日なのだ。ちなみにもう一つは日曜日。
朝からゆっくり過ごしながら畑仕事をして、いつもなら営業している時間に皆できのみジュースを一杯飲んで一休みするのが水曜日の決まり。
けど今日は、昨日の『だいばくはつ』によって出来た穴を埋める作業に集中することに。まぁ殆どサンちゃんがやってくれたんだが。
ちなみにマサユキは昨日の夕方頃に旅立ちました。給料ときのみ、そして夕飯ついでのきのみパンを持たせてね。随分と働いてもらったわけだし。
それと、せっかくなので「ほのおのぬけみち」に出現するコータスをゲットすることをオススメしてみた。あの人、硬いポケモンが好みだって言っていたしピッタリだと思う。
そういえばマサユキとミツル君が何か話し合っていたみたいだけど、深くは聞かないでおいた。きっとホウエンを巡る上でのアドバイスか何かだろう。
さて、一休みした後はどうするかと言うと……今日は釣りをしようと思う。
実は裏庭の水辺、こことは別の川と繋がっている。器用貧乏なガーさんの「あなをほる」で掘り進め、池の底と川底とを繋げる二つのトンネルを掘り、常に川からの水流が発生し水を綺麗に保つのだ。
そんな仕組みだからこそ、水流トンネルを通ってこの水辺に住み着いた予想外なポケモンも居たりする。ちなみに生息している水ポケモンの殆どはコイキング。
以前キバニアの群れが紛れ込んで大変な事があった為、週に一度は釣りをして観察がてら楽しむのだ。もし危ないポケモンが混ざっていたら専用の溜池に移し、後日川に戻します。
水辺付近の高木に腰掛け、木陰の下で釣りモンスターボールに餌を仕込み、お供兼ボディガードの鉢植え付きローちゃんを添えて準備万端。
ちなみにガーさんはコイキング達と恒例のおいかけっこ中。イジメではなく単なる遊びなので、あしからず。喧嘩好きガーさんだが弱いものイジメはしない主義なのだ。
さて、さっそく釣りモンスターボールをポイっとな。
何が釣れるか楽しみにしつつ、ラジオから流れる音楽を耳に傾けながら木陰で一休み。今日の選曲はホミカ作曲「Venom Shock」だ。ラッキー。
一度でもいいから生で会ってみたいなー。けどイッシュ地方は遠いしなー。……大きなライブとかあったら行ってみよ、そうしよ。
―――
うとうとしていた時に浮きが沈んでいたから、反射的に釣り上げたんだけと……。
「君、水タイプというより草タイプのポケモンだよね?」
「ハボ?」
いや、「ハボ?」じゃなくてさ……いやそうとしか答えられないだろうけどさ、ポケモンだし。
釣りモンスターボールに引っ掛かっていたのは、なんとハスボーだった。1匹目からコイツって凄い珍しくない?
確かに水タイプでもあるけど、ハスボーは水中深くまで潜れたものだったかな?水面をプカプカ泳ぐイメージだったんだが……そもそもハスボーって釣れるもんなの?
川の方から吸い込まれて裏庭の水辺にやってきたか、それともわざわざ夜遅くに陸地を歩いてやってきたのか……うーむ、謎だ。
それはいいとしよう。このハスボーをどうしようか。正直言って余所へ逃がすのも勿体無い。だって可愛いもん。
当のハスボーはローちゃんにじゃれついていた。随分と人懐っこいな。野性味が低そうだし、生まれたてかな?まぁローちゃんがお母さん属性なのも起因しているだろうが。
試しに頭の蓮をつついてみたら、「やーめーろーよー」と嫌がるような素振りをして楽しんでいた。可愛い。
―しかしこの裏庭の湖に現れた新参者をほっとくほど「奴」は甘くない。
ザパリと水から揚がって僕らの前に姿を現す一匹のポケモン。
こいつはあのケンカ好きなガーさんですら手こずる程の乱暴者で、ヤンキーオーラが全身から溢れている凄い奴だ。僕は畏怖を込めて「キンさん」と呼んでいる。
どこで拾ってどうやって掛けたのか解らない『黒いメガネ』越しにキンさんはハスボーを睨み付ける。
-おうおう、俺のシマに入るたぁいい度胸じゃあねぇか
などと独特的な男性ボイスが聞こえてくるような鋭い眼光を向けて威嚇するが、向けられたハスボーは体を傾げる。解ってないようだ。
こんなお子様ポケモン相手でも容赦のない威圧感を放つキンさんは流石といえよう。
-コイキングでなければ。
ギャラドスに進化すれば池に君臨する偉大なボスになれただろうが、悲しき事に彼は未だにコイキングのままだった。
せっかくの威圧感と鋭い眼光もビチビチと跳ねる姿で全て台無し。黒いメガネですら精一杯の背伸びアイテムにしか見えない。ていうかサングラスが変な位置にあって可笑しい。
しかし心は立派なヤンキーで、毎日ガーさんにどついて己を主張する勇敢な奴だ。ハサミパンチ一発でやられる程に弱いけど。
そんなコイキングを前にハスボーは
-クキュ~……。
腹を鳴らしていた。可愛い。
-ジュルリ
-ギョッ!?
涎を垂らすハスボーから補食者の目で見られたコイキングはビビる。
そこから先は一瞬だった。
―――
「こんなちっさいのに『ギガドレイン』を覚えていたなんて、凄い子だなぁ」
「全くだ」と頷くローちゃんは感心しているようだった。
無理もないか。こんな小さなハスボーが草タイプ最強のドレイン技を覚えていたんだから。同じ草タイプだからこそ解る凄さってやつだ。
-チューチューチュー
-ビチビチビチ
ハスボーがコイキングとロデオごっこをして遊んでいるようにしか見えないけど、ちゃんと吸っています。主に養分を。
しかし長続きはせず、とうとうコイキングが力尽きて倒れた。息はしているし、瀕死ではあるが死にはしないだろう。後でオレンのみでも食べさせれば元気になるかな。
満足そうにゲップをするハスボーの頭を「偉い偉い」と撫でてやるローちゃん。お母さんキャラだなぁ。ハスボーも嬉しそうだし。
それにしても『ギガドレイン』を覚えているハスボーかぁ……ますます手放すのが惜しくなってきた。
僕もポケモントレーナーとして、今のメンバーに満足しているから薄れてはいるものの、珍しいポケモンや強力なポケモンを見たら置いておきたいと思うような欲は少なからずある。
とはいえゲットするつもりはなく、
……居つく場合、片っ端からコイキングを『ギガドレイン』で吸わないようハスボーに言っておかないとかな?
そして何より―――僕は草タイプが大好きなのである!
幼少の頃から草木を切りそろえたり花を育てたりするのが好きだったけど、草ポケモンの世話をするのも大好きだった。
特に自然の中でのびのびと過ごす草ポケモンが好きなので、なるべく自分からはゲットせず、僕についてきてくれるポケモンだけをゲットしている。記念すべき草ポケモン第1匹目はローちゃん。
そんな僕の抱いている夢の一つは、僕とポケモン達が綺麗に整えた裏庭に沢山の草ポケモンが居付いてくれる事。広い庭に沢山の草ポケモンが暮らす……おっと、涎が。
そんなわけで、是非ともこのハスボーには居付いてもらおう。ローちゃん、世話役お願いね……あ、ハスボー相手にお母さんぶってる。可愛い。
―
この後はいつも通りコイキングが9連続も釣れたので釣りは終了。ハスボーを除いて池の異常無しと見た。
お昼にマトマのみのスープとサンドイッチを食べ、あのハスボーをローちゃんに預け、アーさんに乗って買い物に出掛ける。アーさんの『そらをとぶ』は時々眠気でフラフラするから危なっかしい。
買い物から帰って来た頃にはアーさんを除くメンバー全員と仲良くなり、それどころか半野良スボミーのスーちゃんとも仲良しになっていた。このハスボー、只者じゃない。
結局ハスボーは池の住民として周りから認められ、裏庭の仲間入りとなった。雄なので「ハーさん」と名付けよう。
余談だが、この日よりキンさんの兄貴分は二匹に増えた。1匹はガーさん、もう1匹はハーさんだ。
頑張れキンさん、負けるなキンさん。ギャラドスに進化するその日まで。……まだ「たいあたり」を覚えていないけど。
―続く―
作者は草ポケモンが好き。あと鋼タイプと岩タイプと地面タイプ。タフなポケモンは特に好き(笑)
それにしてもコイキングが『黒いメガネ』をかけるってシュールですよね(←なら書くなよって突っ込まないであげて)