―前回のあらすじ―
バックパッカーのマサユキが勝負を挑んできた!
今回は初のポケモンバトル回なので長めで、最後辺りが雑になります(汗)それでもよろしければどうぞ!
楽しんでもらえれば、そしてこれが百聞一見流のバトル描写なんだと思ってくれたら幸いです。
お互いに放り投げたモンスターボールから出てきたポケモンは……僕のからはロゼリアのローちゃん、マサユキのからは……岩タイプのゴツい奴だ。
そいつが出てきて地面に着地した瞬間、ドシン、と裏庭が揺れたよ、すげー。
確かあれは……ギガイアス、だっけか?イッシュ地方の岩ポケモンだったはず。
ゴローンみたいなゴツゴツした岩っぽさもなく、コドラのような鎧っぽさとも違う、硬い鉱石そのものがポケモンって感じで強そう。
しかし岩タイプなら草タイプのローちゃんに分があるはず!だからデカさにビックリしないでくださいローちゃん。
「突っ込めギガイアス!」
マサユキの指示でギガイアスが動き出し、ローちゃんに向かって突進。タイプ相性を恐れず突っ込むとは中々豪快な奴だ。
四つの足で地鳴りを上げながら突進してくる岩ポケモンの姿は迫力満点だが、速さが足りない!
「避けてローちゃん!」
小柄なローちゃんは揺れる地面の上で走り、勢いはあるけど遅い突進を難なく回避し―――。
「『ロックカット』!」
―ロ、『ロックカット』ォ!?
ギガイアスの表面に皹が入ったかと思えば硬いはずの岩がボロボロと崩れ落ち、全体が三角形に似たシャープな身体つきになった。
空気抵抗を減らした上に崩れた分だけ軽くなったギガイアスの突進は唐突に3倍近く加速し、急旋回してローちゃんに迫る!
しかし回避!ローちゃんは「ピャー!」と悲鳴を上げるが、急に加速したんだからそりゃ驚くわ。
外したと解ったギガイアスは四股を踏んで急ブレーキをかけるが、勢い余って滑―――らない!?
ギガイアスが足を地面にめり込ませる事で無理矢理停止したんだ。さっきの突進の勢いといい急な方向転換といい、なんていう脚力!
「俺達のホームグラウンドは砂漠と岩山!足場の悪い場所で鍛えた足腰は伊達じゃないんだよ!」
「ギガイアスに腰ってあるの?」
「そのまま後ろに向けて『いわなだれ』だ!」
―あ、誤魔化した。
地面にめり込んだ後ろ足を蹴りあげ、細かい岩と大量の土が降り注ぐ中でローちゃんは咄嗟に『まもる』を使用するも、土と岩の雪崩に埋まってしまった。
それにしても凄い脚だ。よほど悪路慣れし、かなり脚が鍛えられているのだろう……だがしかし!
「『しびれごな』をばら蒔け!」
土の山からニュッと生えた赤い薔薇から黄色い粉が噴出し煙として広がっていき、当然ギガイアスに降りかかった。これでしばらくは動きが鈍るはずだ。
粉が晴れると土の山からローちゃんが這い出てきた。あーあ、土まみれだよ。
うちのローちゃんは畑での土弄りに慣れているし、サンちゃんにしょっちゅう遊びで埋められているから土や泥には耐性がありますよっと!ただし岩は勘弁な。
「今度は『やどりきのタネ』だ!」
テンプレな草タイプのコンボ『しびやど』だが地味に強いよね、これ!
両手の薔薇をギガイアスに向け、『やどりぎのタネ』を乱射するローちゃん。『タネマシンガン』にあらず。
体力を奪う種がギガイアスに取り付いて―――いない!?
「『てっぺき』で硬くなったギガイアスの体は『やどりぎのタネ』を受け付けないんだよ!」
ざまーみろ、とばかりに胸を張るマサユキとギガイアス。似た者同士?
強力な『やどりぎのタネ』だが、時にはこんな風に無効される事もあるんだよなぁ。毒の身体で種を枯らすベトベトンとか、炎の身体で種を燃やすマグカルゴとか、今みたいに全身が硬すぎて根を伸ばせず種が付かないギガイアスとか。
もちろん種を付けるコツはあるんだが、このギガイアスには無理っぽい。流石に口や目につける訳にもいかないしなぁ……。
「『じならし』で反撃だ!」
「仕方ない、『ギガドレイン』でゴリ押して!」
『マジカルリーフ』だと弾かれそうなので、硬さに関係なく相手の体内からエネルギーを吸収する『ギガドレイン』で攻めるローちゃん。
しかし草タイプのドレイン技は動きを止めなきゃならないので、痺れていようが僅な動きですら自身の体重を活かし発動できる『じならし』の揺れを受けてしまう。
けどこのままだと吸収しきってこちらの勝ち……お、早くもギガイアスが震えだした。弱ったにしては早いし震え方がオーバーな気が……ん?
よくみたらあのギガイアス、口に何か咥えてる。あの石って確か……。
「バカ、それだけは止めろギガイアス!」
思い出した。あれって『ノーマルジュエル』だ。イッシュ地方の洞窟とかで取れる、ノーマルタイプの技の威力を上昇させる珍しいジュエルで。
「みんな伏せろー!」
―イヤなよかーん。
ギガイアスからカッと白い閃光が、てか目がぁー!目がぁー!
―――ギガイアス の 『だいばくはつ』!
―――
幸いな事に、マサもミツル君も観客も、畑に棲んでいるポケモン達も無事だった。僕は失明していないけど目が痛いです。
しかしギガイアスもローちゃんも倒れ、でっかいクレーターが出来上がっていた。流石ジュエル大爆発。オボンのみ無駄だったね。
皆唖然としていて、ミツル君も「ギ、ギガイアス、ロゼリア、戦闘不能……」となんとか言葉を出す程に呆然としていた。
―それにしても……。
「あーあ、明日は穴埋め作業しなきゃなー」
目が慣れてきたから改めて見たけど、でけー穴。明日はサンちゃん大活躍の巻だな。
「なんで落ち着いているんだよ!」
「直せるからです!」
穴埋めればいいだけだし、土いじりは慣れっこなんだよ。ドヤァ。サンちゃんがボールの中で張り切っているし、明日頑張ろっと。
―――
どうやらマサユキのギガイアスは相当な意地っ張りで、負けるぐらいなら道連れにするタイプらしい。ガッツがあるけど怖いよ、それ。
ギガイアスを抑えられなかった事とノーマルジュエルを持たせたままだったのを忘れていた事を深く反省し謝罪するマサユキを見て落ち着くように言った。
反省しているなら許す道理はあるし、観客たちも驚きはしたが無事だったので問題ないと言ってくれた。やっぱシタゲタウンの皆さんは優しい。
「では仕切り直しで……両者、次のポケモンを出してください」
ミツル君はすぐに復帰。さっきまで呆然としていたのは音と光にビックリしただけだからだって。
あんなことがあっても勝負は勝負だからとボクは続けるか聞いてみたら、マサユキは驚きつつも、煮え切らない思いから続行を希望した。その意気やよし!
―とは言ったものの。
「『だいばくはつ』の直後に『ステルスロック』を撒くとか器用なことするね」
「あいつしょっちゅー爆発するからか自ら編み出したんだぜ?」
えー、マルマインじゃないんだからさー……。
ギガイガスが爆発した際に弾けた身体の一部が『ステルスロック』として周囲に漂っているのだ。
クレーターの周囲には尖った岩が浮遊しており、ポケモンを繰り出そうものならダメージを受けるだろう。その厄介さはよく理解しているつもりだ。
とはいえ試合は続行。お互いにモンスターボールを投げる。
「いけ、イワパレス!」
「やっちゃってガーさん!」
僕はシザリガーのガーさんを、マサユキが出したのはイワパレスという虫タイプのポケモンだ。背中の地層がパンケーキみたいでおいしそう。
そう思っていたらガーさんの悲鳴が。『ステルスロック』が刺さったんだね、痛々しい……と思ったら「なにすんじゃゴルァ!」と怒り出した。流石ヤンキー。
しかしそれは相手も同じ。これだけ『ステルスロック』が広がっていたら向こうさんも尖った岩が……殆ど背負っている地層に刺さっていました。
そっか、本体は小さいから『ステルスロック』が刺さりにくいんだ。ガーさんに比べたらダメージ低いだろうなありゃ。
「へっへん、そっちが不利っぽそうだな?」
悔しそうに痛がっている所へマサユキが挑発したもんだから「なんだとコノヤロー!」と怒るガーさん。どうどう、ドードー……5点。
『ステルスロック』のダメージに加え、あくタイプを持つシザリガーにとって、むしタイプのイワパレスの相手は厳しいだろう。
―けどね、それはそっちも同じなんだよ?
「そっちこそ、自分のポケモンをよく見なよ」
「何……って、なんじゃこりゃ!?」
マサユキが驚くのも無理は無い。だってイワパレスが毒状態になって苦しんでいるんだもの。
イワパレスの割と小さな身体をよくみると、脚に何かが刺さっているのがわかり、マサユキもそれに気づいたようだ。
「『どくびし』?……さっきのロゼリアか!」
そう、ギガイアスが爆発する直前、咄嗟にローちゃんが相手側に向けて撒いたものだ。
エアームドのアーさんには劣るが、ローちゃんも『くさむすび』や『どくびし』など設置系が得意だったりする。
「とにかく『からをやぶる』で……げ、いつの間にか『ちょうはつ』されてる!?」
マサユキが言うが、イワパレスはなんかお怒りの様子。
あ、ガーさんが鋏をクイクイ自分に向けて「ヘイカモーン」って『ちょうはつ』してた。ガーさんって自分から喧嘩を売るタイプだからぁ『ちょうはつ』し慣れているんだよね。
それにしてもギガイアスで確実に一体を道連れにし、『からをやぶる』で『ステルスロック』の影響を受けにくくなったイワパレスの高速戦闘で攻める。良い戦法だと思う……だがこっちのガーさんだって手はある!
「ガーさん、『アクアジェット』で殴り込みだ!」
そう言われてガーさんは身体に水を纏い、空を飛ぶような勢いでイワパレスに突っ込んでいく。
水を纏っているから『ステルスロック』も『どくびし』も身体に当たる前に吹き飛ばされるから安心!
そのままイワパレスに激突するが、ぶつかった先は地層であってイワパレス本体ではない。けど接近すればこっちのものだ!
「『シザークロス』で迎え撃て!」
「『クラブハンマー』で殴りまくれ!」
言うよりも先に行動していたガーさんが先制をとり、両の鋏で殴る殴る。いつみても悪役ボクサーみたいで怖い怖い。
殴られながらもイワパレスも同じく鋏でシザリガーの胴体に切りかかる。リーチもパワーもガーさんが上回っているが、イワパレスは急所を狙いやすいようだ。
けどガーさんはケンカ大好きなヤンキー。『シザークロス』でダメージを受けてもお構い無しに殴りまくる!
右へ左へと鋏で殴りつけるガーさんの剣幕に流石のイワパレスもビビっている。怖いだろうなぁ。
「『ロックブラスト』で弾き飛ばせ!」
接近戦は不利と思ったのだろう。今度は至近距離の『ロックブラスト』で吹き飛ばし、射撃戦に持っていくつもりだ。
けどお互いに相当ダメージが入っているのは確かだ!ここで一気に決めてやろう!
「逃がすな!『はたきおとす』!!」
ガーさんの鋏が振り下ろされ、イワパレスの脳天に叩きつける!命令しといてなんだけど痛そ~!
この一撃が効いたのか、イワパレスは支えていた足の力が抜け、ズズンと音を立てて地層ごと横に倒れた。
「イワパレス、戦闘不能!よってハヤシさんの勝ちです!」
「よっし勝ったー!」
「ガガガー!」
ミツル君の勝利宣言に喜ぶ僕とガーさん。観客から僕らとマサユキらを称える拍手を貰っちゃいました。照れるなぁ。
けどバトルに勝てると嬉しいもんだね。ガーさんなんか「やったぜウラー!」と鋏を突き上げて喜んでるいし。
「いやー、負けた負けた。ていうか怖ぇなそのシザリガー」
倒れているイワパレスをモンスターボールに戻したマサユキはおっかない物を見るようにガーさんを見る。こらガーさん、喧嘩腰にならないの。
「うちのガーさんは喧嘩好きなんで」
「喧嘩好きっつーかヤンキーみたいなポケモンだな」
全く持ってその通りです。ごめんねイワパレス君、怖かったろうに。それはそれとして……僕は周囲を見てみる。
バトル見たさにやってきたお客さんが増えて結構な人数になっている。そして決まってバトルが終わった後は……。
「約束は守ってもらうからね。こっちも約束を守るから」
―今日はお客さんが増えて忙しくなるから、覚悟しといてね。ニヤリ。
「ハヤシさんマグマ団みたいな顔していますよ?」
―ミツル君の 真実の言葉 攻撃!
「それって悪人顔ってことじゃないですかヤダー!」
―こうかは ばつぐんだ!
―
「パインのみの砂糖漬け出来たから棚に並べてー!」
「はいよー!」
「キーのみ5個くださーい!」
「はいよー!お会計はこちらー!」
「この砂糖漬けくださいな」
「はいよー、ちょっと待っててな。はい、500円で250円のおつりね」
「お兄さんお兄さん、さっきのジュエル?って奴でいいもの余ってない?」
「ひこうのジュエルとはがねのジュエル、あとノーマルジュエルしか無いなぁ」
「わーいわーい!でっけー!」
「ギガイアスにイワパレス、悪ぃけど子供らと遊んでやってくれや」
「あっちでバクオングが地面にのの字を書いて落ち込んでいるけど何かあったの?」
「ハヤシ曰く『そっとしておいてやって』だってさ」
いやー、お客さんが増えたから忙しいのなんのって。マサユキが来てくれてよかったー。
マサユキ君もバイトなれしているのか接客も会計も出来るし、珍しい岩ポケモン目当ての子供達相手もしてもらっているから、本当に助かっているよ。
バトルも楽しかったし、後で渡すきのみとお給金に色つけておこ。パンとか瓶詰めとか。
さぁ、とりあえずお昼まで頑張ろう!僕、午前の営業が終わったらサンドイッチご馳走してやるんだー!
あとさゴーさん、いい加減に機嫌直してよ。どうせ子供達に怖がれたんだろうけどさ。
―続く―
どうしよう、モンハン小説よりポケモン小説の方が書くのが楽(笑)描写が少ないだけでこうも違うとは。
ちなみにキンセツシティ出身のトレーナーはついついポケモンダジャレを言う人が多いです。原因はもちろん明るい電気オヤジ。
ハヤシの戦法はトラップを仕掛けるやらしいタイプでした。ガーさんのイメージは路上闘士のミスター闘牛さんです。怖いけど悪い奴じゃないバカです。
―オマケ・白昼夢―
「うーん……ハッ」
「お、ようやく起きたか。メシ食ってすぐ寝るなんてよほど疲れてたのか?」
「……ねぇマサユキ、今見た夢の話をしていい?」
「別にいいが、どんな夢だ?」
「目の前で、鳥兜を被ったニャースと、イワークが巻きついても足りないほど巨大なイワパレスがきのみを食べ漁る夢を見た」
「ナニソレコワイ」
~続かない~