ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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 Q:そういや作中にあった「マサ」って誰?
 A:マサはハヤシと一緒に旅立った友人で、現在はイッシュ地方のバトルサブウェイに入り浸り中。いずれ登場予定。

6/14:誤字修正。ご指摘ありがとうございました!
6/20:誤字修正。ご指摘ありがとうございました!
7/3:誤字修正。ご報告ありがとうございました!


その3「きのみ屋さんの午後」

 大きな庭のきのみ屋さんの営業時間は、AM9:00~PM0:00とPM3:00~PM5:00の計5時間しかない。

 元々ここは裏庭があるだけの一軒家でしかなく、趣味である造園ときのみ畑を活かそうとしてきのみ販売を始めたのだ。

 先代ことイシ爺から受け継いだ後も営業は昼前と夕食前にしており、シダケタウンの皆さんも習慣として理解してくれている。

 

 そんな僕らがお昼ご飯の後にすることは、ガーデニングと庭掃除である。

 日々あちらこちらから野生のポケモンがやってくるこの裏庭は、畑に壁を張り、番ポケに見張らせていても足りないほどにチマチマと荒らされるのだ。

 「自然に限りなく近い庭」をテーマに掲げている僕としては野生ポケモンが増えるのは嬉しいし、「荒らされてもより美しく直す」をモットーにしている僕らの作業力があれば問題ない。

 食器を片付けツナギに着替えた僕はポケモン達を連れて裏庭に赴く。

 

 今日は結構面倒な相手がいるんだよなー……なにせチルタリスの夫婦が現れたんだから。

 

 お食事中に裏庭に訪れた2匹は凄く目立っていたが、それでもお構いなしに庭木を物色していた。どうやら巣作りを検討しているらしい。

 この裏庭に生える庭木は鳥ポケモン達にとって絶好の巣作りポイントとなっていて、時々彼らのような大型の鳥ポケモンが訪れることもあるが……まさかチルタリスとはねぇ。

 

 しかもこの2匹、イシ爺が若い頃から大切に育てている、裏庭で一番大きな高木に目をつけてしまった。

 あの高木はイシ爺が若い頃から大切に育てていたものだから古くなっていて、小型ならともかく大型の鳥ポケモンが乗ると枝が折れちゃうんだよね。

 だから軽そうなチルタリスでも2匹いっぺんに乗っかられたら枝がバキバキ、なんてことになりかねない。なんとしても阻止しなければ。

 

 とりあえずローちゃんを肩に乗せてチルタリス達に近づく。

 高木の周りをグルグル飛んでいたチルタリス夫婦が足音に気付き、滞空したままこっちを見下ろしてきた。人間慣れしているのか敵意は無い。

 

「あのー、その木は古くなってるから巣作りはあっちにしてくれないかな?」

 

 問題はその高木だけなので、理由を話してお願いする。巣作り自体はいいのよ?

 指差した方角はエアームドのアーさんですら耐えられる若木ばかりだ。背丈は物足りないだろうけど緑の量はバッチシの良物件ですよ?

 

 バサバサと翼(?)を羽ばたかせる夫婦は互いに向き合い、何かを話し合っている。野生のポケモンでも人の言葉を理解できるってありがたいよね。

 メスの方は若い庭木と相方を見比べながら話しかけ、オスの方は嫌そうに高木を見ていた。どうやらオスとしてはこっちの方が良さそうだ。

 「こっちが良い」と渋っているかのようにギャアギャア騒ぐ夫を前に妻が「古いから巣に向かないでしょ!」と一喝。

 ギャアギャアと騒ぎ出した2匹を見ていると不安でしかない……喧嘩になる前に一手打っておかないと。

 

「ローちゃん、『アロマセラピー』で落ち着かせてあげて」

 

 肩のローちゃんにそうお願いするとピョコンとボクの頭に跳び移り、両手の花をチルタルス夫婦に向けて振る。良い香りだなー。

 その香りに中てられた2匹は喧嘩上等オーラから一転、香りに現と肩(?)の力を抜かし、穏やかな雰囲気に包まれた。

 落ち着いた2匹は話し合い、若木の方へと飛んで行く。喧嘩にならなくてほっとした。可愛いけど、ドラゴンタイプだから暴れると大変なんだよね。

 

 先住民のスバメ達を驚かせつつ新築見学をする2匹を余所に、僕らは裏庭の掃除を始めるのだった。

 

 

―――

 

 夕方頃になると2匹は見学だけして帰って行った。他に良い場所があるといいね。

 裏庭の掃除を終え、午後3時から夕方5時までの営業を終えた僕らはようやく「クローズ」の札を玄関に掲げることが出来るのだ。

 なんだかんだでお疲れの皆にご褒美のポロックをオマケしておくのが夕飯のお約束。特に店の事を担当するゴーさんとローさんのポロックは気持ち多めにしとく。

 

 さて、夕食を食べた後は一休み。ポケモン達は裏庭で各々自由に暮らしている。

 僕はデッキチェアに腰掛けながらラジオのニュースを耳に傾けている。……巨大な黒いポケモンがホウエン地方でも目撃された、ねぇ……。

 暗くなったから傍のテーブルに置いてある土産物のランプラーランプに火を灯し、今朝届いた手紙に目を通す。

 

 1通目はイッシュ地方へ旅立った友人のマサ。

 なんと、ようやくノボリさんとそのポケモン達に勝てたそうだ。シングルトレインとはいえ、充分凄い。

 以前来た時にバトルレコーダーの記録で見せてもらったけど、ノボリさんとポケモンの実力はかなり高い。あの(・・)ユウキ君と互角、あるいはそれ以上かもしれない。

 次はクダリさんに会うため、ダブルバトルの猛特訓中なのだという。相変わらずスパルタだが、彼のポケモン達もストイックだし、いっか。

 それで、是非とも僕と一緒にダブルバトルをして欲しいとマサが誘っているが……僕はいつも遠慮している。

 ダブルバトルだったら僕の小賢しい戦法が通じるだろうけど、あんな高次元な戦いについていく自信が僕には無い。足を引っ張るかも。

 なので申し訳ないが、断りの返事を書いておかないと。……いい加減、ライブキャスターを買うべきかなぁ……?

 

 2通目はテッさんことキンセツシティジムリーダーのテッセンさん。

 僕だけでなくキンセツシティに生まれ育ったトレーナーにとって、テッセンさんは良いおじさん的存在だ。今はお爺さんだけど、僕らにとってはおじさん。

 そんなテッさん(バッジを6個以上手に入れたらあだ名で呼んで良いと言われ、以後そう呼んでいる)からの手紙なんて珍しい。なんだろうか?

 

「……あ、ようやく新しい芝刈り機の話か」

 

 以前テッさんから「開店祝いにとっておきの芝刈り機を送るぞい!」と言ったのが1年前の事で、今の今まで忘れられたのかと思ってた。

 ようやっと最新型の芝刈り機を貰ったから、ジムの仕事が片付き次第オマケ付きで送ってやる、との事。買ったんじゃないんだ。

 うちの中古の芝刈り機もとうとう三日前に動かなくなったし、丁度よかったかも、片付き次第ってのが気になるが。

 

 さて、手紙の確認もしたし、お風呂に入ろうかな。

 ちなみにうちのお風呂は裏庭に置かれているドラム缶を二個重ねたもの。

 中央の小さなドラム缶に水道水を流し、大きなドラム缶との間にガーさんの「ねっとう」で温めるのだ。考えたもんでしょ?

 

 良い感じに温まったお湯を頭から被って汚れを落とし、湯に浸かる。

 ラジオから流れる音楽番組「ザ・ドガーズライブ」に耳を傾けながら星空を見上げ、一日の疲れと汚れを湯で洗い流す……贅沢だ……。

 最高なのはポケモン達と一緒にガーデニングときのみ栽培をしている時だけどね。

 

 

―そこらではしゃぐポケモン達を見て、明日も頑張ろう、と心に決めるのだった。日課になっているけど。

 

 

 

 

 

 

『本日のリクエストはP.N庭弄りさんより、「DEADLY POISON」!ホミカさん、どうぞ!』

 

 え、ウソ、この間送った僕のペンネームじゃん!?

 

『おっけぇ!あんたの理性、ブッとばしてやるよぉ!!』

 

 

 ひやあぁぁぁぁホミカさぁぁぁぁん!!

 

 

 

 この後、興奮しすぎと湯あたりでのぼせちゃった。けど後悔はない

 

 

―続く―




 ちなみに作者はカミツレよりホミカ派で、ハヤシは大のホミカファン。
 いつか生ライブを見に行きたいですね。小説でもゲームでも。
 「DEADLY POISON(猛毒)」はホミカ作曲の小説内オリジナル設定、つまりは妄想です(コラ)

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