お相手は我らが先生ことイャンクック。けど可哀想なポジションです(コラ)
今回も短めです(汗)
木漏れ日が注がれ大地を照らし、そこらへんを這っていたクンチュウ達を照らす。
温かな日差しが差し込む未知の樹海は今日も―――波乱万丈であった。
クンチュウの甲殻が日差しを反射し輝いたのが切欠なのか、彼らを好物とするイャンクックが空から舞い降りてきた。
天敵がやって来たことでクンチュウは慌て、這って逃げるもの地中へ逃げるもの転がって逃げるものの三つに分かれてイャンクックから逃れようとする。
しかしイャンクックにとっては大した問題ではなく、手始めに地中へ潜ったものをスコップのような嘴で地面から掘り出し、それを飲み込む。
硬いクンチュウでも丸呑みにして消化するクック先生マジパネェ。柔らかい部分から消化しているんだろうけど。
数歩進んでは掘り起こしてクンチュウを丸呑みし、数歩進んではクンチュウを丸呑みにし……イャンクックはある物を発見する。
日差しを独り占めできるそこに、巨大な花が咲いていたのだ。大きさはリノプロスほどだが、花にしては巨大だろう。
強敵も居ないことで余裕があるイャンクックは花に興味が沸いたようで、トコトコと歩いて近づき、間近で観測する。
しきりに首を傾げ嘴で突こうとする中、モゾモゾと花が動き―――突如として黄色い煙が舞う。
臆病なイャンクックはこれに大層驚き、翼を広げ後方へと一気に飛んで距離を取った。
黄色い煙が晴れた後、花はより一層激しく動き出し、地中から何かが出てくる。
それは緑色をした蛙のようなモンスターだった。大きさはイャンクックとドッコイドッコイ。
とはいえ、テツカブラやザボアザギルといった両生種にしては足が短く、丸っこいイラスト風の蛙のような見た目をしている。
そのモンスターの背中には先ほどイャンクックを驚かした花が生えており、体と花が一体化していることが解るだろう。
このモンスターも、異世界から流転してきた「ポケットモンスター」の1体。
名はフシギバナ。この世界風の異名をつけるとすれば「
さて、地中から這い出たフシギバナは「ビックリしたやろ!」と怒っているイャンクックを睨みつけて思う―――相性滅茶苦茶悪いな、と。
このフシギバナは未知の樹海に入って日が浅いとはいえ、イャンクックぐらいなら何度か遭遇したことがある。ここではクック先生の遭遇率が高いのだ。
嘴は痛いわ炎は吐いてくるわと、草タイプであるフシギバナにとってイャンクックは相性が悪く、なるべく関わりたくない相手であった。
とはいえ、イャンクックは一度怒り出すと自身が弱るまで戦い続けるから、追い出すのはムリだろう。
怒って我武者羅に炎を撒き散らすイャンクックから距離を取りつつ、フシギバナは戦って追い返す事を決意。やり方次第ではイャンクックを返り討ちにできるから大丈夫だ。
そうと決めたフシギバナは、気合を表す為に咆哮を轟かせる。その声はどことなーくテツカブラに似ていた。
音に敏感なイャンクックはフシギバナの咆哮に怯むものの、フシギバナに攻撃を仕掛けんと突撃。先生としてフシギバナに自然界の厳しさを教えてやるようだ。
フシギバナ自体は動きが遅い為、敢えて動かない。代わりに背中に生えている花から蔓を伸ばし、イャンクックへと勢いよく向かっていく。
蔓はバタバタと歩くイャンクックの足を払い、転んだイャンクックは勢い余ってゴロゴロと転がっていく―――フシギバナの前で。
おかげでフシギバナとクック先生がゴッツンコ。もし硬いまたは刺々しい甲殻だったら柔らかなフシギバナにダメージが入っていただろう。重いから結局痛いが。
フシギバナを上から背で押し付けたクック先生は起き上がりたいとバタバタ足と翼を動かすが、逆にフシギバナの頭をバシバシ叩く結果に。
ポケモン風に言うなら「にどけり」・「つばさをうつ」の連続攻撃だろうか。効果は抜群だ、というより頭に当っているからフツーに急所で痛い。
大きさは似通っていても、育った環境が違う為にクック先生の方が圧倒的に重い。
しかしこのフシギバナにはタフでパワーがある。太い四肢に力を込め、よっこいしょと右半身を上げて背中のクック先生を落とし、四股を踏んでから逃げ出す。
ノッシノッシと逃げ出す際に、花から先ほどと同じ黄色い粉をばら撒く。「しびれごな」だ。
この世界のモンスターは状態異常への耐性が強いらしく、クック先生ですら「しびれごな」をマトモに受けても動けてしまう。
だが埋まって潜んでいいたフシギバナ近づいた時に放った「しびれごな」も合わさったことで、クック先生は仰向けに転がったまま麻痺状態に陥ることに成功。
ここで逃げ出せばいいのだろうが、しかしフシギバナは振り返って麻痺しているクック先生を睨みつける。
この世界のモンスター、特に鳥竜種は痛い目に合うとそのモンスターから逃げ続けることが多い。フシギバナが未知の樹海で学んだことだ。
なので叩く。フシギバナは木々から差し込む光を見上げた後、花にエネルギーを集中する。「ソーラービーム」を撃つつもりだ。
―ようやく麻痺から解き放たれ起き上がったクック先生が目の当たりにしたのは、視線一杯に満ち溢れる光だった。
「ソーラービーム」をマトモに受けたイャンクックは黒焦げになり、体を引きずってフシギバナから逃げ出そうとする。
殺しはしない。ポケモン特有の優しさもあるが、殺せば調子に乗ったランポス達が繁殖して自身に襲い掛かる事も理解しているから。
何よりも、イャンクックを殺そうものなら、別の大型モンスターの注意を彼に逸らすことが出来ないからだ。擦りつけともいう。
未知の樹海は様々なモンスターが生息している。その中には当然、フシギバナが戦っても敵わない危険な相手も大勢居る。
むしろ同じモンスターでも実力の差が大きく違う。あのイャンクックだって、先月戦った別のイャンクックよりも小さかった。
ポケモン達の世界でも同様で、同じポケモンでも経験の違いだけでも強さに大きな差を生じることがある。この世界のモンスターはそれ以上に解りづらい。
フシギバナがこの世界で学んだことは「油断大敵」。特にこの樹海では何時どんな時にどこで襲われるかなんて解っちゃもんじゃない。
なので基本的には地中に体を潜らせ、花となって擬態して過ごすことが多い。見つかりさえしなければ大抵は難を逃れられたし。
しかし戦えると解ったら戦って追い返すというあたり、このフシギバナが狡賢い一面を持っているということだろう。生に執着していることあるが……。
とはいえ、このフシギバナとて生命だ。生き残るためならあらゆる手段を用いて生き抜く覚悟がある。
各種状態異常による攻撃も有効だし、大概のモンスターに大ダメージを与えられる必殺技もある。先の「ソーラービーム」と―――「ハードプラント」だ。
フシギバナが生き抜こうと決めた理由。それは元の世界へ帰還し、己のトレーナーと再会すること。
フシギダネの頃から大事に育ててくれた少女の姿を忘れられないフシギバナは「今日も勝ったよ」と伝えるかのように空を見上げ、地中へと潜るのだった。
―完―
フジギバナは日々若手から熟練といった多くのクック先生から学んでいる立場であります。
今回の展開は温めでした。相手がクック先生だから調子に乗っちゃったんですよ、悪いフシギバナだ(コラ)
短いとはいえ無事に初代御三家を登場させることに成功しました。強さの比較とかはともかくとして(苦笑)
リザードンを始めとして様々なご指摘や感想を頂けましたが、ポケモンハン自体は概ね好評だと思っております。
まぁポケモンに比べモンスター側に圧倒的な差がありますが(苦笑)
とりあえず三体分書いてみたポケモンハン。私的には満足ですが、読者の皆様はどうなのか。
今後の読者の反応を、次回更新予定のポケライフ共々、見極めたいと思います。
読者様の感想・ご指摘・評価・辛口コメント・ご希望、なんでも良いのでお待ちしております。
ではでは!