ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

17 / 71
今回から視点が増えます。空気な主人公が特に空気になりますので(笑)

ユニークアクセス数1万、お気に入り件数150突破!ありがとうございます!


その15「VSマグマ団残党・前編」

―ぺっぽぺっぽぺっぽんぽっぺん

 

「ハヤシさん、これからマグマ団に突っ込むってのにそれは無いよ」

 

「だってこうでもしないとアーさんの眠気がだね」

 

 けどナタネちゃんの言うのも御尤も。念の為にと思って吹いているけど、この音を聞くとモチベーションが下がるでしょうなぁ。

 

 ナタネちゃんの提案でアサ婆ちゃんの仇を取ろうとマグマ団にぶっこむ事にした僕らは、残党が居るという煙突山に向かって飛んでいた。

 ポケモン達には一応了承を得ており(大抵は賛成してくれたがゴーさんだけ嫌がった。男の子がビビらないの)、戦闘準備と覚悟は完了済み。

 一番やる気があったナタネちゃんはトロピウスの背で真剣な表情を浮かべていたが、ビードロの音を聞くに連れて微妙な顔をしていくのだ。ゴメンよ。

 

 しかしそれも終わり。空から降って来る火山灰の量が増えたので視界が悪いが、とうとう煙突山が見えてきた。目を凝らしてよく見れば、煙突山の中腹で大規模なバトルが始まっている様子。

 ナタネちゃんもそれが見えたようで、トロピウスに囁いた後、グンと加速させる。アーさんはそれを見て続いて加速するが……。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

 そう言って僕らを止める者が下から現れ、アーさんとトロピウスは速度を緩め滞空する。

 何が飛んでやって来たかと思えばリザードンだった。その背にはフエンジム所属の証であるバッジを(平らな)胸に掲げた女性が乗っている。

 

「私はフエンジムの者よ。この先でマグマ団の残党とジムの人が争っているから、通すわけには行かないの」

 

 彼女に同感しているのかリザードンも「さっさと帰れ」と言っているかのように口から威嚇の炎を吹き出す。

 まぁ予想はしていた。何も知らない通りすがりが現れて巻き添えになる可能性だってあるのだから、ジムトレーナーの何人かを見張りに割り当てる必要性も出てくる。アスナさんも考えるようになったなぁ。

 ジムトレーナーの人の目つきは真剣そのもので、どんな理由でも通さないっていう意志が現れていた。かっこいい。

 

「アスナさんの助けになるかもしれないから、私達が来たの」

 

 そんな彼女に対し、ナタネちゃんが凛とした表情で言い放つ。ていうかナタネちゃん、私()って、僕も戦力の充てにしているつもり?

 僕そんなに強くは……ていうか、あれ?ナタネちゃんってアスナさんと会った事あったっけ?何か知っている風に聞こえるんだけど。

 

「……あなた、何者?」

 

 ナタネちゃんから放つ何かをジムトレーナーも察知したのか、ナタネちゃんに何者かを問いかける。

 彼女の問いかけにナタネちゃんは「ふっふっふ」と笑いを零しながら、懐に手を伸ばし何かを手探る。

 

「ついに正体を明かす時が来たようね……何を隠そう私こそ」

 

 

―チュドォーーン!!

 

 

 ナタネちゃんが何かを言っているようだけど、向こうで起こった爆発音で聞こえないや。

 

「今のは……アスナさんっ!!」

 

 ジムトレーナーは慌ててリザードンに指示を送り、爆発が起こった煙突山の中腹へ向けて飛び去っていく。良く見たら砂嵐まで起こっているじゃないの。

 えっと、とりあえずどうしようかナタネちゃんに……ちょっとナタネちゃん、なんで懐に手を忍ばせたまま固まっているの?

 

「……わ、私達も急いで追おう!」

 

 誤魔化すような言い方が怪しいけど、飛んでいくトロピウスを追いかけるようにしてアーさんが加速。さっきの爆発音で目が冴えたのかな?アーさんが凛々しく見えるよ。

 そういえばすれ違い様に見えたけど、ナタネちゃん悔しそうな顔をしていたような……何を隠しているつもりなんだろうか?

 

 

 

―――

 

 誰かやったか知らないけど、火山灰が降るこの煙突山で『すなあらし』を起こすなんてとんでもない事してくれたね!

 火山灰と砂が嵐となって吹き荒れ、視界が悪いのなんの……!事前に土産屋で買ったゴーグルが無かったら、目に灰と砂が入ってムスカっちゃう所だったよ!

 けどゴーグルは目を守る為にあるものであって、こんな視界の悪い景色を空から見るのは一苦労……あ、何か見えた。

 

「ナタネちゃん、アレ見えるー!?」

 

「見えてるー!かなりピンチだねー!」

 

 え?ピンチってことは戦闘が見えているの?ナタネちゃんって目ぇいいんだね!

 意識してよーっく見てみると、炎と岩が飛び交っているのがわかった。あそこで戦闘が起こっているのかな?

 

「先に行くね!コレ(・・)晴らしておくからハヤシさんは適当に援護をお願い!」

 

「ちょ、ナタネちゃん!?」

 

 まだバトルをしていないはずのトロピウスを戦地に向けて飛ばすナタネちゃん。あ、見えなくなっちゃった……。

 ど、どうしよ、適当に援護をって何をすれば……んー、『あのやり方』でいいかなぁ……一応店で軽くバトルして見せたことあるし、大丈夫だよね?

 

 その為にも、敵に見つからないよう飛ばないと。

 

 

 

―――

 

●アスナ視点

 

 いくら連中の方が多人数だからといって、ドガースを『じばく』させるなんてね……。

 けど下っ端のドガースを相手していたのがコータスでよかった。咄嗟に『てっぺき』でガードしたおかげで無事みたいね。

 

 けど不利には違い無いわね……悔しいけど!

 

「押せ、押せ!砂嵐がある内は俺達が有利だ!」

 

 ゴウゴウと吹き荒れる砂嵐の中、親玉の片割れが叫ぶ。奴のカバルドンを倒せば少しは砂嵐が収まるのに、今はそれが難しい。

 

 私達フエンジムのトレーナーが今日になってマグマ団残党を叩くことにしたのは、ここ最近の活動が色濃くなったからだが……今日は空から降る火山灰の量が多く、視界が悪くなった程。

 連中はこの日を狙っていたのか、万全の態勢で迎え撃ってきた。それが2人いる親玉の片方が使っているカバルドン。特性『すなおこし』で砂嵐状態にしてきたのだ。

 

 この砂嵐と火山灰が混ざることで視界が悪くなる他、連中はサボネアやサンドパンといった『すながくれ』の特性を持つポケモンで固め、『ミサイルばり』でチマチマ攻撃してくる。

 幸いなのはゴロツキみたいな下っ端のポケモンはバラバラなことか……いや、それでも数は圧倒的に相手が上だし、大抵のポケモンが『ぼうじんゴーグル』を身につけていているし……どこであんな道具を大量に用意したんだろうか?

 それに今は見えないけど、固まっている私達を囲んでいるかもしれない。なにせマグマ団残党の人数は15人に対し、こちら(フエンジム)側は私を含めて6人しかいない。

 巻き添えが無いようにと見張りに割り当てたのが裏目に出ちゃった……けど負けられない!煙突山の平和の為にも!

 

「『じしん』が来るぞー気をつけなさいよぉー!」

 

―また来るか!

 

「『まもる』!」

 

 マグカルゴとコータスに指示を送った後、大きな揺れが地面越しに身体を揺らしてくる。

 バランスを崩しそうになるが懸命に堪え、辺りを見渡す……他の皆やポケモンも対処できているみたいね。よかった。

 

「いまだ!『ミサイルばり』『ヘドロこうげき』、とにかく遠距離から撃てる技で一斉に攻撃しろ!」

 

「しま……っ!」

 

 既に囲まれていた!?まずい、一斉に攻撃されたら……!

 

 

 

「『リーフストーム』!!」

 

―ビュゴワッ!

 

 え!?何、なんなの!?

 

 一点に集中したかのような竜巻が私達の横を通り過ぎ、広範囲に渦巻いていた砂嵐がそこだけ晴れ、代わりに大量の葉が舞う。

 そのまま竜巻は葉が舞うトンネルを作り、その範囲内に居た敵ポケモンが軽い物から順に吹き飛ばされていき……カバルドンが見えた!

 

「そこね!『マジカルリーフ』よ!」

 

 砂が混ざり消えつつある葉っぱのトンネルを、今度は鋭い葉が高速で飛んでいく。

 捉えられたカバルドンに鋭い葉が数枚刺さり、弱点どころか急所を突かれたカバルドンは戦闘不能に陥る。

 

「『にほんばれ』!」

 

 カバルドンが倒れた直後、砂嵐が急激に衰えるどころか、暗雲のように覆っていたはずの火山灰が晴れて青空が見え、マグマ団残党の連中とその位置が明らかになる。

 晴れて取り乱したゴロツキみたいなのが私達を取り囲んでいて、その奥に正統派のマグマ団数名と親玉らしき2人組。全員マグマ団の戦闘服を着ているから詳細は解らないけど……。

 

「チクショウ、まさか草タイプの技を使ってきやがるとは……!」

 

 カバルドンをボールに戻す、頬に傷跡を宿したグラサンの男。

 

「フエンジムの連中だけじゃなかったなんてねぇ!」

 

 レンズのようなものを片目に突けているサイドンを静める、明らかに小さい身体なのに声と目が鋭い幼女。

 

 この2人が、マグマ団残党の親玉コンビだ。彼らから感じる気配が、ジムリーダーとしての経験がそう語らせ……いけない、ジムリーダーとして強気にでないと!

 

「ようやく見えたわね!あなた達が親玉?」

 

「そんなこたぁどうでもいいのよ……そんなことより」

 

 そんなこととはなんだそんなこととは!せっかく強気になって質問したのに……サイドンが岩を手に持った?

 

「そこのあんたは何者だい!?」

 

 幼女が空に向けて手を払い、それを合図にサイドンが手に持っていた岩を投げる。『うちおとす』か!

 思わず目で追ったら、私達の後方にはトロピウスが。飛んできた岩をすり抜け、そのまま私の止まりに着地する。

 トロピウスが着地点の傍らには息切れしたドダイトス、その背には2匹の草ポケモン……ロズレイドとチェリムだ。

 

「何者だ、と言われたら答えるのが基本よね」

 

 そういってトロピウスから飛び降りる女の人……あの人、まさか!?

 

「私の名はナタネ!ハク「シンオウのジムリーダー・ナタネじゃねぇか!」タイジ……」

 

 そう、この人はハクタイジムのナタネさ……なんでサングラスの男が知っているの?

 すると周りが、ドヨヨ、と騒ぎ出した。騒ぎ出したが……ゴロツキ達は逃げ腰になっているのに対し、親玉2人の周りにいる連中は大きく騒いではいない。この格差って何?

 

「本当かいカトリ?それがならこれって」

 

「ああ、ヤバい状況ってやつだぜ、ヒバナ。俺達の手持ちじゃ不利だ」

 

 会話を聞く限り、幼女がヒバナでサングラスの男がカトリという名前で、連中の手持ちは草ポケモンと相性が悪いんだろう。

 フエンジムは炎タイプが主流だから、そこを突く為に岩・地面タイプで固めていたわけか。もしかしたら水タイプも居るかもしれない。

 

「……アスナちゃん、あいつらブッ倒すの手伝ってもいいわよね?」

 

「え?あ、はい、久々に会ってなんですけどお願いしま……す……」

 

 ちょっと、なんでそんなに怒っているんですか?しばらく見ない内に何かあったんですか?穏やかで優しいこの人が怒るなんて、一体何が?

 なんか怖いけど、この人の強さはジムリーダーとしての先輩らしく私よりも上だ。相性補完もあって頼もしいことこの上ないし。

 

 そんなナタネさんの気迫もあってか、ゴロツキ集団はタジタジだ。

 

「お、おい(かしら)さんよぉ、別のジムリーダーが来るなんて聞いて」

 

「怯むんじゃねぇ、てめぇらぁーーー!」

 

 カトリのドスが利いた渇によりゴロツキ集団が恐怖で止まる。私達も一瞬だが竦み、ジムトレーナーもビクリと震えた程だ。

 

「今だよ、『ストーンエッジ』!」

 

 そんな僅かな硬直を狙ってか、ヒバナのサイドンが尖った岩を勢いよく投げた。

 一瞬の出来事に目を開いたが、尖った岩はどこへ……。

 

「チェ、チェリム!?」

 

 ナタネさんが悲鳴を上げる。そこには尖った岩が食い込んだチェリムが……急所に入ったわね。

 ナタネさんは倒れ込んだチェリムをボールに戻す。あのサイドン、かなりの射撃名人みたいね……!

 ジムリーダーのポケモンが1体倒れたのを見たからかゴロツキ達は戦闘意欲を取り戻し、親玉2人は懐から新たなモンスターボールを取り出した。

 

「てめぇら、あの若造ジムリーダーに一泡吹かせてやりてぇんだろ!男なら決めたことは最後までやり遂げやがれ!」

 

「それに『すなおこし』持ちのポケモンはまだ居るんだよ!気ぃ引き締めな!」

 

 カトリが渇を、ヒバナが打開案を入れることでゴロツキ達はたちまちやる気を取り戻していく。

 いくら調子の良い連中が大半とはいえ、数の劣勢には違い無い……私もナタネさんも、気を引き締めて……。

 

―コツン

 

「あだ!」

 

 あ、ヒバナの上から何かが落ちてきた。痛そうに頭を抱える姿は幼子にしか見えないのになぁ……。

 

「……『まきびし』が空から降ってきた、だぁ?」

 

 落ちてきた物を拾い上げたカトリがそう言った。けどそれが本当なら、なんで空から『まきびし』が……って。

 

 

 

「はいはーい、どんどん撒いてねー」

 

 

 

 そ、空からエアームドとロゼリアが『まきびし』と『どくびし』をバラ撒いてるー!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇリザードン、アスナさんの援護に行こうとしたはずなのに、なんでデコボコ山道に居るんでしたっけ?」

 

「(―_―;)(なんでですかねぇ)」

 

 

 

―続く―




―どうでもいいキャラ設定―

マグマ団残党・カトリとヒバナ。カトリがヤ○ザな組長、ヒバナが合法ロリ姐御です。
名前の由来は「線香」とついたものです。ホムラ・カガリに対ししょぼそうな火力ですね、可哀想に(ぉぃ)

エリートトレーナーのカレン(オリ):手持ちポケモンはリザードン。
新人ジムトレーナー。実力もあり礼儀正しいが、ポケモン共々、残念なまでの方向音痴。

アスナはナタネちゃんと同い年だけどジムリーダー暦はナタネちゃんの方が上、という設定。

後編へ続く!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。