ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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ほぼ説明回みたいなもんですね。
プロットが纏まらなくてグダった時はパっと書いてサっと投稿するに限ります(笑)


その11「きのみ屋さんとナタネ・後編」

「ナッゾー、ナッゾー♪」

 

「はいはい、そっちにも水まくよー」

 

 雲が転々と浮かんでいる青空からの光は適度なもので、草ポケモンのナゾノクサ達はそれに合わせ適度な水分を欲してくる。

 そんな奴らにホエルコ如雨露で水をやると、プルルッと震えて喜ぶのだ。いずれクサイハナになって庭から出ていくとはいえ、やはり愛着が湧く。

 

 はい、今日は日曜なのでお休みだけど、いつも通り畑仕事をしています。ナタネちゃんに色々教えると言ったな?あれは嘘だ。

 というのも一昨日ドクケイルことクケちゃんによって畑を荒らされた分だけ直した、新しく植えたきのみ畑の世話をしなきゃならないからだ。何せ半分以上がボロボロだったからねぇ……グスン。

 今日になって木の実の芽が出たので、しっかり水やりをしておかないと。マメに世話すればするほど、木の実の質は良くなり、実が生る数も増えるからね。

 

 そんな風にきのみ畑の世話をしていたんだけど……。

 

「ハヤシさーん、こっち側の木の実は収穫し終えたよー!」

 

 一番端のきのみ畑からナタネちゃんの声が。振り向いてみれば、適度な量の木の実が入った籠を脇に抱えている。

 

「ありがとー!さっき言った所にまとめておいてー!」

 

「わかったー」

 

 そう言ってナタネちゃんは籠を持って店へと向かった。

 庭でゆっくりしていけばいいと言ったんだけど、せっかくだからと手伝ってもらっているのだ。助かるわー。

 さて、この辺の水遣りはオッケーかな。ローちゃん、それにロズレイド、水遣りを手伝ってくれてありがとうね。

 

 

 

―――

 

 畑仕事が終わった後、ナタネちゃんが採ってくれた木の実を見る。オボンとオレンの畑が無事なのは不幸中の幸いだったよ。

 それにしても、ナタネちゃんが選んで採った木の実はどれもこれも……。

 

「おおー、身が詰まっていそうな良い木の実だね」

 

 ゴーさんとドダイトスがヨダレを垂らして眺めているほどだよ。ポケモンが一目で見て涎を垂らすということは、良い木の実である証拠だ。

 

「私もトレーナーとして木の実には世話になっているから、良い木の実の区別ぐらいはできるよ」

 

 自信ありげにブイサインを向けるナタネちゃん。

 木の実は旅のトレーナーにとって傷薬の次にお世話になる道具の一つだ。様々な効能があるのはもちろん、野生の物なら実質タダで採れる。

 それに苗などで手軽に育てることもできるから、トレーナーに限らず家政婦やお子さんなども木の実栽培をやっているほどだと聞く。

 目利きの良いナタネちゃんのことだから、きっと彼女自身も自宅で木の実を栽培しているのかも。

 

「それでさ、この木の実はどうするの?今日はお店はお休みなんでしょ?」

 

 今日は店の定休日だと予め聞いていたナタネちゃんは首を傾げて僕を見上げてくる。

 そんな彼女に僕はニヤリと笑みを浮かべる。何に使うかって?それはもちろん!

 

「今日のお昼にするためさ!」

 

 今日のお昼はオボンブレッドにオレンパンのパン尽くしだーい。

 ……こら、勝手に木の実をつまみ食いしようとしないのゴーさ……ドダイトス、君もかい。

 

 

 

―――

 

 モーモーミルクにモモンの実のジャム、そして焼きたてのオボンブレットとオレンパン。ちょっと作りすぎたかな。

 けどナタネちゃんは気に入ってくれたみたいでパクパク食べているよ。やったねハヤシ!残りは明日の半額コーナーに出そ。

 

 で、せっかくなのでお昼を食べながら今後のナタネちゃんのスケジュールを相談してみた。

 一応彼女は住み込みアルバイターでもあるので、アルバイトの時間と旅する時間をしっかいり分けておかないとね。

 幸いトロピウスという移動手段もある為、旅はかなり楽になるだろう。後、簡単な地図しか無かったので詳しい地図も渡しておいた。不安2割増し。

 

 その結果、お店仕事は午前中のみにして、お昼を食べた後は夕飯頃までホウエンを巡るという事になった。後は時間が余れば畑の整理などを自主的にしてくれるらしい。ありがたい。

 お店のお手伝いはもちろんのこと、旅の道中に珍しい木の実があったら採ってきてもらうようお願いしてある。なにせ今のうちの畑では心もとないから……。

 

 

―――

 

 お昼ご飯を食べた後はナタネちゃんが暮らす部屋を紹介しよう。

 

 うちの家屋は縦長で、1階には二分の一を占める店内・厨房・トイレに洗濯機、2階は1階へ続く階段と廊下・小部屋が2つと物置がある。

 ナタネちゃんが住むのは廊下から見て真ん中に位置している部屋。僕の部屋が手前、奥が物置となっている。

 細長い部屋の両端にベッドと棚が置かれているだけのシンプルかつ狭い部屋だが、日当たりはいいので問題ないだろう。僕の部屋も質素だが住み心地は充分だと思っているし。

 旅するには丁度良いとナタネちゃんは喜び、大きなリュックに沢山入れていた生活必需品を次々に置いていく。身軽になって旅もしやすくなるだろうか。

 

「そういえばさ、この家ってお風呂はどうしてんの?」

 

 同じようなケープとハーフズボン数着を棚にしまいながらナタネちゃんが問いかけてきた。

 

「それは夜になったら教えてあげるよ」

 

 茶目っ気にウィンクをしてみるが、ナタネちゃんは「そう?」といって興味なさげに視線を戻した。残念。

 せっかくだ。ナタネちゃんもドラム缶風呂を堪能してもらおう。物置からシャワースクリーンを出しておかないと。

 

 ところでナタネちゃん、まさか服はそれだけなわけがないよね?……あ、それだけですか。そっか、お気に入りなんだね。

 ミサトみたいに服が何十着もないタイプではないみたいだけど、もう少しお洒落してもいいんじゃないかな……。

 

 

 

―――

 

 さて、部屋の紹介も出来たし、ナタネちゃんの(余分な)荷物も置いた。膨れたお腹も落ち着いたということで……。

 

「では行ってきまーす」

 

「夕飯までには戻ってきてねー」

 

 トロピウスに乗って飛んでいくナタネちゃんに向けて手を振ってお見送り。

 最初はサイクリングロードがある110番道路でコノハナを捕まえるんだーと活きこんでいたが、何故にコノハナ?庭にいるタネボーじゃあかんの?

 まぁナタネちゃんが凄く良い顔でワクワクしていたので良いとしよ。女の子は笑顔が一番!

 

 さて、僕は夕飯までのんびりと過ごそっと。

 

 

 

―なんか忘れているような、そうでないような……?

 

 

 

――

 

 時間が経つのは早いもので、もう夜になりました。何があったかって?クケちゃんに遊ばれたんだよチクショウ。

 ナタネちゃんは草まみれで帰ってきて、夕飯の木の実スパを美味しく平らげた。ゲットしたかを聞いたら「内緒」と茶目っ気にウィンクされた。キュン。

 そうそう、ナタネちゃんは夕飯後のドラム缶風呂を気に入ってくれました。あ、ちなみに水着を着ています。

 

「湯加減はいかがー?」

 

「ばっちりー。最初は面倒な沸かし方だなーって思ったけど、案外いけるね」

 

 そういってナタネちゃんは気持ち良さそうに溜息を零す。シャワースクリーンで遮っているから詳細は解らないけど。

 僕はデッキチェアに腰掛けて順番待ち。今日のラジオはカミツレ特集なので耳に流す程度にしておく。

 

「そういえばナタネちゃん、ホウエンはどうだい?」

 

「緑が栄える良い場所だと思うけど……旅立ってまだ二日目だから解らないかな」

 

 そりゃそうだ、と僕は呟いて小さく笑った。

 

「まぁゆっくり周って行ってよ。ホウエンの緑はきっと気に入ってくれるはずだから」

 

 ホウエン以外はジョウト地方ぐらいしか行ったことがないから解らないけど、長年旅をしていたのだから言える。

 ヒマワキシティとかトウカの森とか……あ、サン・トウカもいいかな?とにかくオススメできる場所がいっぱいあって悩む。

 

「うん。楽しみにしているよ」

 

 上機嫌なナタネちゃんの声。楽しみにしてくれるなら、ホウエン生まれの僕としては嬉しい限りだ。

 

 

 

―少しの間だけど、彼女の出会いと旅路に幸あらんことを……なーんてな。

 

 

 

 

 

 

(どうやらハヤシさんは私がハクタイジムのジムリーダーであることを知らないみたいね。

 せっかくだしここは黙っていようかしら?お忍びで旅行に出かけたのは事実なんだし。もしバレたとしてもその時は

 

 「草ポケモン好きな只のトレーナーとは仮の姿。その正体は、シンオウ地方ハクタイジムのジムリーダーなのよ!」

 

 ……と言ってフォレストバッジを掲げれば

 

 「な、なんだってー!」

 

 ……って言って驚いてくれるかも。フフフ♪)

 

「なにか言ったー?」

 

「いいえなんでもー」

 

 

 気のせいならいっか。

 

 

―続く―




次回から本気出せる!(なんのだよ)

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