大変長らくお待たせしまして、申し訳もありません。
では、八話をお楽しみ下さいね。
期待に胸膨らませた表情で自分を見つめているスバルに、ティアナは自身の秘密を語る前にとあることを訊ねていた。
「あたしの全てをあんたに喋る前にスバルに言っておく事があるから聴いてちょうだい」
ティアナの言葉に対してスバルは
「何の事か解らないけど、ティアが言うことならすごく重要なんだろうなぁ~」
緊張感の欠片もないスバルの言葉にティアナはというと。
「相変わらず緊張感の欠片も無いわねぇ……スバルは……まぁ、今はいいか、じゃあ今からあたしの知っているあんたを含めたナカジマ家のことや時空管理局の事を話していくからね。疑問を思ったら、すぐその時に質問しなさいよね……なるべく答える様にするけど……解らない事も有るから、それは予め了解しておいてよね。じゃあ言い始めるわよ! 」
「え~と、先ずはスバルのお父さんの事から話していくわね。名前は“ゲンヤ・ナカジマ”で、確か歳は………忘れたからパスで」
そうティアナが語るとズサーとスバルが横へズッコケながら
「案外ティアも抜けてるんだねぇ。お父さんの歳は○○歳だよ」
と、すこし笑ってゲンヤの年齢を話す。
「教えてくれるのは有り難いんだけど……抜けてるは一言よけいよ、あほスバル! 」
少し眉を吊り上げてスバルに余計なことを言うなとティアは注意する。
「あーまたあほスバルって言ったあぁ! ティアのイケズ~」
そう言って可愛く舌をだして抗議するしぐさのスバルには内心で萌え要素感じていたティアナだった。
(なんでこのあたしがスバル見て、ドキドキ感じるのよ……おかしいは、あたしが好きなのは才にいだけのハズなのに……これは何かの間違いよ。そうそう、あほスバルの事なんて関係ないんだからね! )
ティアナが心の中でいま感じている想いを打ち消し否定しているとスバルから
「ティア。考え中のところ悪いんだけどね……さっきの続き聞かせて欲しいんだけど」
スバルに言われ、ハッとなって正気に戻ったティアナは
「あ、ちょっと考え事していて、悪かったわねえ……じゃあゲンヤさんのことに関して話していくからね」
ティアナはスバルの指摘をうけると両腕を上に伸ばして身体をシャキッとすると中断していた話を語りだしていく。
「え~と、あたしの主観と言うか憶測で語るから間違いが有ったらすぐ、指摘して頂戴。ゲンヤさんは確かいま現在時空管理局地上本部。通称陸の第108部隊の隊長さんで階級は確か3佐だったはずと思うけど? ご先祖はこの第97管理外世界地球のここ日本国出身の次元漂流者で亡くなった奥さんも管理局地上本部の同僚で最終階級は准尉だったわ。それからスバルのお姉さんはギンガ・ナカジマで今年の春に陸士訓練学校を卒業して、陸のどこかの部隊へ配属されてるわよね? いままでの話に何か質問はない、スバル」
「ねぇ、どうしてティアはそんなにわたし達。家族のこと詳しいの? 」
率直なスバルの言葉にティアナは、まぁ、この辺で良いかといった顔つきで自身についての核心的な話を紡ぎだす。
「後で言おうと思っていたんだけど……あんたが我慢でき無さそうだから、いま話すわ………いま此処に存在しているあたしは平賀 ティアナで父平賀 海人と母平賀 カリーヌとの間に生まれた娘で2歳上で最愛の兄平賀 才人を狂おしいくらい愛してる。スバルたちが第97管理外世界と呼ぶ地球は日本国の国民でママから受け継ぐ系統魔法のメイジでクラスは風のスクウェアに水のトライアングルと土のラインなの。それからミッドチルダー式魔法のランクは測定した事がないから、正確じゃないけどたぶん、AAA+か、もしかしたら-Sランクくらいの魔力は有るかもしれないわねぇ………すこし喉が渇いたからちょっと休憩するわ。スバルも喉渇いて水分ほしいでしょうから、実地を兼ねてあたしの系統魔法がどういったモノか今すぐ見せてあげるわ」
ここまでイッキに語ったティアナは、喉の渇きついでに今から系統魔法を披露すると述べていた。
ティアナがスカートのポケットから銀色シャープペンの杖を取りだし地面に向けて呪文を唱え終えると大樹の根元辺りから陽射しに当たってキラキラと白銀に輝く無色透明の程よい大きさのグラスが2つ大地上に出現していた。
「ウソだぁ~何このデタラメな魔法。ねぇねぇティア、これどんな術式組んだらできるの? 教えて、教えて! 」
「ちょっと、落ちつきなさいよ、あほスバル! 系統魔法に術式なんか無いから教えられる訳ないわよ! ………それにこの魔法使えるの……メイジの血筋ひいてる者だけだから、あんたは最初から絶対無理なの。それより、これからが本番なんだから黙ってみてなさい」
「ぅうう……ティアのイジワル……いじめっ子……」
ティアナのキツい叱責口調にスバルは小声でティアナの悪口を言っていたが、表面上は聞き流している態度で水魔法を発動して空気中から純水な水分だけを集めそれを左手に持っている2つのガラス製のグラスの中に注ぎこむ様にして水が溢れない程度に満たしていく。
系統魔法を使用して空気中から水分を抜き出す作業をしていたティアナだったが、系統魔法を使用中ながらも一方ではミッドチルダー式魔法を起動して念話を(これはマルチタスクの変形でティアナは簡単な魔法くらいなら系統魔法とミッド式魔法をほぼ同時発動することが最近できるようになっていた)スバルへ飛ばし自身に対する悪態をキツく注意……いや、猛威を振るうほどの叱責をしていた。
<あほスバル! 誰が意地悪でいじめっ子なのよ! いま見せてる魔法はいったい誰のためにしてると思ってるのよ……この考えなしのあほバカスバル! >
<そんなに怒らないでよ。ティア……ごめんね……もう言わないから赦してね。お願いだよう>
念話でスバルはティアナに謝ると
<ハァ~もう良いわ。赦してあげるから、次からは気をつけなさい>
ティアナは脱力感いっぱいな念話をスバルに返していた。
「出来たから、これ飲みなさい。きっと美味しいハズだから? 」
そう言ってティアナは系統魔法を用いて空気中から作り出した水を満たしたグラスをスバルに手渡す。
「……何これ……スゴく美味しいよう。ティア。空気から作ったと思えないほどだね……だから、もう一杯おかわり! 」
スバルは飲み干したグラスをティアナにつきだすと水のおかわりを要求した。
「あんたねぇ、あたしはお水製造機械じゃないのよ……もう、仕方ないわね、これで最後だから」
文句を言いながらも、前世から割とスバルに甘いティアナは系統魔法でもう一度空気中から水を作製して水を満たしたグラスを再び渡す。
「あぁ~美味しかった。ありがとう、ティア」
2杯めの水を美味しく飲み干したスバルはティアナにお礼を言うとグラスを返していた。
受け取ったグラスと自分の分のグラスに呪文を唱え元の土塊にかえすとティアナはスバルに
「さっきあたしが語ったゲンヤさんについての事柄、あれで合っていた? 」
ティアナがそう言ってゲンヤに関して本当に正しいのか、スバルに訊ねた。
「………だいたい合ってるけど……いまの父さん。陸の第108部隊の隊長じゃないよ……1ヶ月前に地上本部のお偉いさんの……何て言ったかなぁ……レジ……アスキン、ゲイ中将だったと思う「それ、間違ってるから。レジアス・ゲイズ中将だから、間違えるにしても程が有るわよ! 」あ、そうそう、そのレジアス・ゲイズ中将になんかヘマやらかしたからと言われた父さんに2週間前に辞令書がきて、前の部隊から左遷されて来たのがここ第97管理外世界の日本は海鳴市に新設されたばかりの地上本部特別駐在所の所長として赴任したのだったかな」
「えっ………あの優秀で用心深くて慎重居士のゲンヤさんが左遷される何て……余程の事がなきゃこんな人事異動は有り得ないわよ……それで、スバルあんたは本来ならなのはさんに憧れて今頃は第4陸士訓練学校に入学してるハズよねぇ? それが何でゲンヤさんと一緒に海鳴市に来てるのよ? 」
ティアナが疑問に思ったことをスバルに直接訊ねると…………。
「……本当ならね……ティアの言うとおり。今頃は陸士訓練学校に通ってるハズ何だけど……何か上から圧力が有ってわたしの入学が取り消しになったんだ……だから一人で赴任する父さんと一緒にこっちへ来たの……父さんの任期は約3年だからね……その間ティアと一緒にこの学校で勉強学ぶからよろしくね、ティア」
自分が知っていた前世での記憶になかった展開にすこし驚きながらも、マルチタスクでスバルを元気づける言葉を発しながら並行処理で疑問を感じていた事を考えていた最中である。
「何落ち込んでるのよ! 元気だしなさい。スバルがそんな気落ちしていてもなんにもならないわよ……あんたは胸張って堂々としてなさいよ。そうした方がゲンヤさんもうれしいハズよ、だからシャキッとしなさいスバル! 」
(ゲンヤさんがクラナガンから地球へ左遷された事といい、スバルが第4陸士訓練学校に入れなかった事はあたしの存在が関係しているのかなぁ……こう言うの確かハダフライエフェクションと呼んでいたわね……意味は確かニューヨークで蝶が羽ばたいたらその裏側のどこかの場所じゃあものすごいハリケーンが発生してとんでもない災害が生まれるって話よね? あんまり意味は解らないけどね。要はあたしがミッドチルダーに生まれ落ちなかったからこの世界が前世とかけ離れていくって事が起きているのが、いまの状況なのかしら? )
「なんか気づかってくれて、ありがとうねえ。わたし、頑張るから………何故ティアはそこまで時空管理局の事やわたし達家族に対してそんなに詳しいの……訳をおしえてくれる。ティア」
「………ねぇ、スバル。あんたは輪廻転生て言葉知ってる? 」
ティアナの言葉にスバルはキョトンとしながらも
「それって、生まれ変わりの事かなぁ? 」
すこし不思議そうな表情で応えるスバル。
「ありていに言うとその通り、生まれ変わりを示す言葉なんだけどね……ぶっちゃけるとあたし……前世はこの世界と殆んどおんなじ……世間的に並行世界のミッドチルダーは西部エルセアに新暦59年生まれのティアナ・ランスターって呼ばれていた存在で容姿はいまのあたしと全く同じ姿の超絶美少女だったと言ったら、あんたは信じられるかしらスバル」
「……西部エルセア生まれって、わたしとおなじ地方だね……でも、並行世界て言われてもピンとこないよ。もっと詳しく説明してよ、ティア」
急に並行世界(パラレルワールド)と言われてもすぐに理解できないから、もっと詳しく話してほしいと要請を述べるスバルであった。
「並行世界って言うのは最近まではほぼ同じ歴史というか、出来事がとあるとこまでは一緒の時間軸で流れていて、ある一点から分岐していくのよ。例えるなら川がとある場所から2つに別れていくみたいにね」
「じゃあ、中にはお母さんが生きてる世界も有るのかなぁ? 」
スバルがそう呟く姿は表面上は淡々と言った感じだったが、ティアナにとって、親友のその言葉には深くていろいろな意味があると心の中で思考していた。
(……やっぱり、スバルはまだクイントさんが亡くなった事に納得してなかったのね……そんなの当たり前よね。まだ小さかった子供が急にお母さんが亡くなったからと言われて、はいそうですかと思うはずなんか絶対できないわ……前世のあたしがそうだったから………)
ティアナは自身が前世で兄ティーダ・ランスターを亡くした時の心情を思い出して、スバルの母クイントに対する想いの深さをしみじみと感じていた。
「そうねぇ、いろいろな並行世界があるはずだから、クイントさんが今も生きてる世界もあればスバルがクールで超論理的思考のおバカじゃない世界も確率は低いけど、きっと何処かにあるハズよね? 」
「ちょっとそれ、酷いよティア! わたしがクールビューティーで素敵な天才美少女の世界は絶対あるよう! 」
「ごめん、ごめん……うん、あるある」
ティアナのスバルが品行方正で頭の良い性格の世界があるんじゃないかと、半分揶揄する言葉にそんな事はない、絶対あると言い切って抗議する前世からの親友に対してあるあると余計に火に油を注ぐティアナに
「もう、ティアったら絶対信じてないよね。その言いぐさは……」
ティアナの自分に対する態度に頬を膨らませ怒る姿もすごく萌えを感じさせて、可愛い。
「うふふふ……そんなに拗ねないでよ、スバル。話が横道にそれちゃったから元に戻すけど………あたしがスバルの事詳しいのは前世で第4陸士訓練学校の同期生で寮が同室だったからなのよ。それに最初はあんたをやたら馴れ馴れしく話し掛けてくる鬱陶しいヤツと思って煙たがっていた存在でしかなかったの……その当時のあたしにしてみればねぇ」
前世での出逢った当初のスバルと自分の人間関係について、当時を懐かしみながら染々と語るティアナである。
「そっか、わたしとティアって、どんな並行世界でも絶対仲良しになる運命なんだねぇ」
喜色満面の笑みをうかべて嬉しさをあらわすスバルに対してティアナがとった行動は……。
「バカスバル! あたしに百合要素は全然ないんだから、嬉しい顔して頬染めるなぁ! あたしは才にい一筋なんだから」
「才にいって誰なの? ティア」
才人の事を訊ねるスバルにティアナが返事しようとした時、携帯電話から独特なメロディーの着信音がながれて、本人が携帯電話とるとかけてきた相手は母親のカリーヌであり、内容はクラスでの用を終えたら女学院の正門前で待っているから一緒に帰ろうという事であった。
携帯電話を切るとティアナは
「あっ、あたしクラスに行くのすっかり忘れていたわ。じゃあ、スバルまた明日あさ、この場所で落ち合いましょう。あんたも早く自分のクラスへ向かったほうが良いわよ」
とそう言って、この場を立ち去ろうとするティアナを呼び止めるスバル。
「ちょっと待って、ティア! ひょっとしてティアのクラスは1年○○組じゃないのかなぁ」
スバルの言葉にティアナは
「スバルはあたしと同じクラスだったのね……じゃあ一緒に行くわよ」
「うん、一緒に行こう。ティア」
そう言って、スバルは返事するとティアナの手を取ると引っ張るようにして目的地へ仲良くむかって行くふたりであった。
先ほどまでいた場所で邂逅したふたりの美少女魔導士が自分たちのクラスへ入室すると、遅れてきた二人に対してクラス担任とおぼしき30代後半くらいの年齢の美人だけど嫁ぎ遅れらしき雰囲気を身体全体からにじみ出ていた女性教師からキツい叱責の言葉が矢継ぎ早に吐き出されて、根がまじめで素直なスバルは
「ごめんなさい」「ごめんなさい」
と何度も担任教師に向けて頭を下げながら謝っていたが、ティアナのほうは何で謝らなきゃいけないのという表情でちょっと遅れてきたくらいで自分とスバルを激しく叱責してくると思えた女教師を睨み付けるように見つめていた。
ティアナの自分に対するふてぶてしい態度にキレた担任女性教師は
「平賀 ティアナとスバル・ナカジマの二人は後からすぐに職員室まで来なさい! 話が有ります! では今日はこれまで、解散します」
と、そう告げた担任は扉を開けて足早に教室から去っていった。
「じゃあ、スバル。ママが待ってる正門へ行きましょう。あんたを紹介したいから」
「……え、担任の先生がわたしとティアのふたり一緒に職員室へ来るようにって言ってたから、行かないと」
カリーヌが待っている正門へ行こうというティアナに、スバルは担任に職員室へ呼び出されているから向かわないとならないと述べるのだったが………。
「ハァ~何言ってるのよ、スバル。すこし遅れてきたくらいでヒスおこすあんな担任の言葉に従う必要なんて、これぽっちも無いわよ。だから早くママの処へ行くわよ」
そうティアナが喋ると戸惑っていたスバルの左腕を強引に掴むと教室を出ていった。
「お待たせ、ママ」
ティアナがスバルと一緒に正門前へ到着して、ずっと娘が来るのを待っていたカリーヌにあいさつする。
「その子はティアの友だちかしら? 」
「紹介するわね。ママ。この子は今日友達になった、スバルよ」
ティアナはスバルを今日新しくできた友人として、自分の母親に紹介する。
「は、初めまして……スバル・ナカジマと言います」
そうティアナの母親カリーヌに出逢ったスバルは相手の平賀 カリーヌに近づいてみて溢れんばかりの強大な魔力量を感じたからなのか、少し萎縮したと思えるくらい、緊張していた。
「スバル、緊張しなくても良いわよ。初対面の他人は大概ママが発する気にあてられて驚いて硬直するから、身体全体の力ぬいてリッラクスするのが一番良いのよ」
「娘のいう通り。気持ちを楽にしてくださると、私もうれしいわ。どうか、これからもこの子と仲良くして下さいね。スバルさん」
微笑みをうかべ、娘ティアナの事をよろしく頼みますとカリーヌはスバルへ丁寧な言葉で語る。
「わたしに気を使ってくれて、ありがとうございます。お母様。ティアとは出きれば一生友だちとして、付き合っていきたいと思っていますから」
とスバルは朗らかな態度と爽やかな表情でカリーヌにあいさつしていた。
「ふん! あたしは別にスバルなんて何とも思ってないわ。それよりもママ、早くドアのロック解除してよ。あたしとスバルが車に乗れないじゃないの」
スバルの自分を想う気持ちを知って、少し照れたティアナがそれを誤魔化すような態度で早く車内へ乗り込ませてほしいと母に訴える。
「はい、はい。解ったわ。ティア。スバルさんも後でお家へ送りますから、今から我が家へ入らしてくださいな」
<ねぇ、ティア。わたしも車に乗せてくれるの? >
<当たり前でしょう。ママがいった通り。スバルを家に招待するから、早く乗りなさいよね>
「そう言う事だから、いまから家へ行くから黙って乗る」
ティアナがスバルと念話で話をしながらもマルチタスクで並立処理中に前世からの相方に言葉でも色々掛け声をして、家へ招待する。
「今日初めて逢ったばかりで、お家に招待してくれて良いの? 」
「あたしが良いて言ってるんだから、早くのれ! 」
戸惑ってなかなか乗らなかったすばるを後ろから強引に後部座席へ押し込むと自分も素早く座席に座ると
「乗ったから早く車だしてママ」
そうティアナが呟くと
「今すぐ出るわ」
と言うとカリーヌは派手で真っ赤な頭文字がBで始まるドイツの高級外車をすべらせるように発進して目的地の平賀家に向かっていく。
「……すてきなお家だねえ、ティア」
土地代がすごく高い都内にある邸宅にしては広々とした庭の端にあった倉庫兼用二階建て駐車場へ車を納しに行く前、カリーヌが程よい辺りへ娘とその友だち二人を降ろすと、駐車場に向かうと。
うぁ~というような表情で平賀家屋敷褒めるスバルに
「ありがと。でも、パパの最初の結婚式の時、このお家建ててくれたのが9年前に亡くなった。大好きだったお祖父ちゃんなのよ」
ティアナはいまは亡き好きであった祖父が建てた家のことを心底からうれしいと思えるほどの笑顔で13年ぶりに再会した親友に紹介するように話す。
「……あれ? ティアのお父さんの最初の結婚式祝いにこのお家をお爺ちゃんがプレゼントしてくれたんだよね……だったら、おかしくない? 最初ってことはティアのお父さんがカリーヌさんと結婚したのがまるで二回目みたいに感じるよ」
スバルの思いもよらない、ツッコミというか指摘に対してティアナはすこし困ったような顔になりながらも、その理由を静に語りだしていく。
実は自分は父親、平賀 海人が最初の奥さんで異兄平賀 才人のお母さんを亡くして、心が荒くれていた時にとある特殊な事情で助けたティアナ母平賀 カリーヌが記憶喪失といったハンデを乗り越えるくらいの心の邂逅を経て親友と牧師含めて4人だけの小さな結婚式を教会で挙げて、両親が結ばれその9ヵ月後に予定よりひと月はやく未熟児として自分がこの世に生まれでた事を一気に話終えたティアナに、早速さっきから気になってしょうがなかった質問するスバル。
「はいはい、先生質問。カリーヌさんってスゴい素敵なめぐりあいと恋愛で旦那さまと幸せになったのは解ったけど……どう考えてもティアはハネムーンベビーなんだよね? 」
「……このあほバカスバル! 今の話、絶対ママの前でしないでよ! ああ見えてママ純情なところ有るからパパやあたしに関する揶揄に敏感だから、からかったりしたらオソロシイことになるから、絶対やめてよ! 」
ティアナの怖いくらい真剣な瞳で語る言葉にスバルは
「うん、解った。ティアのいう通り。絶対カリーヌさんの前でさっきのセリフ言わない」
と、そう呟く。
「ありがとう。スバル………じゃあ続き話すわね」
ティアナはスバルに一時中断していた先ほどの話を再開する。
「あたしが何の因果か知らないけど、前世の記憶と知識思い出したの……大好きだったお祖父ちゃん亡くして四十九日の供養に先祖代々のお墓参りした日の事だったわ」
ティアナは懐かしむような遠くを見る眼をして語っていった。
ティアナ曰く、祖父のお墓参りした時から前世の事を思い出して、先ずは母から受け継いだ系統魔法学んで時間空いた時に前世の知識フル可動してなんとか初歩のミッドチルダー式魔法を少しずつ再現してきた事実のべたり、または 前世での兄“ティーダ・ランスター”に対しての想いを現世の異兄平賀 才人に最初は想い重ねてみていたのに、4歳秋のとある日の何処かの河川敷で母に黙ってミッド式魔法の練習中に極悪ロリコンキモオタ男に襲われ、危ういところを母に助けられ泣いていたのを異兄才人に心配され慰められた時に、真実の愛に目覚めそれ以来兄才人への思慕を抱え今日まで生きてきた事を話す。
流石に1年くらい前から兄をめぐるライバル高凪 春奈に対しては、どうやって存在を抹殺しようかと思い悩んでいた事を白状した時はスバルに呆れ返られていた。
「だめじゃ無いの、ティア。お客様のスバルさんを何時まで玄関前で待たせるつもりですか」
ティアナは突然後方からカリーヌに声かけられて、一瞬的に身体を硬直させていたけども、すぐに回復すると電子キーで扉を開けスバルを家に招き入れる。
「いまから昼食の用意しますから、出来上がるまでスバルさんをティアの部屋へ案内してあげてくれるかしら」
「了解したわ。ママ。じゃあ、あたしの寝室に行くわよ。スバル」
「ティアの部屋……いくの今から楽しみ」
「おだてたって、精々でるの……紅茶かコーヒくらいよ」
「そんなぁ~とっても、お腹すいてるのに……ティアのバカ、甲斐性なし」
と、そう言って拗ねるように抗議してくるスバルにティアナは
「解ったから、それ以上は言わなくて良いわ……ただし、これ以上あたしを怒らせるといまママが作ってるお昼御飯。スバルに食べさせないわよ」
「うん。言わないよ」
自信満々に言い切るティアナである。
広い廊下をスバルと一緒に歩いて目的場所へつくと自室がある3階へ上がるために、最大積載重量300キロぐらいの家庭用エレベータが在る場所へつくと開閉ボタン押すと同時に中へ
乗り込むと3階へのボタン押すとエレベータが上へあがっていき、扉が開くと各部屋に通じる廊下を歩いていくとそこがティアナの部屋であった。
「さぁ、入って」
ティアナに促されスバルが部屋の中に足を踏入れるとそこは年ごろの女の子らしさを誇る可愛いヌイグルミや洒落たデザインの色とりどりの各種アクセサリーが机やボードなどに置かれていた。
「これ、ひょっとしてサファイアなの? 」
スバルがあるボード上にガラスケースに容れられ飾られていた。約150カラットはあると思える蒼くキラキラと光り輝く宝石、サファイアを見つけてティアナに質問する。
「確かに、その宝石。154カラットのサファイアで間違いないわよ……気に入ったならスバルにあげるわ」
もういらない玩具でも渡すみたいな感覚で述べたティアナの言葉にスバルはというと
「えっ…………………………」
と、一言呟いた時からフリーズしており。身体全体が硬直して暫く固まったままの状態になっていた。
「ちょっと、どうしたのよスバル。黙ったまま何も言わないで、すこし気味悪いわよ」
ティアナの発した言葉によって、ようやく呪縛が解けたスバルは再起動すると直ぐに今思っている事を話し出していく。
「ティア! いくらわたしが友達でも、高価な宝石は貰えないよ! これ程の高いモノ簡単にくれるなんておかしいよ! なに考えてるのティア! もっと常識もって行動してよ。ティア……おねがいだから……」
わたし凄く怒ってますといってプンプンになった表情でティアナに高価な贈り物を軽い気持ちで渡すなんてという感じで説教するみたいに言い切ったが、それはスバルがティアナの事を心配して注意してくれた言葉でもあった。
「スバルがあたしの事考えて怒ってくれるの、すごく嬉しいんだけど………この宝石自体に商品価値なんて殆んどないから、スバルが気にする必要なんて全然ないわよ」
その言葉に「え? 」と一言発したまま困惑に包まれていたスバルにティアナは丁寧に説明しだすと同時にマルチタスクで念話を親友に飛ばす。
<いまスバルが思ってるみたいにミッドチルダーと第97管理外世界……地球じゃあ宝石の価値観が違ってると思ってるでしょうけど。生憎地球でもミッドチルダーと同じで宝石の価値は一緒よ。理由はいまあたしが口で説明している事が理由というか正解なのよね>
「これって天然の宝石じゃなくて、あたしが系統魔法で錬金した物なの……でも、勘違いしないでよ。別に紛い物でニセ物宝石って訳じゃないわ……どちらかって言うと宝石としての純度……品質が天然物より優れているんだけどさ……とある理由で正規ルートで世の中へ出せない品だから、さっき言ったように商品価値がないから遠慮しないで貰ってくれる? 」
「えぇ~でも、見た目高価にみえる宝石貰って買えったらうちのお父さんびっくりして、絶対返しに来るはずだよ。ティアの家に」
スバル曰くゲンヤ・ナカジマは見た目どおり頑固一徹な性格だから、理由もなく人様から施しみたいに物を貰って受け取るような人物じゃないから、必ずや返還しに来ると父親の性分知り尽くしている娘のスバルがそう言って、断言する。
「スバルのいう通り。ゲンヤさんの性格なら、人様からこんな高価な物もらえないって言うわね……はぁ~どうしよう。これじゃあ全然宝石減らないし、曰く付きの品だから売ることも出来ないし……困ったわ」
錬金の練習訓練用に精製したかなりの量の宝石処分に困ったと呟くティアナの姿にスバルはある疑問を口にする。
「ティアは錬金て言う魔法が出来るんだから、処分に困ってるんだったら元の状態に戻したら良いと思うよ」
「………そうするのが一番良いと思ってるわよ……でもねえ、せっかく上手に作った作品だから、そんな事したく無いのがあたしの嘘偽りない心境なのよ」
「……そっか、ティアがそう考えてるならしょうがないよね」
そうスバルが述べると、ティアナが苦笑していた。
錬金の成果とはいえ、増えすぎた宝石に頭を悩ませている最中のふたりが軽く気分落ち込んでいた時、不意に部屋の扉をノックする音が聞こえてきたから、部屋の主であるティアナが
「誰? ママなの」
と問い質すような言葉を扉の向こう側にいる人物に呼び掛ける。
「母さんじゃなくて申し訳ないけど……俺だよティア」
廊下から声掛けてきた者はこの家の長男。平賀 才人であった。
「才にいなの、入ってきて」
自室訪れた相手がこの世で一番愛しい男性、兄才人だと解るとティアナは横にいるスバルが驚愕するくらいの喜色満面の笑み浮かべながら、嬉しい声で入室促するのだった。
気をきかせたティアナが扉を開けるとそこにはオレンジ・ジュースで満たされた3つのガラスコップに各種類のショーケーキ3個と大きな受け皿にたくさん盛られたクッキーなどの数種類のお菓子を載せたトレイをシッカリ両手で持ってニカッと爽やかな顔立ちで佇んでいるこの家の長男平賀 才人であった。
「ティア、母さんがこれ持っていけって言うからさ。ついでに俺も妹初の友だち見に来たんだ。だから俺の分もあるんだぜ」
カリーヌにティアナとその友だち用の飲み物と菓子類の食べ物を運ぶついでに、妹初めての友人を興味津々で見にきたと宣う才人に対してティアナのとった態度は
「才にい。わざわざあたし達のために持って来てくれたの? 嬉しい……この時間に帰ってきたんだから、あの雌狐とようやく手を切ってくれる気になったのね」
高凪 春奈との悪夢からようやく目覚めて自分に靡いてくれるのねと思いこみ喜色満面のティアナの言動に対して才人が語った心境は
「バカ、そんな事有るわけないだろ。俺と委員長の絆は何人たりとも割ってはいることなんてできねよ。今日は委員長、家の用事があるって言うから早めに帰って来ただけなんだよ」
真相聴かされたティアナは期待していた分、酷く落ち込んだ姿を兄才人と親友の前へさらす。
「……あ~ぁ、せっかく才にいが悪縁と手切れできたと思ったのに、ものすごく残念だわ」
「まだティアは委員長の事嫌ってるのか、春奈はとても良い女の子何だけどなぁ~なんでそこまで嫌いなのか、俺は全然解らん」
<ねえ、ティア……変な事聞いて良い? もしかしてティアと才人お兄さん……血が繋がって無いの? >
才人が目の前にいるので口に出すと憚られる質問だったからか、スバルは念話でティアナに思い切って訊ねてみた。
<……そういう事だったら、どれ程嬉しかったか知れないわ……でも、残念何だけど。あたしと才にい……母親違いでもパパが同じ人だから、半分だけ血が繋がっているのよ……悔しいけど、これが現実なんだわ……だけどねあたしは才にいの事死ぬほど愛しているから、才にい騙すあんな雌狐何かに絶対に敗れるつもりなんか、考えてもいないわ! いつか必ず才にいと添い遂げて見せるわ! >
スバルは親友のティアナに質問した事を後悔する。
<……ごめんねティア。変な事聞いて……>
スバルが念話で不躾な質問してティアナに謝罪すると
<別にスバルが気にする必要はないから……あたしが世間一般の常識から外れているのがいけないからね……でも、だからといってあたしが才にいを好きな気持ちは絶対どこの誰が何と言おうが諦めるつもりもないし……まして後ろ暗い気持ちになる事は絶対ないわ……いつも堂々とこの愛に邁進するだけよ>
才人に対する禁断の恋を親友のスバルに胸を張って堂々と清々しいくらいに真っ直ぐな気持ちで言い切るティアナだった。
<兄妹同士で恋愛は歓迎出来ないけど、ティアが納得して押し進むのだったら、私から何も言うことなんか無いよ>
ティアナは親友スバルの兄才人へ対する自身が持っている禁断の恋心に関して、歓迎もしないかわりに否定もしないという考え方に内心、スバルらしいと思いながら念話で感謝の気持ちを述べていた。
<ありがとう……スバル>
「………なぁ、ティア。友だちのこの子の名前をぜひとも俺に教えて欲しいんだけどな? 」
親友との念話に集中していたティアナは兄才人が友達スバルを紹介してという言葉に
「えっ、なに才にい、何か言った? 」
とそう才人の言葉を聴いていなかったみたいな態度で、聞き返していた。
「聞いてなかったのかティア。もう一度言うけど、お前の横にいる可愛い友だちの名前を教えてくれるかって事なんだよ。解ったら早く俺に教えくれよ」
「………解ったわ、才にい……あたしからは言わない代わりに当の本人さまが自分から名のってくれるわよ」
<ちっ、才にいにあたし以外の女の名前なんか、教えたくなんか無いのに! 例え親友のスバル、あんたであってもね! >
<……こっちにそんな事言われても困るよ、ティア>
<才にいが期待してるから、早く名のりなさいよスバル! >
<いま名乗るから、急かさないでよ、ティア>
ティアナに促されて、仕方ないと思った表情でスバルは才人に自分の名前をフルネームで述べ出した。
「……初めまして、ティアのお兄さん……私はスバル・ナカジマと言います。今日入学式でティアの生涯の親友になりました……これから、お兄さんにもいっぱい迷惑かけると思うから、そこは我慢してくださいね………たぶんお兄さんとは一生の付き合いになると思うから、よろしくお願いしますね」
「スバル! あ、あんた、何てこと言い出すのよ! 才にいは、あたしのモノなのよ! 誰があんた何かに渡すものか! 」
スバルの突拍子もない物言いにティアナは冷静さが欠片もない程、端整な顔立ちを嫉妬でキツく歪ませながら、親友を激情のまま罵るのであった。
「おぃ、少しは落ち着けよ、ティア。別にスバルちゃんも悪気が有って言ったんじゃなくて、この場を和ませようとして言ったホンの軽いジョークに目くじらたてるほど、怒る事じゃないどろう、先ずは深呼吸して落ち着け」
心底から、溺愛している兄才人からの宥めの言葉をうけたティアナはようやく、スバルに対する怒気を収めてイスに腰掛けていた。
「ごめんね、ティア。わたしが変な事言ったせいで怒らせて」
「もう、怒ってないから。泣きそうな顔しないで良いわよ、スバル。あたしも少し言いすぎたみたいだしね」
今にも泣きそうになるくらい、申し訳ない顔で謝るスバルに対してティアナは、自分も少しは悪かったからと言って、怒気を和らげた口調で話すのであった。
「まぁ、話はそのくらいにしてさ、せっかく母さんが用意してくれたこの美味しそうなケーキとクッキー早く食べようじゃないか。ティア、スバルちゃん」
才人が妹とその友だちに、母親が用意してくれたショートケーキとクッキーを薦めると。
「わぁ~ありがとう、才人お兄さん。わたし、実はお腹ペコペコだったから、早速頂きますね」
そう言って、スバルはすぐにテーブル上に置かれていたトレイから自分好みのケーキを1つ選んでお皿に多数のクッキーを一緒にのせると
「頂きます」
の言葉を発すると美味しそうな表情で食べ始めた。
「はぁ~やっぱりスバルは食事してる時が1番いい笑顔しているわねぇ……」
ティアナが久しぶりにみる親友の食事中の姿にみとれていた。
「もぐもぐ、ティアったら、そんなに見つめられたら恥ずかしいよう」
「何が恥ずかしいよ! あたしからしたら、あんたの食べ方のほうが恥ずかしいわ! 」
ティアナとスバルのコミカルな掛け合いに、思わず才人が。
「あははは、あのティアがスバルちゃんにはまったく敵わないとはねえ……これは良いものが観れたなぁ……お礼に俺の分のケーキとクッキーも食べるかい? スバルちゃん」
「え、良いの才人お兄さん。じゃあ、遠慮なく貰うねえ」
そういうが早いか、スバルは才人からケーキとクッキーをもらうと、ジュースを飲みながらとても美味しいそうに食べ始めていた。
「もう、才にいったら! スバルを甘やかさせないでよ! この子はこう見えても、ものすごく際限なく食べるんだから、あまりエサを与えたらダメ何だからぁ」
ティアナの言葉に反応した才人は妹に真偽を確かめるように訊ねていた。
「外見からすると、そんなに食べる様には見えないけどなぁ? 」
「スバルは痩せの大食いなのよ。だから見掛けで判断したら、大変な目にあうわよ才にい」
「ティアったら、酷いよう。わたしそんなに食べないよ! 」
ティアナに怒った顔で抗議するスバルであったが、才人にもらったケーキとクッキーを全部平らげた直後にそのセリフを吐いても全然、説得力の欠片も無かった。
「あほスバル! そんなセリフは遠慮する事、覚えてから言いなさい! あんたには100年早いわ! 」
「酷い! ティアのイケズ、変態ブラコン! 」
スバルの反撃言葉に対してティアナは、切り札のとあるセリフを述べ始める。
「………ふ~ん、あたしにそんな事言うの……じゃあ、スバルはママのものすごく美味しいお昼ご飯はいらない様ねえ」
「だめだめ、そんなの酷いよ、ティア………さっきの事は謝るから、お願いティア。お昼ご飯食べさせて! 」
「涙と鼻水でグシャグシャになった顔で近づくな! ………あぁ、もう! ママのお昼ご飯食べて良いから、あたしに近寄るなあぁぁぁぁ、あほスバル! 」
うるうるした瞳で迫るスバルに、身の危険性を感じたティアナは、母親カリーヌが用意する極上の昼ご飯を食べる許可を与え、これ以上近寄らせない様にする。
「やったぁ! ありがとう、ティア。へへへ、これで美味しい食事が食べれるよう」
このあと直ぐにカリーヌが昼食の用意が出来た事を知らせに来ると、ティアナは才人とスバルを伴い食堂へ向かうのであった。
続く。
次回はたぶん、あの方々が登場すると思います。