季節は梅雨入りした頃だ。
あれから散歩の代わりに日帰りで冥界の外を見て回る様になった。
今日はあの薬を作った魔法使いの家に遊びに行く事になっている。知り合ったのは昨日だ、妖夢と一緒に魔法の森へ行き暇つぶしに弾幕戦の練習をしていたら彼女が見物に来た、それが霧雨 魔理沙でその時妖夢から軽く紹介された。
2人の仲はいい訳でも無いので1人で行く事になったんだ。
(えーっと、地図だとこの辺りなんだけど…魔法の森ってまだよく分からん。)
迷子になっていた、そして飛んで暫く彷徨い半泣きになった頃。
「あっ雄介!見つけた。」
箒に乗った人影が見えた、そこで誰か確信し返事をする。
「魔理沙ー、見つけてくれてありがとう!」
「弾幕戦やろうぜ!」
会うなり彼女の口から1番に出た言葉がコレだった。
「へっ?」
いきなり弾幕を放ってきた、最近始めた自分の周りを霊に展開させ警戒させる練習のおかげでそれをなんとか避けれた。
弾幕戦の為ではなくスキマを警戒していたのだが役に立った、意識を支配下に置き視界を借りる。それはあらゆる角度からくる紫さんの暇つぶしと言う名の理不尽な悪戯の対処法だった。
(立体で弾幕を捉えれるな、紫さんの悪戯は本当厄介だったからな・・寝てる時は何もなかったけど気を抜くと物を投げてきたりするから。幽々子さんが食べた後だろう団子の串が頭に刺さった時は泣いた、亡霊でも痛みは勿論あるんだぞ!他にも鳥の糞とか大量に降って来た事もあったな。身体中が糞まみれになった俺を指差して爆笑してたから始めてキレたな。【スペルカード悪鬼 村雲】で彼女を襲ったけどスキマでの360度攻撃を喰らい逆に酷い目にあった……この世界の妖怪相手にマトモな手段だと勝てない。それでこの方法ならいつか仕返し出来る筈と思って常にやっているんだけど、今思うと全部弾幕戦の練習だったのかな?って動きが速い!避けきれない。)
肩に掠めた、当たると洒落にならない威力だ。移動速度で勝てないと悟る、やるしかないみたいだな。
「妖夢との練習を見て舐めているのか?本気で行くからな、覚悟しろよ!」
ハッタリをかます事にした。
「おっ?やる気になったか、全力で来ていいからな。」
悪霊を少し身体に取り憑かせ能力発動、ソレを霊力に変換し弾幕を放つ、箒に乗った彼女はギリギリであえて躱しながら突っ込んで来た。
「その程度かよ、妖夢との時は動きが良かったと思ったが期待したけどガッカリだぜ。まだまだ精度がなってないな、遊んでやるよ。」
近距離で弾幕を放つが当たらない、完全に遊ばれていた。
魔理沙は弾幕を放つのをやめて避けているだけだ。
「ちくしょう、ならこれでどうだ!」
スペルカードを取り出し【怨念 村雨発動】
手がミシミシと不気味な音を立て変化していく、ソレが刀の形になった。
「なんだその気持ち悪いスペル。」
彼女は数々の異変と関わってきた経験で察したのだろう、箒をターンさせ離れようとする。
「俺の能力はあまり使い勝手が良くないからね、コレと悪霊操作しかないんだよ。うおぉ!」
全力でソレを振る、其処から一本の黒い閃光が走る。
【恋府 マスタースパーク】
魔理沙は素早くスペルを宣言、巨大なレーザーで閃光を消しさった。威力は遥かにソレを上回っていた、少年の姿がない。
「やり過ぎたか?いや、あいつ囮にスペルを使ったな!」
「そうだよ、これでどうだ!」
彼は悪霊を支配する能力を持つ、魔理沙のスペルカードは妖夢から聞いていた、結構長い時間共に暮らしていたから過去の異変の事ついでに。マスパはヤバいと、だがそれが隙となる筈だとも。
自分のスペルを発動させてからは賭けだった、1枚目のスペルを放つと同時に全力で移動を始めて次のカードを用意する必要があったから。
「お前・・こんな近くに?読んでいたのか、やるな!」
「これで最後のカードだ!」【死霊 集いし樹海】
近距離でカードを宣言、魔理沙の周りを霊が囲む……そして何体か取り憑いたので彼女の動きが遅くなる。
(後は弾幕を撃てば避けるのは無理だろう、決まったな。ん?何だろう、魔理沙が笑ってる。この感覚幽々子さんと妖夢の時みたいだ、って事は。)
「センスは認めてやるけど勝つのは私だ、行くぜ!」【星府 サテライトイリュージョン】
彼は気付くのが遅過ぎた。球体が彼女の周りに出現、ソレらが襲ってきて雄介の腹に直撃しスペルがブレイクされたて魔理沙は自由になる、勝負は決まった。
「くはぁ痛過ぎる・・負けたよ、もう再生にしか力使えないや。」
「途中から本気でやったからな、いい練習になった!またやろうな雄介。」
「妖夢から聞いてた通り強いね、俺の知ってる生きてる人間ってこんな奴いなかったな。もうやりたくない!2回目同じスペル通用しそうにないし。」
「そんな事言うなよ、弾幕戦始めたばっかりなんだろ?成長が楽しみだな。」
流れで家に招待されお邪魔する事になった。
中に入ると散らかっていた。開きっぱなしの魔道書、よく見ると何回も読み返したのかボロボロになっている。研究も独自でやっているのか、焦げた壁、焼けた服、爆発の後が残っている…割れて落ちている魔法瓶もある。
(見た目は俺と歳変わらないのに凄いな魔理沙は、少し見ただけでも努力をしたのが分かる、想像以上に努力家なんだな。妖夢が負けたのもコレが理由か…納得だ。)
「天才なんて居ないか、親父からちっさい頃言われたんだけど本当なんだね。考えが甘かったよ、絶対に今の俺じゃ勝てなかった。尊敬するよ魔理沙!」
「なんか照れるからやめてくれ、ってか天才は居る。私が目標にしている奴だけどな。」
「あっ!博麗 霊夢の事かい?話しは幽々子さんから聞いたけど・・空を飛ぶ程度の能力だっけ、魔理沙でも勝てないんだ、想像がつかないや。」
「そうだな、今の私じゃ一発も当てれない自信がある。でもいつか追い付いてみせる!天が与えた差なんて努力で覆せるって証明してやるんだ。」
彼女は自信溢れる笑顔でそう言った。
「応援してるよ、きっと魔理沙ならいつか勝てるって!」
そう言って握手をした。
だが2人とも照れ臭いので顔を合わせれなかった。
不意打ちで研究中の薬を飲まされた、まあ2度目となる。
「どうだ、なんか効くだろ?前のに改良を加えて霊力が高まる様にしたつもりだ!」
(家に招いた理由はコレかよ・・魔法使いって妖怪並みに危険だと思う事にしよう、そうしよう!)雄介はまた一つ学んだ。
勿論副作用が出てきた。
「イヤッフウ!漲ったぜ、コレが本当の俺様だ。」
意識は第二の人格へ切り替わる。
「ああ、また失敗か。次はコレをこうしてみるか、実験台には丁度いい奴が見つかったが…って今動くな、経過を知らないといけないんだ。また飲ませるぞ?」
「えへへ、ならお前が被害者になるのか?今なら勝てる気がするよ、悪い子にはお仕置きだべさぁ。」
正気の目をしていない、完全に逝った顔をしている。
「キモッ!」
本能で彼女は危険を察知、箒に乗り逃げていった。
「ちっ!まあいい、お楽しみTimeと行こうじゃないKA!」
彼はお薬が完全に回ったのか口調まで変わっていた。
そのまま紅魔館へ飛んで行った。
門番が居た。
「お前も妖怪だな?あのスキマの怨みここで晴らしてくれる!」
「誰ですか貴方?亡霊ですか・・いいでしょう、相手になりますよ。」
彼は両手を広げる、そして手が変化していく。
それは異常だった。
肘から生える長い黒い刀
刀身には全てに無数の目
霊気も尋常ではない。
「ハッハー!勝てると思うのか?今の俺様に。」
余裕の表情で構えをとる。
「異常な霊気に支配されておかしくなっているようですね、自分の意思で戦えない奴に負ける訳が無い!私はこの紅魔館の門番、紅美鈴!いざ勝負。」
そこから完全に自我を失った。
気付いたら朝になっていた、しかも上半身は裸で下半身の服もボロボロだ。
(ここは?って上に冥界が見える!何があった?)
帰る途中妖夢が冥界の入り口で待っていてくれた。
「遅いから心配しましたよ、服がボロボロですね。魔理沙と弾幕戦をやって負けたんですね?」
(弾幕戦以外の事は黙っていよう、努力か…魔理沙を見習ってやってみるかな!誰かに助けられた様な記憶が微かにあるんだけど・・駄目だ思い出せないや。まだ霊力がおかしい、でも悪くない感覚だなぁ。)
「心配してくれてありがとな、そうだよ。完敗したけど気持ちいい勝負だったんだ、明日から一緒に修行しよっか!素振りより弾幕戦の方が効率もいいだろ?刀の扱い教えて欲しいし。」
「そうですね、ふふっ。明日から楽しみですね!今日は夕ご飯食べてゆっくり休んで下さいね、私は優しく教えるのは苦手ですので。」
妖夢は笑顔になり雄介の手を引っ張って家まで帰って来た。
全部紫さんと一緒に幽々子さんがお茶と菓子を食べながら覗いていた。
紅魔館から彼を助けたのもこの2人、倒れていた雄介をバレないように冥界の近くまで送ってくれたんだ。
彼は守られいてる立場なのをいつ気付くのだろうか。
修正手が付けれなくなったので消しました。
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