それすらも叶わずにいた。
そんな少年の物語。
とある冬の夜、月明かりの中虚ろな瞳の少年が歩いている。
目には何も映っていないかのようだ…そのままフラフラと山に向ってひたすらに。
(今日こそは、コロシテヤル!)
山に入る、何も考える事ができず唯手にはロープを持って。
登山の経験も無いが降りる事もないのでいいだろう。
そして・・
ー少年は首を吊ったー
(此処は…あの世か、想像と違うな。手足もある。だが天国では無いのは確実な筈・・地獄の割には変だな。)
辺りは森の様だ、暗いので視界が悪い。
少し歩いてみる
(何処まで続くのか、まあいい。腹も減らないし考えるのはとりあえず辞めよう)
ひたすら歩く・・・
光が観えた、そこへ向う。家がある。
(家、何故こんな所にある?)
導かれる様に其処の前まで来た、(大きい屋敷だが和風で古い作りだな、だが木が上質なのか。築どれぐらいだろうか?)
〔トントン〕
「はーい」
若い女性の声だ。
〔ガラガラ〕
「あら?迷い込んだのね、可哀想に。」
「此処は何処ですか?自分は死んだ筈、貴女は?」
「私は冥界の管理人、西行寺幽々子と言います。貴方の名を聞いても?」
(髪がピンク色、この着物がよく似合う人が管理人?冥界とは…)
「比坂 雄介と言います。それで説明して頂いてもいいですか? 死んだばかりで混乱しているので。」
「そうなの、雄介さんね。なら入って、説明が長くなるから。」
言われたまま屋敷へ入る、客間に案内されてそこで説明を受ける事に。
「いきなりだけど質問させてもらうわ、雄介さんは多分幻想郷の人では無いわね?服装が違うもの。」
「幻想郷とは?」
「この世界の事よ、そして此処が冥界。貴方の肉体はいわゆる現代にあるの。死んだ場所が境界の間だったのね。魂だけが此方に来て、現世に未練があり幽霊になる事が出来ず亡霊となった。どんな未練があるのか教えてくれないかしら?」
「長くなりますがいいですか?」
「ええ、時間は無限にあるもの」
「俺が15の頃から霊が視える様になったんです。最初は僅かな気配、でも日に日に姿がハッキリと視えてきた。それだけなら良かったのですが・・声が聴こえてきたんです。 オマエモシネ、カラダガホシイ。 などが殆んどでした…死ぬ1年間は地獄の様な毎日でした。 寝て起きたら知らない場所に居たり、最終的には起きている間に霊が入って来て。 強く念じると離れてくれていたのですが…寝るのが怖くなってしまい、それで体調を崩してしまって・・気が付いたら山で首を吊っていて、そこで正気になりとにかくこんな人生嫌だ!と思ったら此処にいる訳です。」
「それで幽霊になれず亡霊として彷徨ってたのね。 私も亡霊なのよ、でも転生もする事は出来ないし…天国も地獄にも行けないの。 貴方は此処の世界の人では無いから、現代で誰かに死体を見付けて供養しない限り成仏は出来ないでしょうね。 良ければ部屋を貸してあげるから住むといいわ!妖夢、来なさい、男物の服あったかしら?」
〔ガラガラ〕
入って来たのは白い肌、白い髪、脇に2本の日本刀を持つ少女だった。
「幽々子様いいのですか?確か男物の服は倉庫にある筈ですが・・初対面の人を招いて泊めるなどは反対します」
「この人は自分の意思で此処に来た訳では無いのよ。 私と似た力を感じるのよ、放置すれば幻想郷のバランスに影響が出る可能性がある、なら監視は必要でしょう?」
暫らく妖夢という名の少女が此方を見つめる
「分かりました、私は半人半霊の魂魄妖夢。 幽々子様との話しは聞いていましたので。 着いて来て下さい」
(半人半霊・・この世界はなんなんだ?服も貸してくれるのはありがたい。 何処で死んだのかも記憶が無いからな、似た力…聞くとするかな。)
倉庫に案内され着物に着替える。
「すいませんが先程力がどうとか幽々子さんが言っていましたが、どうゆう意味なのですか?」
「幽々子様の力は死を操るんです。それで貴方が亡霊である事が分かったのでしょうね。普通は幽霊が視えても害が無いのが殆んどの筈、雄介さんは悪霊しか視る事が出来なかった。 それは寄せる能力があるとしか説明が付かないので…しかも抵抗し追い払う力があった。 貴方は死んでも幽霊にならなかった。亡霊なると少なからず生前より力は付くのです、それで分かりますね?」
(それで監視か、困ったな。でも行く当てもないし…お世話になるしかないのか)
「分かりました、お世話になります。」
こうして亡霊と半霊半人との同居生活が始まったのである。
主人公の能力
今は悪霊を呼び寄せる程度
次回成長後の能力の名だけネタばれします。