一方通行さんの出番です!
遅れてすいませんでした。
東京エリアから少し離れた外周区に一方通行《アクセラレーター》はいた。
彼は、東京エリアから飛び去ってから寝床を探しに廃墟と化した町を歩いていた。
彼としては、能力が完全復活しているので、そこらの家の中で寝ても問題はないのだが、気分の問題である。せめて、ベッドかソファーが無事な状態で発見できないものかと、辺り一帯を探し回っていた。
すると、地面に血のあとを見つけた。見たところ乾いていない。
近くに血を流している誰かがいることを知り、血のあとを追っていった。
その先には、フードつきのパーカーを羽織った茶色の髪の毛で短髪の小さな女の子が壁に背を預けて座っていた。
「・・・こんなとこまで追ってくるなんて、どれだけ物好きな・・・の?」
少女は顔を上げながらしゃべり始め、一方通行の顔(というより目)を見て戸惑いを見せた。
「あなた・・・・誰なの?」
少女彼に問いかける。
そうして彼は答える。
「・・・・一方通行《アクセラレーター》だ。お前は?」
「私は・・・佐奈、三枝 佐奈(さえぐさ さな)。」
「その傷はどォした?」
「・・・・おなかが減ったから食べ物でも食べようかと思ったら、店の人に怒鳴られて、警官に連れて行かれそうになったから逃げたの。」
「それで、撃たれたってとこか。」
「当たり。まったく嫌になるよね。」
「で?お前、傷の方は大丈夫なのか?」
「当たり前でしょ?喧嘩売ってるの?あたし達の傷の治りははやいのよ。」
そう自慢した直後、ぐぅ~~~。と場違いな音が聞こえた。少女は顔を赤くして彼の顔を見るが、彼はまったく気に留めていない様子で、黙っていた。
(なるほどなァ。目が赤い、身体能力が高いだけじゃなくて、治癒速度も普通の普通の人間に比べると早いって事か。化け物ねェ・・・。
まァ、とりあえず今は・・・・)
「・・・?いきなり黙ってどうしたの?」
「いや、なんでもねぇ。ひとつ聞きてェンだが・・・」
「なに?」
「この世界の通貨ってェのは”円”でいいのか?」
「え?当たり前でしょ?」
辺りは暗くなり、活動する人が少なくなったころ。一方通行《アクセラレーター》はコンビニにいた。
コンビニで籠を持ち、一人で沢山の品物を次々と籠の中へと入れていく。
そうして、両手いっぱいのコンビニ袋を持って外に出ると、待っていたのか小さな女の子が彼の隣へと付き添うように歩き始めた。
彼らは、揃って外周区へと消えていった。
翌日、天童民間警備会社にガストレアが出たと要請がきた。
蓮太郎としては、いち早く現場へと到着し、早急に片付けなければセールに間に合わないという事情があったため、全速力で自転車を漕いでいた。その結果、途中で延珠を落としてしまうというアクシデントがあったが、延珠ならすぐに追いつけるだろうと思った蓮太郎は、そのまま、走り去っていくのであった。
現場の前に着くと濃い顔の主任刑事に愚痴をこぼされていた。
「あぁ!? 最近は学生まで民警やってんのかぁ? おいおい大丈夫かよ? ・・・・・許可証<ライセンス>は?」
「ほらちゃんとあるだろ、なぁ、さっそくで悪いんだが仕事の話しようぜ。」
嫌そうな顔をしながらもその刑事-多田島というらしい-は話し始めた。
「上の階から、血の雨漏りがするってんで、悲鳴上げながら連絡してきた。被害者は上の階に住んでいる岡島純明。情報を統合すると、間違いなくガストレアだ。」
「お前が来てくれたおかげで、やっと入れるぜ。」
嫌味っぽくいいながら、多田島と蓮太郎は現場へと向かった。
そこでふと多田島が何かに気づいた。
「おい。そういや、お前<イニシエーター>はどうした? 普通二人一組で行動してるはずだが?」
「い、いや、この程度なら俺一人でも大丈夫だからな。」
と、動揺したように答える蓮太郎に興味なさげに、ふ~ん。と相槌をうっていた。
目的の階へたどり着くとなにやらあわてた様子で武装した警官隊が無線に話しかけていた。
「・・・?どうした?」
多田島が、不思議に思い聞いてみると
「す、すいません。たった今ポイントマンが二人窓から突入したのですが、連絡が途絶えて・・・・」
その言葉を聞いた途端に多田島が険しい顔をして怒鳴り散らした。
「ばかやろう!何で民警の到着を待たなかった!!」
「だって、手柄を取られたくないじゃないですか!」
そんなやり取りを横目に蓮太郎はホルスターから拳銃を取り出していた。
「どいてろ!俺が突入する!」
そう宣言し、警官たちの協力の下、ドアを蹴破って突入をした。
しかし、そこにはガストレアの姿はなく、代わりに燕尾服にシルクハット、おまけに仮面をつけた男がそこに立っていた。
そして、その男の近くの壁に、叩きつけられて絶命している警官隊がいた。
「ガストレアはどこだ?」
「民警くん、遅かったじゃないか。私が来たときにはすでにいなかったがね?」
人を馬鹿にしたような口調でしゃべる男に冷静に質問をする。
「となると、そこの二人はお前が?」
「察しがいいね。そう、私が殺した。」
仮面の男がそういうと同時に蓮太郎は間を詰めていた。そして、掌打を繰り出すが、仮面の男は、それを難なくかわし代わりに蓮太郎の胸へと拳を繰り出す。まともに食らって、後ろへと吹っ飛び、ガラス製のテーブルに背中をぶつけて息が詰まる。顔を上げると仮面の男はすぐ近くまで来て、拳を振りかぶっていた。転がることで、回避をすると後ろにあったテーブルは大きな音を立てて、砕けた。
息を整えようと立ち上がると仮面の男の足が蓮太郎の側頭部へと迫っていた。蓮太郎はそれをかろうじて腕をたてにするも、蹴りの威力は抑えられず、壁際まで吹っ飛んだ。
そのとき、携帯の着信音らしき音が響いた。仮面の男は鼻を鳴らし蓮太郎から視線をはずすと携帯を取り出し、誰かと話し始めた。
「化け物め!!仲間の仇だ!!」
見ると、警官隊が
玄関付近から、三人部屋へと入ってきてライフルを構えていた。
仮面の男はそちらを見向きもせずに、恐ろしいほどの速さと正確さで、警官隊の急所を打ち抜き無力化していた。
体勢を立て直していた蓮太郎はその一瞬で間を詰め、先ほどのお返しとばかりに、回し蹴りをはなった。
天童式戦闘術二の型十六番ーーー
「隠禅・黒天風ッ!」
しかしそれも先ほどと同じように難なくかわされる。
「隠禅・玄明かっ!」
素早く足を踏み変えて、続く二撃目を繰り出す。
これは予想外だったらしく、仮面の男の側頭部へと直撃し、首が後ろへと向いた。
(やったか?)と蓮太郎が思った直後、仮面の男は、自分の片手で曲がった首を元に戻すと、ずっと離していなかった電話に向かって二言三言話すと電源を切り、蓮太郎へ鋭い視線を向ける。
「油断していたとはいえ、一撃もらうとはね。ここで殺したいところだが、やる事があるので失礼するよ。・・・・君名前は?」
化け物じみた戦闘力に、悪寒を感じながら答える。
「・・・・・里見蓮太郎だ。」
「・・・里見君、ね。またいつか会おう。」
「アンタ、何者だ?」
「私は世界を滅ぼすもの。誰にも私をとめることはできない。」
そういうと男は窓から飛び降りていった。
後ろから聞こえたうめき声に蓮太郎は、ハッとしたように振り返る。そこには、仲間を担架に乗せて運ぶ警官隊達と、多田島が立っていた。
「状況は?」
「怪しいやつには逃げられた。・・・・・それとガストレアも襲われたはずの男もいなかった。」
窓の鉄柵とその付近についたおびただしい量の血をみながら蓮太郎は歯を食いしばりながら言った。
「おいおい、まさか!?感染者まで逃げちまってんのか!」
「そういうことだ。今すぐにこの辺りを封鎖してくれ!」
多田島とそんなやり取りをしながら、蓮太郎は外へと走り出していた。
「蓮太郎の薄情者め~~~~~!」
「<ふぃあんせ>の妾を落としていくなど・・・」とつぶやきながら歩いている少女を見つけ、岡島純明は安心した。
なにしろ、ここがどこだかわからないのだ。誰かに道を聞こうに周りに人は居なく探していたところなのだ。
「お嬢ちゃん。ちょっといいかい?道を聞きたいんだけど・・・。」
その言葉に振り返った、少女は驚いた顔をして距離をあけた。
「あぁ、違うんだ怪しいものじゃない、俺は岡島純明。道を聞きたいだけなんだ。」
そういう純明に少女は険しい顔をしながら問いかける。
「お主気づいていないのか?すまないがお主をどうしてやることはできない。世界中の誰にでもだ。最後に言い残すことはないのか?」
少女に言われて混乱をしていた。この子はなにを言っているのだろうか?
「落ち着いて自分の体を確認するのだ。あわてずにゆっくりだ。」
そう言われて、自分の体を確認した、純明は目を見張った。自分の服は大量の血で濡れていて肩口から腹にかけて大きな傷があった。
何故痛くないのか、疑問に感じたとき。そうして理解した。この子はイニシエーターと呼ばれる
対ガストレアに特化した少女なのだと。そして先ほどまでの記憶が蘇ってきた。
純明は、別れた妻の声を久しぶりに聞こうと窓を開けながら電話をしようとしていた。そうして、空を見上げたとき、壁に張り付いたガストレアと目が合ってしまったのだ。次の瞬間彼はガストレアに・・・・。
「思い出した・・・・。俺はガストレアに襲われて・・・・・。」
「・・・おそらく体液を注入されたのだろう。」
そんな少女の言葉に、納得しながらも悔しさがこみ上げてきた。
「これからだったのに・・・・取り戻せると思ったのに・・・」
といったとき、やり残したことを純明は思い出した。
「お嬢ちゃん、すまないが、俺には妻子がいるんだ。謝っておいて欲しい・・・いままで、ゴメンって。」
「承った。」
その言葉を聞いて安心したのか、涙を流しながらも、笑みをうかべ純明は人の形から蜘蛛の化け物へと変わっていった。
蓮太郎がガストレアを発見したとき、ガストレアの目の前に延珠を発見した。話しかけようとしたとき、蓮太郎と一緒にいた、多田島がガストレアに向かって発砲した。
攻撃されたことに反応し、ガストレアは不気味な叫び声をあげながら、多田島へと飛び掛った。
蓮太郎が、それに気づき、あわてて多田島の手を引きガストレアの突進を回避する。
「ばかやろう!! ガストレアに普通の弾丸は効かねぇんだ!」
「は!? じゃあどうするんだよ!」
言い合っている二人を尻目にガストレアは、お尻から粘着性のある糸を延珠に向かって放っていた。突然のことに回避できなかった延珠は、足を止められてしまう。それをガストレアが蹴り飛ばし、コンクリートの路上を20メートル近く転がっていく。
「延珠!!」
蓮太郎はすかさず、銃を取り出し、ガストレアへと発砲する。多田島のときとは違い、苦しそうな叫び声をあげながら、蓮太郎の方へと振り返っていた。
その様子に納得が言ったように多田島が声を漏らす。
「そいつぁ、バラニウムか?」
多田島の驚く声に自慢げに答える。
「そうだ!」
そうして、拳銃が弾切れの合図と同時にガストレアも地面へと横たわる。
(倒せたか・・・)
ガストレアの様子を注意深く観察しながら、接近する。そして気づいた、ガストレアの急所には弾が当たっていないということに。
その瞬間ガストレアは体を起こし、近づいていた蓮太郎に食いつこうとしていた。完全に不意を付かれて、やられる!?と思ったとき、ガストレアの体が、横に吹っ飛び、2,3回バウンドをし、動きを止めた。遠目から見ても、頭の大部分がえぐれており、再生の予兆もない。
「蓮太郎はすぐ油断するな。まったく、みていられないぞ。」
「なるほどな、そのガキがイニシエーターか。」
延珠の目をみた多田島が一人納得していた。
「大丈夫か?延珠。」
「妾は大丈夫だが、服が破れてしまった・・・。」
と言いながら、今まさに治っていく傷口を頬を膨らませながら見ていた。
そして、何かを思い出したように顔をあげた。
「蓮太郎?そいうえば、セールはいいのか?」
その言葉に、弾かれたように時間を確認し、やべぇ!!急ぐぞ!と言って多田島を残し、二人はスーパーへと走り出すのだった。
「民警か・・・・おもしれェ」
そんな彼らの後姿を見つめる白髪のサングラスをした青年と彼の後ろに立っている少女にその場にいた誰もが気づくことはなかった。
そうして、天童民間警備会社へと戻り、説明をすると木更は怒鳴り始めた。
「全ッ然、活躍できてないじゃない!! 仕事こなかったらどうするのよ!!」
「それに、なんでセールのこと教えてくれなかったの!?おバカ!」
一通り、怒鳴り終えたあと、木更は机に突っ伏した。
蓮太郎がどうしようか考えているとき、ふと木更から疑問を投げかけられた。
「里見君が倒したのって、感染者なのよね?」
「ん?ああ。」
質問の意図がわからないまま相槌をうつ。
「私たちで感染源ガストレアを退治しましょう。そうすれば、もっと知名度が・・・」
「ちょっとまて、まだ倒されてないのか?ってきりもうどっかの民警が倒してるもんだと思ってたんだが。」
「討伐情報はおろか、目撃情報もないわ。」
「!?じゃあ、まだ感染源ガストレアがこの町にいるっていうのか?何で政府は周囲一帯に警報を出さないんだ!?」
「里見君、政府は無能じゃないけど、強制手段はほとんどとろうとしないから、期待しても無駄よ。」
「・・・専門家の意見が必要だ。先生にあってくる。」
「私も同業者に探りを入れてみるわ。なんとしても私たちで狩るわよ。」
「わかった。」
こうして、彼らの一日は過ぎていく・・・・・・。
はい。
今回はここまで。
基本的には、小説と同じ感じにしちゃいました。
ところどころ文を変えたりしていますが、基本的にはあまり変わっていません。
ごめんなさいm(_ _)m
あと、オリキャラ登場です!
名前を決めるのに一時間かかりました。容姿は打ち止めに似ているという設定でいきます。
感想、評価などお待ちしております。