本当に平謝りしか出来ません。
「雄二、そろそろあの場所だね?」
康太が何やら秘策があると言ってペアである工藤さんと一緒に件の場所に向かってから数分。
モニターを見てみると、そろそろあの悪魔の住む場所だった。
「ああ、皆に注意しようかとも考えたんだが……」
「うん、必要ないよね」
見渡してみると、僕らを除く全員が目を塞いでいる。
どんだけ警戒してるのって話だよね。まあ、仕方ないけどさ。
だってあの杏子ちゃんやさやかちゃんでさえ目を塞いでいるんだよ?
『康太君、この先だよね?』
『ああ、愛子……アレの準備はいいか?』
『うん、もちろん♪』
康太の言ったアレというのが恐らく秘策という奴なのだろう。
「やっぱりまた真っ暗になってるね」
「突然現れる効果があるだろうからな。タイミングを見計らってスポットライトを入れるんだろ」
闇の中でカメラがぼんやりと人影を映す。
「うぅ……ヤバッ……思い出したら急に吐き気が……」
「おい、大丈夫かさやか?休んどけば?」
さやかちゃんは顔を青くしながら口元を抑えている。あれは本当に吐き気を催している証だね。
「さやかちゃん、大丈夫?」
「あ、明久。うん、大丈夫大丈夫」
「そう?きつかったら言ってね?」
「うん、ありがとう明久。心配してくれて」
「心配しないわけないでしょ?」
僕はそう言ってさやかちゃんの背中を摩ってあげる。
「康太、頑張れ……!」
康太SIDE
そろそろだろうな。あの悪魔の住む場所は。
「康太君、準備はオッケー」
「……よし、行くぞ」
俺は愛子を連れてその場所へと向かう。
広い空間に出た瞬間に
バンッ
とスポットライトのスイッチが入り辺りを明るく照らす。
俺はそれと同時に持ってきていたある物をその場に置きその陰に身を置く。
持ってきていた物、それは鏡だ。
「くせfgtwz;:あ、!!」
よしっ!効果は抜群だ!
俺は鏡に隠れながら小さくガッツポーズする。
「て、てめぇ!何てもの見せやがる!思わず吐いちまったじゃねぇか!?」
おや、これはおかしな事を聞く。
「……それは別に見せたいと思って見せたのではない。俺はただ貴方に自身の姿の再確認をしてほしかっただけだ。相手がなぜどんどん気絶していくのか、知りたかったでしょ?」
「た、確かにそうだが……って、お前!?何カメラ向けてやがる!?しかもそれ、モニターに映すカメラじゃねぇだろ!?」
おっと、もう気づいたか。
そう、愛子が持っている物。それは愛子の持参していたカメラ。何でも面白い物があれば撮って後々に役立てる気だったらしい。
……何に役立てるかはあえて聞かないでいた。
「え?そうだよ。これはね……永久保存版にするんだ♪」
「こんな気持ち悪い物を永久に残すってのか!?」
……自分でも気持ち悪いというのはわかっているらしい。
「うん♪そしてね……先輩の家にあるパソコンに送り込むんだ♪」
「はぁ!?んな事されたら親から変態扱いされるじゃねぇか!?というか、んな事出来るわけがねぇだろ!?」
どうやら、愛子の言っている事が信用できないらしい。
「うん。あたしは出来ないけど……康太君が出来るんだって♪」
「…………………」
先輩……いや汚い悪魔は恐る恐るといった感じで俺を見る。
俺は汚い悪魔を見ないように小さく親指をグッと上げる。サムズアップだ。
「んな時にいいサムズアップしてんじゃねぇよ!くそっ!覚えてろよ!」
汚い悪魔……もういいから歩く卑猥物でいいか。歩く卑猥物はダッシュでこの場から去っていく。
まあ、去っていったとしても先ほどの動画なり画像なりをウェブにUPするのを止める気はないが。
「……愛子、よくやってくれた。後は俺がやっておく」
「うん、頼むね康太君♪」
そう言ってカメラを渡してくる愛子。
「……先へ進むか」
「多分チェックポイントまでもうちょっとだよね」
俺は首肯だけで返す。
恐らくこの教室での最後の防衛ラインが先ほどの歩く卑猥物なのだろう。という事はそろそろチェックポイントなのだろうというのは誰でもわかる。
そのままパーティションで作られた通路を少し歩くと、その先では三年生らしき人が二人待っていた。
予想通りさっきの仕掛けに場所を取り過ぎたようで、チェックポイントはすぐ傍にあったみたいだ。
「あれを乗り越えたのか!?」
「す、凄いな……」
……やはり同学年の者達からしてもあれは見るに耐えない物だったらしい。
「……さっさと始めよう」
「そ、そうだな。それじゃ」
「「「「サモンッ!」」」」
俺の召喚獣はこの前見た通り、吸血鬼の姿になぜかその手にはスナイパーライフル。
本当にミスマッチだ。そして愛子はのっぺらぼう。
なぜなのかはわからないが……いつも冗談などを言っていると明久が言っていたから本心を隠すという事なのだろう。
一方、三年生の召喚獣はミイラ男とフランケンというどちらもメジャーなお化けだ。
三年Aクラス
モブC
保健体育 303点
&
三年Aクラス
モブD
保健体育 301点
「「…………………………………」」
……三年生が不憫に思えてならなくなってきた。
だが、その点数は脅威になっている。さすがは三年生だ。
「康太君。先輩達の召喚獣、強そうだね」
「……確かに300点越えは並の強さではない」
そして一瞬遅れて俺たちの点数が表示される。
二年Aクラス
工藤愛子
保健体育 601点
&
二年Fクラス
土屋康太
保健体育 856点
「……が、俺と愛子の相手ではない」
俺は一瞬の内に召喚獣を操作し、スナイパーライフルを構えさせる。
その間に愛子が三年生の召喚獣を蹴りで打ち上げる。
そして、打ち上げられた召喚獣の眉間に正確無比に弾丸を走らせる。
落ちてきた召喚獣の点数は既に無くなっている。
「「なっ!?」」
三年生達は驚愕する。それもそうだろう、なぜなら一瞬の内にやられてしまったからだ。
「うぅん、一瞬行動が遅くなるし。それに康太君、ライフルの使い方とかわかるんだ?」
どうやら愛子には設置している所が見えていたらしい。
そう、元来スナイパーライフルは何かに固定をしないと撃てない。いや、撃てるには撃てるがその際には、狙った場所に当たる確立が大幅に下がる。反動の影響でだ。
その為、殆どの
実際、今回の召喚獣も寝そべって狙撃をさせた。その方が俺自身も動かしやすいからだ。
「……以前、興味本位で調べただけだ」
「そっか♪」
俺の咄嗟の嘘に納得したのか愛子はそれ以上は聞いてはこなかった。
……済まない、愛子……。
俺は小さく心の中で、愛子に謝罪した。
SIDE OUT
はい、悪魔の浄化が完了しました。
……ええ、今この場を持って謝罪します。
遅れた事……本当に、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!