「あ、あの、早くくじを引いてくれると……」
「「「「「「……………………!」」」」」」
「ひ、ひぃ……」
佐藤さん、頑張れ。今はこの言葉しか出てこない。
「おい明久」
「雄二、そこから先は何を言おうとしているのかわかったから言わないでくれる?」
「あいつら、止めて来い」
「そう言うと思ったよ!」
僕は涙目になる。
あんな中に飛び込めとか、視線で死んじゃうよ僕!?
「大丈夫だ。お前は丈夫、だろ?」
「心はガラスなんだよ!?今回はむしろ心の方にダメージがいっちゃうから嫌だよ!」
ちなみに心はガラスというのは本当だ。むしろ、見滝原でガラスにまで劣化しちゃったというか……。
肉体的にはまだまだいけたんだけどね……心は、ね?
「とりあえず、止めに行って来るのじゃ。あれでは他の女子がくじを引けぬからの」
と、秀吉が自分が止めに行くと言った。
「大丈夫か、秀吉?」
「雄二、僕の時は心配しなかったのに秀吉の時だけは心配するの?」
「大丈夫じゃ、止めに行くだけじゃからの」
「そしてなにげに秀吉まで無視しないで!?」
僕の心はボロボロだよ!?
「それに、当事者の中に姉上がおるからの。他人事でもないんじゃ」
そして、僕の心をボロボロにして何のフォローもせず、秀吉はまどかちゃん達の元に向かった。
「姉上、それに鹿目達も。早くくじを引くのじゃ」
「秀吉君」
「ちょっと」
「黙ってて」
「くれるわよね?」
「秀吉クンなら」
「わかるでしょ?」
「はい、ごめんなさい」
「「負けるの、早っ!?」」
ちなみに、上からまどかちゃん、さやかちゃん、杏子ちゃん、ほむらちゃん、工藤さん、優子さん、秀吉の順だ。あ、最後のは僕と雄二ね。
「いや、面目ないのじゃ……」
「しょうがないよ……」
諦めて引くのを待とう。
「っと、その前に僕もくじを引かなくちゃ……霧島さん、頼める?」
「…………(スッ)」
無言でくじ箱を差し出してくる霧島さん。
くじ箱の中に手を入れて一枚の紙を手に取る。
書いてある番号は…………
「23番だね」
(((((狙うは、23番!!)))))
そして、まどかちゃん達が一斉にくじ箱の中に手を入れる。
って、そんな事したら箱壊れるよ!?
しかし、そんな心配も杞憂だったのか、箱は壊れず五人はそれぞれ手にした紙を広げる。
「よっしゃぁ!今日は運がいいぜ!!」
「「「「…………(ガクッ)」」」」
杏子ちゃんが何やら勝ち鬨の声をあげる。
そんなにいい番号を引いたんだろうか?
そして杏子ちゃんはニコニコと可愛い笑顔のままこちらにやってくる。
「明久!一緒のペア、よろしくな!」
「へ?」
と、杏子ちゃんは紙を見せてくる。そこには23と書かれていた。
「そうなんだ、一緒に楽しもうね」
「おうっ!」
そして、肝試しが始まった。
あ、ちなみに康太は工藤さんとペアになれたそうです。
『ね、ねぇ……あの角、怪しくない……?』
『そ、そうだな……何か出てきそうだよな……』
ムッツリーニが設置した高性能モニターから、尖兵として出撃していったDクラスの男女ペアの送ってくる映像と音声が流れてくる。
FFF団が暴走しだしたがすぐに殲滅した。
まず最初に向かうことになっているのは、Fクラスの教室のチェックポイントで、ここはまあ、基本的な場所で墓地がモチーフとなっている。
他にも洋館がモチーフとかもあったかな?確か。
『そ、それじゃ、俺が先に行くから』
『うん……』
カメラが見るからに怪しい曲がり角を中心に周囲を映していく。
カメラを構えた二人は入念な警戒態勢を取りながらそちらへと歩を進めていった
「み、美波ちゃん……あの陰、何かいるように見えませんか?」
「き、き、気のせいよ瑞希。何も映ってないわ」
「ひう……」
「大丈夫、まどか?」
「だ、大丈夫だよさやかちゃん……ほむらちゃんこそ、大丈夫?」
「何を言ってるのまどか。私はすこぶる好調よ?」
「好調とかそんな言葉、いつものほむらなら言わないと思うんだがな?」
「っ、そんな事ないわ。私はいつも通りよ」
ほむらちゃんはまた虚勢を張ってるし……。
「ほむらちゃん、そろそろ認めた方が「あ、角を曲がるわよ!」ほむらちゃん……」
何だか、もう……認めて楽になった方がいいと思うんだけど……。
そう思いながらもモニターに視線を戻すとほむらちゃんの言うとおり、角を曲がる所だった。
『行くぞ……っ!!』
『うんっ!』
カメラが曲がり角の向こう側を映し出す。 そこには何がいるのか。
そこには……何もなかった。
「な、何よ」
「良かったです……あそこは安心して進めるんですね……」
モニターを見て姫路さんと島田さんが胸をなで下ろした瞬間のことだった。
『『ぎゃぁあああーっ!?!?』』
「「「きゃぁあああーっ!!」」」
カメラの向こうから大きな悲鳴が響き、それを聞いた姫路さんと島田さんが同時に悲鳴を上げてしまった。
「きゅう……」
「ああ、まどかが気絶しちゃった!?頑張れ、頑張るのだあたしの嫁よ~!」
「嫁ってな……さやか、とりあえず斜め45度からチョップ喰らわせたらいいんじぇねぇの?」
「それだよ、お前は天才か佐倉杏子よ!」
「……………………」
「あれ?ほむらちゃん?ほむらちゃ~ん……ダメだ、気絶しちゃってる」
立ったまま気絶するなんて器用だな。
「しょうがない、ちょっと寝かせるか。雄二、ちょっと抜けるね」
「うん?どうした明久?」
「いやぁ、ほむらちゃんが気絶しちゃって……保健室で寝かせてくるよ」
「お、おお、わかった……(暁美って怖がりだったんだな……)」
雄二に抜ける事を言ってから僕はほむらちゃんをお姫様だっこ(女性を扱う時は大体これねと父親から言われてるから)で保健室へと向かった。
「すいませ~ん……あれ?誰もいない……」
いつもは保健の先生が常駐してるはずなんだけど……。
「ま、いいか。よっこいせっと……」
お姫様抱っこしていたほむらちゃんをベッドに寝かせて椅子を持ってきてベッドの傍らに設置して座る。
ほむらちゃんは寝ている。という事は気づかれない、よね?
「ねぇ、ほむらちゃん……僕がほむらちゃん達の事好きって言ったら……どうする?」
「すぅ……すう……」
「…………ま、聞こえてるわけないか。一度戻るけど、もう一回くるからね」
僕はそう言って保健室を後にした。
ほむらSIDE
何…何、今の?どういう事……?
『ねぇ、ほむらちゃん……僕がほむらちゃん達の事好きって言ったら……どうする?』
明久に好きって言ってもらえた。
それは嬉しい。でも、今の言葉の中に聞き捨てならない言葉が含まれていた。
『ほむらちゃん
つまりは、私達……見滝原のメンバーの事?
明久が出て行ったのを見計らって、私は体を起こす。
実を言うと、保健室に向かう途中、既に私は意識を取り戻していた。
でも、明久にお姫様抱っこされてるって思うともうちょっとだけって思っちゃったのよね。
そして、まさか……こんな事になるなんて。
「明久……」
私……貴方の気持ちを知って、どうすればいいの?
SIDE OUT
はい、という訳でほむらが「明久は見滝原のメンバー五人が好き」という事を知りました。
これを知ったほむらはどうするのでしょうか。
それはこれからのお楽しみ。