魔法少女と召喚獣   作:レゾナ

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タグを追加します。その理由は本編を見ていただければわかるかと。


第39話 それぞれの夜

雄二SIDE

 

俺は今、翔子と一緒の部屋で読書をしている。

 

「……雄二、考え事?」

 

「ああ、ちょっとな……」

 

俺は考え事をする際、集中する為に活字を見る。

 

それを知っているからこその翔子の言葉だ。

 

というのも……明久達にあんな過去があるとは知らなかったからだ。

 

たった一年間の間に明久は変わった。それはこっちに帰ってきた時のあいつの雰囲気を見れば一目瞭然だ。

 

しかし、そんなことがあるとは知らなかったのだ。

 

しかし、腑に落ちない部分もある。

 

あの美樹の反応……あれは尋常じゃねぇ。つまりは、他にも何か隠している。

 

かといってそれを詮索する気はさらさらないんだが。

 

ところで

 

「……翔子。何をしている?」

 

「……?」

 

「可愛げに首をかしげんな、何で俺の寝ているベッドに侵入しようとしているっ」

 

そう、翔子がなぜか、俺のベッドに侵入してこようとしているのだ。

 

「……実力行使」

 

「落ち着け。その実力行使はちょっとおかしいと思うぞ?」

 

「……大丈夫、お義母さんにもきちんと話をしている。許可ももらった」

 

「おいっ!?ちょっと待て!?今、お母さんの所微妙にニュアンスが違くなかったか!?後、お袋は何を許可してやがんだ!?」

 

俺は叫ばずにはいられなかった。

 

だって、本人の与り知らぬ所で勝手にトントン拍子で話が進んでんだぞ!?

 

おかしいだろ!

 

「……大丈夫、優しくリードしてあげるから」

 

「それは逆だろ、普通!!!」

 

お、俺は負けねぇぞ!!絶対にこの貞操は守ってみせるっ!!

 

こうして、俺の長い長い夜が始まりを告げた。

 

SIDE OUT

 

康太SIDE

 

「……そうだ、少し調べてほしい」

 

『意味わかって聞いてるの?貴方はもう組織とは無関係なの。私から足を調べられたら貴方が生きているという事が上にバレるかもしれないのよ?』

 

俺は今、かつての上司であるある女性に電話している。

 

というのも、明久達の過去について……具体的には、明久が一年間過ごした見滝原での生活が知りたいと思ったからだ。

 

見滝原から帰ってきた明久は何かが違った。それはそう……自分の目的が何なのかわかったかのような感じだった。

 

つまりは、見滝原で何かが起こった。しかし学生の身分では調べられる事には限りがある。だからこそ、彼女を頼っている。

 

「……承知の上だ。それに雄二にも久しぶりに会いたいしな」

 

『はぁ……ホント、9029を襲名する人は何でこう……性格に難がある人物ばかりなのかしら……』

 

「……俺は普通だが?」

 

『自覚がないんだもん……』

 

むぅ……俺は変人なのだろうか?

 

『わかったわ。とりあえず調べてみるから』

 

「……済まない、恩に着る」

 

俺はそう言って通話を切る。

 

「うぅん、康太君……」

 

「……寝言か」

 

俺の隣のベッドでは愛子が眠っている。

 

愛子が俺を指名したのだ。一緒の部屋で寝たいと。

 

俺もそれを快く承諾したのだが……いかんせん、話題がなかった為早々に寝た。

 

しかし、早くに寝た為か夜中に起きてしまい、ふと疑問に思ったので上司に電話で依頼をした、という事だ。

 

「……隠し事をしているのは、俺も同じか」

 

俺は携帯の待ち受け画面を見る。

 

中心には俺がいて、その隣に俺と同じような無愛想な子供が一人。

 

そしてそんな俺ともう一人の頭に手を置いて笑顔になっている女性。

 

これは俺の記憶の中でも一二を争うほど、厳しくも楽しい時間の一ページ。

 

俺と雄二の銃……いや、人生の師匠といっても過言ではない、日下部麻子(くさかべあさこ)との思い出。

 

「なあ、麻子……俺は、元気に、やってる、ぞ……」

 

俺は待ち受けを見ながら眠気が来てしまっていた。

 

俺はそれに抗うことなく、そのまま眠りについた。

 

SIDE OUT

 

秀吉SIDE

 

「ふぅ……いいお風呂じゃった……」

 

「いつも通りの長湯だったわね、秀吉」

 

「よかろう、お風呂は好きなんじゃから」

 

ワシはそう言って自身が寝るベッドに座る。

 

「まあ、足を伸ばして入れるお風呂っていうのもあまり無いものね」

 

「うむ、そうなのじゃ」

 

「それはそうと……秀吉、きちんと巻いてるんでしょうね?」

 

と、姉上はいきなりそんなことを言ってきた。

 

「いや、今は関係ないと思うんじゃが……」

 

「あのね……いつ、どこに誰の目があるかわかんないのよ?あんたのその下らない事に付き合わされるこっちの身にもなりなさい」

 

「うぐ……す、すまんのじゃ……」

 

「ほら、後ろ向きなさい。巻いてあげるから」

 

「あ、朝にでもいいじゃろ?」

 

「その大きい物を見せられるこっちの身にもなりなさいっ」

 

そう言って姉上はワシの()を鷲掴みにしてくる。

 

「ちょ、ちょっと痛いのじゃ姉上!」

 

「ええいうるさい!何よ、何で姉である私じゃなくて()であるあんたの方が胸が大きいのよ!?」

 

「し、知らんのじゃ!あんっ、や、止めるのじゃ……!」

 

胸を揉まれてしまい、少し感じてしまう。

 

「何よ、明久君に揉まれるのを想像して感じちゃってるの?」

 

「ばっ!?な、何を言っているのじゃ姉上!?」

 

いきなりそんな事を言ってきた姉上から急いで離れる。

 

「あのね……もうちょっとポーカーフェイス保ちなさいよ。いつもの秀吉らしくない」

 

「姉上が変な事を言うからじゃろう!?」

 

「はぁ……よくそんなんで明久君に告白したいって言えるわね」

 

「うぐっ……」

 

ワシの心にそんな姉上の言葉が突き刺さる。

 

ここまで言えばわかるじゃろうが、ワシは本当は女子なのじゃ。

 

なぜ男装しているのかと言えば……簡単に言えば、演技力向上の為じゃ。

 

ずっと男として演技しておけば演技力も自然と向上するのではないかと考えたからじゃ。

 

「そ、そういう姉上はどうなのじゃ!?姉上だって明久の事は好きなんじゃろう!?」

 

「うぐ……い、痛い所をついてくるわね……」

 

ワシの言葉に姉上は苦い顔をする。

 

そう、姉上も明久の事が好き。ワシも明久の事が好き。姉妹揃って同じ人を好きになってしまったのじゃ。

 

ワシが明久を好きになった経緯は……いつか語るのじゃ。

 

「……とにかく寝ましょう。このままじゃ互いに互いの傷を傷つき続けるだけだわ」

 

「……そうじゃな」

 

ワシは姉上の言葉に同意しベッドに入る。と、部屋の電気が消えた。姉上が消したのじゃろう。

 

ワシはベッドの中で胸を掴んでみる。

 

「むぅ……」

 

やっぱり、大きいのじゃ……。

 

しかし、大きいとかえって邪魔になるのじゃがな。

 

いや、これは持つ者全員が思っている事なのじゃろう。

 

ワシはそう思い、明久の顔を思い浮かべる。

 

色々な明久の顔が出てきた。

 

笑顔の明久、少しだけ憂いに満ちた顔をした明久、楽しげな表情をしている明久。

 

それらを思い浮かべただけでワシはこんなにも幸せになれる。

 

「明久……好き、なのじゃ……」

 

ワシはそう呟いてから、眠りについた。


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