魔法少女と召喚獣   作:レゾナ

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閑話 その4

あたしの世界にはいつも通りの人たちがいた。

 

でも今日、あたしの世界に新しい人が来る事になる。

 

何でも今日は転校生が来るらしい。

 

「ねぇまどか!転校生どんな人かな?」

 

「わ、私に聞かれても……」

 

「さやかさん、落ち着いてください。どうせ、HRになればわかるんですから」

 

「ちぇ。予想したっていいじゃんよ、仁美」

 

いつも通りのメンバーで登校するあたし達。

 

そんなあたし達の話題は今日来る予定の転校生。

 

何でも親の都合で一年程こちらに来るらしくて、一年間だけ見滝原中学に通う事になるらしい。

 

そして教室について、HRが始まり

 

「前からも言ってたとおり、今日は転校生が来ます。入ってきて」

 

「は、はいっ」

 

何だか緊張しているような声をあげてその転校生は入ってくる。

 

これが、あたしと明久の出会いだった。

 

 

 

「えっと……吉井明久です。父の都合でこの中学に転校してきました。よろしくお願いします」

 

ふぅん。ま、当たり障りない自己紹介ね。

 

ここまではあたしは予想出来てた。

 

しかし

 

「気軽に、ダーリンとでも呼んでくださいっ」

 

これに関しては予想出来なかった。盛大な爆弾だ。

 

というか。だ、ダーリン……?

 

「「「「「………………」」」」」

 

この言葉に反応出来る人がいない……いや、というか反応出来る程脳が追いついてきてないって言えばわかると思う。

 

「すいません!ただ場を和ませようとしたジョークです!ですから、その静かな空気を止めてください!居た堪れなくなりますから!」

 

何だか……普通そうな人なのに、普通な人じゃ出来ない事を平気でやってのけそうな……あたしの明久の第一印象はそんな感じだった。

 

それから、あたし達の輪の中に明久も加わった。

 

そのせいで明久は連日クラス……いや、同学年の全男子から追いかけられてたけど。

 

でも、ケロっとした感じであたし達と合流してたから、単純にすごいって思ったわね。

 

それから時間が経って……あたしとまどか、明久は魔法少女の存在を知った。

 

その時に助けてくれた魔法少女であるマミさんの話では男性が魔女結界に入るには魔女に狙われるしかない。しかも、魔女は主に女性しか狙わないため、男性が狙われる事は滅多にないらしい。

 

しかも……明久には魔女に狙われた証である口付けの後がないみたいで……マミさんは最初の方は結構警戒してたわね。

 

まあ、あたし達も最初は何でだろ?って思ってたんだけど

 

「まあ、案外バカだからじゃないかな?」

 

何て、明久は自分で自分を罵倒していた。その後に自分で「何で僕、こんな事言ってるんだろ……」ってorzしてたけど。というか自業自得よね。言ったのは明久自身なんだし。

 

まあ、そんな裏表の無い性格が幸いしてかマミさんも警戒する事はなくなった。

 

その時に転校してきた暁美と明久の席は隣同士だったため、明久は早速暁美と交流を持とうとした。

 

けど暁美はそれを頑なに拒否。何でなのかはわからない。

 

でも、それでくじける明久じゃなかった。その後もしつこく暁美に関わろうとしていた。

 

ちなみにその時何であんなに冷たくされてるのに関わろうとするの?と聞いたら

 

「え?そんなの友達になりたいからに決まってるじゃないか。それ以外の理由なんてないよ」

 

と、答えられた。ホント、明久って変わってるわねと改めて思ったわね。

 

そしてそれが何度か続いた後

 

「逃げられた……」

 

と、とうとう心が折れたのかどうかわからないけれどあたし達に……というか、まどかに抱きついて泣いた。

 

まあ、泣いた後にケロッとするんでしょうけど……けどね。

 

何であたしじゃないのかね?あたしの方が包容力は大きい……と……思う。

 

そんな思いをのせてあたしは明久とまどかを思わず睨みつけていた。その時はそんな漠然とした思いだった。

 

そして……明久に戦う力が目覚めた。

 

お菓子がモチーフになっているみたいな魔女との戦い……暁美がマミさんと相性は最悪と言っていたけどそんな事はないなと思った時だった。

 

マミさんがトドメをさした筈なのに……顔を伸ばしてマミさんの頭に噛みつこうとした。

 

「危ないっ!!!」

 

皆……あたしもまどかも、喰らわれようとしているマミさんでさえも動けない中、明久だけが動けていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

明久は多分何も考えていない。でも、マミさんを助けたい。その思いだけで……明久は魔女に殴りかかった。

 

その時だった。明久の握り締めた右拳が光り輝き

 

ドッカァァァァァァァン!!!!!

 

魔女を殴り吹っ飛ばしていた。

 

そしてそのまま、その魔女は動かなくなった。

 

あたし達はもちろん……マミさんも呆けた顔をしていた。

 

「……え?」

 

殴った本人が一番呆けていたけど。

 

それから紆余曲折あってあたしも魔法少女になった。

 

あたしの独断でなったけど……マミさんも否定はしなくて、積極的に鍛えてくれると約束してくれた。

 

その後は杏子と出会ったり……その時に明久と杏子が知り合っていた事実に驚いていたけど。

 

その後は会う度に衝突してしまった。だって、杏子は使い魔を見逃して人を襲わせようとしていたから。

 

衝突する度に明久に止められていた。その時に暁美も魔法少女であると知った。

 

それから、あたしは魔法少女の真実を知った。

 

自分の魂を変換して生み出されたのがソウルジェム……つまり、あたし達魔法少女はゾンビと一緒だという事だ。

 

そんな事をあたし達に言ったキュウべぇに明久は

 

「お前、そんな事して何とも思わないのかっ!?」

 

怒った。今まで明久が怒った所は見た事がなかったから、あたしは驚いてた。

 

「何でそんなに怒るんだい?僕は聞かれなかったから答えなかった。ただそれだけだよ?」

 

「だったらそのデメリットもちゃんと説明してから契約するか聞けよ!人間はな、欲深いんだ!お前はそんな人間の心を利用したんだ!」

 

「まったく、君たち人間は……僕には訳が分からないよ」

 

「ああ、そうだろうな!お前と人間は決して歩み寄れたりはしないだろうさ!」

 

そんな言葉を聞いて、あたしは涙が止まらなかった。マミさんも涙を流している。

 

杏子も涙を流していないけど、明久に感謝していると思う。

 

だって明久はこんな体になってキュウべぇに怒らなきゃいけないのに怒れなかった。その代わりに明久は怒ってくれたから。

 

それからはあたしも何とかやれていた。そして決心した。恭介に告白しようと。

 

仁美も告白すると言っていたから。

 

そしてあたしは告白した。

 

「あたし……美樹さやかは上条恭介が好きです。あたしと、付き合ってください」

 

あたしは頭を下げる。

 

「ごめん……さやかとは付き合えない。仁美からも告白を受けて……オッケーをしちゃったんだ」

 

それを聞いてあたしは遅かったんだと絶望した。

 

それからはよく覚えていない。

 

気づけばベンチに座って……気がつけば、あたしのソウルジェムは濁りきり……そこから、あたしの意識はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さ……ん!戻…………!』

 

『……やか!……こ………』

 

『…………!…願い…………望をも……』

 

『美樹……!』

 

あたしを呼ぶ声が聞こえる。

 

あたしは気がつけば暗い……暗い空間にたった一人、だった。

 

「誰もいない……誰も来ない……ここにはあたしだけ……一人ぼっち……!」

 

あたしは泣いた。誰にも聞こえていない。だから、思いっきり泣いた。

 

その時

 

『さやかちゃん!戻ってきて!君は絶望になんか負けない筈だ!』

 

明久の声が、聞こえた。あたしはその声に反応する。

 

「明久……?そんな訳ないか……あたし以外にこの空間にいる訳ないし……」

 

それでも

 

『さやかちゃん!!!!君はまどかちゃんを悲しませたいの!?こんなの誰も望んでない!だから……自分を取り戻すんだ!!』

 

明久の声は聞こえてきた。

 

自分を取り戻す……?それって……どういう事?

 

あたしは意識を集中させて外の光景が見えるようにしようとした。するとうっすらとだが外の景色が見えるようになっていた。

 

その時だった。見えていたあたしの腕……だと思う。でも、その腕は巨大でまるで魔女みたいだった。

 

あたし……魔女になってるの?

 

そんな事実が受け入れる時間も与えられずにあたしは目を疑った。

 

『っ!杏子ちゃん!!』

 

杏子の体を貫こうとしていたあたしの腕に杏子は気づかずにいて明久はそれに気づいた。

 

そこからは……見たくなかった光景が映った。

 

あたしの腕が……明久を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貫いていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……あ、き……………明久ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

あたしはさらに絶望してしまった。あたしの事を心配してくれていた明久を……殺してしまった。

 

腕を急いで抜くように意識を集中させる。それに応えるように腕も明久の体から離れる。

 

明久の体が地面に倒れる。その時、明久の声が小さいながらも聞こえてきた。

 

『僕じゃ何も出来ない、けど……君の希望になってあげるから……』

 

その言葉を最後に明久は目を閉じた。

 

あたしが明久を殺した……?あたしが……明久を……。

 

皆が明久に駆け寄る。

 

あたしは明久の最後の声が耳に残っていた。

 

『君の希望になってあげるから……』

 

あたしが……あたしの希望を殺すの……?

 

そんなの……

 

「そんなの……嫌だ……!」

 

明久を失いたくない……明久がいない人生なんて……考えられない……!

 

あたしが明久を助けるんだ……!

 

明久があたしの希望になってあげるんだったら……あたしが明久の希望になってあげたいから!

 

そう念じると、今まで黒色一色だったこの空間に光が、灯った。

 

そこにいけば、明久の元にいける。そんな直感があった。

 

その直感に従うと……あたしはまどか達とは離れた場所に倒れていた。

 

あたしは手を二、三回握り締めると人間の手だと認識する。

 

戻れたんだ……人間に……でも、どうやって?

 

「いや、それは二の次でいい……!」

 

今は明久を……!

 

まどか達が近寄ってきたあたしを心配するように声をかけてくれるけど、あたしはそれを無視して明久に魔法をかけた。

 

体内の細胞を活性化させて再生速度を早める魔法だ。

 

でも、外側からじゃそこまで効果は出なかった。

 

どうすれば……!

 

(待って……体内に直接魔力を流し込めば……!)

 

いけるかもしれない……!

 

「生きてよ……明久……希望に、なってくれるんでしょ……?」

 

あたしはそう言って……明久の唇に、あたしの唇を重ねた。その際に魔力を明久の体内に流し込む。

 

お願い、上手くいって……!

 

「さ、さささ、さやかちゃん!?」

 

「さやかぁ!?お前、何してんだよ!?」

 

「あらあら……」

 

「…………っ!」

 

あたしは驚いた声をあげた所であたしは今、とんでもない事をしているのだと知った。

 

あたしのファーストキス……明久に捧げちゃった……?

 

「……………っ!!!!????」

 

あたしはもう魔力は注ぎきっていたので急いで離れる。

 

これが……あたしのファーストキス……でも、嫌な感じはしなかった。

 

それよりか……どこか、暖かな感じがした。

 

あたし……嫌じゃない……?明久とキス、して……それってつまり、あたしは明久の事を……。

 

い、いやいや、ないないない!!ついさっき恭介に告白してフラれて、すぐに恋するっておかしいでしょ!?

 

で、でも……嫌じゃないって思える自分もいるし……。

 

と、その時

 

スッ……

 

あたしの首元に、見覚えのある槍が置かれる。

 

そこからは思い出したくない。思い出したらトラウマになりそうだから。

 

それから明久の傷は何とか塞がった。けれど絶対安静なのは変わらない。

 

そんな状況の中であいつは来た。最強最悪の魔女、ワルプルギスの夜が。

 

あたし達は死力を尽くして戦った。

 

でも、敵わなかった。

 

そんな時

 

「明久っ!?」

 

「「「えっ!?」」」

 

暁美の声にまどかがさっきまでいた場所を見る。

 

そこにはまどかの近くにキュウべぇと……何と、病院着を着た明久の姿があった。

 

そこから……明久は突如暴走して……ワルプルギスの夜どころか、あたし達にまで攻撃を仕掛けてきた。

 

「明久っ!?」

 

「明久くん、止めて!?」

 

「あたしたちがわかんねぇのか!?」

 

「吉井明久っ!」

 

あたし達は何度も明久に呼びかけた。

 

でも、明久には届かなかった。

 

全員が戦闘不能になり、倒れている。それでも明久はゆっくりと近づいてくる。

 

(あたしじゃ……明久の希望にはなれないの……?)

 

あたしじゃ……!

 

その時だった。まどかが走り込んできて、明久を抱きしめた。

 

「大丈夫だよ、明久くん……ここには明久くんを傷つける人はいない……だから、ね?」

 

「ウウウゥゥゥゥゥ……」

 

「明久くん……ただ、倒す力じゃないでしょ?明久くんの力は……暖かい力……こんなの明久くんらしくないよ……」

 

「ウウウゥゥゥゥゥゥゥ……マ……マ……ド……カ……チャン……?」

 

「そうだよ、まどかだよ。明久くん……明久くんなら出来るよ」

 

まどかがそう言うと……明久の目に生気が宿っていくのがわかった。

 

「ごめん、まどかちゃん……ありがとう……もう、大丈夫だから……見てて?」

 

明久はそう言って何かを呟くと……明久の手に大きな槍が握られていた。

 

明久はそれを持ってワルプルギスの夜に立ち向かって……ワルプルギスの夜を、倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時、まどかじゃなくてあたしが止めたかったって思ってた自分がいた。

 

多分、この時だろう。明久の事が好きだと素直に認める事が出来た。

 

まどかや暁美……いや、ほむらと杏子、マミさんとライバルは多い。

 

でも、あたしは負けない。だってあたしは明久の……希望になると誓ったんだから。




こんな感じのさやか編でございました。

何気に今までで一番長い文章なんじゃないかな?

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