魔法少女と召喚獣   作:レゾナ

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2014年以内に更新したかったけど……ちょっと遅かった……!

という訳で、新年一発目は過去編でございます!


閑話 その3

あの時のあたしは、とある理由により荒みきってた。

 

でも、あいつ……明久との出会いが、あたしを変えてくれたんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日は、いつも通りにいつもの店からりんごをバレないように万引きして公園でりんごを頬張っていた時だ。

 

「ちょっと、そこの君!」

 

「んあ?」

 

りんごを頬張っていたら、茶髪の男子があたしに話しかけてきた。

 

「さっき、スーパーでそのりんごを万引きしたでしょ!」

 

「は……?」

 

あたしはこいつが何でそれを見てたのかがわからなかった。

 

だって、あの時……あたしは魔法を僅かに使って他の客の意識の外にいたんだから。

 

「何を言ってんのかわかんねぇけど……あたしが、このりんごを万引きしたっていいてぇのか?」

 

「そうだよ!ああ、もう頬張っちゃってるし……とにかく、謝りにいこう!僕も一緒に謝るからさ!」

 

「は?何でお前が一緒に謝るんだ?」

 

「そりゃだって……そのままにしてたら逃げちゃうでしょ、君?」

 

まさか、そこまで筒抜けだとは思わなかった……。

 

「ほら、いくよ!」

 

それがあたし……佐倉杏子と吉井明久の出会いだった。

 

 

 

 

その後、ちゃんと謝りにいったけど……あの店の店主、結構優しいんだな。

 

初めて知ったよ。

 

その後はなぜか知らないけど、ちょくちょくあいつとは会うようになった。

 

「そういえば、君は学校には通っていないの?」

 

「通ってねぇけど?」

 

「ダメじゃないか!学校にはちゃんと通わないと!頭がバカになっちゃうよ?」

 

「じゃあ、試しに聞くけど……円の面積の公式は?」

 

「半径×半径だよ!それくらい中学二年生だったらわかるよ!」

 

ちなみに円の面積の公式は半径×半径×円周率だ。

 

つまり……こいつはそれをわかっていない。

 

「そっちの方がバカじゃないか」

 

「バカって言うなよ!?え、今の答え、間違ってたの!?」

 

「間違いも間違い、惜しかったな。その後に×円周率をつけないと」

 

「え~っと………‥あ…………」

 

こいつ、今思い出したな。

 

「……く、悔しくなんてないんだからなぁ!?」

 

「ぷっ、ふふふ…………はははははははははっ!!」

 

あたしは久しぶりに笑った。ここまで笑えたのは本当、いつぶりだろうと思える位に盛大に笑った。

 

「わ、笑うなよぉ!?僕だって間違える時くらいあるよ!」

 

「あははははははははははっ!やべぇ、久しぶりにこんなに笑ったよ……」

 

この時間が、あたしはいつの間にか楽しみになり好きになっていった。

 

「……………………………」

 

あたしが盛大に笑っているとそいつはあたしの顔を見て呆けていた。

 

「ん?何だ?」

 

「いや……笑ってる時の君の顔が、凄く何ていうか……綺麗に見えたっていうか……」

 

「っ!?////」

 

今のあたしの顔は赤くなっているであろうという事が普通にわかった。

 

「ん、んな事を言うな!?恥ずかしいだろうが!?」

 

「いやいや、本当に綺麗に見えたんだよ。それに可愛いとも思ったし……」

 

か、可愛い!?こいつ、あたしの事を可愛いって言いやがった!?////

 

「へ、変な事言うんじゃねぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!???///」

 

「な、何か叫びながら走っていったんだけど!?ど、どうしたの!?」

 

あたしはひたすら走った。あいつに見つからねぇようにただひたすら走った。

 

あたし、どうしちまったんだよ…………!

 

 

 

 

 

 

 

「杏子、隣町に行ってくれないかな?」

 

「あん?何でだよ?」

 

いつも通り魔女を狩った後、キュウべぇがやってきてそんな事を言ってきた。

 

「いやね、ちょっと隣町に魔女が集まりすぎていると思うんだ」

 

確かに、キュウべぇの言う通りだ。あたしが管理してるこの街にはあまり魔女を見かける事はなくなった。

 

「それに……隣町に妙な男子が現れたんだ?」

 

「妙な男子?」

 

「なんとね、普通の男の子なのに……魔女結界の中に入れて、素手で魔女を倒したんだ」

 

「はぁ?」

 

それを聞いたあたしは信じられなかった。魔法も使わずに倒したって事だろ?

 

「まあ、隣町に行けばわかるよ。今の疑問が解消出きると思うから」

 

まあ、キュウべぇに言われたからそうしたけどな……それに。

 

「あいつに、会えるかもしれねぇし……」

 

あたしがあいつと会ったのはちょうど街と街の境の所だし。

 

 

 

そして、隣町に行って……そこで新しい魔法少女、美樹さやかがいた。

 

「え……っ?」

 

その後ろにいる存在に、あたしは驚きを隠せなかった。

 

「あれ、君は……」

 

そう、そこにいたのは…………あたしに可愛いなどと似つかわしくない言葉を吐いた男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の事をバカって言った女の子!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「…………いや、明久くん(明久)(お前)は元からバカでしょ!?」」」」」

 

「皆してひどくない!?」

 

いや、まさか赤の他人である他の奴らと意見が一致するとはな。あたしはびっくりしたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは、まぁ……何度かさやかとは衝突する事はあったけど、明久に悉く止められた。

 

そして……キュウべぇから魔法少女の真実を知った。

 

何だよ……あたし達はただの入れ物って……。

 

あたしは絶望しそうになった。だって……もう、自分は人間ではないと言われたようなものだから。

 

でも、そんな時

 

「お前、そんな事して何とも思わないのかよ!?」

 

明久がそう言った。

 

…………え?

 

「何でそんなに怒るんだい?僕は聞かれなかったから答えなかった。ただそれだけだよ?」

 

「だったらそのデメリットもちゃんと説明してから契約するか聞けよ!人間はな、欲深いんだ!お前はそんな人間の心を利用したんだ!」

 

「まったく、君たち人間は……僕には訳が分からないよ」

 

「ああ、そうだろうな!お前と人間は決して歩み寄れたりはしないだろうさ!」

 

明久が……怒ってくれた……?

 

あたしたち魔法少女の為に……?

 

本当なら関係ない筈なのに……。

 

全てが終わった後、何で怒ってくれたのか聞いたんだけど……。

 

「何でって……女の子を利用してたんだよ?男の子として怒るには充分過ぎるレベルだと思うけど……」

 

そんな事を言った。明久は本当にバカだなって思えたな。

 

あたしはそれで何だか救われて……何とかなった。

 

でも……さやかは魔女化してしまった。

 

魔法少女は絶望すると魔女になってしまうとこの時、初めて知った。

 

その時に、あたしとさやかは何だか似ているなって思った。

 

だからこそだろう。救いたいって思えた。

 

それにあいつ……バカも同意してくれた。

 

「ねぇ、杏子ちゃん?」

 

「あん?」

 

「僕の名前、吉井明久なんだけど……」

 

「お前の名前はバカで充分だろ?」

 

「だからさ!?ひどくない!?」

 

まあ、その後ちゃんと明久って呼んでやったんだけどな。

 

そしてさやかが変わってしまった魔女と戦ったんだけど……明久は生身でも大丈夫なのか?

 

まあ、あたし達も生身っちゃ生身だけど。

 

でも、そんな変な事を考えていたからか、気づかなかった。

 

ーーーーーーーーあたしを貫こうと魔女の手が伸びている事に。

 

「っ!杏子ちゃん!!」

 

そして、あたしは何かに突き飛ばされた。

 

声で明久ってわかったけど……。

 

そして、振り向いて気づいた。あたしを貫こうとした魔女の手が……明久の体を貫いていた。

 

「明久くーーーーーーーんっ!!!」

 

まどかの悲鳴が結界の中に響き渡る。

 

あたし達は、明久の横たわった体に集まる。とその時、明久が口を動かしたのが見えたけど何て言ったのかわかんなかった。

 

その時……奇跡が、起きた。

 

魔女が苦しみ出したかと思うと光り出して……さやかに戻ったのだ。

 

さやかは意識を取り戻すと、明久に急いで駆け寄る。

 

でも、明久の意識は戻らなかった。それもそうだろう、腹を貫かれているんだから。

 

魔力を注ぐけど……それでも、治らなかった。

 

すると

 

「生きてよ……明久……希望に、なってくれるんでしょ?」

 

そう言って……明久に、キスをした。

 

「さ、さささ、さやかちゃん!?」

 

「さやかぁ!?お前、何してんだよ!?」

 

「あらあら……」

 

「…………っ!」

 

あたし達は驚き、あたしは何でかわかんないけどさやかを追いかけ回した。

 

その後、明久は病院に入院した。

 

貧血という事になってたけど……それでも、最後の戦いには参加できない事は明白だった。

 

暁美ほむらから教えられた事……それは、この街に近い内に最悪の魔女「ワルプルギスの夜」がやってくる事。

 

あたし達は全員で立ち向かったけど……でも、それでも勝てなかった。

 

と、その時

 

「明久っ!?」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

ほむらの声にあたし達はワルプルギスの夜の事も忘れて振り返る。

 

そこには……まどかの肩に手を置いている明久の姿があった。

 

あいつ、何で……貧血っていう理由で入院してたけど絶対安静の筈なのに!?

 

そして、明久はまどかから少し離れると……突如、その雰囲気を一変させてあたし達にまで危害を加え始めた。

 

「明久っ!?」

 

「明久くん、止めて!?」

 

「あたしたちがわかんねぇのか!?」

 

「吉井明久っ!」

 

あたし達は呼びかける。それでも、明久は止まらなかった。

 

全員が戦闘不能状態にまで痛めつけられてしまった。

 

ゆっくりと歩いてくる明久の姿にあたしは恐怖を感じた。

 

(そんなの、お前の本当の姿じゃねぇのに……)

 

そう言おうとしたけど……力が入らなかった。

 

その時、まどかが明久とあたし達の間に割って入ってきて……まどかは明久を抱きしめた。

 

「大丈夫だよ、明久くん……ここには明久くんを傷つける人はいない……だから、ね?」

 

「ウウウゥゥゥゥゥ……」

 

「明久くん……ただ、倒す力じゃないでしょ?明久くんの力は……暖かい力……こんなの明久くんらしくないよ……」

 

「ウウウゥゥゥゥゥゥゥ……マ……マ……ド……カ……チャン……?」

 

「そうだよ、まどかだよ。明久くん……明久くんなら出来るよ」

 

まどかがそう言うと……明久の目に生気が宿っていくのがわかった。

 

「ごめん、まどかちゃん……ありがとう……もう、大丈夫だから……見てて?」

 

明久はそう言って……何かを呟くと、吉井明久の手に大きな槍が握られていた。

 

それを持って明久はワルプルギスの夜へと立ち向かっていった。

 

その姿を見ると……何だか……安心出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きです、付き合ってください!!」

 

「えぇと…………」

 

あの戦いの後、あたしは明久達が通っている見滝原中学に通えるようになった。

 

そして……なぜかあたしは告白されるようになった。

 

理由は全然わかんねぇんだよな……あたしよりまどかとかの方が可愛いと思うんだけど。

 

「すまねぇ、さすがに何も知らない相手と付き合うってのは……」

 

「やっぱりか……」

 

やっぱり?

 

「やっぱりって……玉砕覚悟だったって事か?」

 

「ああ……杏子ちゃんが、明久の事を好きだってのは結構有名な話だし」

 

「ああああ、あたしが明久の事を好きだって!?////」

 

「結構有名な話だけど?」

 

そ、そうだったのか……!?

 

知らぬは本人だけって奴なのかよ……。

 

にしても……あたしが明久の事を好きか、か……。

 

他の男子よりは明久の方が信用出来る。

 

あいつは表裏が全然ないからな。

 

それに……か、可愛いって言ってくれたし……////

 

この時自覚したんだ……あたし、佐倉杏子は吉井明久に恋しているんだって……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選ばれてぇな、明久に…………。


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