告白をどうしようかと、悶えていたら時間になった。時間というのはご飯を食べる時間だ。
「うん、気にしないようにしよう……」
それが出来る程、僕の精神が強ければの話なんだけどね……。
リビングにやってくると……そこには既に料理が並べられており、キッチンから杏子ちゃんがやってきた。
その姿はいつも通り、赤色のエプロン姿だ。
「…………っ!?」
ヤバい!?今まで意識してこなかったけど、意識すると杏子ちゃんのエプロン姿って超可愛い!
「?どうした、明久?」
と、僕に様子がおかしい事に気づいたのか杏子ちゃんがお玉を持ったまま、僕に近づいてくる。
「っ!い、いや、何でもないよ!あ、あはは……」
僕はそう言ってから顔を洗いに行く為に洗面所に向かった。
「……?」
「まったく、アキくんは……」
杏子ちゃんは頭を傾げながら、姉さんは呆れていたけど……。
「はぁ~…………」
僕は教室について机に座った瞬間、頭を突っ伏してしまう。
あ、朝からこんなに疲れるなんて……。
「吉井くん、どうしたの?」
「え?」
僕は顔だけを話しかけてきた優子さんの方に向ける。
「いや、教室に着いて机に座った瞬間に頭突っ伏しちゃったから……」
どうやら、心配してくれたみたいだ。
「ありがとう。大丈夫大丈夫、僕の個人的な問題だから……」
「そう?個人的な問題なら仕方ないけど……どうしようもなくなったら相談してくれていいからね?」
やっぱり、優子さんは優しいな。
「うん、ありがとう。どうしようもなくなったら相談するから」
僕はまた頭を突っ伏して何とか頭を冷やす。
ホント、こういう時に頼りになる人が僕の周りにはあまりいないもんな……雄二に相談しようかなとも思ったけど、あいつの事だから冷やかしてくるのは目に見えてるし……。
康太は康太で何だかそっち方面の想像をして鼻血をだしてお開きになる予感がプンプンとする。
秀吉は秀吉で告白の断り方とかなら熟知してるだろうけど……でもなぁ。
僕が知りたいのは告白の仕方で断り方じゃないからなぁ。
「ホント、どうしよう……?」
僕はそんな呟きを溢しながら先生がやってくるのを待った。
杏子SIDE
明久が変だ。
これは、あたしだけじゃなくあたし達全員が思っている事だと思う。
だって……皆と顔を合わせる度、明久の奴顔を真っ赤にするんだぞ?
どう考えたって怪しい。
あいつの姉ちゃんが来てからだからな……何かを姉ちゃんに言われたのか?
それくらいしか心当たりがねぇからな……。
あたしはそう思ってさやかに話しかける。
「なあ、さやか」
「言わなくても大体はわかってるわ、明久の事でしょ?」
「そうなんだ……明久の奴、何があったと思う?」
「いや、あたしにもわかんないって……事情を知ってるとすれば、明久の姉さんである玲さんだけだろうけど……」
「ああ、教えてくれる可能性は低いもんな」
あの人の明久への過保護はもう常軌を逸しているからな。
まあ、それでもあの人の人を見る目は凄いからあたし達も何も文句は言わないけど。
それに玲さんは口が恐ろしい程固い、というか明久の家族全員。あたし達の事情を知ってるけど未だに誰にも何も話していない。
職場の親しい人間にも話していないみたいなんだよな。
と言っても、本人談だから確証はないけどな。
「明久にそれとなく聞く方法もあるかもしれねぇけど……」
「無理でしょうね」
と、さやかと話していたらほむらとまどかもやってきた。
「まず、今の明久は私たちと面と向かって話をする事自体無理でしょう」
「うぅん、明久くんどうしたんだろう……?」
「坂本にでも頼んでみるか?」
「それが妥当な所でしょうね」
あたし達は坂本に頼むという事に決まり、その場で解散する。
そろそろ次の授業の準備をしなければいけないからだ。
自分の席に向かう前に明久を見つめる。
そこでは、明久は未だに頭を突っ伏していた。
「明久、悩んでるなんてお前らしくねぇよ……あたしん時やさやかの時は何も考えねぇで行動してくれたじゃねぇか」
あたしはそう呟いて、自分の席に着く。
そして教材などを出しながら、中学二年の頃の事を思い出していた。
不良少女だったあたしと、バカな少年だった明久の出会いの事を……。
SIDE OUT
という訳で、次回は過去編杏子視点でございます。
どのようにして、杏子と明久は出会ったのでしょうかね?