魔法科SSシリーズ   作:魔法科SS

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魔法科を読み始めた最初の頃は、兄妹が高校進学する前にはこんな関係をとっくに済ませてたのかな、と思わされていたものでした。だってイチャイチャしすぎですから。

高校生の深雪さんも自分に素直になってがんばってほしい。


※こちらではpixivの投稿作品を転載しています
掲載元:http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=2912471


押しの強い妹【深雪×達也】

「お兄様」

「なんだい、深雪。というか……まだ慣れないな、その呼ばれ方」

「早く慣れてください。深雪にとって、お兄様はそうとしかお呼びしようのない方なのですから」

「善処しよう。で、どうしたんだ?」

「少し確認させていただきたいことが。学校での交友関係を拝見するかぎり、お兄様は恋人がおられないようにお見受けします」

「……恋人? そうだね、今はガーディアンの任務もあるし、俺たちの家庭を知られるわけにはいかないし、そんな仲の人間を作る気はないな」

「でしたら、例えばお兄様が所属なされるという部隊の女性ならば……ということはありませんか?」

「おいおい、それは相手といくつ離れていると思ってるんだ……。仮に同世代の同僚がいたとしても、俺の心は他人を愛するようには出来ていない。それは言っただろう?」

「では今後も、恋人をお作りすることはないということですか?」

「たぶんそうなるんじゃないかな」

「その……。いわば愛がないような、遊びの恋愛もされないと?」

「……。そういう火遊びもリスク面からしないと思うよ。と、いうか深雪も──俺もなんだが──まだ中学生だろう。こういう生々しい話をするのは相応しくないと思うんだけど……」

「申し訳ありません。どうしても確認しておきたかったので」

「それで深雪は、兄貴がモテない男だと確かめて、どうする気だったのかな」

「お兄様がモテないなどと滅相もない……! いえ、失礼なことをお聞きしたことはお詫びいたします。その、お詫びと言ってはなんですが……。お作りになる予定が一切ないのでしたら、わたしを恋人にしていただくのはどうでしょう」

「────えっ?」

「ガーディアンであることが恋人作りの妨げになるのでしたら、わたしと付き合えば何のデメリットもございません。名案でしょう?」

「ちょっと待て。そんな風に両手を広げられてもだな……」

「深雪は、深雪に与えられるものならば、なんでもお兄様に与えて……いえ捧げたいのです。もちろん、お兄様を束縛するつもりはございません。ただ、お兄様は恋人にしかできないようなことを深雪で済ませていただきたいのです」

「いや、そうじゃなくてだな」

「お兄様にはその権利があります。お兄様のような素晴らしい方が、恋人のひとつもできないというのは道理に合いません。ですから、わたしがなります」

 

 

 

「それとも、深雪では恋人としてご不満でしょうか……? ご迷惑ですか……?」

「いや、お前を恋人にできるのは嬉しい」

「まことですか! では……」

「あ、いや、今のは口が滑った。少し落ち着いてください深雪様。あのな、俺たちは兄妹なんだぞ?」

「? 妹であることと恋人は両立すると思うのですが?」

「しないと思うが」

「結婚を前提にしなければいいのです。まったく問題ありません」

「深雪はおかしいと感じないのか……?」

「はぁ……。でしたら妹のままで構いません」

「ほっ」

「恋人の代わりにしていただければ」

「なぜそうなる」

「わがままは申しません。わたしは何もお兄様から求めるつもりはないのですから。ただ、深雪から全てを受け取って……いえ、それも差し出がましいですね。そう、ただ奪い取っていただければいいのです」

「う、奪……って具体的に何をだよっ」

「それはもう、全部です」

「全部って」

「恋人でなかろうと、深雪は全部お兄様のものです。なんでも差し上げられますし、なんでも捧げられます。それが妹というものです」

「妹ってそういうものだったのか!?」

「お兄様のっ! 他にもないお兄様の妹ならばそうなのです! 司波深雪として、これは絶対に変わることのないことです」

「うう……………」

「どうか、お認めいただけないでしょうか……?」

「ああっ、わかった、わかった。泣くな。泣かないでくれ深雪。お前の涙を見るのが俺には一番辛いことなんだから」

「あっ、そんなつもりでは……。でも、それではわたしを恋人になさるということですか……?」

「それにしても深雪は可愛いな」

「えっ」

「あ、イヤ、泣いたと思ったら一気に笑顔になるものだから、あまりにも可愛くて、思わず」

「そんな、もう、お兄様ったら…………嬉しい、ですけど…………。はっきりお答えください……」

「仕方ないから、深雪の好きにしてくれればいいよ」

「あ……………………っ」

「ど、どうしたんだ、大丈夫か?」

「いえ──嬉しいのです。今日というこの日を記念日にしたいくらいです。とても晴れ晴れとした気持ちです。深雪のからだは今、身に余る光栄と、お兄様の妹として生まれた幸福に満ち溢れています!」

「大袈裟だな……。いや、そもそも俺はすごく大きな間違いを犯しているような気も……なんだか、うまく頭が回らなくなってきたが」

「それでは、お兄様の妹兼恋人として相応しいよう、これから一層の努力をすることをここに誓います」

「あ、ええと、その、なんだ」

「それではお時間をお取りしました。そろそろ失礼いたします」

「あ、ああ、おやすみ深雪」

「おやすみなさい、お兄様。明日<あす>からは、お好きなときに、恋人の役目をお申し付けください。なんであろうとお応えしますので」

 

 

「今の言い方は、俺の方から求めさえしなければ何もないって意味なんだよな……? じゃあ明日になっても別に意識しなくて良し、と判断していい、のか? ダメだな、深雪のこととなるといつもの思考が全く働かん……」

「お兄様」

「うわっ!」

「まぁ、お考えごとの邪魔を……。わたしときたら、とんだ粗相をいたしました」

「あー、ボンヤリしてただけなんだ。何も考えてなかったよ。いや本当に。もう寝たと思ってたけど、どうした?」

「その、寝ようとしながら考えていたのですが」

「うん」

「恋人の行いは明日と言わず、今晩からでもいいのですが、ご入用ではありませんか?」

「──うっく、ぐ」

「お兄様……。今のお声、すごく何かを我慢されているような呻き方でしたが。何を耐えておられるのですか?」

「なんでもない、なんでもないから、もうお休み」

「まことですね? 隠し事でしたら、深雪は妹として悲しいです」

「もし何かあったとしても、言えるようになったら必ず話すよ」

「お兄様はいつもそうです……。でもいいでしょう、今晩は誤魔化されてあげますから。真相はきっとこうです。わたしから全てを奪うことが可能となったお兄様は、わたしを傷付けたくないという強い感情で恋人作りの欲望を抑えつけておられるのです」

──そりゃ逆だ。どっちかというと深雪への欲望の方が強くて、なんとか抑えつけてるのが理性の方なんだけど──

「今後は、そのような心遣いは無用だという事実も了解していただくことを目標としましょう。そうですね、少なくとも中学にいる内には。……それではおやすみなさい、お兄様。深雪の覚悟はゆらぎませんので、お申し付けはご遠慮なさらず。絶対ですよ」


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