FAIRY TAIL ~妖精の双竜~   作:駄文帝

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DEAR KABY

一方、ルーシィは屋敷の地下の下水道に居た。

 

そこでルーシィは、倍速で本を読める「風読みの眼鏡」をかけて本を読んでいた。そして本を読み終わったのかパタッと本をとじる。

 

「ま、まさかこんな秘密があった・・・なんて・・・この本は・・燃やせないわ・・・カービィさんに届けなきゃ・・・」

 

そう言ってルーシィが上がった瞬間・・・・

 

「ポヨヨ・・・風読みの眼鏡を持ち歩いているとは・・・主もなかなかの読書家よのう」

 

「やばっ!!」

 

壁から手が伸びてきて両手を押さえられ、鍵を落としてしまうルーシィ。

 

「さあ言え何を見つけたのか?その本の秘密とは何だ?」

 

「痛っ・・!!」

 

壁から出てきたエバルーがルーシィの両手を引っ張り、その痛みに声を上げるルーシィ。

 

「ア・・・アンタなんかサイテーよ。文学の敵だわ・・・」

 

「文学の敵だと!?我輩のような偉~~~~くて教養のある人間に対して・・・」

 

「変なメイド連れて喜んでる奴が教養ねえ・・・」

 

「我が金髪美女メイドを愚弄するでないわっ」

 

「痛っ!いろんな意味で・・」

 

ルーシィの言葉に反応したエバルーが腕を捻り、ルーシィは苦痛の声を上げる。

 

「宝の地図か!?財産の隠し場所か!?その本の中にどんな秘密がある?」

 

「・・・・・!!」

 

エバルーは質問するがルーシィはそれに答えず、足元に落ちた鍵を足で拾おうとする。

 

「言え!言わないと腕をへし折るぞ!!」

 

「・・・・べーー」

 

そう言って舌を突き出すルーシィだが、それが逆鱗に触れたのかエバルーが怒り出し。

 

「調子に乗るでないぞ!!小娘がぁあ!!その本は我輩の物だ!!我輩がケム・ザレオンに書かせたんじゃからな!本の秘密だって我輩のものなのじゃあっ!!」

 

そう叫んでルーシィの腕をへし折ろうとした瞬間・・・

 

「ウインドメイク〝(ホーク)〟」

 

そんな声が聞こえてくると・・・

 

「ぎゃあああああっ!!」

 

風だ出来た鷹がエバルーに衝突し壁ごと吹き飛ばした。

 

「ルーシィさん大丈夫ですか!?」

 

「ルナ!ハッピー!」

 

ルナとハッピーがルーシィの元に近寄ってきた。どうやらさっきの攻撃はルナがやったようだ。

 

「おのれ・・・」

 

「形勢逆転ね。この本をあたしにくれるなら許してやってもいいわよ。一発は殴りケド・・」

 

足元に落ちた鍵を拾い上げたルーシィが鍵を向けて言うと復活したエルバーが指をさして言う。

 

「ほぉう・・・星霊魔法かポヨヨヨ・・・だが文学少女のくせに言葉の使い方を間違えておる。形勢逆転とは勢力の優劣状態が逆になる事だ。翼人が一人と猫が一匹増えたくらいで我輩の魔法土潜(ダイブ)はやぶれんぞ!」

 

「ハッピーさん危険ですので離れていてください!」

 

「あい!」

 

そう言って地面の中にもぐるエバルー。それを見たルナの言葉に従うハッピー。

 

「この本に書いてあったわ。内容はエバルーが主人公のひっどい冒険小説だったの」

 

「何ですかそれは!?」

 

「我輩が主人公なのは素晴らしい。しかし内容はクソだ。ケム・ザレオンのくせにこんな駄作をかいおって!けしからんわぁっ!!」

 

「無理矢理書かせたくせになんて偉そうなの!?」

 

「偉そう?我輩は偉いのじゃ!!その我輩の本を書けるなどものすごく光栄な事なのじゃぞ!!」

 

「脅迫して書かせたんじゃないっ!!」

 

「脅迫?」

 

エルバの攻撃をルーシィとルナがかわしながら会話をする。

 

「それがなにか?書かぬと言う方が悪いに決まっておる!!」

 

「なにそれ・・・」

 

「こんなひとが・・」

 

まったく反省を見せないエバルーに呆れるルーシィとルナ。

 

「偉ーーいこの我輩を主人公に本を書かせてやると言ったのに、あのバカは断りおった。だから言ってやったんだ。書かぬというなら奴の親族全員の市民権を剥奪するとな」

 

「市民権剥奪って・・・そんなことされたら商人ギルドや職人ギルドの加入できなくなるではないですか!こんな人にどうして!?」

 

「封建主義の土地はまだ残っているのよ。こんな奴でもこの辺りじゃ絶対的な間力をふるってるって訳」

 

驚きを隠せないルナにルーシィはそう答える。

 

「結局奴は書いた!!しかし一度断った事はムカついかから、独房で書かせてやったよ!!ボヨヨヨヨヨ!!やれ作家だ文豪だ・・・とふんぞり返っている奴の自尊心を砕いてやった!!」

 

「自分の欲望のためにそんな事までしたんですか!!」

 

「独房に監禁された3年間!!かれはどんな思いでいたかわかる!?」

 

「3年間も・・・!?」

 

「我輩の偉大さに気づいたのだ!!」

 

「違う!自分のプライドとの戦いだった!!書かなければ家族の身が危ない!!だけどアンタみたいな大バカを主人公にした本なんて・・・作家としての誇りが許さない!!」

 

「ルーシィさん・・・」

 

ルーシィの言葉を聞いてその事を考え声を漏らしてしまうルナ。

 

「貴様・・何故それほど詳しく知っておる?」

 

「全部こと本に書いてあるわ」

 

そう言って本を掲げるルーシィ。

 

「はぁ?それなら我輩も呼んだ。ケム・ザレオンなんて登場せんぞ」

 

「もちろん普通に読めばファンもがっかりの駄作よ。でもアンタだって知っているでしょ?ケム・ザレオンは元々魔導士」

 

「な・・・!!まさか!!」

 

「え・・それって?」

 

「彼は最後の力を振り絞って・・この本に魔法をかけた」

 

「魔法を解けば我輩への恨みを綴った文章が現れる仕組みだったのか!?け。けしからん!!」

 

「発想が貧困ね。確かにこの本が完成するまでの経緯は書かれていたわ。だけどケム・ザレオンが残したかった言葉はそんな事じゃない。本当の秘密は別にあるんだから」

 

「!!」

 

「な・・・っ!なんだと!!」

 

「だからこの本はアンタがには渡さない!!てゆーかアンタには持つ資格なし!!」

 

そう言ってルーシィは鍵を構える。

 

「開け!!巨蟹宮の扉・・キャンサー!!」

 

そう言うとルーシィの前に、背中から蟹の足を生やし両手に鋏を持った人型の星霊「キャンサー」が現れた。

 

「蟹ですか!?」

 

「ルーシィ・・・今日はどんな髪型にするエビ?」

 

「えーと、語尾はカニではないんですね・・・」

 

語尾がカニではなくエビだっと言う事を知って少し困惑した表情を浮かべるルナ。

 

「戦闘よ!!おのヒゲオヤジをやつけっちゃって!!」

 

「OKエビ」

 

そんなやり取りをしていると突然エバルーが声を上げ鍵を構えた。

 

「ぬぅおおおおっ!!開け!処女宮の扉!!」

 

「え!?」

 

「ルーシィさんと同じ魔法!?」

 

「バルゴ!!」

 

「うそぉ!?」

 

そう叫ぶと現れれたには・・・

 

「お呼びでしょうか?ご主人様」

 

あのメイドゴリラであった。

 

「バルゴ!!その本を奪えっ!!」

 

「こいつ・・・星霊だったの!?」

 

メイドゴリラ・・・バルゴが星霊だった事に驚くルーシィだが。

 

「あっ!!」

 

「あ!!」

 

「あ!!」

 

「あ!?」

 

バルゴのある所を見て遠くに離れて居たハッピーも含めた全員が驚いた。なぜならそこには・・・

 

「「ナツ!!」さん!!」

 

「お!?」

 

ナツが居たからである。

 

「なぜ貴様がバルゴと!?」

 

「あんた・・どうやって・・・!?」

 

「どう・・って、あいつら倒した後コイツが動きだしたから、後をつけてきたらいきなり・・・訳がわかんねーー!!」

 

「「つけて」ではなくて「つかんで」ですよナツさん!」

 

ルナが言う通り、ナツはバルゴの服を掴んでいた。

 

「まさか・・人間が星霊界を通過してきたって言うの!?」

 

「そんなのありえません!!」

 

動揺しているルーシィとルナにナツが声をかける。

 

「ルナ!ルーシィ!オレは何すりゃいい!?」

 

その言葉に我に返ったルーシィとルナは、お互いに見つめあった後・・・

 

「そいつをどかして!!」

 

「エバルーは私達でどうにかします」

 

と言った。

 

「おう!!どりゃあっ!!」

 

「ぼふおっ!」

 

「なにィ!!」

 

その返事を聞いたナツは一撃でバルゴを沈める。

 

「ウインドメイク〝(ウルフ)〟」

 

「んぷっ」

 

その瞬間ルナが風で出来た狼でエバルーを空中に吹き飛ばした。

 

「空中では、その魔法は使えませんよね?ルーシィさん、キャンサーさん今です!!」

 

「うん!」

 

「エビ」

 

ルナの言葉に、二人が頷き、ルーシィは鞭を構える。

 

「アンタなんか・・・ワキ役で十分なのよっ!!」

 

「ボギョオ!!」

 

そう言いながら飛び上がり、ルーシィとキャンサーと同時に攻撃を浴びせ、エバルーを気絶させた。

 

「結局ハデにやってしまいましね」

 

「ははっ。さすが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ」

 

「あい」

 

そう言ってみんなが笑っている中、ルーシィは本を大切そうに抱えていた。

 

 

 

 

その後カービィの屋敷に戻って来たナツたちは、盗んできた本をカービィに差し出していた。

 

「こ、これは一体・・・どういう事ですかな?私は確か破棄してほしいと依頼したハズです」

 

「破棄するのは簡単です。カービィさんにだってできる」

 

「だ、だったら私が焼却します。こんな本・・見たくもない!!」

 

そう言ってカービィがルーシィから乱暴に本を奪い取る。

 

「あなたがなぜこの本の存在を許せないのはわかりました」

 

「!!」

 

「父の誇りを守るためです。あなたケム・ザレオンの息子ですね?」

 

「うおっ!!」

 

「え!?」

 

「パパーーー!?」

 

ルーシィの言葉にナツとルナとハッピーが驚く。

 

「な、なぜ・・それを・・・」

 

「この本を読んだ事は?」

 

「いえ・・父から聞いただけで読んだ事は・・・しかし読むまでもありません。駄作だ、父が言っていた・・・」

 

「だから燃やすって?」

 

「そうです」

 

その言葉を聞いたナツは怒りの形相でカービィを詰め寄った。

 

「つまんねえから燃やすって、そりゃああんまりじゃねぇのか!?父ちゃんが書いた本だろ!!」

 

「ナツさん落ち着いてください!」

 

「言ったでしょ!誇りを守る為だって!!」

 

怒鳴るナツをルーシィとルナが押さえる。

 

「ええ・・父は〝日の出(デイ・ブレイク)〟を書いた事を恥じていました」

 

 

そう言ってカービィは過去をかたった。

31年前、突然帰ってきた父が作家を辞めると言って腕を切り落としたこと。

その後、入院した父憎んで罵倒したこと。そしてそのあとすぐに自殺したこと。

 

 

「しかし年月が経つにつれ憎しみは後悔へと変わっていった・・・私があんな事を言わなければ父は死ななかったかもしれない・・と」

 

そう語るカービィに誰も言葉を言わない。

 

「だからね・・・せめてもの償いに父の遺作となったこの駄作・・・父の名誉の為にこの世から消し去りたいと思ったんですよ」

 

そう言ってカービィはポケットからマッチを取り出して、火をつけそれを本に近づける。

 

「これできっと父も・・・」

 

「待って!」

 

ルーシィが叫ぶと同時に本が光りだす。

 

「え?」

 

「な、何だ・・これは・・・!!」

 

突然の出来事にカービィが驚いていると、本のタイトルの文字が浮かびだす。

 

「文字が浮かんだーーーっ!」

 

「ケム・ザレオン・・・いいえ、本名はゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけた」

 

「ま、魔法?」

 

ルーシィが説明している間にタイトルの文字が入れ替わって本に戻る。そこに書かれたタイトルは・・・

 

DEAR(デイア)・・KABY(カービィ)!?」

 

「そう・・・彼のかけた魔法は文字が入れ替わる魔法です。中身も全てです」

 

ルーシィがそう言うと本から無数の輝く文字が出てきた。

 

「おおっ!!」

 

「すごい・・」

 

「きれー」

 

「彼が作家を辞めた理由は・・・最低な本を書いてしまった事の他に・・・最高の本を書いてしまった事かもしれません・・カービィさんへの手紙という最高の本を」

 

そして文字が本の中に収まる。

 

「それがケム・ザレオンが本当に残したかった本です」

 

「父さん・・・私は父を・・・理解できてなかったようだ・・・」

 

そう言って涙を流すカービィ。

 

「当然です。作家の頭の中が理解できたなら、本を読む楽しみがなくなっちゃう」

 

「ありがとう。この本は燃やせませんね・・・」

 

「じゃあオレ達も報酬いれねぇな」

 

「だね」

 

「そうなりますね」

 

「え?」

 

「はい?」

 

ナツたちの言葉にカービィとルーシィが呆然とする。

 

「依頼は「本の破棄」だ。達成してねぇし」

 

「い、いや・・しかし・・・そうゆう訳には・・・」

 

「ええ・・・」

 

「そ、そうよ・・せっかくの好意なんだし・・いただいておきましょう・・」

 

「あーー!ルーシィがめつーー!!さっきまで結構いい事言ってたのに全部チャラだ」

 

「それはそれ!」

 

「いらねえモンはいらねえよ」

 

そう言ってナツは笑いながら出口に向かっていく。

 

「かーえろっ。メロンも早く帰れよ、自分の家」

 

「「!!」」

 

「え?」

 

最後にナツが言った言葉に、メロン夫妻は驚き、ルーシィは首をかしげていた。

 

 

 

 

「信じらんなーい!!普通200万チャラにするかしらーーー!!」

 

「依頼達成してねぇのに金もらったら妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士の名折れだろ」

 

「あい」

 

「全部うまくいってんだからいいじゃないのよぉっ!!」

 

「そう言うことではないんですよルーシィさん」

 

帰り道、ルーシィは報酬が貰えなかった事に文句を言っていた。ちなみに帰りは、ナツが渋ったために徒歩である。

 

「はぁーあの人たちお金持ちじゃなかったのかぁ・・・作者の息子のくせに何でよぁ~。あの家も見栄をはる為に友人から借りたって言ってたし・・・そんな事しなくても依頼引き受けてあげたのにね」

 

「どうかな?」

 

「引き受けたわよっ!!たぶんね。てゆーかアンタ何で家・・気づいたの?」

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は鼻がいいらしいですよ」

 

そんなルーシィの疑問にルナが答えた。

 

「あの小説家・・実はスゲェ魔導士だよな」

 

「あい・・・30年も昔の魔法が消えないなんて相当の魔力だよ」

 

「若い頃は魔導士ギルドにいたみたいだからね。そしてそこでの冒険の数々を小説にしたの。憧れちゃうなぁ~」

 

「やっぱりなぁ~~~。」

 

ナツが意地悪そうな笑みを浮かべる。

 

「前・・ルーシィが隠したアレ・・」

 

アレちは、この仕事に行く前にルーシィの家で見つけた紙束の事だ。

 

「自分で書いた小説だろ」

 

「やたら本の事詳しい訳だぁ~~~!!」

 

「だから隠したんですか?」

 

そう言われたルーシィの顔が赤く染まる。

 

「ぜ、絶対他の人には言わないでよ!!」

 

「何で?」

 

「趣味は自由でいいと思いますけど?」

 

「ま、まだヘタクソなの!読まれたら恥ずかしいでしょ!!」

 

「いや・・・誰も読まねぇから」

 

「それはそれだちょっぴり悲しいわっ!!」

 

そんなやり取りをしながらマグノリアの街に戻っていった。

 

 




次の話はオリジナルの話を投稿したいと思っています。量は予定では1.5~2話くらいの予定です。
それと、レイですが次のオリジナルの話に戦闘シーンはないですが登場しますので待ってくれるとうれしいです。

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