FAIRY TAIL ~妖精の双竜~   作:駄文帝

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永遠の魔法

「まずは氷魔法の基礎からだった」

 

ウルに弟子入りしたグレイは、リオンとウルと共に雪山に来ていた。

 

「グレイ・・・ついてこれるか?私の修行は厳しいぞ」

 

「おう!!なんだってやってやらぁ!!デリオラを倒せる力が手に入るなら、何だってやるさ」

 

それを聞いたウルは突然服を脱ぎ始める。

 

「な・・・何してんだ!?」

 

グレイは当然それに動揺する。

しかしウルはその声に耳を貸さず、下着だけになる。

 

「お前も服を脱げ」

 

「ふざけんなっ!!こんな雪山で服なんか脱げるか!!」

 

グレイは声を荒上げるが、リオンは慣れているようで服を脱ぎ始める。

 

「あんた女だろ!!恥ずかしくねぇのかよ!!」

 

「はんっ、ガキの前で下着になったくらいで」

 

ウルは特に気にしていないようだった。

 

「冷気を操りたければ、冷気と一つになれ。まずはそこからだ」

 

「くそぉぉぉぉ!!」

 

グレイは服を脱がされ、体を震わせている。

 

「すぐになれるさ」

 

「てめぇも震えてんじゃねーか!!」

 

グレイに声をかけるリオンもグレイほどではないが、体を震えさせている。

 

「来い走るぞ」

 

「オイ!!魔法教えろよ!!」

 

「いいから走れよ。オレまで基礎に付き合ってんだぞ」

 

そして修行が始まった。

 

「いいか、数ある魔法の中でも、造形魔法は〝自由〟の魔法だ。作り出す形は十人十色、術者の個性が最も出る魔法だ。精進せよ。そして己の〝形〟を見つけ出せ」

 

 

 

 

 

「あんたんトコの弟子・・・一人増えたの?あらかわいい」

 

「グレイってんだ。反抗的で困るわ~」

 

「二人とも将来男前になりそうね」

 

街にやって来た三人は買い物をしていた。

ウルはリンゴを齧りながら、店の店員と思われる女性と話してした。

 

「ねぇん、大っきくなったらどっちかちょうだいよ」

 

「両方やるよ。毎日うるさくてかなわん」

 

「あんた子持ち見られるから、男が寄り付かないのかしらね~」

 

「よけーなお世話」

 

そう言いながら金を払うウル。

 

「ウルもいい歳なんだから、そろそろ自分の幸せ考えてもいいんじゃないの?」

 

 

 

 

 

一方その後ろにいたグレイとリオンは話をしていた。

 

「なぁグレイ。オレたちはあとどれくらいで、ウルを追い越せるかな?」

 

「興味ない」

 

「ウルはオレの目標なんだ。いつかウルに勝つ事がオレの夢なんだ」

 

「興味がねえって言ってんだろ。それに聞き飽きた」

 

眼をキラキラさせて語るリオンとは対象に、グレイの表情は暗い。

 

「オレはデリオラを倒せればそれでいい。力さえ手に入れたら、あのクソ女ともおさらばだ」

 

「だ~れがクソ女だってコラァ!!」

 

「って」

 

戻って来たウルがグレイの頭を叩いた。

 

「いつになったら魔法、教えてくれるんだよ」

 

「もう教えているじゃないか」

 

「造形魔法のどこが強ぇ魔法だよ!!こんなモン何も役に立ちやしねぇ」

 

グレイはそう叫ぶがウルは真剣だ。

 

「言っただろう?造形魔法は自由の魔法、己の形を見つけた時、それはいくらでも強くなる」

 

「ケッ」

 

「てか何でこんな所で脱いでんのよ!!」

 

「な・・・!!くそっ!!お前のせいで変な癖がついた!!」

 

いつの間にか服を脱いでいる事を指摘されるグレイ。

どうやらグレイの脱ぎ癖はウルの修行でついたらしい。

そんな時、とある会話が聞こえていた。

 

「そーいや、デリオラの話聞いたか?北の大陸に移動したらしいな。ブラーゴあたりにいるってよ」

 

「マジか!!じゃあイスバンに平和が戻ったのかよ!?」

 

「ブラーゴに・・・」

 

そしてそれを聞いたグレイは・・・

 

 

 

 

 

「よせ!!デリオラになんか勝てる訳がないだろ!!お前じゃ無理だグレイ!!」

 

ウルがそう叫ぶ。

 

「うるせえよ。お前なんかにわかるかよ。オレは父ちゃんと母ちゃんの仇をとるんだ!! 何か文句があんのかよ!!」

 

「出て行けば破門にする!!」

 

「ああ・・・せいせいするよ!!」

 

そして小屋を飛び出したグレイは小さく呟いた。

 

「オレが死んだらもっと強い魔法を教えてくれなかったアンタを恨む」

 

 

 

 

「遺跡が・・・傾いて・・・る?」

 

「どうなってんだーーー!?」

 

ルーシィたちは傾いた遺跡を見て驚いていた。

 

「ナツとレイだな」

 

「そうだね。こんなデタラメな事をするのは、あの二人位だしね」

 

「でもこれで、地下のデリオラには月の光が当たりませんね」

 

すると辺りの草むらがガザガザと揺れ始める。

 

「待て!!誰かいる」

 

そして音が徐々に大きくなり、そして・・・

 

「見つけたぞ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

月の雫(ムーンドリップ)を行なっていた覆面集団が草むらから現れた。

 

「うわあっ!!」

 

「変なのがいっぱい!!」

 

それを見たエルザとクリスとルナは、一瞬顔を見合わせう頷く。

 

「グレイは先に行って」

 

「!」

 

「ここ私達に任せてください」

 

「お前ら・・・」

 

二人の言葉にグレイだけでなく、ルーシィとハッピーも驚く。

 

「リオンとの決着をつけてこい」

 

エルザの言葉に頷いたグレイ、そして一人遺跡の方に向かって行った。

 

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・まいったな・・・ここまで強いとは・・・」

 

時は十年前、そこにはボロボロになっているウルと無傷のデリオラが対峙していた。

グレイとリオンはその近くで気絶している。

デリオラが口から炎を放つ。

ウルは息を荒くしながらも二人の弟子を抱えて避けていた。

 

「うぁぁぁぁっ!!」

 

「グレイ!!」

 

目を祖ましてグレイが暴れるが、ウルはグレイを抱きしめる。

 

「大丈夫、もう大丈夫だ」

 

「ウル・・・!?え・・・?何で・・・!?」

 

正気に戻ったグレイはようやく現状を把握する。

 

「いいからリオンをつれて離れろ・・・庇いながらじゃ戦いづらくてしょうがない」

 

「リオン?」

 

「ダウンしているがな」

 

「ひぃ」

 

デリオラを見たグレイは尻餅をつく。

 

「早く行け!!さっさとコイツを片付けてやるからっ!!」

 

リオンを担いだグレイがウルにたずねる。

 

「な、何で・・・き、来たんだ・・・オ、オレ・・・破門・・だろ?」

 

「以前・・・友人に自分の幸せについて考えろと言われたんだ。そんな不幸そんなツラをした覚えはないんだけどね」

 

ウルはそう言って振り返る。

 

「だってそうだろ?かわいい弟子が二人もいて、日に日に成長しにぎやかな毎日。十分幸せだ」

 

ウルは立ち上がる。

そしてグレイはあることに気づいた。

 

「その幸せを取り戻す為に来た」

 

「ウ、ウル・・・いや・・そ、その・・その・・足・・・」

 

そうウルの右足はなくなっており、変わりに氷の足がそこにあった。

 

「持っていかれたが気にする事はない、素晴らしいだろ?造形魔法は」

 

「ひっ・・・ひ・・・いっ・・・ひっ・・・」

 

「あの怪物がお前の闇ならば、私にも戦う理由があるという事だ」

 

目標を失ったデリオラは、彷徨っている。

 

「だ、ダメだ・・・オレは行けない・・・こんな事になったのはオレのせいだ・・・」

 

「誰のせいでもない。幸せを取り戻す為の試練だ」

 

その言葉にグレイは顔を上げた。

しかしその場にいた誰もがリオンがその言葉を聞いているの知らなかった。

 

 

 

 

「チィッ」

 

「ぬおぉっ」

 

ナツと炎とリオンが氷がぶつかっていた。

 

「ん?」

 

「!」

 

すると突然、氷の壁にヒビが入る。

ピキピキと音を立てながら徐々にヒビは大きくなっていく。

 

「なんだ?」

 

 

 

 

「ウル・・・本気でやっているの?」

 

リオンが小さく呟く。

 

「リオ・・」

 

「幸せとか・・・何ソレ・・・」

 

リオンは自分を担いでいたグレイを突き飛ばす。

 

「ウルは最強の魔導士・・・あんな怪物ごときに勝てないハズないだろう?」

 

「リオン・・・前にも言っただろ?上には上がいる。西の国へ行けば私より強い魔導士なんか山ほどいる」

 

「そんなのいない・・・ウルが最強だ」

 

「じゃないと・・・オレ・・・何の為に修行していたか・・・」

 

「私を超えた時は、次なる高みの目標を見つければいいだろう?」

 

ウルはそう言うがリオンは全く取り合わない。

 

「オレはアンタが最強と信じて弟子入りしたんだ・・・あんな怪物に負けるなよ・・・オレを裏切るなよぉ・・・」

 

「リオン・・・」

 

ウルはため息をつく。

 

「アンタが本気を出さないなら、オレがやる」

 

「その構え・・・!!一体何処でその魔法を!!」

 

「え?」

 

リオンが両腕をクロスさせる。

するとリオンの体を徐々に魔力が包み込む。

 

「アンタがなかなか強い魔法を教えてくれないから、倉庫の魔道書を読ませてもらった。こんな強い魔法を隠してたんだ・・・〝絶対氷結(アイスドシェル)〟」

 

「絶対氷結《アイスドシェル》!?」

 

「リオン!!その本最後まで読んでないだろ!!その魔法を使った者は・・・」

 

ウルはそう叫びながらリオンの服を掴むが・・・

 

「うあっ!!」

 

「ウル!!」

 

リオンの凄まじい魔力によって吹き飛ばされてしまう。

そしてその魔力を探知したデリオラがこちらを向く。

 

「す、凄まじい魔力だ・・・」

 

「チッ、気づかれた」

 

「デリオラにはどんな魔法も効かない・・・ならばこの魔法で永久に閉じ込めてやる」

 

リオンはそう呟いて魔法を発動させようとするが・・・

 

「その魔法を使ってはならん!!」

 

その前にウルがリオンを氷の中に閉じ込めた。

 

「ウル!!何を・・・」

 

「ダメなんだ・・絶対氷結《アイスドシェル》は・・・使った者の身を滅ぼす」

 

その言葉にグレイは目を見開く。

 

「しかし・・アイツを倒すにはこれしかないのも事実・・・まさか・・・私がやろうとしていた事をリオンがやろうとするとはな・・・さすがは弟子だ」

 

ウルは微笑む。

 

「や、やろうとしてた・・って・・・」

 

「下がってろ」

 

ウルは前に飛び出しリオンと同じ構えを取る。

 

「ウル!!」

 

「私の弟子には近づかせないっ!!これで終わりだ!!バケモノォ!!」

 

そしてクロスしていた手を横に開いた。

 

絶対氷結(アイスドシェル)!!」

 

「ウルーーー!!」

 

グレイがウルの元に走っていく。

ウルの顔にピキッとヒビが入る。

 

「か、体が・・・」

 

「言っただろう?この魔法は身を滅ぼす。自らの肉体を氷に変える魔法なのだ。永久にな」

 

「!!」

 

グレイの目が見開く。

ウルはグレイの方に顔を向ける。

 

「グレイ・・頼みがある。リオンのは私が死んだと伝えてくれ」

 

「え?」

 

「アイツの事だ。私が氷になったと知れば、この魔法を解く為に人生を棒にふるだろう」

 

「だ、ダメだ・・・」

 

「それでは私が氷となる意味がない」

 

「やめろ・・・!!」

 

「リオンにはもっと世界を見てもらいたい」

 

「やめろぉぉぉっ!!」

 

涙を流しながらグレイはウルの元に必死に近づこうとするが、魔力によって吹き飛ばされてしまう。

 

「グレイ・・・もちろんお前にもだ」

 

「頼み・・・もうやめてくれ・・・これからは何でもいう事聞くからぁ・・・」

 

涙で顔をぐちゃぐちゃにしたグレイがそう言う。

するとウルは振り返った。

 

「悲しむ事はない。私は生きている。」

 

その顔を笑顔だった。

 

「氷となって永遠に生きている」

 

氷となったウルの体はデリオラを包み込んでいく。

 

「歩き出せ、未来へ」

 

「ウルーーーーッ!!」

 

グレイの叫び声が辺りに木霊す。

そして

 

「お前の闇は私が封じよう」

 

ウルは完全に氷になった。

 

 

 

 

その翌日、リオンが目を覚ました。

 

「な・・・デリオラが!!」

 

リオンには氷の中に封じられたデリオラが目に入った。

 

「ウルは!?ウルはどうした!?」

 

リオンは辺りを見渡すがウルの姿は一向に見えない。

そしてグレイが小さく呟いた。

 

「し、死んだ」

 

その言葉に信じられないといった目でグレイを見るリオン。

そしてグレイが流した涙を見て、ようやく声を出した。

 

「うそ・・だ・・うそだぁーーーっ!!」

 

リオンは叫び声をあげた後、グレイの胸倉を掴みあげる。

 

「オレの夢はどうなる!?ウルを超える夢はどうなるんだーーっ!!ええ!?」

 

「ごめん・・・」

 

「くそっ、くそぉっ!!」

 

そしてリオンの目からも涙が流れる。

 

「おまえさえ・・・おまえさえデリオラに挑まなければ・・!!お前のせいだ!!グレイ!!」

 

そして。

 

「お前がウルを殺したんだ!!」

 

 

 

 

氷の壁の一部が崩れ落ち、そこからグレイが現れた。

 

「ナツ、レイ・・・こいつとのケジメはオレにつけさせてくれ」

 

「てめぇ!!一回負けてんじゃねーか!!」

 

「それに、酷い怪我をしている」

 

「次はねぇからよ。これで決着だ」

 

グレイの気迫に、二人は黙り込む。

 

「たいした自信だな」

 

「10年前・・ウルが〝死んだ〟のはオレのせいだ。だが・・仲間をキズつけ・・村をキズつけ・・あの氷を溶かそうとするオマエだけは許せねぇ」

 

そしてグレイは手をクロスさせる。

 

「共に〝罰〟を受けるんだ、リオン」

 

「そ、その構えはっ!?」

 

「「?」」

 

何も知らないナツとレイは首を傾げていた。




明日から日曜日までは何も予定が入ってないので、早く投稿できると思います。

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