FAIRY TAIL ~妖精の双竜~   作:駄文帝

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月の雫

「厄災の悪魔・・・?」

 

グレイから目の前の怪物「デリオラ」の名前を聞いたナツがそう呟いた。

 

「あの時の姿のままだ・・・どうなってやがる・・・」

 

するとカツカツっと足音が聞こえてきた。

 

「しっ、誰か来たわ!」

 

「ひとまず隠れましょう!」

 

「何で?」

 

「ナツ、隠れる」

 

全員が岩場に姿を隠す。すると・・・

 

「人の声がしたのはこの辺り」

 

「おお~ん」

 

青髪の太い眉毛の男と犬耳をした男だった。

 

「昼・・・眠い・・・」

 

「おおーん」

 

「お前、月の雫(ムーンドリップ)浴びてね?耳とかあるし」

 

「浴びてねぇよっ!!」

 

眉毛男の言葉にキレる犬耳男。

 

「飾りだよ!!わかれよ!!」

 

「からかっただけだ、バカ」

 

「おおーん」

 

そう言って周りをうろつく二人。

 

「月の雫《ムーンドリップ》?呪いの事かしら?」

 

「とりあえず、何か関係ありそうだね」

 

そんな会話しているともう一人現れた。

 

「ユウカさんトビーさん悲しい事ですわ」

 

「シュリー」

 

「おおーん」

 

声を掛けられた眉毛男「ユウカ」と犬耳男「トビー」が答える。

 

「アンジュリカが何者かの手によっていたぶられました・・・」

 

「ネズミだよっ!!」

 

アンジェリカとは、話の内容から先ほどに巨大ネズミの事だろう。

 

「ネズミじゃありません・・・アンジュリカは闇の中を駆ける狩人なのです。そして愛」

 

そう言っているのは赤髪をツインテールにしてゴスロリ服を着た女「シェリー」。

 

「強烈にイタイ奴が出てきたわね」

 

「あいつらこの島のモンじゃねぇ・・・」

 

「うん。ニオイが違う」

 

「それに呪われてる感じがしないな」

 

ナツたちが三人組について話し合う。

 

「侵入者・・・か」

 

ユウカの言った「侵入者」も言葉にドキッとする一同。

 

「もうすぐお月様の光が集まるというのに・・・何て悲しい事でしょう・・・」

 

シェリーはデリオラを見上げた後、二人に振り返り。

 

「零帝様のお耳に入る前に駆逐いたしましょう。そう・・・お月様が姿を現す前に・・・」

 

「だな」

 

「おおーん」

 

「デリオラを見られたからには、生かしては帰れません。侵入者に永遠の眠り・・・つまり〝愛〟を」

 

「〝死〟だよっ!!殺すんだよっ!!」

 

そんな会話をしながら三人は去っていく、一同はそれを見計らって岩場から姿を現す。

 

「何だよ。とっ捕まえていろいろ聞き出せばよかったんだ」

 

「まだもう少し様子を見ましょ」

 

「ルーシィの言う通りだな。もう少し様子を見てからでも遅くない」

 

「なーんか、ややこしい事になってきたなぁ」

 

「何なんだろうねあいつ等」

 

「話を聞く限り、零帝って言う人が親玉みたいですけど」

 

すると先ほどから黙り込んでいたグレイが口を開いた。

 

「くそ・・・あいつ等、デイオラを何のためにこんな所に持ってきやがった。つーかどうやってデリオラの封印場所を見つけたんだ・・・」

 

「封印場所?」

 

「ここに封印されてたんじゃないの?」

 

その言葉にナツとクリスが首を傾げる。

 

「こいつは北の大陸の氷山に封印されていた」

 

「え?」

 

「10年前・・・イスバン地方荒らしまわった不死身の悪魔。オレに魔法をおしえてくれた師匠、ウルが命をかけて封じた悪魔だ」

 

その言葉にグレイ以外の全員が驚く。

レイはいつもものごとく無表情だが。

 

「この島の呪いとどう関係しているがわからねぇが・・・これはこんな所にあっちゃならねぇモンだ」

 

そういって握りしめた拳には冷気が溢れ出る。

 

「零帝・・・何者だ・・・ウルの名を汚す気なら、ただじゃおかねぇぞ!!」

 

そういったグレイは今まで見たことのない怒りの形相だった。

 

「お前の師匠が封じた悪魔だぁ」

 

「ああ・・・間違いねぇ」

 

「元々、北の大陸にあったものがここに運ばれた?」

 

「もしかしてこの島の呪いって、この悪魔の影響なのかしらね」

 

「考えられなくのもねぇ。この悪魔はまだ生きているんだしな」

 

「おし」

 

ナツはニッと笑い。

 

「そーゆー事ならこの悪魔をぶっ倒してみっか」

 

「あんたは何で力でしか解決策を思いつかないのよ」

 

腕をグルグル回して準備運動をするナツを見て呆れるルーシィ。

グレイはそれを見ると・・・

 

「どぅおっ!!」

 

ナツを勢いよく殴った。

 

「ナツ!」

 

それを見たレイはナツの元に駆け寄る。

 

「グレイ!!てめぇ・・何しやがる」

 

「火の魔導士はこれに近づくじゃねぇ。氷が溶けてデリオラが動きだしたら、誰にも止められねぇんだぞ」

 

「そんな簡単に溶けちまうものなのかよ!!」

 

ナツに怒鳴られてハッとするグレイ。

 

「・・・いや・・・」

 

「どうした、何時もお前らしくないな」

 

「グレイ大丈夫だよね?」

 

「オイ!!殴られ損じゃねぇか!!凶暴な奴だな」

 

「ナツが言う?」

 

グレイを心配するエルザとクリス、そして腹を立てるナツにハッピーはそう呟いた。

 

師匠(ウル)はこの悪魔に絶対氷結(アイスドシェル)っつー魔法かけた。それはと溶ける事のない氷。いかなる爆炎の魔法をもってしても溶かす事のできない氷だ。溶かせない知ってて、なぜこれを持ち出した・・・?」

 

「もしかして知らないんじゃないですか?」

 

「ありえるわね。それだ何とかして溶かそうとしているのかも」

 

するとグレイはルーシィとルナをもの凄い形相で睨みつる。

 

「何の為にだよっ!!」

 

「し、知りませんけど」

 

「グ、グレイさん顔が怖いです・・・」

 

「グレイ!落ち着いてよ」

 

そんなグレイに二人は怯え、クリスは宥めようとする。

 

「ちっ、くそっ・・・!!調子でねぇな。誰が何の為にデリオラをここに・・・」

 

「簡単だ。さっきの奴等を追えばいい」

 

「そうね」

 

「それしかないようだな」

 

「うん」

 

「でしたら早く追いかけましょう」

 

「そうだね」

 

そう言って後を追いかけようとするが・・・

 

「いや。ここで待つんだ」

 

『!?』

 

そう言ってグレイが止めた。

 

「月が出るまで待つ」

 

「月ってまだ昼ですよ」

 

「そうだ!無理無理!!ヒマで死ぬ!!」

 

「グレイどう言うことなの」

 

「島の呪いもデリオラも全ては〝月〟に関係していると思えてならねぇ。奴等も「もうすぐ月の光が集まる」とか言ってたしな」

 

その言葉の驚く一同にそう説明するグレイ。

 

「そっか・・・確かに何が起こるか。あいつ等がなにをするか・・・気になるわね」

 

「一理あるな」

 

「オレは無理だ!追いかける!!」

 

ナツはそう言って拒絶する。すると

 

「あの、こんなに人数が居るんですから、二手に分かれるのはどうですか?」

 

ルナが自分の考えを述べた。

 

「悪くない考えだな。私は追うほうにしよう。他の者はどうする?」

 

「オレはここに残る」

 

「グレイが残るなら私も残るよ」

 

「オレ勿論追いかけるぞぉ!!」

 

「ナツが追いかけるなら私も」

 

「じゃあ私は残りますね」

 

次々とどちらにするか決まっていくなか。

 

「オイラは残るよ」

 

「ナツについてかなくくていいの?」

 

残るといったハッピーに質問するルーシィだが。

 

「す、凄いねルーシィ・・・あの三人についてついて行く勇気があるんだ・・・」

 

「あ、あたしも残ることにするわ・・・」

 

身体を震わせながらそう言うハッピーを見て、残る事を決めるルーシィ。

 

「それじゃあ、そちらは頼んだぞ」

 

エルザがそう言うとナツとレイと共に、追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、ナツ達と別れてしばらくたったグレイは物思いに耽っていた。

 

(ウル・・・)

 

思い出すのは過去の記憶。

 

『グレイ・・・ついてこれるか。私の修行は厳しいぞ』

 

『おう!何だってやってやらぁ!!』

 

「グレイ・・・」

 

そしてその様子を見ているクリス。

一方のルーシィたちは・・・

 

「はぁ・・・待つとは言ったものの・・・暇ねやっぱり」

 

「あい」

 

「仕方ないですよ」

 

暇を持て余していた。

しかしルーシィは何かを思いついたのか、ぽんっと手を叩く。

 

「開け!琴座の扉、リラ!!」

 

そして現れたのは、ハープを背負った少女「リラ」だった。

 

「キャーー!!超久ぶりぃルーシィー!!もおっ!!たまにしかよんでくれないんだもーん!!」

 

「だってあんたの呼べる火って月に三日くらいじゃない」

 

「えぇ!?そうだっけぇ!?」

 

星霊は呼び出せる日が限れれている。どうやらこの星霊は呼び出せる日が少ないようだ。

ちなみに、リラを見たハッピーとルナは・・・

 

「また変なのきた」

 

「ハッピーさん、失礼ですよ」

 

そんな会話をしていた。

 

「でぇ?今日は何の詩を歌ってほしい?」

 

「何でもいいわ、まかせる」

 

「オイラ、魚の歌がいい!」

 

「じゃあてきとーに歌うわね。イェーイ」

 

「リラはすごく歌うまいのよ」

 

「それは楽しみですね」

 

「ミラだって上手だよ。魚の歌ってくれるし」

 

そんな会話をしている中、リラはハープを奏で歌い始める。

 

「生まれる言葉・・・消えゆく言葉・・・あなたの中に~生き続ける言葉~立ち止まりそうな時~勇気はと変わる~さあ歩き出そう・・・あの時よりあなたは・・・強くなっているから・・・もう迷わないで・・・あの時の言葉を・・信じて・・・」

 

「グレイ・・・?」

 

すると急にクリスが声を上げた。

 

「あ?何だよ」

 

「どうして泣いてるの・・・」

 

そう、リラの歌を聞いていたグレイが涙を流していた。

 

「確かにリラは人の心情を読む歌が得意だけど・・・」

 

「グレイが泣いた」

 

「大丈夫ですか・・」

 

「泣いてねぇよ!」

 

誤魔化す様にグレイは怒鳴る。

 

「もっと明るい歌にしてよリラ」

 

「え~!?だったらそう言ってぇ」

 

「つーか、よく考えたら誰か来たらどーすんだよ。黙ってろ」

 

 

 

 

 

 

 

一方のナツたちは・・・

 

「何という事だっ!!レイが方向音痴なのを忘れて先頭にしてしまうとはっ!!すまない誰か私を殴ってくれないかっ!!」

 

「迷ったのは私。私が殴られるべき」

 

「どーでもいいか、早くもどるぞ!!」

 

なぜか森の中に居た。

 

 

 

 

 

グレイ達はそれから数時間、仮眠をするなどして時間を潰していると。

ゴゴゴゴっと地鳴りのような音が聞こえた。

 

「何の音?」

 

「夜見たいですけど」

 

「アレを見て」

 

そいってクリスが指をさす方向を向くと。

 

「天井が・・・」

 

「開きました・・・」

 

そこの天井が開き、そこから紫色の光が差し込む。

 

「紫の光・・・月の光か!?」

 

「何だこれ!!どうなってんだーっ!!」

 

そしてその光は太い柱の様になりデリオラに降り注ぐ。

 

「月の光がデリオラにあったってる!!」

 

「偶然とは考えにくいね」

 

「行くぞ!!光の元を探すんだ!!」

 

「はい!!」

 

グレイを先頭にして階段を上る一同。

すると先ほどナツが地面を破壊した場所までたどりついた。

そこでは天井に空いた穴から出た光が地面の穴に降り注いでいた。

 

「この遺跡の真ん中には穴があいてたのか!!」

 

「もっと上に行こう」

 

さらに上に行くと外に出た。

 

「アレは何でしょうか」

 

そこには、覆面をした大勢の人が両手を広げて月の光を囲んでいた。

 

「クーペラ~・・・クーラカ~・・・ジエラム・・・セム・・・デイオル~ナ・・・」

 

そして奇妙な呪文を唱えていた。

 

「本当に月の光を集めているみたいだね」

 

「それをデリオラに当てて・・・!?どうする気!?」

 

「べリア語の呪文・・・月の雫(ムーンドリップ)ね」

 

そう呟いたのは、先ほどの星霊リラだった。

 

「アンタ・・・まだいたの?」

 

「そっか、そうゆう事なのね・・・」

 

何かに納得したリラは、ゆっくりと口を開いた。

 

「こいつ等は月の雫《ムーンドリップ》をつかって、あの地下にあった悪魔を復活させる気なのよ!」

 

「何!?バカな・・・絶対氷結(アイスドシェル)は溶けない氷なんだぞ」

 

「その氷を溶かす魔法が月の雫《ムーンドリップ》なのよ。一つに集束された月の魔力はいかなる魔法をも解除する力を持っているの」

 

「そんな・・・」

 

「あいつ等・・・デリオラの恐ろしさを知らねぇんだ!!」

 

「この島の人が呪いだと思ってる現象は、月の雫《ムーンドリップ》の影響だと思うわ。一つに集まった月の魔力は人体をも汚染する。それほど強力な魔力なのよ」

 

「あいつ等が・・・」

 

「クリスさん待ってください!誰か来ました!!」

 

儀式をしている連中に向かおうとするクリスを慌ててルナが止める。

するとルナが言った通り、昼間の三人組と仮面をかぶった男が来た。

 

「くそ・・・昼起きたせい眠い」

 

「おおーん」

 

「結局、侵入者も見つからなかったし」

 

「本当にいたのかよっ!!」

 

昼間と同じ様な会話をするユウカとトビー。

 

「ナツたちが追ってたんじゃないの!?」

 

「会話からすると会ってないみたいだね」

 

三人組とナツたちが出くわしてない事を疑問に感じるルーシィとクリス。

 

「もしかすると、レイさんを先頭にしたんじゃないですか?」

 

ルナの言った言葉にルーシィを除いた一同は納得した顔になる。

 

「え?なに!?レイを先頭にするとどうなるの?」

 

「レイはね、凄い方向音痴なんだ・・・」

 

「だから地図がないと一本道でも迷うんですよ・・・」

 

「この前、砂漠で迷った時は・・・」

 

「ハッピーさん!やめてください!思い出したくありません!!」

 

「その・・・なんかごめん」

 

ハッピーの言った事を思い出したルナは体を震わせていた。

 

「悲しい事ですわ、零帝様。」

 

そんな会話をしている一方、シェリーは仮面男に話かけた。そうやらこの仮面男が零帝らしい。

 

「昼に侵入者がいたようですが・・・取り逃がしてしまいました。こんな私には愛は語れませんね」

 

「侵入者・・・」

 

小さく呟く零帝。

そんな零帝の声に心当たりがあるのか、グレイは反応する。

 

「あいつが零帝・・・」

 

「えらそーな奴ね。変な仮面つけちゃって」

 

「そっかなぁかっこいいぞ」

 

「私はそう思いませんけど・・・」

 

四人がそんな事を語っていると。

 

「デリオラの復活はまだなのか?」

 

「この調子だと、今日か明日には・・・と」

 

「どっちだよ!!」

 

どうやらトビーはキレやすい性格のようだ。

 

「いよいよなのだな・・・」

 

「・・・・」

 

零帝は口元に小さな笑みを浮かべる。

グレイは言葉を失たかのようにしゃべらず零帝を見ていた。

 

「侵入者の件だが、ここにきて邪魔はせれたくないな」

 

「ええ」

 

「この島の外れにある村にしか人はいないハズ」

 

そう言うと零帝は右手を村の方角に向けて・・・

 

「村を消してこい」

 

そう言った。

 

「はっ」

 

「了解!!」

 

「おおーん!!」

 

そう言ってこの場から立ち去る三人組。

 

「まずいですよ!!」

 

「村の人たちは関係ないのにっ!!ど、どうしよう!!」

 

先ほどと同じ様に笑みを浮かべる零帝。

 

「血は好まんのだがな・・・」

 

「グレイ・・・?」

 

クリスがグレイの方を向くとそこには・・・

 

「この声・・・オイ・・・ウソだろ・・・」

 

信じられない物を見たっと言った顔のグレイがそう呟いていた。

 


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