FAIRY TAIL ~妖精の双竜~   作:駄文帝

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序章
出会い


フィオーレ王国・ハルジオンの街

 

「あ、あの・・・お客様・・・だ、大丈夫ですか?」

 

ハルジオンの駅の止まった列車内で、一人の駅員がオロオロしていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「あい。いつものことなので」

 

「すいません。ナツさんは乗り物に弱くて」

 

桜色の髪に白いマフラーをした青年「ナツ」が、列車の壁に寄りかって目を回しながら荒く息をし、そんなナツの代わりに答える青い猫「ハッピー」。そして、駅員に頭を下げる緑色をした髪を腰に届くまでの長さのポニーテイルにした少女「ルナ」。

 

「無理!!もう二度と列車には乗らん・・・・うぷ」

 

「情報が確かならこの街に火竜がいるハズだよ。行こ」

 

「あ、待ってくださいハッピーさん。ほらナツさん行きますよ」

 

先の進むハッピーの後を、ナツに肩を貸したルナが追う。

 

「わ・・わりぃルナ」

 

「気にしなくていいですよ、ナツさん」

 

先を進んでいたハッピーが列車を出た時・・・

 

ガタンゴトン

 

「あ」

 

「「!」」

 

列車がナツとルナを乗せたまま出発した。

 

「出発しちゃった」

 

「たすけてくれ~~~うぷ」

 

「ちょと、ナツさんしっかりしてください!!」

 

走り去っていく列車からナツとルナの叫び声が木霊した。

 

 

 

 

同時刻 ハルジオンの魔法屋

 

「えーっ!?この街って魔法屋一軒しかないの?」

 

魔法屋で叫ぶ金髪の少女「ルーシィ」。

 

「ええ・・・元々魔法よりも漁業が盛んな街ですからね。街の者も魔法を使えるのは一割もいませんので、この店もほぼ旅の魔導師専門店ですわ」

 

「あーあ・・・無駄足だったかしらねぇ」

 

「ままそう言わずに見てってくださいな。新商品だってちゃんとそろってますよ」

 

ため息をつくルーシィに、店主は文庫本くらいの大きさの箱を取り出す。

 

「女の子に人気なのは、この色変(カラーズ)の魔法かな。その日の気分にあわせて・・服の色をチェンジ~てね」

 

「持ってるし」

 

店主が自分の服の色を変えて見せるが、ルーシィは見向きもしない。

 

「あたしは(ゲート)の鍵の強力なやつ探してるの」

 

(ゲート)かぁ、めずらしいねぇ」

 

「あ!」

 

目当ての鍵を見つけたのか、ルーシィが声を上げる。

 

白い子犬(ホワイトドギー)

 

「そんなの全然強力じゃないよ」

 

「いーのいーの♪探してたんだぁー」

 

「いくら?」

 

「二万J(ジュエル)

 

「お・い・く・ら・か・し・ら?」

 

「だから二万J(ジュエル)

 

言葉での値切りに失敗したルーシィは、自分の豊満を寄せ色仕掛けを始める。

 

「本当はおいくらかしら?ステキなおじさま」

 

 

 

 

「ちぇ、1000J(ジュエル)しかまけてくれなっかた」

 

街中を、ルーシィが不機嫌な表情で歩いている。その様子を見るに色仕掛けは失敗したようだ。

 

「あたしの色気は100J(ジュエル)かーーっ!」

 

納得のいかないルーシィは、近くの看板を蹴り飛ばす。

 

すると黄色い悲鳴を上げた女の子たちがとおり過ぎてい。

 

向かった先を見ると、同じ悲鳴を上げた女の子たちが集まっていた。

 

「?。なにかしら」

 

首をかしげるルーシィの前を、さらに女の子たちが過ぎ去っていく。

 

「この街に有名な魔導士様が来てるんですって」

 

火竜(サラマンダー)様よーーーっ」

 

女の子たちの話によると、火竜と呼ばれる魔導士が来てるらしい。

 

火竜(サラマンダー)!?あ、あの店じゃ買えない火の魔法を操るっていう・・・この町にいるの!?」

 

女の子たちの集団から「火竜(サラマンダー)様~」や「こっち向いてー」といった歓声が飛び交う。

 

「へぇーー、すごい人気ねぇ。かっこいいのかしら」

 

 

 

 

一方その頃、ナツたちは。

 

「列車には二回も乗っちまうし」

 

「ナツ乗り物弱いもんね」

 

「ハラは減ったし・・・」

 

「私達お金がありませんしね」

 

よたよたと歩きながら嘆くナツに、ハッピーとルナが答える。

 

「なあハッピー、ルナ。火竜(サラマンダー)ってのはイグニールの事だよなぁ?」

 

「うん、火の竜なんてイグニールしか思い当たらないよね」

 

「だよな。やっと見つけた!ちょっと元気になってきたぞ!」

 

「あい」

 

「でもナツさん、私には街中に竜が・・・・」

 

と、ルナが言いかけたその時・・・

 

「きゃー!火竜(サラマンダー)様~!」

 

遠くの方から、歓声が聞こえてきた。

 

「ホラ!!噂をすればなんたらって!!」

 

「あい!!」

 

その声を聴いたナツとハッピーが、一目散に走って行った。

 

「ちょっとナツさん、ハッピーさん!二人とも私を置いていかないでください!!」

 

二人に置いてけぼりにされそうになったルナが、急いで二人を追いかていった。

 

 

 

 

その頃ルーシィは、目をハートにさせた火竜(サラマンダー)の取り巻きの中にいた。

 

(な、な、な・・なに?このドキドキは!?)

 

火竜(サラマンダー)を見て、頬を赤く染める。さっきから、心臓がドキドキとなっりぱなしだ。

 

(ちょ、ちょっと・・!あたしてっばとうしちゃったのよっ!!)

 

周りの女の子たちも、ルーシィと同じような状況のようだ。

 

「ははっ、まいったな。これじゃあるけないよ」

 

女の子たちに微笑みながら、

火竜(サラマンダー)が呟く。チラ、と火竜(サラマンダー)の視線が、ルーシィにむけられると。

 

(はうぅ!!)

 

ルーシィの胸がキュンと高鳴った。

 

(有名な魔導師だから?だからこんなにドキドキするの)

 

ルーシィが胸に手を当てながら、吐息を零す。

 

「イグニール!イグニール!」

 

女の子たちの山をかき分け、ナツが火竜(サラマンダー)のもとに向かっていく。

 

(これってもしかして、あたし・・)

 

ルーシィが他の女の子たちと同じく、目をハートにして火竜(サラマンダー)のもとにふらっと歩き出した時。

 

「イグニール!!」

 

人混みをかき分け中心についたナツが叫ぶ。その瞬間、ルーシィは付きのもが落ちたかのように、顔をはっとさせる。

しばらくナツと火竜(サラマンダー)が見つめ合い、すると・・・

 

「誰だオマエ」

 

「!!。火竜(サラマンダー)と言えば、わかるかね」

 

ナツの言葉に、火竜(サラマンダー)が一瞬動揺するが、すぐに顔きりっとして言うが。

 

「はぁ~~~~」

 

「はやっ!」

 

ナツはすでにため息をつきながら、遠くの方を歩いていた。

 

「ちょっとアンタ失礼じゃない」

 

「そうよ!!火竜(サラマンダー)様はすっごい魔導師なのよ」

 

「あやまりなさいよ」

 

「あ、あ、なんだオマエら」

 

すぐに、野次馬の女の子たちに引き摺り戻される。

 

「まあまあ、その辺にしておきたまえ。彼とて悪気あった訳じゃないんだからね」

 

「やさし~」

 

「あ~ん」

 

メロメロになる女の子たちの中、ルーシィだけは火竜(サラマンダー)を睨みつけていた。

 

火竜(サラマンダー)が色紙を取り出し、ペンで何かを書き。

 

「僕のサインだ友達に自慢するといい」

 

「キャー」

 

「いいな~」

 

「いらん」

 

ナツがそう答えると、次の瞬間

 

「何なのよあんた!!」

 

「どっか行きなさい」

 

「うごっ」

 

怒った女の子たちに外に飛ばされてしまった。

 

「君たちの熱い歓迎には感謝するけど・・・僕はこの先の港に用があるんだ。失礼するよ」

 

パチン、指を鳴らすと現れた炎の上に火竜(サラマンダー)が乗る。

 

「夜は船上でパーティをやるよ。みんな参加してくれるよね」

 

そう言いながら、港の方に移動する火竜(サラマンダー)に女の子たちは「はぁぁぁん」や「もちろんですぅ~」などと甘い声をだす。

 

「なんだアイツは」

 

「本当いけすかにわよね」

 

その様子を眺めていたナツに、ルーシィが話かける。

 

「さっきはありがとね」

 

「は?」

 

「?」

 

ルーシィにお礼を言われるが、意味が分からず首をかしげるナツとハッピー。すると・・・

 

「ふ、二人とも早いです・・・もう少し遅く走ってください・・・」

 

息を切らしたルナが走ってきた。

 

「遅かったじゃないか、ルナ」

 

「ふ、二人がは、早いだけです・・・」

 

追いついたルナが、壁に寄りかかり息を整えながらいう。

 

「あの~~」

 

そんなナツ達に、ルーシィが困惑した表情で話かける。

 

「?貴女は?」

 

「あたしはルーシィ。さっきそこの二人に助けてもらったの」

 

「そうだったんですか。私はルナと言います。そしてこちらがナツさん、そこにいる猫がハッピーさんです。」

 

「よろしく!お礼したいから、ごはんでもいかない?」

 

「めし!?」

 

ルーシィの言葉にいち早く反応するナツ、そんなナツを見てルナはため息をついた後。

 

「えーと、それじゃお願いできますか?」

 

 

 

 

その後、街のレストランで

 

「あんふぁ、いいひほがぶぁ」

 

「うんうん」

 

「二人とも落ち着いてください。そんなに急がなくても料理は逃げたりしません。」

 

これでもかと言うほど口を広げその中に料理を突っ込むナツと魚を頭からかじるハッピー。そしてそんな二人を咎めるルナ。それを見て若干引いているルーシィの姿があった。

 

「あはは・・・ナツとハッピーとルナだっけ?わかったからゆっくりたべなって、なんか飛んできてるから・・・」

 

「すいません。このハンカチ使ってください。」

 

ルナは頭を下げながらハンカチをルーシィに渡す。ハンカチを受け取ったルーシィはそれで顔を拭いた後、火竜(サラマンダー)について話始める。

 

「あの火竜(サラマンダー)って男、魅了(チャーム)っていう魔法を使ってたの。この魔法は人々の心を術者に引きつける魔法なのね」

 

「でもそれは何年か前に発売が禁止されてましたよね?」

 

「そうなの。あんな魔法で女の子たちの気を引こうだなんて、やらしい奴よね。あたしはアンタが飛び込んできたおかげで魅了(チャーム)が解けたって訳」

 

「なぶぼご」

 

骨付き肉を齧りながらナツが答える。

 

「こー見えて一応魔導士なんだー、あたし」

 

「そんなんですか?」

 

「うん、まだギルドに入ってないんだけどね。あ、ギルドてのはね。魔導師たちの集まる組合で、魔導士たちの仕事や情報を仲介してくれる所なの。魔導士ってギルドで働かないと一人前って言えないものなのよ」

 

「ふが・・」

 

ギルドの事について説明するルーシィだが、じょじょに熱が入り始める。

 

「でもね!!でもね!!ギルドってのは世界中にいっぱいあって、やっぱ人気のあるギルドはそれなりに入るのがキビしいらしいのね。あたしの入りたいトコはね。もうすっごい魔導士がたくさん集まる所で、ああ・・・どーしよ!!入りたいけどキビしいんだろーなぁ・・」

 

「いあ・・」

 

「えーと・・」

 

「あーゴメンねぇなん。魔導士の世界の話なんてわかんないよねー。でも絶対にそこのギルド入るんだぁ。あそこなら大きい仕事たくさんもらえそうだもん。」

 

「ほ・・ほォか・・」

 

「が、がんばってください。」

 

「よくしゃべるね」

 

ナツたちは若干引いていた。

 

「そういえばあんたたちは誰か探してたみたいだけど・・・」

 

火竜(サラマンダー)がこの街に来るって聞いたから、来てみたはいいけど別人だったな」

 

火竜(サラマンダー)って見た目じゃなかったんだね」

 

「てっきりイグニールかと思ったのにな」

 

「やっぱり、人違いだったんですね。」

 

「見た目が火竜(サラマンダー)・・・ってどうなのよ・・・人間として・・・」

 

「ん?人間じゃねぇよ」

 

「イグニールさんは、本物の竜ですよ。」

 

それを聞いたルーシィは体をガタンとのけぞらせる。

 

「そんなの街の中にいるハズないでしょー!!」

 

「「ピクッ」」

 

「オイイ!!今気づいたってかおすんなー!!」

 

「はぁ~~」

 

ルーシィの突っ込みに、「あ」とでも言いたそうな顔をするナツのハッピー見て、ため息をつくルナ。

 

「あたしはそろそろ行くけど・・ゆっくり食べなさいよね」

 

そう言いながら机にお金を置くルーシィ、それを見た三人はぐっもと泣きだし。そいて・・

 

「ごちそう様でしたっ!!!」

 

「でした!!」

 

「ありがとうございます!!」

 

その場で土下座を始めた。

 

「きゃーやめてえっ!!はずかしいから」

 

ナツたちを見て、ざわざわと騒ぎ始める他の客の視線を気にして、悲鳴を上げるルーシィ。

 

「あまり助けたつもりがないことが。なんとも・・」

 

「あい・・はがゆいです・・」

 

「私なんかは、何もしていないのに・・・」

 

「そうだ!」

 

ナツは、懐から先ほど火竜(サラマンダー)からもらったサインをとりだし。

 

「これやるよ」

 

「いらんわっ!!!」

 

そのサインをルーシィ叩き落とした。


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