ペルソナ4~アルカナの示す道~   作:カイナ

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第五十三話 正義との真実の絆、新たな決意

10月13日の放課後。真は教室に残っている雪子と千枝――二人とも机を向き合わせて試験勉強の真っ最中――に「また明日」と挨拶し、自分も家に帰って勉強しようと考えながら教室を出ていく。

 

「あ、先輩!」

「先輩、お疲れ様です」

 

「ああ、久慈川、白鐘。どうしたんだ?」

 

と、階段のところで丁度上がってきたりせと直斗が挨拶し、真もどうしたんだと返す。

 

「今から直斗と図書室で勉強するの! 先輩も一緒にどう?」

 

「悪いけど俺は帰るよ」

 

「そっか、残念」

「では先輩。明日からの中間テスト、お互い頑張りましょう」

 

りせが勉強会に誘ってくるが真は丁重に断り、りせも残念そうだが無理にも言えないため素直に引き下がり、直斗もそう明日からのテストを健闘しようと声をかけ、りせと直斗は図書室へと足を向け、真は階段を降りていった。

それから彼は帰り道である鮫川の土手を歩いている時、高台にいる二人に気づく。その一人は彼の仲間である巽完二、もう一人は以前完二といた時に出会った、サナちゃんなる女の子のウサギのあみぐるみを失くしてしまったという大人しそうな少年だ。

 

「これな、約束の……も、文句言うなよ?」

 

完二がそう言って少年に差し出したのはウサギのあみぐるみ。服とリボンと帽子と傘がついた、遠くから素人目に見てもものすごく凝っているのが分かる一品だ。

 

「すっごーい!!」

 

それに大人しそうな少年が歓声を上げる。そのまま完二をキラキラとした目で見て「おじちゃ……お兄ちゃん、これ、すごいね! どこで買ったの!?」と聞き始めた。

 

「あ?……べ、別にいいだろ!」

 

「だって、ぼくも欲しい!」

 

「……お前にもある」

 

あみぐるみの出所に心当たりのある真は高台の休憩場所の影に隠れながらくっくっと笑いを噛み殺し、完二は少年の質問を別にいいだろと誤魔化すが、少年は諦めずに自分も欲しいからどこで買ったのか教えてと食い下がる。

すると完二はそう言ってもう一つウサギのあみぐるみを少年に手渡した。服と靴とキャップとサッカーボールがついている。こっちも先ほどのウサギのあみぐるみに負けず劣らず凝った一品だ。

 

「これ、ぼくの!? ありがとう!! ねえ、どこで買ったの!?」

 

だが少年が余計に完二に食い下がる結果になった。

 

「完二、観念しろ」

 

「ぬあ、先輩!? い、いつからいたんスか!?」

 

「ついさっき。なんなら俺から言おうか?」

 

「っ、分かったッスよ!」

 

既に真相を見抜いている真は二人の前に姿を現して完二に観念して正直に話せと促し、完二はそれに怯むが真の追撃に唸り声を上げるとこくんと頷き、ごほんごほんとわざとらしく咳払いをして、しかしやはり照れくさいのかぷいっとそっぽを向く。

 

「お、お兄ちゃんが、作りました……よ?」

 

「これ……作ったの?」

 

その告白に少年がぽかんとした顔になる。

 

「わ、悪ィかよ……き、気色悪ィってんなら、返し――」

「すっげー! かっこいいねー!!」

 

気色悪いと思うなら返せ、と言おうとする完二だが、少年はむしろ尊敬の目を完二に向けていた。

 

「ねぇ、また、違うの作ってくれる!? ぼくのお母さんね、こういうの大好きなんだよ!」

 

「え、お、おう……」

 

「約束だよ!」

 

いきなり尊敬の目を向けられた完二は予想だにしない反応に怯み、そのままとんとん拍子に新たな作品を作る事を約束させられてしまう。

 

「じゃあぼく、これ、サナちゃんにあげてくる! ありがとう、おじちゃん!!」

 

「だ、だからオジちゃんじゃねえっつうの!!」

 

そして失くしてしまったウサギのぬいぐるみの持ち主だったサナちゃんなる少女にガールズエディションのウサギのあみぐるみをあげてくると言って走り去り、その中の完二を指す呼称に完二は怒鳴り声でツッコミを入れるが、少年は既に見えなくなっていた。

 

「……はは。かっこいいだとよ」

 

「確かにすごい技術だ」

 

「んなの、ムダなスキルッスよ……」

 

完二はまさかの感想に信じられなさそうに返し、だが真も褒めると満更でもないのか照れた様子を見せる。

 

「けど、まぁ……悪くねッスね。“ありがとう”か……こんな、くだらねー事なのによ」

 

照れたように笑う完二はどこか大人びて見える。真は心の中でそう感想を漏らした。

 

「ところで、完二」

 

「なんスか?」

 

だが真は大事なことを思い出し、完二に問いかける。

 

「あんな凝ったあみぐるみを二つも作ってて、お前中間テストは大丈夫なのか?」

 

その言葉に完二はさっと顔を逸らす。見て分かる程に目が泳いでいた。それの意味するところを理解し、真は携帯を取り出すとあるアドレスにかける。

 

[もっしもーし先輩? あなたのりせだよ、なんちゃって♪ 今図書室だから静かにお願いします、何か用?]

 

「ああ。完二がテスト前日にも関わらず遊びほうけていてな。今用事が終わったところらしいから、今から連れて図書室に行くと白鐘に伝えてくれ」

 

[うん、オッケー♪]

 

「え、ちょ、先輩!?」

 

りせは真からの電話のためかややテンション高くしかし図書室内だからちゃんと声を潜めて話しており、真は完二を図書室に連れていくという旨を伝えて完二をとっ捕まえる。

 

「ま、ちょ、待ってくださいよ先輩! べ、別に直斗に教わんなくたって……」

 

「行くぞ」

 

「ま、待ってくれってー!!!」

 

顔を赤くして慌てる完二を真はスルー。身長の高い完二をしっかり学校まで引きずると図書室で待ち構えていたりせ&直斗に引き渡すのであった。

 

それから時間は過ぎ、10月19日。期末試験最終日、最後の試験が終了した。

 

「ふぁぁ~。やぁっと終わったぁぁ……」

 

「ね、問8だけど……」

 

「ああ、そこは……」

 

欠伸をしながらテストの終了を喜ぶ陽介、その視線の先で雪子と千枝は答え合わせに余念がなかった。

 

「昨日徹夜したからぶっ倒れそうなんだよね……俺、先帰るわ」

 

「お疲れ」

 

「おう。んじゃーなー」

 

陽介は欠伸交じりにそう言って先に帰っていき、真も荷物を纏めると千枝と雪子に「また明日」と挨拶をして教室を出ていく。

 

「よ、椎宮」

 

「よお、一条。今回はちゃんとテストに名前は書いたか?」

 

「うげ、知ってんのかよ。ちゃんと書いたっつの。何度も確認したわ」

 

声をかけてきた一条に真が悪戯っぽく笑いながら返すと一条は悔しそうな顔をしながら答える。

 

「一条、テストが終わったし、少し走らないか?」

 

「へいへい分かったよ」

 

「頑張れよ。じゃあな」

 

「おう、お疲れー」

 

わくわくとしている長瀬に一条は慣れたように頷き、真は巻き込まれない内に帰宅を選択。一条もひらひらと手を振ってさよならと示した。そのまま彼はなんとなく商店街の方へ足を運ぶ。と、そこに一人たたずむ美少女の姿を見かけた。

 

「マリー、久しぶりだな。この前のライブ以来か」

 

「……」

 

真は美少女――マリーに声をかける。しかしマリーから反応はなく、彼女はうつむいたまま静かに立っていた。

 

「マリー?」

 

「っ……あ、いたの? 合体? 召喚? スキルカード?」

 

「落ち着けマリー、ここベルベットルームじゃないぞ」

 

「あ……そうだった……」

 

なんだかマリーの様子がおかしい。完全に心ここにあらず、という状態だ。

 

「どうかしたのか、マリー……今日、暇だし。付き合うぞ」

 

「ん……じゃあ……行く」

 

真の方からマリーに付き合う、と言うがマリーはどこか暗い表情で頷くのみ。

それから場面は鮫川の河原へと移る。真は元気がなく無言のままのマリーを連れ、ひとまず静かなここにやってきていた。

 

「……ねえ、イルカ見たい」

 

「は?」

 

マリーが唐突にそんな事を言う。

 

「イルカ出して。3つ数えるから、その間にイルカ。ね、分かった?」

 

「おいマリー……」

 

いつもの我儘。だが声が刺々しく、特に機嫌が悪そうだった。

 

「イルカ、まだ?……つまんない」

 

「ランプの魔人じゃあるまいし……」

 

マリーは不機嫌そうに眉間にしわを寄せ、真も苦笑で返す。と、マリーは「はぁ」とため息をついた。

 

「また頭痛か?」

 

「違う。そういうんじゃない。考えなければ、頭痛くならないから」

 

真の問いかけにぶっきらぼうに答える。それはどこか投げやりだった。

 

「もういいよ。思い出すのやめた」

 

マリーは真から顔を逸らしてそう言う。

 

「諦めるのか?」

 

「しょうがないじゃんっ!!!」

 

真の言葉にマリーが吼える。「調べたって意味ないし、結局何も分からなかった。何も思い出せず、考えると頭が痛くなるし、何か出てきてもすぐに消えてしまう」とマリーは怒鳴るように続けた。

 

「ッ!?」

 

と、マリーはまた頭を押さえた。いつもの頭痛のようだ。

 

「マリー!?」

 

「放っといてよ!」

 

思わず駆け寄り手を伸ばす真をマリーが払いのけ、睨みつける。

 

「もうヤダ……頭痛い……私はただ……思い出したいだけなのに!」

 

ギリギリと歯をきしませ、痛みを堪えるマリー。それからやや時間を置いて痛みが消えたのか、マリーは頭から手を離し、むすっとした表情になる。

 

「もういい……記憶いらない。忘れたままでいいよ……」

 

うつむき、ため息交じりに答える。完全に投げやりになっており、真はつい無言になってしまう。そのまま静かに歩き去っていくマリーに真は何も言えず、無言のまま河原へ立ち尽くしていた。

 

その翌日、10月20日。学校が終わった後真は特にやる事もなく、たまには静かに読書でもしようかと思って真っ直ぐ家に帰ってきていた。

 

「ただいまー」

 

帰宅し、挨拶の言葉を口にする。しかしそれに返す言葉はない。どうやら遼太郎はもちろん菜々子もいないようだ。

 

「ただいまー」

 

と、思うと菜々子が帰ってきた。

 

「おかえり」

 

「あ、おかえりー。ねえ、ポストに手紙来てたよ。お兄ちゃんに」

 

そう言って菜々子が封筒を手渡してくる。確かにその宛名は「椎宮真サマ」となっており、真は差出人を確認しようと封筒を裏返す。だが差出人の名前や住所はなく、しかも表面をもう一度確認するが消印がなく、さらには切手すら貼られていない。明らかにおかしな封筒に真は不思議そうな顔をしながら封筒を開け、中身を確認した。

 

「!?」

 

中身の紙にはたった一文だけが印刷されていた。

 

コレイジョウ タスケルナ

 

(これは、いったい……)

 

パソコンで打ったのだろう文字のため筆跡での判別は出来ない。しかも中身の意味すら分からない。そんな内容に真は硬直する。

 

「おともだち?」

 

と、菜々子が首を傾げながら問うてきた。

 

「あ、ああ。前の学校の友達が、な?」

 

「ふ~ん……あ、見たいテレビ始まっちゃう!」

 

なんとか誤魔化し、菜々子は今に向かうとテレビに夢中になり始める。それを確認してから真は再度手紙に目を落とした。

 

コレイジョウ タスケルナ

 

(コレイジョウタスケルナ……これ以上、助けるな。これはまさか犯人からの警告か? それともただのイタズラ……)

 

真は考え込むが、一人で考えてもどうしようもなく、明日皆に見せて相談しようと決めると手紙を隠すように封筒に入れ、部屋に戻っていった。

 

そして翌日10月21日、昼休み。真は自称特別捜査隊のメンバーを屋上に集めると、昨日届いた手紙を皆に見せる。なおここにいない命達には携帯で連絡を取ろうかとしたのだが陽介によると今日は三人とも朝からシフトが入っている、ということで後で雪子の方から結論を伝えておく。という形に落ち着いた。

 

「“コレイジョウ タスケルナ”……警告、ですかね」

 

手紙の内容を見て一番に口を開くのはやはり探偵の直斗だ。千枝が「カタカナでカタコトってベタすぎない?」とツッコむ。

 

「イタズラじゃねんスか? マンガじゃあるめえし」

 

対して完二はイタズラだと切って捨てる。りせも心配そうながら「最近私達事件の事考えてるし、なんでもかんでも結びつけちゃうかも」と、イタズラを深く考えすぎる線もあるという点で完二に同意した。

 

「叔父さんには見せたのか?」

 

「いや、どうするべきか迷っている。場合によっては見せるべきかもしれない」

 

「いえ、堂島さんは信頼できる方ですが……見せるのは、控えた方がいいでしょう」

 

陽介の質問に真が返すと、直斗が遼太郎に手紙を見せる事に反対する。まずこんな脅迫状染みた手紙が来る経緯の説明が出来ない。その上心配されて見張りをつけられたら身動きが取れなくなる恐れがある。というのが彼女の意見だ。

 

「もしこの手紙が本当なら、一番重要なのは内容ではありません」

 

さらに直斗は、心配そうな表情で続ける。

 

「“宛名入りで、堂島家に届いた”という点です」

 

それはつまり、犯人は犯行の邪魔をしているのはどこの誰なのか詳しく知っている。とアピールしていることに他ならないという意味だ。しかも真の身元が分かっているのならばさらに昔から住んでいる陽介や雪子達の身元を調べる事なんて造作もないはず。そんな中わざわざ家主が刑事の堂島家を選んで脅迫状を送り付けている。これはこの手紙から捕まる事なんてないという犯人の自信の表れを伺わせていた。

 

「この手紙……可能なら鑑識にかけたい所ですが、恐らく何も出ないでしょう。警告と同時に、特定されない自信があるという犯人の意思表示のように思えます」

 

直斗もそれを理解しているのかそう呟いた。

 

「警察に言っても仕方なし、ってか言うと余計にヤバい……」

 

「ほんと、イタズラであってくれ、マジで……」

 

「でも、内容考えると、ただのイタズラにしては出来過ぎかも……」

 

千枝は八方ふさがりというように呟き、陽介は天を仰ぎながら悪戯であってくれと祈り、雪子はイタズラにしては出来過ぎだと呟く。

 

「もし犯人なら……なんで私達の事そんなに知ってるのかな……どこかで見てるとか?」

 

「……“あっち”に居る時、見られてる気配あるってのは、大分前からクマが言ってるな……」

 

「まさか、マヨナカテレビに“もう一人”、シャドウが映っている時に、助けに行っている俺達の姿が見られていた?」

 

雪子の呟きに陽介がはっとしたように漏らすと、真が気づいたように続く。

 

「で、でも、あたしたちのしてる事、誰も知ってる感じしなくない?」

 

だがそれに反論するのは千枝だ。確かに学校で噂を聞くことはないし、テレビを見たらしい子からも自分達の話題が出たというのを聞いたことはない。噂でもちきりになるのは失踪した人だけという印象だ。

 

「そういや、そもそもマヨナカテレビ自体、どういうモンなのかは謎のままなんだよな……」

 

陽介の呟きで、場が沈黙に包まれる。

 

「あの世界の正体を探る話は一旦置きましょう。不明な点が多すぎます」

 

「ああ。とにかく今は“犯人はこちらを知っている”ことを知り、心構えを持つ」

 

「ええ。それだけ共有できれば充分です」

 

直斗がマヨナカテレビの正体という未だ不明な点が多すぎる事は一旦置こうと言い、真が脅迫状から最低限分かる事を纏める。

 

「憶測で勝手に不安を掻き立てて動けなくなる、それが一番相手の思うツボだ」

 

「ああ、真の言う通りだ」

「おう! ビビって動けなくなるなんざ情けねえぜ!」

 

男性陣も頷いて返した。

 

「あー、じゃあバッサリ話題変えちゃってもいい?」

 

と、千枝が挙手しながらそう新たな話題を出した。

 

「もうすぐ文化祭じゃん? うちのクラスって何すんだっけ?」

 

「そういや、決まってないんじゃなかったか?」

 

「今度、投票で決めるって聞いたけど……確かまだ案を募集中じゃなかったかな?」

 

千枝の質問に陽介が言うと雪子が補足する。

 

「へぇ?」

 

と、陽介が何か笑みを浮かべ、千枝が「うわ、何か閃いてるよ……」と嫌な予感がすると言いたげな顔を見せる。「絶対アレな事だ。賭けてもいいわ」とまで言っていた。

 

「先輩、一緒に回る人、もう決めた? 私空けてあるからね。この幸せ者!」

 

「ははは……」

 

「うう、今の今までだんまりだったのに、この子は……」

 

明るく言うりせに真は苦笑。千枝も呆れた様子を見せる。そんなこんなの談笑で時間が過ぎていく。

 

(脅迫状の件、本当にイタズラなんだろうか……俺には今、何も出来ないのだろうか……)

 

その談笑の中、真は僅かな不安点を考え続けていた。

 

 

 

 

 

放課後、真はこの脅迫状についてもう少し考えたいと言い残し、「何かあったら相談してくれ」という陽介達にお礼を返して一人帰路についていた。

 

「おにいちゃん!」

 

「菜々子」

 

と、小学校の通学路と交差する地点で偶然菜々子と合流。菜々子はやけに機嫌が良さそうに笑顔で真に駆け寄った。

 

「嬉しそうだね。学校でいい事でもあったか?」

 

「うん! あのね、きょう学校で、“家族は助け合うんだ”って先生、いってた」

 

菜々子は笑顔でそう語る。

 

「お母さん死んじゃって、菜々子もお父さんも、さびしいけど……でも、菜々子にはお父さんがいるから! だから、お父さんがさびしくないように、菜々子が頑張らないとね!」

 

純粋な笑顔の中に強い心を覗かせ、真は静かに笑みを見せる。ちょっと前、授業参観のアンケートの件で家出する程険悪な状態になったのが嘘のようで、真も思わず笑みを零した。

 

「お兄ちゃんも、かぞくだから……いっしょにがんばろーね!」

 

「ああ、頑張ろう」

 

菜々子の輝かんばかりの笑顔での言葉に真は首肯、その言葉を聞いた菜々子も嬉しそうに笑う。

 

「えへへ……お兄ちゃん、だいすき!」

 

菜々子からの熱い親愛を真は感じる。

 

 

 

 

        我は汝……、汝は我……

 

      汝、ついに真実を絆を得たり……

 

 

    真実の絆、それは即ち、まことの目なり

 

 

      今こそ、汝には見ゆるべし。

    “正義”の究極の力、“スラオシャ”の

       汝の内に目覚めん事を……

 

そんな時、真にそんな声が聞こえ、それと共に自らの中に何か強大な力が生まれるのを感じる。

 

「ねえ、おにいちゃん。今からお買い物、行こう! お父さんにたくあん買って帰ってあげよう、それとね、おやさいもたくさん食べないと。ばらんすのいい、食せいかつがだいじなんだよ!」

 

それも学校で先生からの受け売りなのだろうか、えっへんと得意気な顔をして菜々子はそう言う。

 

「ああ、行くか」

 

それに真も頷き、二人は一緒にジュネスへと向かうのであった。

 

それから時間が過ぎて夜。菜々子と一緒に夕食を作り、菜々子と遼太郎との家族団欒を過ごした後、真は一人ベッドに寝転んでいた。

 

(あの脅迫状……それが本当なのにしろ、イタズラなのにしろ……俺には今、何も出来ないのだろうか……)

 

考え、目を閉じる。浮かんできたのは今日の帰りに見た菜々子の笑顔。それを思い浮かべ、また何かを考える。それから真はゆっくりと目を開け、枕元に置いていた携帯電話に手を伸ばす。それを操作し、あるアドレスへとかけた。

 

[もしもし、真君?……話は天城さんから聞いたよ]

 

「先輩……」

 

電話の相手は命、既に脅迫状の件は聞いているらしく、真はすうはあと深呼吸する。

 

「ご相談があるんですが」

 

そして信頼できる相手である先輩に、真は真剣な目をして静かに切り出した。




《後書き》
お久しぶりです。割と早めに投稿できました。
今回は繋ぎということで比較的短めに、中間テストとかのイベントは過程が思いつかないから描写のみですっ飛ばしつつ、脅迫状の大事なイベントは書きつつコミュを進める方向になりました。
そんでもって菜々子がコミュMAX。なんか大分すっ飛ばしましたけど、ストーリーの展開上やむを得ない。ああ、毎度毎度自分の無計画さがいやになる。(汗)

で、前回、次回つまり今回オリジナルを入れたいなぁとか言ってたけどごめん無理でした。多分また次回になると思います。無計画で本当にごめんなさい。
では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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