ペルソナ4~アルカナの示す道~   作:カイナ

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第三十七話 虚栄の仮面、虚構の勇者

 わあっはっはっはっ!

 

キリングハンドとの戦いが終わり、くらやみのたまを入手した後。真達はさらに先を進んでいた。と、そんな聞き覚えのある声による高笑いが聞こえてきた。

 

「この声、またモロキンか!?」

 

 くさった ミカンの ぶんざいで

 ワシに はむかうとは いい どきょうだ!

 

 諸岡が あらわれた!

 

 どうする?

 

 

「……?」

 

真は宙に浮かぶテキストの違和感に首を傾げる。が、その間にテキストは進んだ。

 

 

 >ころす

  にげる

 

 

「!?」

 

今までとは違う直接的な表現、それに真達が驚いている間にカーソルは何度かころすとにげるを選択を迷うかのように上下した後、ころすを選択する。

 

 ミツオの こうげき!

 諸岡を 殺した。

 

 ミツオは レベルアップした!

 

 ちゅうもくどが 16 アップした!

 わだいせいが 17 アップした!

 かっこよさが 3 アップした!

 

 

[なに、これ!……注目とか、話題とか……信じらんない! カッコいいとか、何よそれ!]

 

「クソがっ! 人を殺しといてカッコいいだぁ!? ンの野郎、舐めやがって!!」

 

宙に浮かぶテキストにりせと完二が我慢できないように怒鳴り、陽介達も怒りを隠しきれない様子を見せる。先ほど彼らを落ち着かせていた命でさえも、瞳そのものは落ち着いた輝きを見せているものの目を鋭く研ぎ澄ませてギリッと怒りを噛み殺すかのように歯ぎしりを見せている程だ。

 

(……なんだ、この違和感?)

 

しかし真は怒りよりも先に疑問点が浮かび上がる。先ほど山野真由美や小西早紀に関するテキストが現れた時、山野真由美はじょしアナ、小西早紀をしたいはっけんしゃ、と双方ひらがなやカタカナで、それも個人名ではなく職業などで示していた。しかし今回の諸岡に関しては個人名でしかも漢字を使用している。

 

(そして、この“ころす”という直接的な表現……)

 

「どうやら、諸岡氏を殺したのは彼で間違いなさそうだね」

 

真が考えているところに命が呟く。

 

[早く行こう、先輩! とっ捕まえてやんないと!]

 

「あ、ああ」

 

それに続けてりせが怒りに燃えながらも冷静さを保っているかのように言い、真も頷くと考えを断ち切って歩き出した。

 

[あ、敵の気配! 注意して!]

 

歩き出したところにりせから警告が飛び、同時にそこらから二人一組で踊っているような胴体の上にハート状の頭部が浮かび、剣を持ったシャドウ――ライフダンサーや太っちょ警官のような姿のシャドウ――偏執のファズ、動物の人形を模した姿のシャドウ――お守りレキシーが現れてくる。それも一体ずつではなくなかなかの数だ。

 

「おっと、まずいね……」

 

「全員、円陣を組め! 各個に応戦!!」

 

命がくるくると召喚器を指で弄びながらニヤリと笑うと真は背負っている剣を抜きながら指示を飛ばし、陽介達も頷いて武器を抜く。

 

「コノハナサクヤ、マハラギオン!!」

 

まず雪子が一番早くペルソナを召喚、全方位に炎の弾丸を放つ。ライフダンサーがその炎弾を受けて怯むがお守りレキシーはそこまで効いている様子を見せず、偏執のファズに至っては全く気にせずに銃を構えている。

 

「雪子! トモエ、マハブフ!!」

 

雪子を守るために千枝も素早くペルソナを召喚、氷の波動を放ってまとめで偏執のファズを攻撃するが、その冷気を偏執のファズは吸収した。

 

「げ、ウソ!?」

 

炎だけでなく氷も効かない事に千枝は驚き、偏執のファズの集団が一斉に二人目掛けて射撃を行う。

 

「タケミカズチ、先輩達を守れ!!」

 

が、二人の前に完二のペルソナ――タケミカズチが立ちはだかり、その巨体で銃弾を受ける。

 

「マハジオンガ!!」

 

そして完二の叫びと共に雷鳴が轟き、偏執のファズを落雷が撃つ。その一撃に偏執のファズが怯んだ。

 

「先輩! あのポリ公モドキは俺に任せといてください!!」

 

自分の得意属性である雷が弱点と分かった完二は雷型の剣を持ったタケミカズチと共に鈍器を持って突進、雪子と千枝もあのシャドウとは相性が悪いと判断したのか、雪子の攻撃で怯んだライフダンサーの方に向き直した。

 

「よっと、おりゃっ!」

「クマクマー!」

 

その先にはライフダンサー相手に多人数戦を仕掛けている陽介とクマの姿があり、陽介が素早い動きで翻弄しつつライフダンサーの突き出してくる剣をかわしながらフットワークで懐に入り込み、二本の短剣で隙のない斬撃をしかけ、そこにさらにクマが間髪入れずに爪を前方に構えて回転突進という光景があった。ちなみにそのペルソナであるジライヤとキントキドウジも、ジライヤが素早い動きでライフダンサーの集団の動きを封じたところにキントキドウジが掲げているミサイルを投げつけ一掃というこちらも見事なコンビネーションを見せている。

 

「おー、花村もクマ君もナイスコンビネーション……」

「あっちは心配なさそうだね……」

 

千枝と雪子は無駄に入ってあのコンビネーションを崩すのもどうかと思い、最後の二人を見る。

 

「「とはいえ……」」

 

「「はああぁぁぁっ!!!」」

 

残るのは真と命のコンビ。真の大剣がお守りレキシーを一気に両断し、それをかわしたレキシーは命が俊敏な動きと体術で各個撃破、わざわざ援護するまでもない。

 

「せいっ!!」

 

真の大剣がレキシーの一体を捉え、レキシーはまるで糸で吊り下げられているかのような変な吹っ飛び方をする。

 

「手ごたえがない……」

「もしかしたら支援タイプのシャドウかもね。変な技受けないよう気をつけて!」

 

「キキキキ!」

 

真が呟き、命が注意を施すと、お守りレキシーの一体が突然奇声を上げ、光を飛ばす。

 

「ん? この光……」

 

真はその光が見覚えのあるものに近いのに気づき、はっとした目でその光が飛んでいく先――完二が無双している偏執のファズの一体だ――を見る。

 

「まずい……完二! テトラカーンを使われた!! 物理攻撃が跳ね返されるぞ!!」

 

自分のペルソナの一体――デカラビアも使うスキルだったためかすぐスキルの正体を看破、完二に指示を出す。しかし乱闘になっている完二にその指示は聞こえなかったのかそれとも間に合わなかったのか、完二はテトラカーンの反射壁を張られたシャドウを思いっきりぶん殴ってしまい、その攻撃が反射。完二の身体が宙を舞った。

 

「がはっ……」

 

「まずっ!」

「完二くん!」

 

吹っ飛び、地面に叩きつけられた完二に千枝と雪子が叫び、千枝は完二の援護に突進。雪子はペルソナを召喚する。だが既に偏執のファズは反撃の銃を構えており、まともな方法では間に合いそうにない。

 

「真君、後よろしく!」

 

命も真にレキシーの相手を頼み、召喚器をこめかみに当てる。

 

「来い、ジャックフロスト! ジャックランタン!」

 

凄まじく精神力を消費する代わりにペルソナを二体呼び出し、その力を組み合わせて独自の技を使う命曰くワイルドの奥義、ミックスレイド。今、その新たなベールが脱がれる。

 

「ジャックブラザーズ!!!」

 

命が凛々しく叫ぶと共にジャックフロストとジャックランタン、二体のペルソナが姿を現す。しかしその二人の間には何故かスタンド付きのマイクが置かれていた。

 

[ヒホヒホヒホー]

 

[ヒホヒホヒホー]

 

まるで漫才の如く、しかし彼らにしか分からない言語で喋った後ぱふっという気の抜けた音と共に色紙が飛ぶ。と、何故か偏執のファズのみならずライフダンサーやお守りレキシーの残党までずっこけた。その光景たるやまるで昭和のコントか何かだ。

 

「よし、今の内に体勢を立て直すんだ!」

 

まるでここまで予想通りとばかりの命の指示にむしろ真達もずっこける。が、すぐさま立ち上がると雪子がペルソナを召喚。

 

「コノハナサクヤ、メディラマ!」

 

コノハナサクヤが癒しの波動を放ち、完二達を回復。完二も立ち上がるとペルソナカードを具現し、それを拳で打ち砕く。

 

「タケミカズチ、マハジオンガ!!」

 

完二の叫びを聞き届け、タケミカズチは雷型の剣を拳で打ち砕き、雷撃の力を解放。偏執のファズに降り注がせる。

 

「トモエ、ヒートウェイブ!!」

 

そこにトモエが地面を叩いて衝撃波を発生させ、偏執のファズを呑み込んだ。

 

「ふい~。大群だったなー」

 

ジャックブラザーズによってずっこけている間に敵を全滅させた後、陽介が息を吐いて呟く。

 

「また敵が来る前に、急ぐぞ」

 

そして真が増援が来る前に進もうと言い、彼らは走り出す。それから運よくシャドウに見つかる事なく階段を見つけ、一気に駆け上がった。

 

 

 

 おお ゆうしゃ ミツオ

 みごとであった!

 

 そなたの…

 

またも宙に浮かぶテキストと聞こえてきたまるで王様のような言葉。だが、それは途中で途切れる。

 

 そそそそそなたのののの…

 

直後、テキストがおかしくなり、聞こえてきた声にも不愉快なノイズやエコーが走る。

 

 ののののののののののののおおのおののおのおの

 おおのおののおぉおのおのおぉぉぉのおぉおおお

 ぬおぬぬぬのおぉぉぬぉぬぉぬぬぬぉぉおぉぉぉぉぉ

 

もはや日本語になっておらず、さらに続くテキストには文字化けが入っていってノイズやエコーが激しくなり雪子や千枝達は不快そうに目を閉じて耳を塞いでいる。

 

[近いよ、先輩! 気をつけて!]

 

「そうしてやる義理もないけど、彼の精神状態が心配になってくるね……急ぐよ」

 

不快そうだがとにかくサポートという仕事に集中しているりせの言葉と、命の人として相手を心配する言葉に真達も頷き、踏み出す。その不安定な精神状態を表すかのごとくシャドウも次々出現するが相手していてはきりがなく、一塊になって一点突破、一気に次の階層を目指す。

駆けあがった階段の先にあるのは巨大な扉。今までの経験から言うとこの先にテレビの中に放り込まれた――今回は逃げ込んだという方が適切だろう――人がいるという事になる。しかしこの場所は扉の先以外は安全地帯、真達は万一のことを考え、高い金を支払う羽目になるが神社の狐秘伝の妙薬――というか葉っぱ――で精力を回復させておいた。

 

[うーん……この向こうに居るみたいなんだけど……]

 

りせが扉の向こうを解析しつつ、どこか自信なさげに首を傾げる。

 

「まあ、扉を開けてみりゃ分かるだろ?」

 

完二は無防備にそう言って巨大な扉に右手を当て、ぐっと少し力を入れて押す。

 

「……ん? あれ?……ふんぬっ!!」

 

しかし扉はびくともせず、完二は両手で扉を押さえると声を上げて押し込む。露出されている腕からは筋肉と血管が盛り上がり、彼が本気で押している事が分かるがそれでもなお扉はびくともしない。

 

「ぐぎぎぎぎぎ!……ぜえ、ぜえ……な、んだこりゃ!? 鍵でもかけられてんのかよ!?」

 

単純な腕力ならこの中で一番であろう完二が全力で押したにも関わらずびくともしない扉に完二は悲鳴を上げ、陽介が「まさか押すじゃなくて引くだったり、もしかして引き戸とかなオチはねえよな?」と言いながら引っ張ったり横に動かそうとするもののやはりびくともしない。まるで何かの力で封印されているかのように、扉は閉ざされていた。

 

「うっそー……こんなの初めてだよ?……」

 

千枝がぽかーんとした様子で呟く。今までの場所ではこういう最上階の扉は力を込めて押すどころかちょっと力を入れて扉をほんの少し動かせば後は勝手に開いていった。こんな事は初めてだ。

 

「……あ、そうだ!」

 

と、雪子が気づいたように声を出した。

 

「ねえ、椎宮君! さっき拾ったあの球体! もしかしたらあれが関係あるんじゃないかな?」

 

「お、そうだ! 大体中ボスとかが落とす道具がダンジョンの先に進むための必需品ってのがお約束だよな!」

 

雪子の言葉に陽介も気づいたように柏手を打ち、真に向き直る。それに真も頷いてくらやみのたまを取り出して扉に近づける。と、くらやみのたまから漆黒の闇が溢れ出し、くらやみのたまがただの透明なガラス玉のようなものになると同時に扉が音を立てて開いていく。

 

「いくぞ!!!」

 

真の号令と共に、彼らは一気に扉の中に駆けこんでいった。

扉の先に広がる光景は円形状の高い壁に囲まれ、その壁の上には観客席が広がり、壁の隅っこには人の骨だろうものがドットで表現されている。それはまさにゲームなどでおなじみの闘技場、さらに言えば古代ローマのコロッセオだ。その中央にはテレビに映っていた少年――久保美津雄が彼らに背中を向けて何か喚き散らしている。

 

「やぁーっと見つけたっ!! あそこ!」

 

「テメェが久保か! 野郎、歯ぁ食いしばれッ!!」

 

千枝が叫び、完二が怒号を轟かせ拳を振り上げて突進しようとする。が、陽介が「待て完二!」と完二を押し止めた。何か様子がおかしい。

 

「どいつもこいつも、気に食わないんだよ……だからやったんだ、このオレが! どうだ、何とか言えよ!!」

 

美津雄が喚き散らすその先にいるのは、目が金色に光る、美津雄自身だ。

 

「シャドウが出ている……」

 

真が声を漏らす。しかも美津雄はやってきた彼らに気づかない程に逆上しており、下手に行動したらどんな刺激をしてしまうか分からない。

 

[……]

 

美津雄が喚き散らしているにも関わらず、美津雄のシャドウと思しき存在は何も喋らない。

 

「たった二人じゃ誰も俺を見ようとしない。だから三人目をやってやった! オレが、殺してやったんだっ!!」

 

『!!』

 

自白とも言える言葉に真達が絶句し、やがて「やっぱりこいつが……」と誰かが呟く。しかし、美津雄のシャドウと思しき存在はそれでもなお、まるで興味を持ってないかのように何も喋らない。

 

「な、なんで黙ってんだよ……」

 

思わず美津雄も気味が悪そうにぼやく。

 

[何も……感じないから……]

 

と、ようやく美津雄のシャドウと思しき存在が、抑揚のない声で呟いた。

 

「なに言ってんだ!? 意味分かんねーよテメェ!!」

 

それに対し美津雄が逆上したように喚く。

 

「な、なによ?……どっちがシャドウ?」

 

千枝が驚いたように呟く。今までの経験上、自分が解放されテンションが上がったかのような言動を見せていたのはシャドウの方。だが今はむしろシャドウの方がテンションが低い。だが、人と思えぬ気配を見せている事から奥にいるものの方がシャドウで間違いないはずだ。

 

[僕には……何も無い……僕は、無だ……]

 

やはり抑揚のない声で呟いた後、ようやく美津雄のシャドウは美津雄の目を見る。

 

[そして……君は、僕だ……]

 

「なんだよ……なんだよ、それッ! 俺は、俺は無なんかじゃ……」

 

「いけない、このままじゃ!」

 

美津雄のシャドウの呟きに対し美津雄が逆上し、禁句を叫びそうになる。それを聞いた雪子が声を上げ、その声を聞いた美津雄は驚いたように言葉をとぎらせて振り返り、真達を見ると「なんだお前ら!?」と叫ぶ。

 

「どうやってここへ……くっそ、誰なんだよ! こんなとこで何やってんだよ!?」

 

「るせえ! テメェを追って来たに決まってんだろが!」

 

美津雄の叫びに対し、完二が怒鳴り声を上げる。続けて千枝が「アンタが犯人なの?」と若干動揺を交えながら問うと、美津雄は「あはははは!!」とテンション高く笑いだした。

 

「そうだよ、決まってんだろ! 俺が全部やったんだよ!!」

 

美津雄は得意気に笑いながら自身のシャドウへと振り返る。

 

「ニセモノが何言おうが知るかよ! ははは、そうだ、お前なんか関係ない!」

 

「まずい……それ以上言うんじゃない!!」

 

これ以上喋らせるのはまずい、そう直感した命が叫ぶ。

 

「俺の前から消え失せろッ!」

 

だがひと足遅く、美津雄は己のシャドウを否定する文句を吐いてしまった。

 

[……]

 

「お前らもだ……こんな所まで追いかけてきやがって!」

 

美津雄のシャドウは黙り、美津雄は振り返って真達にも叫ぶ。

 

「お前らも殺してやる! まとめて殺してやる! 俺は出来る……俺は、出来るんだからな!」

 

まるで自分に言い聞かせるかのように喚き散らす美津雄。完全に興奮しており、命は彼を確保するため一歩前に出る。

 

[認めないんだね、僕を……]

 

だがその時、美津雄の背後からそんな声が聞こえてきた。それは、美津雄のシャドウの声だ。

 

「うっ……なんだ、これ……」

 

美津雄が倒れ込み、真達はそこで美津雄のシャドウと対面する。

 

「うわあぁぁっ!!」

 

直後、美津雄のシャドウを中心に衝撃が走り、その衝撃で美津雄は吹き飛ばされるとコロッセオの壁に叩きつけられ、その衝撃によって気を失ってしまう。真達もそのあまりの衝撃波に目を開けていられず、薄目でどうにか前方を確認できる状態だ。

美津雄のシャドウが立っていた場所に何かがいる。が、その直後そこに数々のブロックが生み出され、それらは一つ一つが積み重なっていくとまるでレトロゲームの勇者を思わせる格好に変貌した。

 

「くそっ……結局こうなんのかよッ!」

 

なんにせよ美津雄が否定したせいでシャドウが暴走してしまい、陽介は短剣を抜きながら叫ぶ。

 

[みんな、頑張って! コイツ倒せば、事件解決は目の前よ!]

 

りせも背後でペルソナ――ヒミコを召喚して声をかけ、真達も頷くと各々の武器を構えた。

 

[僕は……影……おいでよ。空っぽを、終わりにしてあげる]

 

電子音のような無機質な声が聞こえてくる。

 

「この姿……何かと思や“ゲームキャラ”ってか? ったく、どこまでフザけたヤツだよ!」

 

陽介は相手のシャドウに対し悪態をつく。と、美津雄のシャドウは[おいで、さあ……]と呼びかけてくる。

 

「へっ、言われなくてもぶっ飛ばしてやるぜ! タケミカズチ、デッドエンド!!」

 

その呼びかけに対し完二が叫び、タケミカズチを召喚するとその雷型の剣を振り下ろし、しかし美津雄のシャドウも右手に握っているように見える剣型の部分でその剣を受け止め、鍔迫り合いになる。

 

「隙だらけだぜ! ジライヤ、パワースラッシュ!!」

「くらえ! トモエ、黒点撃!!」

 

しかしそこにジライヤが手裏剣を投げつけ、トモエが一点に力を込めた蹴りを撃ち放つ。その一撃の衝撃に美津雄のシャドウが僅かに後ろに下がり、タケミカズチも距離を取る。

 

「コノハナサクヤ、アギラオ!」

「キントキドウジ、ブフーラクマッ!」

 

続けて雪子が自身と同じく魔法を得意とするクマと共に炎の弾丸と氷のミサイルで弾幕を張り、美津雄のシャドウに直撃。しかしそれらは全身のブロック状の身体にヒビを入れただけで、有効打になったとは思えない。

 

「嘘だろ、俺達の全力の攻撃だぞ!? それであれだけのダメージかよ!?」

「かったいなぁ……怯みもしないじゃちょっと自信なくすよ……」

「力自体も凄まじいもんッスよ……ちょっと鍔迫り合いになっただけなのに、結構消耗したッス」

 

陽介が悲痛にも聞こえる叫びを見せ、千枝が参ったようにぼやく。完二も額から汗をにじませながらそう呟いた。

 

「なら、ちょっとどでかいのをぶち込みますか。ディオニュソス! コンセントレイト!!」

「了解です! ハヌマーン、チャージ!」

 

命がこめかみを召喚器である銃で撃って召喚するのは極彩色の身体をした豊穣の神。その力によって命は精神を集中。真もインド神話に伝わる風神ヴァーユの化身を呼び出して力を溜める。

 

「皆! 椎宮君達を守った方がいい!」

 

「言われるまでもねえ! 二人の邪魔をさせるな!」

 

雪子が叫ぶと陽介も頷き、動き出した美津雄のシャドウを睨みつける。

 

――コマンド:たたかう――

 

そんな電子音が聞こえてきた瞬間、美津雄のシャドウはその巨体には似合わない俊敏さで、陽介目掛けて剣を振り下ろす。こちらもドット絵というデフォルメされた見た目には似合わない威圧感があり、狙われていた陽介は「うひゃあっ!」と悲鳴を上げて攻撃をかわす。振り下ろされた剣が直撃した地面は抉られており、無防備に受けたら大ダメージは免れない。

 

「っぶねえ、皆! 気をつけろ!!」

 

陽介が注意を叫ぶが、その時には美津雄のシャドウは続けて真に狙いを定めて突進していた。

 

「なっ!? 速ぇっ!?」

 

陽介は自分以上の速さのシャドウに驚いてしまう。

 

「タケミカズチ!!!」

 

が、完二が叫んでタケミカズチを操作。美津雄のシャドウの突進を阻む。

 

「こっから先は通さねえ!!」

 

「カンジ! 援護するクマ! キントキドウジ、マハタルカジャ!!」

 

完二が叫び、クマも援護するようにキントキドウジに指示。赤い光が味方の力を底上げする。

 

「ジライヤ、ガルーラ!」

「トモエ、ブフ!」

「コノハナサクヤ、アギラオ!」

 

その後ろからジライヤが美津雄のシャドウの足元に竜巻を起こして足元を巻き上げさせ、そこに氷と炎の弾丸が襲い掛かって美津雄のシャドウは怯む。その隙に陽介はちらりと真達を見てはっとした顔を見せた。

 

「皆! 離れろ!!」

 

陽介が仲間が巻き添えを食わないように叫び、それを聞いたタケミカズチが美津雄のシャドウから距離を取った瞬間、真と命が動く。

 

「ディオニュソス! ジオダイン!!」

「ハヌマーン! 利剣乱舞!!」

 

先程精神を集中し、力を込めたペルソナの極大雷撃と連続斬りが美津雄のシャドウに決まり、その攻撃の勢いにより煙が発生。その煙の中からぼろぼろとブロックが零れ落ちていくのが見える。

 

「いよっしゃあ!」

 

「流石椎宮君に命さん! すっごいパワー!」

 

凄まじい威力の二連撃、それを受けたらまず無事では済まないはずと陽介は歓声を上げ、千枝と雪子もハイタッチを行う。

 

[……!? み、皆! 油断しちゃダメ!!]

 

が、その次の瞬間りせの悲鳴が響いた。

 

「っ! 花村君! 今すぐジライヤの風であの煙を吹き飛ばして!!」

 

「え、お、おう! ジライヤ、マハガルーラ!!」

 

さらに命も叫び、陽介はおうと頷くとジライヤに指示。無数の竜巻で煙を吹き飛ばす。

 

「……何あれ? 胎児?」

 

千枝がぼそりと呟く。さっきまで美津雄のシャドウがいた場所に存在していたのは大きな頭の周りにデジタル文字を浮かばせている胎児。

 

「……心の仮面(ペルソナ)……その名前がここまで似合うシャドウも珍しいもんだ」

 

と、命が皮肉気な笑みを見せながら呟いた。

 

「どういう意味ですか!?」

 

真が問うと、命は「仮定だけど」と前置きをしてから話し始める。

 

「さっきの美津雄氏の言動、そして皆からの話を聞いてだけど……美津雄氏は周りを見下して世界が自分を中心に動いてると思ってるタイプだ、そんでもってとんでもない目立ちたがり屋。しかし、本人は取り立てて何か出来るわけではない。まあ要するに根拠のない優越感の持ち主ってやつか……だけど、美津雄氏は己の無能さに目を背け、自分は出来る、自分は出来るという優越感だけが歪んで増長していった。自分が世界で一番、誰よりも目立つ、特別な事が出来るのは自分だけ……その結果がさっきの存在さ」

 

「……勇者」

 

命の話の中で真が先ほどの存在を思い出し、それが指す名称を呟く。それに命はまたもふっと笑った。

 

「ペルソナとは人が外側の物事と向き合った時、表に出てくる“人格”。様々な困難に立ち向かっていく為の、“仮面の鎧”……まあ、同じ仮面の鎧だとしても、これは皆みたいに困難に立ち向かうための覚悟の鎧(ペルソナ)ではなく、赤子のように弱い自分を勇者という強い殻で覆い隠す虚栄の鎧(ペルソナ)。とでも言おう……なんにせよ」

 

そこまで言って、彼は胎児のような存在――美津雄のシャドウ本体を睨みつけた。

 

「ここからが本番だよ」

 

命がそう呟いた直後、完二がへっと声を漏らしてタケミカズチを召喚する。

 

「要するに、あんな強ぇのは外見(ガワ)だけって事だろうがよ! タケミカズチ、ジオンガ!!」

 

完二が叫び、タケミカズチが落雷を起こす。が、その時美津雄のシャドウは泣き声のようなうめき声をあげて黄色い壁を展開。その雷を防ぐとまではいかなくても威力を軽減させる。

 

「ちぃっ!」

 

「ジライヤ、ガルーラ!」

「キントキドウジ、ブフーラクマッ!」

 

完二が舌打ちを叩くが続けて陽介とクマが攻撃を仕掛ける。その攻撃に美津雄のシャドウは僅かに怯むが、その直後美津雄のシャドウの身体をビリビリと電気が走る。

 

[マハジオンガ……]

 

「っ、ぐあああぁぁぁぁっ!?」

「クマァー!!??」

 

放たれたのは雷撃の嵐、さっき攻撃を仕掛けた反動で動けなかった陽介とクマはその雷撃をくらってしまい、弱点である攻撃をくらってダウンしてしまう。と、その時美津雄のシャドウがまたもうめき声をあげ、それと共に上空に光が集中する。

 

「これは!?」

 

「まずい、メギドラがくる! 皆防御するんだ!!」

 

真がその光を見上げると、攻撃の正体を見抜いた命が防御を指示。咄嗟に真達は武器を前に構えて防御を行うがその前の攻撃にダウンしていた陽介とクマは防御できず、その攻撃をもろにくらってしまった。

 

[うそ、凄いパワー……皆! このシャドウの力、今までのシャドウとは比べ物にならないよ!!]

 

「くっ……」

 

「天城さん! 二人のフォローに回るんだ! 皆も弱点を突かれないように注意して! 隙を見せたらまたメギドラが飛んでくるかもしれない!」

 

りせがメギドラの威力や美津雄のシャドウの力に絶句、警告を飛ばすと真も注意を強め、命が咄嗟に指示を飛ばしていく。それに従って雪子はダウンした陽介とクマのフォローに回り、真、命、千枝、完二が美津雄のシャドウの前に立つ。

 

「一気に行くぞ! フウキ、ミリオンシュート!!」

「合わせるよ! クー・フーリン、ミリオンシュート!!」

「オッケー! トモエ、思う存分暴れまくって!!」

「俺もぶち込むッス! タケミカズチ、デッドエンド!!」

 

真と命が呼び出したペルソナが放つ衝撃波が幾多もの矢となって美津雄のシャドウを貫き、さらに縦横無尽に暴れ回るトモエの攻撃が美津雄のシャドウの動きを止める。そしてトドメにタケミカズチの一撃が美津雄のシャドウを殴り飛ばした。が、美津雄のシャドウの身体が再びバチバチと帯電現象を起こす。

 

「マハジオンガが飛んでくる! 花村君! クマ君!」

 

「安心するクマ、ユキチャン!」

「同じ手はくわねえよ!」

 

相手の攻撃の正体を見抜いた雪子が心配して二人に呼びかけるが、クマと陽介は頷いて防御の構えを取り、電撃を耐える。

 

「どうやらあいつ、俺達の弱点を狙ってくるみてえだ。俺達はしばらくサポートに徹するよ」

「ユキチャン、クマたちの分まで戦ってほしいクマ!」

 

「……うん、分かった!」

 

陽介とクマのお願いを聞いた雪子は頷き、戦線に復帰する。

 

「いくクマよー! キントキドウジ、マハタルカジャ!!」

「ないよりはマシだろ! もってけ椎宮! スクカジャ!!」

 

クマは味方全体を鼓舞し、陽介は仲間一人の機動力を底上げさせる。

 

「コノハナサクヤ、アギラオ!!」

 

雪子もコノハナサクヤを召喚し、炎の弾丸を撃ち込む。その一撃をくらった美津雄のシャドウが突如頭を押さえて喚き声を上げると、それを覆うように先ほどのブロックが現れた。が、それは足元しか完成していない。

 

[あの殻の完成までには、時間が掛かるみたいだね……完成するまでに壊しちゃえ!]

 

「了解した!!」

 

りせから分析と指示を受けた真が声を上げ、一気呵成に攻撃を仕掛けようとする。が、その前に美津雄のシャドウから淀んだ空気が広がっていき、突然のそれに怯んだ真達とその心を反映されたかペルソナ達も思わず下がってしまう。

 

「にゃろ! 脅かしやがって!!」

 

完二が怒鳴り、美津雄のシャドウを睨みつける。

 

[すぐだよ。怖がらなくていいよ]

 

「!?」

 

呟いている美津雄のシャドウと完二の目が合った時、美津雄のシャドウの口元が笑みを見せる。その瞬間、完二の心の奥底にある感情が浮かび上がった。

 

(怖い、怖い怖い怖い怖い怖い!!??)

 

その名は、恐怖。

 

「「「う、うわあああぁぁぁぁっ!!!」」」

 

完二だけではない。陽介と千枝も同時に悲鳴を上げ、逃げ場のないコロシアムを逃げ惑う。

 

「ち、千枝!? 花村君!? 完二君!?」

 

「この症状は恐怖! って事はあの技はまさかデビルスマイル!?」

 

雪子が逃げ惑う三人を見て慌て始め、命は慌てつつも冷静に相手の技の正体を見抜く。と、逃げ惑う千枝に狙いを定めた美津雄のシャドウはブロックを作り出し、まるで念動力を使っているかのように千枝目掛けてブロックを発射した。

 

「千枝! 避けて!!」

 

「いやあああぁぁぁぁっ!!!」

 

雪子が叫ぶが恐怖に心が折れている千枝は指示が聞こえず逃げ惑うだけ。しかしブロックは的確に逃げ惑う千枝を狙っていた。

 

「そうはいくかっ!!」

 

が、真が千枝の前に立ちはだかり、刀を振るってブロックを弾き飛ばす。

 

「助けてえええぇぇぇぇっ!!!」

 

「わ、さ、里中止めろっ!?」

 

「……くそ、いない! 真君! メパトラのスキルを持つペルソナ持ってない!?」

 

「メパトラ!? い、いえ……いや、待てよ!?」

 

パニックに陥っている千枝が真に抱きかかり、真が慌てて叫んでる中、命は自分が現在所有しているペルソナの中に治療能力を持つペルソナがいないのか真に呼びかけ、真もそんなスキルを持っているペルソナを現在所有している覚えがないのか首を横に振るが、直後思い出したように荷物を探り始める。

 

「あった!」

 

真は荷物の中から一枚の、三本の赤い剣が描かれているカードを取り出すとそれを上空に掲げる。

 

「スキルカード、発動!!!」

 

叫び、イザナギが光に包まれる。

 

「メパトラ!!」

 

真が叫び、イザナギが光の波動を降り注がせる。

 

「……ん? あ、あれ? 俺、一体何を?……」

 

「あ、あん? どうなってんだ?……俺いつの間に壁際に?……」

 

「え? あれ? あたしなん……ほあああぁぁぁぁっ!? なんであたし椎宮君に抱き付いてんのっ!?」

 

光を浴びた陽介、完二、千枝は正気に戻り、さらに千枝は現在自分が真に抱き付いていることに気づいて顔を赤くしながらさらに悲鳴を上げる。

 

「よかった。一人ずつとっ捕まえて鎮静剤浴びせてたら時間がかかり過ぎるからね。真君のおかげで助かった」

 

命は真の機転と能力に感謝する。

 

「み、命さん! あれを!?」

 

が、雪子が慌てた声を出して上の方を指差し、命だけでなく雪子の声を聞いた全員が雪子の指す方を見る。それと同時にぴぴろっろぴーとファンファーレのような音が鳴り響く。美津雄のシャドウの偽りの外殻、勇者の姿が完成してしまっていた。

 

[な、なにこれ!? あのシャドウから高エネルギー反応!?]

 

その直後、りせの悲鳴にも近い声が響き渡った。

 

――魔法:ギガダイン――

 

そしてそんな無機質な電子音が聞こえてきたかと思うと突然雷のようなエネルギーが降り注いだ。

 

「ぐあああぁぁぁぁっ!!?? くそ、どうなってやがんだ!? あの野郎、まさかレベルアップでもしやがったのか!?」

 

幸いにしてジライヤの苦手とする雷属性攻撃ではなさそうだが、高エネルギーの攻撃を受けた陽介は悲鳴を上げた後、いきなり強くなった相手に困惑を隠せずにいる。

 

「チィッ! だんだん思い出してきやがった……どうやら、俺らがあいつに妙な術を使われたみたいッスね」

 

「……ああ。情けねえぜ、さっきから俺いいとこ無しの足引っ張りまくりじゃねえか」

 

合流してきた完二の自分が情けないというように吐き捨てる声に陽介も同意し、頭をかくと次にぱんっと頬を叩く。

 

「だったら、今からその分挽回するっきゃねえ!」

 

「そッスね!!」

 

陽介と完二は気を取り直して叫び、ジライヤとタケミカズチを召喚。美津雄のシャドウ勇者モード――勇者ミツオ――を睨みつける。

 

[……どうして? 楽になりたくないの?]

 

それに気づいたのか勇者ミツオがまるで尋ねるような声を出してくる。

 

「へっ、楽にだと?」

「こんな所で楽になんかなってたまっかよ!!!」

 

それに対し、陽介と完二が吼えた。

 

「クマクマー! マハタルカジャクマー!!」

 

「マハガルーラ!!」

「マハジオンガ!!」

 

キントキドウジが仲間の力を底上げすると同時、竜巻の矢と雷の矢が勇者ミツオへと降り注ぐ。

 

「さっきのお礼、たっぷり受け取りなさいよ! トモエ、黒点撃!!」

 

そこにトモエが蹴り込んだ。

 

――アイテム:バクダン――

 

また聞こえてくる電子音。と、勇者ミツオの目の前にドットで作られた爆弾が出現、いきなり一直線に真達目掛けて飛んできた。

 

「おっと、そうはいかないよ! パールヴァティ、マハラクカジャ!!」

 

しかし命が待ち構えていたかのようにペルソナを召喚、青い障壁が爆弾を弾き返し、爆弾は空中でやはりドットの爆風を見せた。

 

「チャージ完了!! ハヌマーン、もっかい利剣乱舞!!!」

 

ぜりゃああぁぁぁ!! と掛け声が聞こえそうな速さでの連続斬りがブロックを斬り刻む。だが、その連撃はブロックにヒビを入れ、破壊こそするがまだ勇者ミツオを破壊するには至らない。

 

(集中、集中、集中!)

 

が、その中で一人行動をしていなかった雪子は両手を組み、目を閉じて集中していた。その頭の中に浮かぶのは真の操る一つ目ヒトデ――デカラビアの放ったアギラオを超える炎属性スキル――アギダイン。

 

(今、あの技が欲しい! 今、皆を守れる力を!)

 

雪子は目を開き、目の前に現れたカードを祈るように両手で包み込み、破壊。コノハナサクヤを召喚する。

 

「アギ――」

 

己の力量を超えた力を発動するため、精神力が持っていかれるのが分かる。だが、もう雪子は止まらない。

 

「――ダイン!!!」

 

熱い魂で雪子は叫ぶ。そしてコノハナサクヤが両手を掲げた瞬間、勇者ミツオを巨大な爆発が襲い、その外殻を粉砕する。

 

「雪子、凄い!!!」

 

千枝が感嘆の声を上げる。が、雪子は外殻が破壊され、墜落したショックで身動きが取れない美津雄のシャドウを睨んでいた。

 

「今がチャンスよ!!」

 

「!! 皆、総攻撃だ!!!」

 

雪子の声を聞き、我に返ったように真が総攻撃を指示。全員がペルソナに攻撃を命じ、一斉に攻撃を叩き込んだ。

 

「ど、どう!?」

 

己の持てる力全てを振り絞った攻撃に千枝が叫ぶ。が、煙が突如吹き飛び、ぐったりとした様子ながらも美津雄のシャドウが姿を現した。

 

[僕はね……僕がここに居る証拠が欲しいんだ……だから……君らを殺さなきゃ!]

 

「クソがっ!? あの攻撃を耐えきっただと!?」

 

美津雄のシャドウの身勝手な言い分に対し、体力の限界が近いのか膝をついている完二が叫ぶ。

 

「くそ、クマ君! 天城さんにこれ以上無理はさせられない! 回復を急ぐんだ!!」

 

「りょ、了解クマ!!」

 

命がクマに回復を指示し、己も召喚器を握りしめる。が、美津雄のシャドウは己の上に白色のエネルギーを集め始めた。再びメギドラを放つつもりだ。疲労困憊の状態で受けたら無事で済むかも分からない。

 

「間に合うか!?」

 

銃型の召喚器をこめかみに突きつけ、引き金を引き撃つ。ペルソナを召喚し、回復を指示。その一連の流れと美津雄のシャドウがメギドラを撃つのとどちらが早いか、もはや賭けだった。

 

「「うおおおぉぉぉぉっ!!!」」

 

が、命の回復を待たずして二人が美津雄のシャドウ目掛けて飛び出す。

 

「小西先輩の仇だあああぁぁぁぁっ!!!」

「皆を守る!!!」

 

陽介と真だ。二人とも、目の前の脅威に対し己のハートを燃やし奮い立たせ、ペルソナの召喚が間に合わないとクールに判断。己の身体での攻撃を選択していた。

 

「「くらええええぇぇぇぇぇっ!!!」」

 

真の上段に構えられた刀の振り下ろし一閃と陽介の構えた短剣二刀流のクロス斬りが美津雄のシャドウに決まる。そして、その一撃がトドメとなったのか美津雄のシャドウが震え始め、メギドラの膨張もおかしくなっていく。

 

「まずい! ティターニア! 回復はもういい、二人を助けるんだ!!!」

「み、皆伏せるクマー!!!」

 

命は回復目的で呼び出したティターニアに対し瞬時に指示を切り替え、ティターニアは一気に真と陽介の方目掛けて突進する二人を救出。その勢いのままコロシアムの反対側へと飛び込む。そしてクマの叫びに従ったメンバーが頭を抱えて伏せるのとほぼ同時に、メギドラが大爆発。すぐ下にいた美津雄のシャドウを呑み込んだ。

 

「……か、勝ったのか?」

 

爆発が収まり、心ここにあらずな状態で呟くのは完二。コロシアムにはもう異形の存在はいない。いや、正確に言うならば戦闘不能になった事で一時的に暴走が収まり人間の姿に戻った美津雄のシャドウが立っている。

 

「皆、大丈夫!?」

 

次に起き上がった命が全員の安否を尋ね、彼の使役するペルソナ――ティターニアが真と陽介を抱えてやってくると二人を下ろす。

 

「ぅ……っつ……」

「うぅ……」

 

二人とも疲労によって意識が混濁しているようだが、命に別状はなさそうだ。

 

「よかった……ティターニア、メディラマで回復お願い」

 

ひとまずの無事を確認し、命は改めて回復を指示。ティターニアも頷くと二人を下ろしてから両手を広げ、癒しの光を放って皆を癒す。

 

「う……せん、ぱい……」

 

と、体力の回復と共に真達が意識を取り戻した。

 

「みこと、さん……おれ、たちは……みん、なは?……」

 

「……二人のおかげで、皆無事だよ。よくやったね」

 

陽介のぼーっとした声に対し、命は微笑を浮かべて二人の健闘を労う。

 

「せんぱーい!!!」

 

と、りせが泣きそうな顔に泣きそうな声で真に抱き付いた。

 

「もう先輩ってば無茶しすぎだよぉ! あんな高エネルギーの中に突っ込んじゃうなんて先輩のバカ! 無鉄砲!」

 

「ぐ、ぐえ……」

 

「りせちゃんりせちゃん、真君の意識が飛んじゃうから落ち着いて」

 

りせの力一杯の抱擁に真の意識が再び飛びそうになり、命がそう言ってりせを引き剥がす。それからクマや、精神力を回復した雪子も参加して全員の身体を癒し、全員一時の休息を得る。

 

「うぁ……」

 

そしてようやく件の犯人、久保美津雄が目を覚ました。

 

「気がついたか? ったく、手間かけさせやがって」

 

「ひぃっ!?」

 

目を覚ました美津雄を見下ろすように陽介が声をかけ、美津雄は驚いたように悲鳴を上げて立ち上がると、自分に注目している真達を見回して「なんだ、これ」と力のない声を漏らす。

 

「お前ら……お前ら、一体なんなんだよ!?」

 

状況を呑み込めないのか美津雄が声を荒げて喚き散らす。

 

「お前を捕まえに来た」

 

それに対し真は静かにそう告げ、美津雄が声を無くすと陽介が「警察がお前を追っている」と説明。

 

「諸岡金四郎氏殺しの犯人……そして、その前の二件も君に容疑がかかっている」

 

命が鋭く目を研ぎ澄ませながらそう言い、陽介が「お前が、全ての事件の犯人なのか?」と確信を問うた。

 

「すべての、じけん……」

 

美津雄はそう声を漏らした後、突然得意気にハハハと笑い始めた。

 

「そうだよ、俺だよ!」

 

高笑いをしながら、彼は己の容疑を認める。その得意気な様子に完二が「こんなクソ野郎にッ!」と怒鳴った。

 

「諸岡の野郎だけじゃない……頭悪そうな女子アナも、小西とかいう女も! 全部俺がやったんだよ! 俺が、全部だ!!」

 

美津雄がそこまで叫んだ瞬間、佇んでいた美津雄のシャドウが突如黒い霧となって消滅。それに気づいたりせが「消えた!?」と叫び、今までなかったことに千枝も「どういうこと?」と漏らす。

 

「は、ははは……消えた……化け物め、消えやがった……ざまあみろ、チクショウ……」

 

己のシャドウが消えたことに美津雄も気づき、己のシャドウに向けて悪態をつく。その直後美津雄は再び崩れ落ちた。

 

「お、おい!」

 

「かなり消耗してる……とにかく、早くこっから出さないと!」

 

「そうだね。真君、帰る準備を! 巽君、力を貸して!」

 

「あ、えっと、りょ、了解ッス!」

 

完二が慌てたように美津雄に声をかけるとりせが、美津雄がかなり体力を消耗している事に気づき、命は真に還る準備――つまりカエレールの準備を頼み、完二にも力を貸すようお願い。完二も僅かに戸惑いながらも了承、命と完二の二人で美津雄に肩を貸す形で担ぎ上げ、直後真がカエレールを使用。この場所から脱出し、テレビから出る。

 

「ここ……は……なんで……んな、トコ……なんなんだ……お前ら……や、やめろ……なんで、テレビが……ううっ……」

 

「ちょ、ちょっと」

 

色々あって混乱し、支離滅裂になっている美津雄に千枝が声をかける。が、その前にクマが「聞きたいこと山ほどあるクマ!」と言って美津雄の前に出ると「どうしてこんな事をしたのか答えろ」と問い詰める。

 

「はは……なんだお前……着ぐるみか、それ?……はは、バカじゃねーの……キモイ、ぜ……」

 

こんな状況でも相手を嘲笑し、虚勢を張る美津雄にクマがうがーと叫ぶ。が陽介は「余計に混乱する」と言ってクマに下がるように言った。

 

「もう一度聞く、本当にお前がやったのか?」

 

「しつけえんだよ……なんども、そう……言ってんだろ……」

 

真の念押しの質問に対してそう答える美津雄に、りせが「何でこんな事をしようとしたのか」と尋ねる。

 

「人を三人も殺そうなんて……」

 

りせの言葉を継いで、千枝がそう美津雄に言う。と、いきなり美津雄がハハハハハと再び高笑いを始めた。

 

「街の騒ぎ、見たろ?」

 

美津雄はそう皆に話す。大騒ぎになったこの事件、それは俺が一人でやってやったんだ。と美津雄は高笑いをしながら得意気に語る。

 

「つまり、目立ちたかったって事か」

 

命が目を細めて美津雄に言葉を投げかける。

 

「私や他の人を狙ったのは、どうして? どうやってさらったの?」

 

次に雪子が叫ぶように美津雄に問いかける。

 

「んだよ……見た事あんなと、思ったら……ハハ、お前、雪子じゃん……」

 

美津雄は相手が雪子である事に気付いたようだが、今更自分と話したいとかあり得ないと、訳の分からない支離滅裂な言動を見せ、そんな美津雄に雪子も自分の事を恨んでたならそれでいいが、他の人はどうしてなのか答えてと詰め寄った。

 

「は……はは、笑える……すげ、必死になってんの……」

 

他の人を危険にさらし、挙句には殺したことに対し怒りを見せる雪子を美津雄は嘲け笑う。

 

「久保、美津雄」

 

その次の瞬間、低いドスの効いた声がその場に響いた。

 

「天城さんの質問に答えろ」

 

命だ。前髪で隠れていない左目だけでなく、隠れているはずの右目からも凄まじい威圧感を感じ、陽介達でさえ驚いてしまう。そのターゲットである美津雄の感じるプレッシャーはその比ではなく、彼はうつむくとぶつぶつと声を絞り出した。

 

「誰だって、よかったんだよ……どいつもこいつも……むかつくヤツばっかだ……」

 

「誰でもいい?……」

 

美津雄の言動に陽介が震える。そんな事で彼が思いを寄せていた先輩は殺されてしまった。

 

「お前、覚悟は出来てるんだろうなぁ!!??」

 

陽介が怒りのままに吼え、拳を振り上げて殴り掛かろうとする。

 

「花村!!!」

 

が、その拳を真が抑えつけた。

 

「椎宮!!! 離せよ!!!」

 

「こんな奴、殴る価値もない!!! お前の拳をこんな奴のために汚すな!!!」

 

陽介が真に怒鳴り、真もまた陽介に怒鳴り返す。

 

「そうッスよ、花村先輩……」

 

完二も真の言葉に同意しながら美津雄の前に立ち、彼を見下ろし睨みつけた。

 

「くく……なに? 俺を殺そうっての?」

 

「か、完二君!?」

 

まさか陽介の代わりに自分が美津雄を殴るつもりなのかと思った雪子が叫ぶ。が、完二は雪子を見て小さく首を横に振った後、美津雄の胸ぐらを掴みあげた。

 

「殺すだ? クソが、思い上がんじゃねえ! てめえは取り返しがつかねえ事をしたんだよ! キッチリ償って落とし前付けやがれ!! くたばっていいのは、てめえのしたことがどんだけ重いか……骨身で分かった後だ!!!」

 

「……」

 

そう言い終えると同時に完二が手を離し、美津雄は再び崩れ落ちる。

 

「なんでだよ……ちくしょ……んでこんな、くだらねえヤツに……」

 

陽介も崩れ落ち、行き場のない怒りに嘆き苦しんでいた。

 

「……警察」

 

「……え?」

 

完二が呟き、皆が完二の方を見る。

 

「何、ボサッとしてんだよ!? こういう時の110番じゃねえスか!」

 

「あ、ああ、そう、だな……」

 

完二の言葉に陽介が歯切れの悪い様子で頷いていると、その横で命が真を見る。

 

「花村君をお願い」

 

「分かりました」

 

命の指示に真が頷き、命は携帯電話を取り出すと110番をプッシュ、警察に通報。それから真及び女性陣、そしてクマには陽介を連れてフードコートで待ってもらう事にし、命と完二で美津雄を警察に引き渡す。それから二人も一緒に署まで連れて行かれ、簡単な事情聴取を受ける事になるがそこはほとんど命がテレビの世界などについて隠しつつ矛盾しない程度の嘘を盛り込んで事情を説明。解放された後、命達は再びジュネスに戻り、フードコートにやってくる。

 

「はぁ、あの足立ってデカがえらい嬉しそうでよ。堂島さんでしたっけ? 椎宮先輩のおじきにえらい怒られてたッスよ」

 

「はは、光景が想像できんな、それ……まあ、これで……俺らの役目も終わりって事かな……」

 

完二の説明を受けた陽介は弱々しく笑いながら呟く。

 

「動機が“目立ちたいだけ”なんて……あんまりだよ……」

 

美津雄の自供を思い出した千枝が、やりきれない様子で呟く。が、陽介の様子を見てはっとした顔を見せて「いや、意味があればいいわけじゃないんだけど」と慌てたように続けるが陽介は「分かってっから心配すんな」と笑う。が、やはりその笑みはぎこちなかった。

 

「終わったね、全部……あとは、警察に任せよう?」

 

りせが後は警察に任せようと言い、クマもテレビの中の世界が平和になった事を喜び、雪子も「良かったね」と微笑む。

 

「本当……色んなことあったけど……」

 

まだ半年も経っていないのに本当に色々な事があったと雪子が話すと、クマが雪子姫の逆ナンを話題に出し、雪子がどこまで粘着なのと怒る。事情を知らない完二が「逆ナン!?」とびっくりした声を出すが、雪子は「サウナの事忘れて欲しいでしょ?」と心なしか低い、脅すような声で即彼を沈黙させる。そして一番新米のりせが、ずるい。自分も皆の分を見たかったと悔しそうに話す。

 

「……あ、そっか。俺と椎宮と命さん、そんでクマだけか、全員分見たの」

 

りせの言葉を聞いて思い出したのか、陽介が呟く。

 

「ね、花村のってどんなんだった? そろそろ時効でしょ、教えてよー」

 

「いや、よく覚えてないな」

 

興味を持った千枝が真に尋ねるが、真は悪戯っぽく笑いながらあしらう。陽介も「まーまーいいじゃん」と慌ててその話題を終わらせた。

 

「って、そういえば椎宮ん時は何もなかったんだよな?」

 

「へ~……え、ホントかなぁ? やっぱり先輩はトクベツな人?」

 

陽介は真は気づいたら自然にペルソナを使っていたことを思い出し、りせは僅かに疑わしげにそう問いかける。

 

「そういや、先輩を“リーダー”って呼ぶの、考えてみりゃ、しまいなんスかね……」

 

寂しそうに完二がそう呟く。完二の言葉に千枝も「何だか寂しいね」と呟くと、場の空気が妙に重くなる。と、りせが名案を思いついたとばかりに微笑んだ。

 

「ねえ、打ち上げしよう?」

 

彼女は打ち上げを提案。楽しいし、終わったと実感できると思う。と言う。

 

「あー、打ち上げね! いいかも! いっちょ、パーっとやっとく?」

 

「はいはいはーい! クマ、ユキチャンのお家行きたい!」

 

りせの提案に千枝が乗り気になり、クマは雪子の家、つまり天城屋旅館に行きたいと騒ぐ。完二も「先輩んち、温泉旅館だったっけ」と思い出したように呟いた。

 

「あ、天城先輩も、入ってる……温泉?」

 

「口に出すなって、ヘンタイっぽいから……」

 

完二の頬を赤らめながらの言葉に陽介がぼやいた。

 

「あ、僕も入ってるよ?」

 

「命さんも悪ノリしないでくださいって!! って完二、なんで顔赤いんだよ!?」

 

「はぁ!? いや、これは違うッスよ!?」

 

命が笑いながら言うと陽介がツッコミをダブルに入れ、未だ顔が赤い完二は違う違うと首を横に振る。

 

「た、楽しそうだけど、今日はちょっと無理かな……」

 

雪子の言葉に千枝も「夏休みでシーズン中だもんね。お部屋いっぱいか」と慣れているのか頷く。クマも「ダメクマか」と残念そうに呟くが、雪子が「今度ね」と約束すると嬉しそうに笑う。

 

「あ、じゃあさ。代わりにお前んちとか、どうよ?」

 

と、陽介が真の家はどうかと提案。だが直後「何の打ち上げかと叔父さんに尋ねられたらやりづらいか」と考え直す。

 

「なんとかなるだろ? 菜々子もいるけどいいか?」

 

「一緒でいいじゃん。てか、遊んであげようぜ」

 

真の言葉に陽介は笑う。

 

「そっか、叔父さん刑事さんなら、今日とか帰れないかもね……」

 

千枝の言葉に全員がそういえば、と呟く。地元を騒がせていた連続殺人事件の犯人が捕まったとなるとその対応で今日は帰れなくなる可能性が高い。

 

「菜々子ちゃん、お腹空かせてないかな?」

 

千枝が呟くと、今度は雪子が思いついたように「皆で何か作るのはどう?」と提案した。

 

「へー、先輩達、お料理得意なの?」

 

雪子の提案にりせが素朴な疑問を持ったように尋ねると、雪子と千枝は互いに顔を見合わせて「それなりに?」と答える。二人の言葉に陽介が「何を言っているんだ、この人達は……」と表情を歪ませる。

 

「天城、里中……」

 

「あ、えーっと……あ、あれから旅館の人達に教わってるし……お、お買い物とか……」

「わ、私もえーっと、肉の本読んでるし……」

 

真が腕組みにジト目のコンボで雪子と千枝を見ると二人は目を泳がせながら呟く。

 

「ね、私も料理得意だよ?」

 

と、りせがそう言って「先輩に作ってあげたいな」と話す。それに真が焦った様子を見せる。

 

「じゃじゃーん。クマ、いい事思いつきました! 料理対決でモッキュモキュ~の巻! みたいなぁー!」

 

クマの能天気な言葉に陽介は心なしか震え声で「料理対決だ? ますます嫌な予感すんな」と漏らす。

 

「お、お、面白そうじゃん」

「えぇー、私が勝っちゃうけど、イベントの絵的にそれでいいの?」

 

千枝が震え声で料理対決に賛成するとりせが自信満々な発言を見せる。

 

「ほう、面白い」

 

と、なんと真が一番乗り気になっていた。

 

「え? 先輩も作るの?」

 

「料理と聞いたら黙っていられないな」

 

「その通りだね」

 

りせが驚いたように真を見ると彼は超乗り気に頷き、さらには命も参加を表明する。

 

「それじゃあ、審査員は菜々子ちゃんだね」

 

雪子がそう言うと千枝が「燃えてきたぜぇ!!」と叫び、その勢いで全員食品売り場に出発。その道中で真が菜々子に電話で晩御飯の献立について相談する。なお、遼太郎は今日も遅いと連絡があった後らしい。

 

[え……ごはん? お兄ちゃんたちが?]

 

「ああ。天城や里中、久慈川たちも遊びに来るんだ。それで、何が食べたい?」

 

[たべたいもの? えーと……なんでもいい]

 

献立はなんでもいい、ということを伝えるが雪子は「遠慮してるんだよ」と言い、真はもっと聞いてみる。

 

[オムライス……オムライスがいい!]

 

菜々子からオムライスのオーダーが入り、真はそれを皆に伝えると菜々子に楽しみにしててと伝えて電話を切る。

 

「オムライスね。いいチョイスだ、菜々子ちゃん。流石にそんくらい無難なら、食べられない物体にはならなそーだ」

 

陽介は腕を組んでうんうんと頷くが、女性陣三人がうつむいているのに気づく。

 

「……あれ、どうした?」

 

陽介が呆けた声で問うと千枝が「食材取ってくるから」と言ってその場を後にし、何故か別々の売り場に散っていく。命も「料理なんて久しぶりだなー」と言いながら卵売り場に歩いていった。

 

「欲しい材料、取ってきてやるよ。言ってみ?」

 

陽介は林間学校の経験から全力で真のサポートを行う事を決意。売り場の事は完璧に把握しているので真が欲しい材料を取ってこようと思い、尋ねる。

 

「いや、材料は自分で選びたい。売り場に案内してくれればそれでいい」

 

「あ、そ、そう? んで、何作る?」

 

「そうだな……ショウユオムライスに挑戦してみよう」

 

「おう、分かった。んじゃまず醤油だな。この時間ならっと……」

 

真から献立を聞いた陽介はこの時間帯ならどこが最安値か思い出し、雪子達が戻ってきた時の為にカートを完二に任せて真を売り場に案内。真は食材一つ一つを吟味し、カートに入れていた物とは別に用意したカゴに入れていく。

そして真が戻ってきた時、既に雪子達は出揃い、カゴには一通りの食材が入っていた。

 

「フォアグラ!?」

 

「さっすが見逃さないね、先輩。スペシャルなオムライスって言ったら、極めつけはコレでしょ」

 

陽介がカゴの中に何気に入っている高級食材に声を上げるとりせは得意気に笑い、次にふっと哀しげな目を見せる。

 

「前に先輩達、とても言葉では表せないようなヒドいもの食べさせられたって聞いたから……」

 

「いや、俺は食ってないんだが……」

 

「食べたの、俺と一条な? あと命さん」

 

りせの若干間違った情報に真が首を横に振り、陽介が修正。

 

「いやまあ、あれは酷かった……」

 

「だ、だからうるさいって!」

 

しかし肝心の料理に関してはフォローのしようがないのか呟き、千枝が怒る。

 

「かわいそうに……一体誰が、そんなひどいものを……」

 

りせは渾身の演技を見せる。と、千枝の頬がぴくぴくと引きつった。

 

「くく久慈川さん? 調子に乗ってられんのも、今の内ですことよ?」

 

千枝の言葉に雪子もこくんと頷く。

 

「……一撃で仕留める」

 

なんか料理を作るにあたっては相応しくない言葉がその口から発された。

 

「ってあれ、そういえばクマ君は?」

 

「ん? そういや……って」

 

いつの間にか姿が見えなくなったクマに気付いた千枝が尋ね、真達が周りを見渡すと肉の試食コーナーに居るクマを発見する。見ると、調理担当の婦人に甘えた仕草で未開封の肉を焼いて欲しいと、口説き文句のようにおねだりしている。

 

「あいつ……シメっぞ……」

 

クマの行動に陽介が低い声でそう呟く。それからクマは危うく調理担当の婦人が最高級肉を開封しそうになったところで陽介から拳骨をくらって試食コーナーから引きずり出された上で陽介から説教をくらい始め、その間に真達は買ったものを精算。それぞれ分けてから真の家に向かった。

 

それから料理対決参加メンバーは料理を開始。真や命の料理を手伝うつもりの陽介と完二も近くで待機し、菜々子の相手はクマに任されていた。

 

「ほんだと……“ウチアゲ”すると、実感するや……」

 

楽しく騒がしい料理風景を見ながら、クマは安心と寂しさが混じったような声で「事件、ついに終わったんだ」と呟く。が、その後クマは寂しそうな複雑な表情でうつむいた。

 

「クマ……そろそろ“あっち”に帰らないといけないな……」

 

「どこかに、帰っちゃうの?」

 

クマの言葉に菜々子が不思議そうに問いかけ、クマも「約束が済んだからね」と寂しげに笑って返す。

 

「ふうん……やくそくかぁ」

 

菜々子はそう呟いた後、無邪気に笑ってクマを見る。

 

「じゃあ、菜々子とやくそくしたら、帰らなくていいの?」

 

「ナナチャンと……約束?」

 

「んっと……あそんでもらうやくそく。だめ?」

 

菜々子は無邪気に笑ってクマと約束。

 

「菜々子、放っといてすまない……クマも菜々子の世話を任せてすまないな」

 

と、料理が一段落したのか、あるいは火を使いたいのだがコンロがわあわあ悲鳴を上げている女性陣に占領されてるから料理が出来ないのか――恐らく後者だろう――菜々子とクマの様子を見に来た真をクマは見る。

 

「クマは……センセイたちに、約束を果たしてもらったよね……だから、もうアッチに帰らなきゃ……」

 

「約束?……ああ、忘れていた。気にしなくていいと思うが?」

 

クマの言葉に真は首を傾げながら、自分達が犯人を捕まえるのにクマに協力する事を言っているのだと思い出し、別に気にしなくてもいいと思うとクマに話すが、クマは「約束は約束だし、破ったらよくないし」と歯切れ悪く呟く。

 

「クマがいないと寂しくなるな」

 

「セ、センセイ……」

 

真の寂しげな言葉にクマは感動したように声を漏らした後、菜々子を見て頷く。

 

「ナナチャンと約束。遊ぶ約束、確かにした……クマ、帰らなくて、ほんとにいいのかな?……」

 

その言葉に菜々子はうんと頷く。

 

「クマの方からじゃなくて、ナナチャンの方から、約束……とっても……とってもうれしい……ありがとう!」

 

クマは目を潤ませて菜々子と真にお礼を言った。

 

「椎宮ー、里中がコンロあけたから使っていいってよー」

 

と、陽介が真を呼びに来た。

 

「ヨースケ……」

 

「あん?」

 

クマが陽介に話しかける。

 

「クマ、新しい約束ができたから……も、もすこし、ジュネスでお世話になりたい! お願いできますか、お代官!」

 

「はぁ? バッカだな、当たり前だろ?」

 

クマが必死に頭を下げてお願いするのに対し、陽介は何当然の事言ってるんだというように返して勝手に職場放棄するな。大体お前がいなくなったらシフトに穴が開いて調整大変になるんだと説教を始める。

 

「でーきたーっ! はーい、ジャマジャマ、先輩!」

 

と、説教している後ろからりせが陽介を無理矢理どかしてきた。続いて千枝と雪子も自分の作ったオムライスをテーブルに配膳する。

 

「じゃあ、俺はコンロを使ってくる。先に食べていてくれ」

 

「あ、ご、ごめんね、占領しちゃって」

 

真の言葉に雪子は律儀に謝り、だが真は気にするなとだけ返して既にコンロ使用中の命と一緒に料理を再開する。

 

「どうぞ、召し上がれ!」

 

りせが満面の笑顔で菜々子に言う。と、陽介が「ま、まー待て」とそれを留める。

 

「いきなり菜々子ちゃんに食べてもらうってのは、その……いかがなもんかな」

 

陽介が呟き、千枝の方をちらりと見ると千枝が「こっち見んな!」と小声で怒鳴る。

 

「あー、毒見役ってことスか」

 

完二の発言にりせが酷い言い方だと唇を尖らせる。

 

「じゃ私のは、まず花村先輩、食べてみて。絶対おいしいんだから!」

 

りせは自信満々に自分のオムライスを陽介に薦める。それに陽介は「実はナニゲに期待してる。そうじゃなくたって“りせちー”手作りの料理を食べるとか普段絶対ない体験だ」と喜んで、いただきまーすとちゃんと挨拶してりせ作オムライスを一口口に入れる。

 

「う……」

 

その瞬間陽介の顔が引きつった。というか痛みに耐えているような表情に見える。

 

「こ……これは……菜々子ちゃんには……やれないな……」

 

「やっだ、美味しくて独り占め宣言!?」

 

「あ、ああ、まあ…(…んだこれ、めっちゃ辛い! この辛さと熱さ、溶岩かちくしょう!? フォアグラって食感なんてどこにもねえし!……な、なんかだんだん鉄のような味がしてきた……ってかやべ、鈍痛が……な、なんでだ?……)」

 

陽介は外面普通に見せつつも内面で悶え苦しんでいた。

 

「じゃあ、次、私のね」

 

「味見は、んじゃオレっすね」

 

次に雪子が言うと完二がスプーンで雪子作オムライスを一口掬って口に運ぶ。

 

「うぉ、うぉい、しょんな無防備に……」

 

痛さで舌が回らなくてもなお陽介は完二を心配する。

 

「……?……?……?」

 

完二は訳が分からない様子で二口三口とオムライスを口に運ぶ。

 

「ちょ、ちょっと、何か言ってよ」

 

流石に雪子も心配になったのかそう問うてきた。

 

「いや、その……なんつんだ?」

 

完二もコメントに困った様子を見せる。

 

「“不毛な味”っていうか……」

 

「不毛!? “不毛”って、味に使わないでしょ!?」

 

自分の料理に対し出されたあんまりな評価に雪子が叫び、美味しいのかどうなのかと詰め寄る。

 

「お、おいしくはないッスね……なんかこう、“おふ”を生でかじったみてえな……」

 

自分なりにコメントを導き出す完二。「こんだけ色々入ってて、全く味がしねえって、ある意味才能じゃねえスか?」と締めくくった。それに対し雪子は「繊細な味が分からないだけよ!」と完二に反撃する。

 

「……」

 

と、菜々子が雪子作オムライスを一口食べる。

 

「……おいしいよ?」

 

「な、菜々子ちゃん!……」

 

菜々子の笑顔でのコメントに雪子が感激の声を出す。

 

「じゃ、じゃあ、次はあたしので。うー……緊張するなー……けど、絶対うまいと思う! 今度こそ!」

 

「クマがいただきますー」

 

千枝作オムライスの味見役はクマ。彼はぱくぱくとオムライスを食べていく。

 

「ど……どう?」

 

「うん、まずい」

 

クマは単刀直入にぶった切った。

 

「ヨースケ達も食べるクマよ、ほれ」

 

「自分で“まずい”つっといて、お前……」

 

クマの勧めに陽介はぼやきつつも千枝作オムライスを一口食べると、「あー、なるほど」と納得した。

 

「や、ほら……でもさ。前のカレーに比べたら格段の進歩じゃん?」

 

「ふ、普通にまずいってのが、一番キツイから……しかも、慰められた……」

 

陽介のフォローに千枝はがくっと肩を落とす。

 

「……」

 

と、菜々子が千枝作オムライスを一口食べる。

 

「これも、おいしいよ?」

 

「……菜々子ちゃん!」

 

菜々子の笑顔でのコメントに千枝も感激の声を出す。と、雪子も千枝作オムライスを食べる。

 

「あー、ほんとだ……」

 

雪子もはっとしたように頷き、

 

「ほんとだほんとだ、普通にマズイ、これ! あははははは!」

 

何が彼女の笑いのツボだったのか笑い出し、千枝はムカッと来たように「りせちゃんの食べてみなよ! 絶対あたしのが美味しいんだから!」と言い、雪子はりせ作オムライスを一口食べる。

 

「う……うぼっ……」

 

直後雪子は失神。りせも「せ、先輩!?」と驚いた声を出す。

 

「一撃だ……」

 

完二が呟き、陽介が苦笑いを漏らす。

 

「こっ……子供には分からない味なんだもん! 大人の味なんだもん! 先輩達が、お子様なんだもん……私、私……ううぅ……ひっく……うわぁぁん……」

 

りせは癇癪を起こした後泣き始め、それを見た菜々子は今度はりせ作オムライスを一口食べる。

 

「ん……」

 

菜々子は一瞬辛さに怯む、が、すぐに笑顔をりせに見せた。

 

「からいけど、おいしいよ」

 

「菜々子ちゃん!……ねー、そうだよね! 菜々子ちゃんが一番オトナ!」

 

「うっわ、ウソ泣きキタ!」

 

菜々子から高評価を得た瞬間りせは嬉しそうに微笑み、余りの変わり身の早さに千枝が驚愕の声を上げる。

 

「騒がしいな? 一体どうしたんだ?」

 

と、丁度オムライスを作り終えた真と命がやってくる。

 

「お、真打キター!」

 

陽介がぐっと拳を握り締め、菜々子の前からオムライスをどかし、真のオムライスを菜々子の目の前に置く。

 

「お兄ちゃんの! いただきまーす」

 

菜々子も嬉しそうに真作オムライスを一口食べる。

 

「すっごいおいしい! こんなオムライス、はじめてたべた! すごい! おいしい!」

 

「ありがとう。ライスにケチャップの代わりに醤油バターを使ってみたんだ。喜んでもらえたら嬉しい」

 

菜々子は嬉しそうに全部食べていく。

 

「はは、じゃあ僕のはこれどうぞ。~オムライスの島、コーンの海で~です」

 

命が気取ってことんと卓袱台の上に乗せるのはまるで自然豊かな島のように彩り豊かなオムライスと、オムライスを島に見立て、コーンスープを海のようになみなみと盛ったスープオムライスだ。

 

「うお、すっげー!!!」

 

陽介が歓声を上げて我先にとスプーンを伸ばす。

 

「おあ、花村ずるーい! あたしもあたしも!!」

 

続いて千枝、完二、クマ、りせとスプーンが伸びていく。もちろん真は自分の分を死守しつつ菜々子の分もちゃんとキープしておく。というか菜々子の分キープは全員暗黙の内一致の意見なのであるが。そしてなんだかんだで全員分のオムライスが消費される。

 

「菜々子ちゃん、お腹いっぱいになった?」

 

「うん」

 

千枝が尋ね、菜々子が首肯すると陽介が立ち上がって「ところでさ」と言う。

 

「今度、お祭りあるだろ、商店街のさ。あれ、皆で行かないか?」

 

「あ、さんせい!」

 

陽介の提案にりせが賛成し、クマは「ひょっとして浴衣クマか!」と興奮、もちろん菜々子も一緒。それに菜々子は喜び、陽介も決まりだなと頷くと、「出店で買うと、大したモンじゃなくてもウマいんスよね。また」と完二がにししと笑った。

そして夜も遅くなったのでこの場は解散。りせは家が近くの完二が送り、雪子はバイクに乗ってきていた命が一緒に旅館に連れ帰り、千枝は真と、同じ方向までは陽介が一緒に送っていくことになった。

 

「……で、なんで愛家で肉丼なんだよ……」

 

「まあ、持ち帰りだからいいだろ」

 

その道中千枝は愛家の前に立ち寄ると急に肉丼が食べたくなったと言ってお持ち帰りを注文しに店に飛び込み、陽介がぼやくと真がそう返す。

 

「……そういやよ、ありがとな」

 

「なにがだ?」

 

唐突にお礼を言ってきた陽介に真が尋ね返すと、彼は照れくさそうに頬をかいた。

 

「ほら、久保だよ。俺、頭に血が上っちまってあいつぶん殴ろうとしたのを止めてくれただろ?……サンキュ」

 

「礼を言われる程の事じゃない」

 

陽介の言ったお礼の意味に対し真がそう言うと陽介は「俺にとってはそーなの」と返す。

 

「……事件、終わったんだな」

 

「ああ」

 

陽介は星が輝く夜空を見ながら呟く。

 

「んーと、さ、椎宮」

 

「どうした、花村?」

 

いきなり自分の苗字を呼んできた陽介に真も問い返す。

 

「……なんつーかさ。もうこれ、やめにしねえ?」

 

「は?」

 

「いや、悪い……俺達、付き合い長いし、友達だろ? なのに苗字呼びってなんかよそよそしいっつーかさ。事件解決してからってのは妙だけどさ……」

 

歯切れの悪い陽介に対し、真はふっと笑う。

 

「分かったよ、陽介」

 

「ぶっ!? い、いきなり呼ぶなよ!? こっちにも心の準備ってもんがだなぁ!!」

 

真のいきなりの名前呼びに陽介は吹き出し、叫ぶ。

 

「お前が望んだんだろ、陽介? 違うか、よ・う・す・け?」

 

「連呼すんなっての、真!!」

 

わざとらしく笑いながら名前を連呼、しかも二回目は本当にわざとらしく区切った呼び方をする真に対し顔を赤くしながら叫び返す陽介。それから二人はくくくっと笑う。

 

「まあ、あれだ。事件は終わっちまったけど、これからもよろしく頼むぜ、相棒!」

 

「ああ、相棒」

 

陽介の言葉に真は頷く。

 

「やっほーい、お待たせー!」

 

と、千枝が愛家から出てきた後、心なしか様子が変わったように見える男二人組を見て首を傾げる。

 

「ん? どうかしたっていうか、なんかあった?」

 

「「いや、別に」」

 

千枝の言葉に二人は異口同音で返し、千枝は再び首を傾げるが「ま、いっか」と結論づけると「さっさと帰ろー」と言って歩き出す。真と陽介もその後を追って歩き出した。

 

 

 

 

 

一方天城屋旅館に帰っている命と、その後ろに掴まっている雪子。

 

「……事件、終わったんですね」

 

「……」

 

「なんていうか、すっきりしませんね。私達がなんで狙われたのか、私達は助かったけど、山野さんや小西先輩、諸岡先生はなんで殺されなきゃいけなかったのか……」

 

「……」

 

「ご、ごめんなさい。でも、なんか口に出さないと不安で……」

 

無言の命に対しつい不安から思った事を口に出してしまう雪子は命に謝罪してしまい、命は無言のままバイクのスピードを上げる。

 

(事件は解決したはず……なのに、なんだ、このすっきりしない感覚は?……腹の中にストンと落ちないこの感覚、気持ち悪い……)

 

雪子の言葉に耳を傾ける余裕もなく、命は腹の中に抱える違和感と気持ち悪さを振り切ろうとバイクのスピードを上げ、帰路を急ぐのだった。




真「く……なんだ、こいつ?……」
命「なんでだ? なんで……この世界にニュクスが……こうなったら、ユニバースの力で再びこの命を賭けて封印する!」
真「先輩……俺も、真実をこの目で確かめるまで……負けるわけにはいかない!」

命「ユニバース! 再び我らに奇跡を!!」
真「その真言にて俺達に真実を!」

運命を巡る二人の愚者。その心には多様な絆が育まれたことにより生み出された力が宿っている。

命・真「「な、なんだ!?」」

その絆によって生み出された二つの力が、本来ならばあり得ないイレギュラーを起こす。





――4月――
千枝「おっはよー! あ、君達が転校生?」
ゆかり「ようこそ、月光神学園に」

命・真「「……はい?」」

イレギュラーによって巻き戻された時間。そこにはマヨナカテレビはない。影時間も存在しない……それどころか……。

順平「いよぅ、転校生!」
陽介「二人組の転校生とか珍しいって思ってたけど、まさかまたとはなぁ」
順平「俺と陽介も半年前同時転校でここに来てさ。だから声かけてやんなきゃって。親切だろ? 俺ら?」

P3とP4、二つの世界の学校が混ざり合っていた。

美鶴「私は桐条美鶴。この学校の生徒会長だ」
ラビリス「ウチはラビリス。副会長や」

そこに点在する、知らぬ名の者。

マリー「私は一年の……マリーでいいよ」
エリザベス「教育実習生のエリザベスと申します」

何故かいる、ベルベットルームの住人。

りせ「先輩なんですね! あの、お昼一緒しませんか?」
アイギス「放課後、お供させてほしいであります」
メティス「……」
シャビリス「……ふんっ」

シャドウが存在しない世界にて繰り広げられる、二人の主人公のもう一つの絆の物語。


命・真「「どうしてこうなった?」」


――P3&P4inギャルゲー――
――連載未定――





結生「乙女の皆さんご安心あれ! 隠し主人公も存在するよ!」
??(銀髪の乙女)「……」

――――――――――――――――――――

えー、ぜんっりょくで申し訳ありませんでしたぁっ!!!(土下座)
いやーあるSSまとめサイトでP4のギャルゲー小説を見てふと頭の中に走った電波を継ぎ接ぎにした感じのなんちゃって予告です。ぶっちゃけぐちゃぐちゃで我ながら意味が分かりません。
あ、ちなみに上の方では連載未定とか書いてますけど、万が一興味を持ってくださったなら申し訳ないですけど、連載する予定一切ありません! そもそも俺ギャルゲーとかした事ないからどう書けばいいのかとかのノウハウが全くないもん! もう、もしも書きたいとかいう奇特な方がいらっしゃったら主人公名とかもちろん好きに変えていいからむしろ名前とかキャラ好きに変えちゃっていいのでどうぞと譲渡する勢いです。

と、まあそんなものから入ってお久しぶりです。ボスシャドウとの戦闘描写が上手い具合に思いつかない&最近Vitaでは遊戯王タッグフォーススペシャルにはまり込んだというコンボでペルソナ4全く手を付けてませんでした。(汗)
あ、いや物理的な戦闘という意味なら思いついてたんですけど。アニメリスペクトの精神攻撃の方が難しかったです……真の過去とかをほとんど決めずに書いてた結果がこれだよ!……で、結局精神攻撃は諦めました。いやー、真は月光館学園に来るまでは口下手だったとか、命の影響であそこまで口が上手くなったという設定はあるんですけどそれを過去の精神攻撃と組み合わせるとなるとかなり難しい……。
そして事件解決っぽく見せてますがあれですね。うん。まあ次回からはしばらく日常編になると思います。

年度末になって色々忙しくなり、さらに僕は来年度から社会人になるのでさらに忙しくなるだろうことが予測されるため今まで以上に不定期更新になるかもしれませんが、連載エタらず頑張っていきたいと思います。
では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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