ペルソナ4~アルカナの示す道~   作:カイナ

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第三十六話 テレビの世界、ボイドクエスト

7月29日。夏休みに入っている特別捜査隊メンバーは朝からテレビの中にやってきていた。もちろん命も今日はシフトを夜からにしていたため一緒にやってきていた。

 

「方角、分かるか?」

 

真がりせに聞き、りせもうんと頷いて「やってみる」と答え、自らのペルソナ――ヒミコを召喚し、ヒミコはそのアンテナのような頭部を左右に動かす。

 

「居た……見つけたよ!」

 

そしてヒミコのアンテナが一つの方を向き、りせもそのアンテナが指す方を指差して「あっち」と言う。

 

「おっしゃ、行こう!」

 

千枝が「あたし達で、絶対犯人捕まえよ!」と気合充分に言い、それに真達も頷き合い気合を入れ直す。

 

 

 

 

 

「何コレ……ゲーム?」

 

りせの先導でやってきた場所を見た千枝がそう漏らす。上空に[GAME START]と[CONTINUE]という二つの文字が浮かんで[GAME START]の左側には白い三角形型の右矢印がそれを選択しているように示されており、周りもドットで形作られた、所謂レトロなゲームをイメージさせそうな作りになっている。

 

「捕まえてみろ……ってくらいだから、いわゆる“ゲーム感覚”って事か?」

 

陽介の皮肉めいた口調に千枝は「むっかつく!」と怒鳴って地団駄を踏み、「顔面クツ跡の刑にしてやる!」と意気込むと「行こ!」と促す。

 

「……ゲームスタートだ!」

 

割とノリよくそう言う真に対し陽介も僅かに笑みを見せつつ「男はみんな、ゲーム好き」と言い、命も「少々不謹慎かもだけど、まあテンション上がるっちゃ上がるよね。こういうの」と笑う。

 

「女はみんな、クマが好き」

 

陽介と似たようなノリでクマが言うが、真達は見事にスルーして歩き出した。

 

 

 

 

 

 >ぼうけんをはじめる

  ぼうけんをやめる

 

「なんだ!?」

 

ドクロマークが飾られている入り口から、辺りがやはりドットで形作られた城の内部と思しき空間に入り込んだ真達の前にそんな文字が浮かび、カーソルが一度“ぼうけんをやめる”の方に動くがもう一度“ぼうけんをはじめる”に動いた。

 

 なまえをいれてください

 

と思うと今度はそんな文字が浮かび上がった。

 

[えっ!? 何これ!?]

 

後方支援担当のりせが驚いたように叫ぶが、彼らが何もせずとも勝手に“ミツオ”という名前が入力される。

 

[ゲーム開始ってこと!? 何かムカつくー! 行くよ、先輩!]

 

「ああ」

 

りせの気合というか怒りの籠った声に真は静かに頷き、彼らは足を踏み出した。

 

[火属性攻撃に弱い奴発見! 皆、注意して!!]

 

りせの指示に真達は身構える。りせの解析能力はクマよりも優れており、真との絆の力により、さらに敵シャドウの弱点まで探れる能力を持つのだ。と言ってもりせ曰く「なんとなく、これが弱点だってのがいる事が分かるだけ」にすぎないため数種類の敵が一斉に現れられたらどれがりせの解析したものなのかが分からないという欠点があるのだが。

実際現在真達の前には三つの顔が塔のように連なりそれぞれ好き勝手に回転しているようなシャドウと空中をくねる巨大な蛇のようなシャドウ、そして巨大な円形のプレートに密着するように逆さづりにされているシャドウが二体存在している。

 

「炎なら私だね! お願い、コノハナサクヤ!」

 

雪子が一番に動いてペルソナを召喚、コノハナサクヤが全てのシャドウ目掛けて炎を放つ。マハラギオンが塔のようなシャドウ――堕落の塔と蛇のようなシャドウ――情欲の蛇に当たるが二体とも平然、特に情欲の蛇にはあまり効いている様子はなく、円形プレート逆さづりシャドウ――狂気のキュプロクスは気のせいか慌てた様子で炎をかわしていた。

 

「あの二体には効いてないって事は逆説的に、あいつが炎弱点だね!」

 

命が鋭く分析、狂気のキュプロクスを指差すと真も了解と頷いて右手にペルソナを宿すカードを具現し、握り潰す。

 

「サキュバス! マハラギオン!」

 

召喚されるのは男性を誘惑しその生気を搾り取るという悪魔――サキュバス。その撒き散らされる炎にキュプロクスの一体が直撃し、体勢を崩してダウンする。だがもう一体のキュプロクスは命からがらかわしていた。

 

「甘いっ!」

 

が、陽介がその相手目掛けてロケット花火を投げつける。花火、それに伴うイメージは綺麗な火の爆発。イメージが具現されるテレビの世界においてそのイメージが現実化しキュプロクスに直撃すると同時にロケット花火は綺麗な爆発を見せ、その炎に怯んだキュプロクスもダウンする。

 

「よし、いくよ巽君!」

「ウッス!」

 

ダウンした二体を見た命が完二に合図を出し、完二が頷くと命はこめかみに召喚器を当て、完二もペルソナカードを具現する。

 

「クラマテング!」

「タケミカズチ!」

 

命が召喚するのは源義経が牛若丸と名乗っていた時代彼に剣術を教えたという伝説が残る天狗ことクラマテング、完二が召喚するのは己のペルソナタケミカズチだ。

 

「「パスタアタック!!」」

 

そして二体のペルソナの一撃がキュプロクスを無に帰する。

 

「ジライヤ、ガルーラ!!」

「トモエ、ブフ!」

 

その間に陽介と千枝が残る二体のシャドウを撃破した。

 

「よし、先を急ごう」

 

敵の全滅を確認し、真がそう言って彼らは進み始める。

 

 

 

 

 

 わあっはっはっはっ!

 

「っ!? この声、モロキン!?」

 

二階に上がった時突然聞こえてきた笑い声に陽介が反応する。笑い声は諸岡の声によく似ていた。

 

 くさった ミカンの ぶんざいで

 ワシに はむかうとは いい どきょうだ!

 

 きさまの ような にんげんの クズは

 えいえんの くるしみを あじわうが いい!

 

 くらえっ!

 

 せいさいのいちげき!

 

諸岡と思しき笑い声と例によって上空に浮かんだ文字に合わせた諸岡と思しき声が止んだと思うと“せいさいのいちげき!”という文字が浮かび、それは赤色に光る。

 

 ミツオは いしきを うしなった…

 

そしてそんな文字が赤色で浮かび上がった。

 

[えっ!? ウソ……どういうこと?]

 

癪だが一応ゲームスタート時主人公と設定された名前がゲームオーバーのような図式になった事にりせが困惑する。

 

[と……とりあえず先を急ご!]

 

が、分からなくても立ち止まっているわけにもいかないため真達は進んでいった。その先にまたもシャドウが姿を現す。

 

「せあっ!!」

 

ペルソナを召喚するまでもなく、真が背負っていた刀を抜いて斬撃をくらわせ緑色の衣服を着た妖精のようなシャドウ――盲愛のクビドを斬り裂く。

 

「おりゃっ!」

 

続けて陽介が、内部に書物を浮かばせた王冠を被ったような形をしたクラゲのようなシャドウ――偽りの聖典を手に持っている二本の短剣で斬り刻む。

 

[カーッ!]

 

「おっと!」

「千枝! えいっ!!」

 

カンテラを持った真っ白な鴉のようなシャドウ――アメンティレイヴンが力を込めて突撃し、千枝がそれを持ち前の運動神経でかわすと雪子が扇子を投げて援護、ブーメランのように放たれたそれは吸い込まれるようにアメンティレイヴンに直撃。

 

「ナイス雪子! ドーンッ!!」

 

アメンティレイヴンがダメージで動きを止めた隙に千枝が思いっきり蹴りを叩き込み、吹っ飛ばした。

 

「クマクマーッ!!??」

 

クマはまだ戦闘に慣れてないのか真っ黒な蛇のようなシャドウ――情欲の蛇に追い掛け回されていた。

 

「クマッ!? ったく!」

 

それを見かねた完二が情欲の蛇の前に立ちはだかり、己の武器を盾にして蛇の攻撃を防ぐ。

 

「おらぁっ!!」

 

そして直後それを持ち上げて蛇の頭目掛けて叩き込んだ。ペルソナの力がなくてもなお怪力である完二の、ペルソナの力を借りた一撃に情欲の蛇は怯む。

 

「今だ、クマッ!!」

 

「クマッ! ペルクマー!!」

 

完二の呼びかけにクマも頷き、ペルソナカードを具現。

 

「そいやっ!」

 

武器としている右手にはめられた爪でカードを砕く。と共に彼の頭上にペルソナ――キントキドウジが姿を現した。

 

「キントキドウジ、ブフーラクマッ!!」

 

クマが指示すると同時にキントキドウジが氷の弾丸を放ち、情欲の蛇に当てる。と情欲の蛇が凍り付き、直後氷が情欲の蛇ごと砕け散った。

 

「うっし!」

「やったクマー!」

 

完二がガッツポーズを取り、クマも今まで戦えなかった分自分の力でシャドウを倒せたことを喜ぶ。

 

「ふぅ……これで全滅かな?」

 

最後に命が、見た目はただの五つの目玉だが実は巨大な人の顔という実体を持つシャドウ――フェイトサーチャーと一階で戦った狂気のキュプロクスを二体同時に無に帰し、武器である剣を左腰の鞘に、召喚器である銃を腰の後ろのガンベルトにしまいながら周りを見る。たしかにこれで全滅だ。それを確認し、完二がふんと鼻を鳴らす。

 

「ったく、古くせえゲームみてえな場所のくせにシャドウはどんどん強くなってやがるぜ……」

 

「やっと最後だからって気を抜いたらいけないよ? 最後だからこそ、しっかり気を引き締めてかかるんだ」

 

『はい!』

 

完二の悪態に対し命は犯人を捕まえて事件解決のためにも最後だからこそ気を引き締めるようにと言い、その号令に真達が一糸乱れずに返すと命も満足そうに微笑んで頷く。そして彼らは先に進んでいった。

 

 

 

 

 

 おはよう。

 ゆうべは よく ねむってた みたいね。

 

三階に上がると共にまた上空に文字が浮かび、同時にそんな女性の声が聞こえてくる。台詞の内容からして久保の母親というところだろうか。

 

 パトカーの おとが あんなに すごかったのに

 きづかないで ねてるんだから。

 きっと おおきな じけんね……あれは。

 

 アーケードのCAFEで コーヒー かってきて。

 おかねは たてかえて おいてね。

 

 きいた?

 おんなのこが ころされたんだって。

 ぶっそうに なったわね。

 あんしんして であるけないわ……

 

 きをつけてね。

 あまり おそくならない ようにね。

 

「……なんだ? 日常会話?……でもなんか珍しいよな?」

 

「……うん。今までだったらテレビに入れられた人の言葉が聞こえてくるのに……」

 

台詞が終わると陽介が首を傾げ、千枝も陽介の言葉に賛成。しかし台詞に対して考えている暇はなく、とりあえず話の内容については頭の片隅に放っていて足を進めていく。

 

[……あれっ?]

 

「どうかしたか? 久慈川?」

 

少し進んだ時、りせが声を出す。それに真がどうかしたのかと尋ねるとりせは[この先、行き止まりになってる……]と返した。

 

[そんなはずないんだけどな……]

 

「うん。ここまで一本道だから道に迷いようがないしね……」

 

りせの不思議そうな言葉に命も頷く。

 

「ん~……とりあえず進んでみりゃいいんじゃないんスか?」

 

考えるのは苦手なのか完二はずんずんと先に進んでいく。その先の道は前方と左右に分かれており、全て少し先を見るとドット絵で顔を形作られた石像のようなものから水が流れ出しているようになっているものが見えるだけの行き止まりになっている。

 

「あ、ほんとに行き止まりだ」

 

千枝が前方左右を確認して頭をかく。

 

「もしかして、さっきの階段がダミーだったとかいう可能性はないかな?」

 

雪子が自分達が間違った道を選んでしまったという可能性を提唱する。

 

「そういう可能性もあるけど……」

 

「だが、念のために調べてみる必要はあると思う。手分けをしてこの三方向を調べてみよう」

 

雪子の提唱した可能性を命は半分ほど肯定、真は元来た道を戻る前にここを調べてみようと提案。前方の道を真と命。右の道を千枝と雪子、りせ。左の道を陽介と完二、クマで調べる事にする。

 

「……といっても、これといっておかしいものはないですよね?……」

 

真は行き止まりにある、ドット絵で形作られた人の顔面――口に当たる部分から下の泉部分へと水が垂れ流されており、まるで平面の顔面マーライオンだ――を調べながらそう言い、命も近くの壁にも特に仕掛けがない事を確認する。

 

『う、うおおおぉぉぉぉっ!!??』

『きゃあああぁぁぁぁっ!!??』

 

と、左右の道から悲鳴が聞こえ、二人は驚いた様子で元来た道を戻り左右を見る。

 

「花村君! 巽君! クマ君!」

「天城! 里中! 久慈川!」

 

慌てて叫ぶが左右の道には誰の姿もない。

 

「まさか分断系の罠だったのか!?」

 

[先輩! 皆! 聞こえる!?]

 

「久慈川か!? 一体何が起きた!?」

 

命が罠に引っかかってしまったかと己の浅慮さを悔やんでいるとりせの慌てた声が聞こえ、それに真も返す。

 

[先輩! あの、変なオブジェに近づいたら急にふわーってなって目の前が真っ白になって、気づいたらさっき階段を上がってきてすぐみたいな場所に移動してたんです! でも後ろに階段はないし……]

 

「……ワープの可能性が高い! 真君、君は久慈川さん達と合流して! 僕は花村君達が消えた方に行ってみる!」

 

「分かりました! 久慈川! 皆にそこを動かないよう指示してくれ!」

 

[はいっ!]

 

命は瞬時にワープ系の罠という可能性を出し、自分が状況不明になっている陽介達の確認に行くから真はりせ達の方に向かうよう指示。真も頷くと二人はそれぞれ命は男性陣、真は女性陣が消えた方に走っていく。そしてオブジェに近づいた瞬間二人を謎の浮遊感が襲い、同時に二人の目の前が真っ白になっていく。

 

「あ、命さん!」

 

「花村君、巽君、クマ君……無事みたいだね」

 

命は一番に声をかけてきた陽介に返し、次に完二とクマの無事を確認する。

 

「ああ、俺らさっきのとこを調べようとしたらここに飛ばされたんス。でもって先に進もうとしたらりせから動くなって言われたんで……」

 

「まあ、無事でよかった。でも、僕達がさっきまでいた場所はもちろん、りせちゃん達とも別の場所にワープしたみたいだね」

 

完二の説明を受け、命はまず皆が無事でよかったと安堵。その後周りを確認するがさっきりせが通信で言っていた通り、後ろに階段がない事を除けばこの階層に上がってきた時の入り口にそっくり。事実その先にはやはり前方左右に分かれているらしい道が伸びており、しかしその分かれ道の中央にはシャドウらしき気配がある事から入り口部分とは別の場所にワープさせられたということが分かる。

 

「久慈川さん、聞こえる? 真君と合流できた?」

 

[あ、はい! 聞こえます! 先輩と合流できました!]

 

「こっちも花村君達と合流成功。で、この先の道にシャドウがいるみたいなんだけど……」

 

[うあ、こっちにもいます。まだ気づかれてませんけど]

 

命とりせは通信を行い互いの状況を確認する。

 

「うん、分かった。じゃありせちゃんはそっちのシャドウの分析に集中して。こっちはなんとかする……うん、終わったら連絡お願い」

 

命はそう言って連絡を終える。

 

「よし、行くよ。真君がいないから僕が臨時でリーダーを務めるけど、異論はないね?」

 

「あ、はい!」

「大先輩なら、先輩の代わりに命預けられるッス!」

「センパイ、よろしく頼むクマ!」

 

命の臨時リーダーに陽介達は頷き、命も「よろしくね」と返すと武器を抜き先頭に立ち、彼らはシャドウに向けて走り出した。

 

 

 

「こっちの分析に集中しろって……大丈夫なのかな?……」

 

一方真率いる女性陣。りせは男性陣の心配をしているが、それに対して千枝がにししと笑う。

 

「大丈夫だって。命さん強いし、花村だって、まあやる時ゃやるし?」

 

「うん。心配しなくてもいいよ」

 

千枝に続けて雪子が微笑みながら心配はいらないと言う。

 

「まあ、心配なら俺達の戦う相手をすぐに撃破して先輩達に通信を繋げればいいだけだ」

 

そして真も、背負っていた刀を引き抜いて自信満々にそう言った。

 

「いくぞ!」

 

真の号令に合わせて千枝と雪子は頷いて彼を先頭にシャドウ目掛けて突進、シャドウ――一階で戦った堕落の塔に先ほど戦ったアメンティレイヴンに盲愛のクビド――に襲い掛かった。

 

「あの塔みたいなのは任せて! 雪子、あの鴉お願い!」

 

「うん、分かった!」

 

「よし、妖精は任せろ!」

 

千枝はそう言うや否や堕落の塔に突っ込んでいき、しかし空を飛ぶアメンティレイヴンは魔法系ペルソナを使える雪子が魔法による遠距離攻撃をした方がいいという戦法は理に適っており、真もすぐさま盲愛のクビドに突進した。

 

「いくよ、トモエ!」

 

千枝は走りながらペルソナカードを具現し、それを器用にも走りながら蹴り割ってトモエを召喚。トモエも薙刀を手に堕落の塔に突っ込んでいく。

 

「トモエ、アサルトダイブ!」

 

千枝が指示し、トモエは薙刀に光を纏わせながら重い打撃を堕落の塔に叩き込む。

 

「ドーンッ!!」

 

そこに間髪入れずに突進の勢いを利用した飛び蹴りをくらわせた。みしっ、という手ごたえを千枝は感じるがまだ倒すには至っておらず千枝は反撃を警戒し、もう片方の足で堕落の塔を蹴るとその勢いを利用して後ろにバク宙を行い距離を取る。

 

[ヴォオオォォォッ!]

 

直後堕落の塔を構成している三つの頭がぐるんぐるんと回転、ぴたっと顔の方向が同じ向きになるように止まると堕落の塔を光が包み、傷を癒す。

 

「うげっ! ディアラマ!? あー、もっと攻めればよかったぁ……」

 

味方が少ないためからしくない防御優先の行動をとってしまった千枝はしまったーと頭を抱え、しかし仕方ないかと考えると堕落の塔に再び向かい合った。

 

「コノハナサクヤ、マハラギ!」

 

一方アメンティレイヴンと戦っている雪子はコノハナサクヤを召喚、アメンティレイヴンを指差してマハラギを指示し、コノハナサクヤは自らの周囲に無数の炎の球を生成、一気に弾丸の如くアメンティレイヴン目掛けて飛ばす。しかしアメンティレイヴンは縦横無尽に動き回り、その炎をかわすと素早く滑空、雪子目掛けて突進してきた。

 

「きゃっ!」

 

咄嗟に身を伏せて突進をかわす。が、いくら防具を着ていようとももろに受けたら無事にはすみそうにない力が外れてなお雪子には感じ取れた。

 

「フウキ、ガルーラ!!」

 

真は強風を操る鬼であるフウキの力で竜巻を起こし、盲愛のクビドを上空に吹き飛ばし武器である弓をも弾き飛ばす。

 

「ミリオンシュート!!」

 

さらに追撃を指示、フウキが右手に持つ刃を振るうと衝撃が矢のように盲愛のクビドを貫いた。

 

[やったー! 先輩かっこいー!! シャドウ撃破だよ!]

 

後ろから分析を行っているりせはシャドウの撃破を喜ぶ。

 

[!? え!?]

 

が、その直後驚きに硬直する。

 

[うそ、いつの間にシャドウ反応!? う、後ろ!?]

 

真達の援護に集中していたため、りせは新たにシャドウ反応が出てきているのに遅れてしまっていた。しかもその反応はりせの真後ろから感知、りせはヒミコを解除して振り向く。そこには石で作られているような外見の巨大な腕に剣を握っている形のシャドウ――正義の剣が、その剣を振りかぶっていた。

 

「い、いやああぁぁぁっ!!!」

 

テレビの世界の経験も浅く、前線に出ていなかったりせはその攻撃に恐怖し悲鳴を上げる。

 

「「りせちゃん!?」」

 

千枝と雪子が叫ぶが、千枝は相手していたシャドウをようやく撃破したばかり、雪子は空中を飛んでいる相手に苦戦しており援護は間に合わない。そして、無情に正義の剣の剣は振り下ろされた。

 

「テトラカーン!!!」

 

「えっ!?」

 

真の声が響き、直後りせが何かの障壁に包まれる。そこに正義の剣の力を込めた振り下ろし――パワースラッシュが叩き込まれるが、障壁にその剣が阻まれたかと思うとその勢いを跳ね返されたかのように剣が跳ね上げられる。

 

「デカラビア! アギダイン!!」

 

再び真の声が轟き、直後彼の頭上に浮かんでいる一つ目ヒトデとでもいうような存在が目を見開き、正義の剣が爆発したかのように勢いよく炎に包まれ、消滅する。

 

「すっげー……」

 

千枝が思わずぽかんとしてしまう。コノハナサクヤが使うアギラオよりも上位のスキルに雪子も唖然としてしまっていた。

 

「久慈川、大丈夫か!?」

 

「あ、先輩危ない! 後ろ!!」

 

「え?」

 

真が焦ったようにりせに安否を問うがりせの方も焦ったように叫び、真も振り返る。そこにはさっき雪子の攻撃をかわしていたアメンティレイヴンが真に突進を仕掛けている光景が映っていた。

 

「ぐはぁっ!!!」

 

突進の一撃による凄まじい衝撃が真の身体を襲い彼は吹っ飛ばされる。

 

「ト、トモエ! あいつを倒して!」

「コノハナサクヤ! お願い!」

 

千枝と雪子が慌ててペルソナを再度召喚、アメンティレイヴンの撃破を指示する。そしてようやく周りのシャドウの全滅をりせはヒミコで、千枝と雪子も周りを見回して確認。それから雪子がコノハナサクヤの回復魔法で真の回復を行なった。

 

「いてて……」

 

「だ、大丈夫椎宮君? ただの突進だったのにダメージが……」

 

「あー……物理攻撃がデカラビアの弱点なんだ。その代わりにさっき久慈川さんに使ったテトラカーン、物理反射のスキルがあるんだが。一撃しか跳ね返せない上に魔力の消費が激しいんだ……」

 

「ふーむ。使いどころが難しいって事ね?」

 

心配そうな雪子に真はデカラビアの特性について説明、千枝が物理攻撃が弱点であることに使いどころが難しいという判断を行う。

 

「でも、そんな危険を冒してまで私を助けてくれたんですよね? ありがとうございます、先輩♪」

 

「おわっ!?」

 

と、りせは嬉しそうに微笑んで真に抱き付き、真も驚いた声を上げる。

 

「そ、それより久慈川! 先輩達に連絡を!」

 

「あ、はい! ヒミコ!」

 

誤魔化すように真は通信を指示し、りせも頷くとヒミコを召喚し命達への通信を始めた。

 

[命さん! 聞こえますか? 大丈夫ですか?]

 

「あ、りせちゃん。遅いから心配してたよ」

 

[おそ……]

 

りせから通信を受けた命は、りせが心配そうなどこか慌てたような口調になっているのに平然とした、どこか軽い口調でりせに返しており、その言葉にりせが絶句したのを感じる。

 

「ところで、ちょっと確認したいことがあるんだけど」

 

[は、はい?]

 

と、命の声が真剣なものになった。

 

[……ここの、入り口から曲がり角までの距離? ですか? はい、調べてみます]

 

「入り口から曲がり角の距離? ああ、ちょっと調べてみる」

 

りせの命から聞いた言葉の復唱を聞くと真はそう言い、入り口まで走ると距離を調べ、歩幅からおおよその距離を算出するとりせに報告、りせから命に伝えてもらう。

 

[はい……距離が大体同じ?……えっと、そんな単純な……はい、分かりました。伝えます]

 

りせは命と通信を終えるとヒミコを一旦消す。

 

「えっと、命さんからの伝言ですけど……次の道を左に行ってという事です。もしかしたらそれで出会えるかもって」

 

「左?……まあ、命先輩の事だから何か考えがあるんだろう。分かった、そうしよう」

 

りせからの報告を受け、真は首を傾げるが命なら何か考えがあるはずだと結論づけると千枝達にもそうしようと呼びかける。それに対し千枝や雪子もここで反対するのも危険であるため千枝が「一蓮托生!」と言い、彼らはここの入り口から見て左側の道に歩いていく。そこで彼らを再び浮遊感を襲った。

 

「椎宮!」

「先輩!」

「センセイ!」

 

「花村、皆!」

 

その先には入り口すぐで別れてしまった陽介達が待っており、真は皆の姿を確認すると安心したように声を出す。

 

「ふむ、やっぱりね」

 

「どういう事なんですか?」

 

命のやっぱりという言葉に雪子が首を傾げると彼は「ああ」と言った。

 

「単純な話だよ。ここの最初の道から僕達は十字路の左右に分かれた。その先の道にある十字路までの距離は僕達がいる方と真君達がいる方で同じだった。だったら僕達は右に、真君達は左に移動すれば同じ場所にワープされるんじゃないかってね」

 

「そ、そんな単純な考えで……」

 

「また逆方向に移動したりしてぐちゃぐちゃになるより、修正が簡単な今の内に修正案を試してみた方がいいと判断したまでさ」

 

命からの説明を受けた千枝が口をあんぐりと開きながら言うと命はしれっとそう言ってのけた。

 

「だが、ここはそういう罠があるみたいだ。皆離れないようにした方がいいな。ここを調べようと言い出したのは俺だが、軽率だった。すまない」

 

真は自分の軽率な判断のせいで仲間を分断させてしまった事を頭を下げて謝罪する。と、陽介が「んなことねえよ」と返した。

 

「まあ、いきなり分断されちまったのは参ったけどよ。あんな罠があるなんて俺達全員思いもしなかったんだ。気に病む必要はねえよ」

 

「うん。大丈夫、どこに消えたって私が見つけ出しちゃうから!」

 

陽介は罠を見抜けなかったという意味なら真だけでなく自分達も同罪だと言い、りせはまた分断されてしまっても自分が見つけ出すと自信満々に言う。それに真は嬉しそうに微笑を浮かべ、「ああ」と頷いた。

 

「じゃあ、行こう」

 

真が号令をかけ、彼らは再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 じょしアナが あらわれた!

 

ワープゾーンを潜り抜け、四階に上がった時そんな、敵キャラが出現したかのような文字が例によって上空に浮かび上がり音声が流れる。

 

「女子アナ……山野真由美アナの事か?」

 

その文字を読んだ真がぼそりと呟いた。

 

 どうする?

  >たたかう

   にげる

 

と、そんな文字が現れた。

 

 ミツオの こうげき!

 

次のそんな文字が流れ、

 

 じょしアナを たおした。

 

流れるようにそんな文字が続く。

 

 ミツオは レベルアップした!

 

 たのしさが 4 アップした!

 むなしさが 1 アップした!

 

[そんな……殺したのもゲーム感覚だったってこと? ゼッタイ許さない!]

「まさか、そんな本当に……許せない……」

「ああ。ナメたマネしやがって……」

 

りせと雪子、完二は自分達も同じようにゲーム感覚で誘拐され、危うく殺されそうになった事で怒りに震える。陽介も「ゲーム感覚で先輩を……」と、千枝も「よくも雪子を……」と想い人や親友が被害に遭った事から当事者と同じくらいの怒りを見せていた。

 

「落ち着け」

 

が、そこに真がそう言葉を挟んだ。

 

「怒るのも分かる……だが、それに振り回されるな。感情的になり過ぎれば、見えるものも見えなくなる」

 

真も目を研ぎ澄ませており、身勝手な犯人への怒りを見せていることが分かる。だがそれでなお平静を保とうとしており、陽介達もその姿を見るとこくんと頷いた。

 

「そう。心はいくらでも闘志、怒り、それらを原動力に燃やせばいい。でも頭は常に冷静に状況を見定める。燃えるハートでクールに戦うんだ」

 

最後に命もそう締め、さっきまで怒りに震えていたメンバーは「クールに……」と自分に言い聞かせ、深呼吸をする。と、侵入者を見つけたシャドウが一斉に襲い掛かり、しかしメンバーは全員、平静を取り戻した顔でシャドウを見るとペルソナカードを具現。

 

『ペルソナァッ!!!』

 

燃える心が心の鎧(ペルソナ)に力を与え、シャドウを押し返す。その隙を突いて真達も武器を抜き、一気にシャドウ軍勢を薙ぎ払って進んでいった。

 

 

 

 

 

[チガウ…]

 

「!」

 

六階に上がった時、突然そんな虚ろな声が聞こえてくる。

 

[チガウ…チガウ…チガ…チガウ…チガ…チガウ…チ…チガ…チガガチ…チガガウ…チガウウ…チガ…ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ]

 

「な。なんだ?……」

 

突然の虚ろな声、それは最後には絶叫のような文字の羅列となり、唐突にぴたりと止む。

 

[えっ!? こ、今度は何?……壊れた……の?]

 

「罪の意識か、良心の呵責ってやつか……クソッ! 何を今更!」

 

りせの驚きと共に紡ぎだされる呟きに陽介が苦虫を噛み潰したような表情で漏らす。五階に上がった時、さっきの“じょしアナがあらわれた”と同じようなノリで“したいはっけんしゃがあらわれた”という戦闘シーンが入り、それを見た陽介は再び犯人への恨みを抑えきれなくなっていた。

 

「花村……」

 

「分ぁってる……燃えるハートで、クールに戦う……ああ、大丈夫だ」

 

真の呼びかけに対して陽介はさっき命に言われたことを思い出して深呼吸、平静を取り戻すと「大丈夫だ」と返してふと顔を上げる。

 

「……ん?」

 

と、陽介は声を漏らす。彼の目線の先には右手に扉、その正面にドットで形作られた盾が飾られている。

 

「そういやぁよ。今まで進んできたとこの扉の正面になんか、いっつもあんな飾りがあったよな?」

 

「……あ、そいえばそうだね」

 

陽介が盾を指差しながらそう言うと千枝が頷く。と、雪子がう~んと考える様子を見せた。

 

「そういえば、階段がある扉の正面っていっつも剣みたいな飾りがあったような……」

 

「どれどれクマ」

 

雪子が思い出すように呟いているとクマはどれどれと言ってぽんと扉をタッチ、扉が開く。

 

[ヴォオオォォォッ!!!]

 

「クマー!? シャドウクマー!!??」

 

その先からシャドウが顔を出し、クマは悲鳴を上げる。

 

「モト! ムドオン!!」

 

と、命が素早く召喚器を抜いてペルソナを召喚。棺桶に隠れた何者かの放つ呪いの陣により、シャドウは一瞬で呪殺され消滅する。

 

「あ、危なかったクマ……」

 

「ったくクマ公! 手間かけさせんじゃねえ!!」

 

クマがはぁはぁと息を荒くしていると完二が怒鳴り、クマも「クマ~」と小さな声を漏らす。

 

「えーっとここは……行き止まりの小部屋だね」

 

[じゃあ、盾の飾りは小部屋って可能性が高いのかな?]

 

千枝がドアの中を確認、どうやらさっきのシャドウがいただけの小部屋らしく、りせがそう言う。

 

「まあまだ確証はないけど、とりあえず調べてみようか」

 

実験データは多い方がいいし、と命はそう提案。と言ってもばらばらになるのは危険なので全員で回ってだが部屋中を調べた結果、盾の飾りの向かいにあるドアは小部屋に繋がり、蝋燭の飾りの向かいにあるドアは通路に繋がり、そして雪子の記憶通り剣の飾りの向かいにあるドアは階段に繋がっている。という事が明らかになる。

 

「なるほど。ドアの向こうが何なのかが分かるだけでも収穫だ。お手柄だよ、花村君」

 

「いっや~それほどでも~」

 

命の言葉に陽介はなっはっはと笑う。この階に上がってきた時の苦虫を噛み潰したような表情はどうにか消えたらしく、真達は階段を上がって次の階へと進んでいった。

 

 

 

 おはよう。

 

7階に上がった時、例によってそんな文字が表示される。

 

「あれ? こいつって三階で見た文字……」

 

「うあ、何これ? なんか妙なノイズ入ってない?」

 

しかし見覚えのある台詞に陽介が首を傾げ、文字が表示されると同時に聞こえてくる台詞も耳障りなノイズが走っているため千枝も不快感をあらわにする。

 

 ゆうべは よく

 おんなのこが ころされたんだって。

 

「なんだァ!?」

 

次に表示される文字とノイズ交じりの台詞に完二が素っ頓狂な声を出す。

 

 アーケードのおとが あんなに すごかったのに

 パトカーのCAFEで コーヒー かってきて。

 

「これって、単語自体は三階のものと同じ……だけど、文脈がおかしい……」

 

「も、もしかしてここに入ったハンニンの不安定な心が反映されてるクマ?……」

 

雪子は文章が三階で表示された単語のランダム表示になっている事に気づき、クマが呆然とした声を出す。

 

 おかねは あんしんして たてかえて

 きづかないで であるけないわ……

 

 きいた? おはよう。

 ぶっそうに おそくならない ようにね。

 

 あんしんして きをつけてね。

 

[何か支離滅裂になってきたね……イッちゃってる系っていうの? う~、ちょっと怖くなってきちゃったよ……]

 

支離滅裂な文章をりせは「イッちゃってる系」と評し、「怖くなってきた」と少し怯えた様子で漏らす。

 

 

 

 

 

[扉の向こうに何か居るよ! 準備はいい?]

 

七階を探索し、その中にあった扉の向こうからシャドウの気配を感じ取ったりせが注意を喚起。真達はこくんと頷くと扉に手を当てて開かせる。

 

 シャドウが あらわれた!

 

そんな文章と無機質な台詞と共に真っ黒い影が真の目の前に集中。真っ黒な、人の手を指を下にして手首の方に仮面を着けたような姿をしたシャドウが形成される。と、そのシャドウ――キリングハンドは人が指をパチンと鳴らすような動作を見せ、そう思うと姿はキリングハンドと同じ姿だが一回り大きい白色のシャドウ――ゴッドハンドが現れる。

 

[こいつ何? 敵が増えたよ!?]

 

「ま、どっちもぶん殴っちゃえばいいでしょ! トモエ、ヒートウェイブ!!」

 

りせが叫ぶと千枝が一番に動いてトモエを召喚、トモエは光を纏った薙刀で地面を叩き、衝撃波を起こすと二体のシャドウを同時に地面から叩き上げる。

 

「っし! ジライヤ、マハガルーラ!!」

 

そこに陽介がジライヤを召喚して疾風魔法を指示、ジライヤが両手を振り下ろすと共に上空から叩き落とすように突風が吹き、二体のシャドウを地面に叩き付ける。

 

「よっしクマ君、合わせて! パールヴァティ!!」

 

「オッケィクマ! キントキドウジ!!」

 

そこに命とクマがペルソナを召喚。

 

「「マハブフーラッ!!!」」

 

氷結の弾丸が疾風によって地面に叩きつけられていた二体のシャドウを貫き、ゴッドハンドはダメージに耐えきれずに霧散するがキリングハンドは立ち上がる。

 

「思ったよりやるね……」

 

命が呟くと突然キリングハンドが宙に浮かび上がり、手の平で思いっきり地面を叩く。その瞬間地面が揺れ、凄まじい衝撃波が真達を襲った。

 

「ぐぅっ!?」

 

その衝撃波に真達が押された、その隙にキリングハンドは再び指を鳴らしてゴッドハンドを召喚する。

 

「なっんだと!? ンの野郎、さっき倒したばっかだってのに!?」

 

再び現れたゴッドハンドの姿に完二が吼える。これでさっきゴッドハンドを倒したのは実質無駄になった。が、それだけではない。ゴッドハンドがキリングハンドに向けて指を鳴らすとキリングハンドの身体が光に包まれ、傷が癒えていく。

 

[ディ、ディアラマ!? これじゃあさっきまでの攻撃が全部無駄になっちゃった!?]

 

りせが慌てる。ゴッドハンドは消滅したがキリングハンドが再び召喚、キリングハンドの傷を新たに召喚されたゴッドハンドが癒す。この結果さっきまでの攻撃が実質意味のないものになってしまった。まあキリングハンドがゴッドハンドを二体召喚する恐れがあった可能性を考えるとゴッドハンドを一体事前に倒せたとも言えるのだが。

 

「しょうがない! 全員、もう一回一斉攻撃だ!!」

 

真が指示を出し、全員が頷くとペルソナを召喚。一気に連続攻撃を仕掛け、その内クマのマハブフーラをくらったゴッドハンドが倒れるのを見ると真はクマに、再び召喚されても面倒なため加減をしつつ氷攻撃をゴッドハンドに仕掛ける事を命じ、残るメンバーでキリングハンドに一斉攻撃を仕掛けた。

 

「クマクマー! マハブフーラクマッ!!」

 

キントキドウジに指示を飛ばし、氷の弾丸がキリングハンドとゴッドハンドに放たれる。それに貫かれたゴッドハンドがついに耐えきれず、黒い影になって霧散。するとキリングハンドが再び浮かび上がり、空中でくるんと回転しつつ地面を叩こうと急降下。それを見た真はペルソナカードを具現し、握り潰すように砕く。その直後キリングハンドの身体が地面を叩き、再び強力な衝撃波――デスバウンドが真達を襲う。

 

[ギイイィィィッ!!??]

 

だがその衝撃波の一部がまるで跳ね返されたかのごとくキリングハンドを呑み込み、

 

「アギダイン」

 

直後キリングハンドを巨大な炎が襲う。だが、その衝撃波を防いでいたのはデカラビアを召喚、テトラカーンによる反射壁をしいていた真だけではなかった。

 

「やるな、里中」

 

「さっきカウンタがレベルアップしてヘビーカウンタになっていたのさ!」

 

衝撃波を乗り越えて千枝がキリングハンドに蹴りかかり、その打ち上げ気味の軌道の回し蹴りがキリングハンドに突き刺さり、その身体が上空へと吹っ飛ばされる。それを見た真も背負っていた刀を抜くと飛び上がる。

 

「これで終わりだっ!!!」

 

空中でじたばたしているキリングハンドを真は睨み、上段に構えていた刀を振り下ろす。その斬撃がキリングハンドを一刀両断に斬り裂いた。

 

[ふぅ……お疲れ様!]

 

戦いが終わりシャドウ反応が消えたことを確認したりせが真達を労う。

 

[先輩、大丈夫? あまり無理はしないでね]

 

「ああ。俺はまだ大丈夫だ」

 

次に戦っている真達を心配する言葉を投げかけるが、真はまだ大丈夫だと言う。

 

「ん? これはなんぞや?」

 

と、千枝が何か――さっきキリングハンドが消滅した時、その霧散した影が地面に落ちた部分だ――に気づく。そこには何か漆黒の球体がぽつんと置かれていた。

 

「ん? さっきまでこんなもんなかったよな?」

 

「俺ァ戦いに夢中で気づかなかったッスけど……なかったような?」

 

「でも、あんな手強いシャドウがいた場所にあったんだもん。きっと何か重要なものなのかも!」

 

漆黒の球体――くらやみのたまとでも名付けようか――を見た陽介が首を傾げて皆に言葉を投げかけると完二も首を傾げ、次に雪子が重要なものなのかもしれないと言う。

 

「そうだな。一応持っておくとしよう……ところで、皆はまだ戦えるか?」

 

真がくらやみのたまを持つ事にし、次にこのまま進むかどうかを決めるため皆に戦闘や探索が出来るかを尋ねる。

 

「おう。全然大丈夫だ!」

「犯人を捕まえると思えば元気100倍だよ!」

「早く事件、終わらせよ!」

「まだまだこっからッスよ!」

「大丈夫、まだまだサポートばっちしだよ!」

「センセイ、行こうクマ!」

 

ここで探索中止を言い出すものは誰もおらず、真は命に目配せをするが彼は何も言わずただいるのみ。自分()に頼らず、自分()で判断しろというその様子に真も頷いて返した。

 

「よし、行こう!」

 

今の自分達ならまだ行ける。その確信を持って彼らは先に進んでいった。




さてまたまた一か月以上空きでしたお久しぶりです。というか危うく二か月空きになるとこだったな……。
今回はボイドクエストの中ボスまで。流石にここの大ボスまで進めるのは長さ的に無理っぽいです。次回大ボスとの戦いを予定していますが……さて、どういう戦いにしようかな? ゲームとアニメで戦法なんか違うっぽいし……。
では今回はこの辺で。ご意見ご指摘ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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