ペルソナ4~アルカナの示す道~   作:カイナ

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第十五話 中間テストとペルソナ特訓

5月6日、放課後。自称特別捜査隊メンバーである四人は真の席の周りに集合していた。

 

「あ~……なんでもう終わりかな、連休……」

 

「けど、平和で良かったじゃん? ジュネスでバイトしてると、おばちゃん層の噂話聞けるけど、何もおきてないみたいだしさ。誰かが失踪、みたいな話は無し……もしかして、天城の事件で終わりなのか?」

 

「終わらないだろうな。確証はないが……少なくとも油断は出来ない」

 

千枝が残念そうな声を漏らし、続けて陽介がにっと笑ってそう言うと真は小さく首を横に振って返した。

 

「うん。分からないけど、犯人がまだ捕まってない以上、安心は出来ないと思う」

 

「雨が降ったら、また誰かがテレビに映ったりすんのかな? 犯人像とか、もう少し何か分かればなぁ……」

 

真の言葉に雪子が頷いて返すと陽介が考え込む様子でそう続けるが、その表情は浮かないものだった。

 

「こうなると、雨が降って誰かが映るまではジタバタしてもしょーがないじゃん? 天気、そろそろ崩れるらしいけど、あたし的には、来週一杯もってくんないかな……」

 

そこに千枝が明るくそう言うがその言葉はどんどん力がなくなっていく。

 

「来週……中間テストじゃん?」

 

そしてはぁっとため息を漏らしそうな声色で言う。

 

「あー、言っちゃった……それ考えたくねえー……」

 

「ハァ、あたしも雪子みたく天から二物を与えられたいよ……」

 

それに陽介も浮かない表情を見せ、千枝も今度こそため息を漏らしながら続ける。と陽介がピーンというような表情を見せた。

 

「そ、そうだ真! 何かあるかもしれねえし、テレビ――」

 

陽介の言葉が終わる前に突然ピリリリリと音が鳴り始め、真は制服のポケットに手を入れる。

 

「あ、悪い……先輩からだ」

 

真は陽介に一言断ってから携帯の液晶を見、それに表示されている名前を見ると電話に出る。

 

「もしもし? 先輩ですか?」

 

[あ、もしもし、真君? 念のために言っておくけど……っと、今周り大丈夫? 皆にも聞いておいてもらいたいことなんだ]

 

「……」

 

電話口の命は開口一番そう言おうとするが直後気づいたようにそう言い、それに真は真剣な目を見せると教室内を見回す。既にほとんどの生徒は教室を出て行っているが残って喋っている生徒もいないことはなく、真はそれを確認すると小声になる。

 

「すみません、屋上にでも移動してからかけなおします」

 

[オッケー]

 

真の言葉に命は頷くと電話を切ったのかツーツーという電子音が鳴り始め、真は陽介達に屋上に行こうと伝え、皆揃って屋上に行ってから改めて命に電話をかける。陽介達にも聞こえるようスピーカーをオンにしていた。

 

「先輩、それで伝えたいことって?」

 

[うん。とりあえず手っ取り早く言えば、もうすぐ試験でしょ? 試験終了までテレビに行くのは禁止]

 

「「えええぇぇぇぇっ!!??」」

 

命の言葉に陽介と千枝が絶叫。直後陽介は真から携帯を奪い取ると電話口に口を押し当てた。

 

「みっ、みみみ命さん! なんでっすか!?」

 

「そ、そうですよ! ま、万が一何かあったら!!」

 

陽介に続いて千枝も電話口目掛けて叫ぶ。

 

[今のとこテレビの中に救助対象の人はいないはずでしょ? 僕達も先輩に言われてたことだけど、学生の本分は勉強なんだから。それに、安全な内に受けられる試験で赤点取っての補習中とかにテレビの中に誰か放り込まれでもしたらそれこそ取り返しがつかないよ]

 

「「うぐ……」」

 

焦り絶叫している陽介と千枝は冷静な命に正論で言い負かされ、黙り込んでしまう。

 

[ま、そういうわけで試験期間中はテレビに行くのは禁止だから。真君もリーダーを承ったからにはきっちり面倒を見るように。いいね?]

 

「わ、分かりました」

 

[じゃあ試験頑張ってね。終わったらジュネスで何か奢ってあげるし、シャドウ相手の鬱憤晴らしにも喜んで協力するから]

 

命の電話口からでも分かるような厳しい声質での言葉。それに真が頷くと命は今度は明るい口調で言った後電話を切ったのかまた電話口からツーツーと電子音が鳴り始めた。そして二人はがくんと肩を落とす。

 

「ま、まあまあ、命さんの言うことも一理あるし、頑張ろ?」

 

「そーだね……」

 

そこに雪子が困ったように苦笑いしながら二人に声をかけ、千枝もはぁとため息をついて返す。

 

「しょうがない、頑張ろ。ねー花村、雪子に色々教わった方がいいんじゃない?」

 

千枝はふぅと息を吐いた後陽介の方を向いて問いかけ、それに陽介は思いついたような表情を見せる。

 

「あー、そういや天城、学年でトップクラスだもんな。個人レッスン、頼んじゃおうかな」

 

「こっ、個人レッスン!?」

 

陽介の言葉に雪子は驚いたように声を漏らし、顔を伏せる。

 

「え? どしたの?」

 

そして陽介がそれに声を漏らした直後、雪子は陽介の方を向くとその頬目掛けて思いっきりビンタを叩き込む。

 

「い、いて!?……そんな、叩くとこですか? 勉強、教えてって言っただけなのに……」

 

「あ、ごめん……勉強か……“オヤジギャグ”なのかなって……最近、変なお客さん多いから……」

 

「ギャグと思ったなら、なおさら流せよ!」

 

「ごめん、手が勝手に……」

 

「やれやれ……」

 

陽介が声を漏らし、それに雪子が呟くと陽介が叫び、と軽く漫才みたいなやり取りが一段落すると陽介は千枝の方を向いた。

 

「て言うかコレ、里中が勉強教えてもらえとか、いらんコト振ったからじゃね?」

 

「な、なんであたしのせいになんのよ!? あんたが“個人レッスン”とかビミョーな言い方すっからでしょ!」

「確かに。場合によってはセクハラと受け取られても文句は言えんぞ」

 

「なっ! つ、椎宮まで……てか里中! 十割俺かよ!?」

 

陽介の叫びに千枝が返し、それに真が同意すると陽介は流石にショックを受けたように声を漏らした後千枝と口喧嘩を始める。

 

「あ、私、そろそろ帰るね」

 

そして雪子はマイペースに帰宅。真は口喧嘩をしている二人を見て困ったように頭をかいた。

 

それから二人も口喧嘩を終えると帰宅し、真も荷物を持つと屋上から出て行く。

 

(そういえば、今日は学童保育のバイトが出来る日だったっけ……)

 

真はふとそんな事を思い出し、携帯のカメラで取った写真の中からバイトの時間帯を撮ったものを調べる。

 

(あぁ、やっぱりそうだ。一応応募したらいつでも来てくださいって感じだったな)

 

真はそんな事を考えながら学校の玄関までやってくる。と一つにやっと笑った。

 

(先輩は試験期間中テレビに行くなとは言ったけど帰って勉強しろなんて一言も言ってなかったな)

 

そう結論付けると彼は商店街のバス停に行き、そこから学童保育を行う高台へとやってくる。そして職員に挨拶した後、学童保育の手伝いとして子供達に紹介された。

 

「……」

 

子供達からは妙に注目されており、真は微動だにしない。

 

「せんせー、かのじょいる?」

 

「こら! そういうこというの、エッチだからダメなんだよ!」

 

「せんせー、色オニやろーぜ! せんせーがオニ!!」

 

一人の男の子が突然そんな事を言うとその隣にいた女の子が注意し、彼とは別の男の子はそう言うや否や逃げ出しさっきの男の子と女の子も逃げていく。意外にすばしっこいのか既に結構遠くに逃げていた。

 

「どーしたのせんせー! のろまー!?」

 

「……面白い」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ねて挑発してくる色オニを提案した男の子に対し真は一つそう呟くと少し柔軟体操を行う。

 

「陸上部でもあった先輩に鍛えられた足腰、舐めるな!!」

 

「げっ、速ぇ!?」

 

そしてそう言うや否や一気に走り出し、男の子はぎょっとした表情を見せると大慌てで逃げ出した。

 

「って、色オニー! 色、色言ってー!!」

 

「よし。ならばコバルトブルー! 見つけられるものなら見つけてみろ!!」

 

「なんだそれー!?」

『大人気ねー!!』

 

男の子の叫びに対し真は色を指定、色オニに参加している子供達は例外なくそう叫んだ。

 

 

それから学童保育の終了時間。真はどうやら迎えが来ていないらしく男の子が一人残っているのに気づく。

 

「椎宮くん、どぉ? 全員お迎え来たかな?」

 

「いえ、この子が……」

 

「あ、勇太くんがまだか……」

 

学童の先生の言葉に真は男の子を指しながらそう言い、それに先生はそう呟いた後いつものことだけどねぇと声を漏らす。すると勇太と呼ばれた男の子が真の後ろに隠れ、同時に女の人が近づいてくる。

 

「……あ、ユー君。ごめんね、遅くなって……」

 

「……べつに」

 

女の人の言葉に勇太はそう言って走り出し、女の人はそれから真に気づいて首を傾げる。

 

「学童の……先生?」

 

「ええ」

 

「そうですか……ユー君、また面倒かけてると思いますけど、お願いしますね……」

 

女の人の問いかけに真が頷いて返すと女の人はそう言い、勇太の後を追うように歩き出した。

 

「……南勇太くん」

 

すると突然学童の先生が口を開く。

 

「みんなと遊んでるときは元気いっぱい……というか、ありすぎでちょっと問題なんだけど。お母さんが来ると、ああなんだよね……ママハハだから、しょうがないのかなぁ?」

 

「ママハハ、というと……」

 

「勇太くんのお父さんと、さっきの女の人が再婚してね。あの人、どこだったか、都会の人らしくて……ちょっと何考えてるか分からないのよねぇ。そのせいか、勇太くん、学校でも問題児みたいでねぇ……この間も……」

 

学童の先生はそう噂話を続けており、真はふぅと息を吐くと口を開いた。

 

「すみません。俺もうそろそろ……」

 

「あ、そうね。ごめんなさい。お疲れ様……これ、バイト代ね」

 

「どうも、では失礼します」

 

真の言葉に学童の先生はすまなそうに笑った後彼にバイト代を入れた茶封筒を渡し、真もこくんと頷くとまず着替えるため部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「おう、帰ってきたか」

 

真が家に帰ってきた時に聞こえた声、それに真は驚いたように家の中を見て、そこにいた男性に微笑みかける。

 

「叔父さん、早いですね」

 

「まあな……ところで、どうだ、そろそろこっちの暮らしも慣れただろ?」

 

「ええ、まあ」

 

真の言葉に遼太郎はそう返した後真に問いかけ、彼は頷いた後彼に歩き寄る。

 

「なんなら、何か話しますか?」

 

「ハハッ、ヒマなのか? まあ座れよ」

 

その言葉に遼太郎は笑ってそう言い、自分の向かいにある椅子に座るよう勧める。

 

「お前が来てから、こうしてゆっくり話をする時間もなかったな」

 

「ええ、そうですね」

 

「……」

 

遼太郎の言葉に真は頷き、それに対し遼太郎は必死に話題を探すような顔を見せていた。

 

「あー……その、どうだ、学校は?」

 

「楽しいですよ。交通に関しても徒歩だけで行ける分前の学校より楽かもしれません。前の学校では寮を出てモノレール乗ってと結構面倒だったので」

 

「はは、そうか。それはなによりだ」

 

遼太郎はようやく出した話題に真は微笑みながら返し、それに遼太郎は苦笑を漏らす。

 

「あとは……そうだな……あー、友達やなんかは……いるようだな、色々と」

 

遼太郎はそう呟いた後、難しい顔を見せて真の方を見る。

 

「お前の交友関係にまで、どうこう口出しするつもりはないが……俺の言いたいことは、分かるな?」

 

「いえ、さっぱり。はっきり言ってください」

 

「……言うじゃねえか」

 

遼太郎の言葉に真はきっぱりそう返し、それに遼太郎は不敵な笑みを見せた後、真から顔を逸らしてまた難しい顔を見せる。

 

「何故か、事件の陰にはお前だ……考えたくはないが、事件が始まったのも、お前がこの町に来たのと同時期だ」

 

遼太郎はそう呟いた後、真の方を見る。

 

「俺の仕事はな、まず始めに偶然って選択肢を消すことから始まる。お前の先輩だという男もだがこれ以上俺の領分に足を突っ込んでくるようなら、その時は……」

「……どしたの?」

 

遼太郎が真の方を向いてそう言っていると、突然菜々子が話しかける。

 

「お兄ちゃん、わるいことなんてしないよ」

 

そして真を弁護するようにそう言い、それに遼太郎は困ったように頷く。

 

「わ、分かってるって。そんなつもりじゃあない」

 

「だって、いじめてる……」

 

遼太郎の言葉に菜々子は心配そうな表情を見せながらそう言う、と真が口を開いた。

 

「違うよ、菜々子ちゃん。俺と叔父さんは少し話していただけだ。いじめられていたわけじゃない」

 

「そ、そうだぞ……もう遅いだろ、そろそろ寝なさい」

 

「……はぁい」

 

真の言葉に遼太郎も焦ったように合わせた後菜々子にもう遅いから寝るように促し、それに菜々子は頷くと寝室に戻っていく。そして遼太郎は真の方を困ったように見た。

 

「あいつ、お前のことが気になって仕方ないようだな」

 

「はは、それはどうも……」

 

遼太郎の言葉に真も苦笑して返す、と遼太郎は真剣な目を真に向けた。

 

「とにかく……危ないことにだけは首を突っ込むな。お前が無事ならそれでいい。成績を上げろとまでは、頼まれてないからな」

 

「はい。気をつけます」

 

遼太郎の言葉に真は頷いて返す。遼太郎は純粋に彼のことを心配しており、真は遼太郎との間にほのかな絆の芽生えを感じた。

 

 

 

     我は汝……、汝は我……

 

   汝、新たなる絆を見出したり……

 

 

   絆は即ち、まことを知る一歩なり

 

 

  汝、“法王”のペルソナを生み出せし時

 

   我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 

 

頭の中に響いてくる声。それに真が僅かに笑みを浮かべていると遼太郎がまた口を開いた。

 

「今まで住んでいた街とは勝手が違うだろうが、ここにはここのいいところもある」

 

そこまで言うと、遼太郎の顔が渋いものになった。

 

「まあ、今は少しばかり、物騒な町になっちまってるがな……」

 

「……」

 

遼太郎の言葉に真も困ったような表情を見せる。

 

「さて、そろそろいい時間だ。早めに寝ろよ。おやすみ」

 

「はい。おやすみなさい」

 

遼太郎の言葉に真も頷いて彼におやすみを言うと席を立ち、部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

それから翌日の放課後、真と千枝、雪子は教室で雑談をしていた。ちなみに外はごろごろと雷が鳴っている。

 

「里中~、例の“成龍伝説”、新しいの買ってきたぜ。名作価格でキュッパーだよ。これなら肉おごんないで即日返しゃよかった」

 

そこに陽介がそう言いながら近寄ってくる、とまたごろごろとさっきより大きな雷鳴が聞こえてきた。

 

「明らかに近づいてるっしょ、これ……」

 

それに千枝は声を漏らす、と陽介が驚いたように彼女に目を向けた。

 

「あれ……お前、意外にも雷怖い子?」

 

「う、うっさいな! だって、当たったら一撃死じゃん!」

 

陽介の言葉に千枝が叫んだ直後、ピカッという雷光とゴロゴロゴロという雷鳴が響く。

 

「っひゃあっ!」

 

その瞬間千枝は顔を伏せて両手で耳を塞ぐ、と陽介はくくくっと笑った。

 

「ハハハ、ビビり過ぎだっつーの。こういう日はあれじゃん? 逆にカンフーの特訓とかすると盛り上がるんじゃね? 雷ビカーンってなって、新しい必殺技とか出来ちゃうぜ。DVDにもあったろ、そゆシーン」

 

「ムカつく! 人の気持ちも知らないで!」

 

陽介の言葉に対し千枝はキッと彼を睨みつける。

 

「どうせ雷落ちんなら、こいつに落ちろー!」

 

そしてそう叫び、その声を聞き届けたのかゴロゴロゴロという音が響き渡り、直後教室の電気が消えた。

 

「あれ、停電?」

 

「里中が落ちろとか言うからだぞ?……こりゃさっさと退散してバイトだな。俺、今日の食料品の売れ行き次第じゃ、今週のバイト代に色つくかもしんねーんだ。この天気じゃ客足少ないかもだけど、バイク貯金のために頑張らねーとな!」

 

雪子の呟きの後に陽介はやれやれというように肩をすくめて言った後にししと嬉しそうに返す。そしてその最後の言葉が終わった時、陽介の携帯が鳴り出す。

 

「あ、わり」

 

陽介は一言断ってから携帯を見る。

 

「チーフからだ……」

 

そして電話相手を確認すると受話器を耳に当てる。

 

「もしもし、お疲れっすー」

 

[陽介くん? あのさ、実は雷で、お店が一部停電になってさ]

 

「!?」

 

[今日、早く来れないかな? 冷蔵庫が全部止まっちゃって……こりゃ食料品フロアは早仕舞いだわ]

 

「え、ちょ! そんじゃ俺の給料……」

 

[とにかくさ、片付け手伝って欲しいんだ。頼んだよ!]

 

「待っ……」

 

電話相手のチーフなる男性は陽介に対しそう言い、話を終えると一方的に電話を切る。それから陽介は携帯を呆然とした表情で見た後、ふと真達の方を見た。

 

「なんでこっち見んのよ!」

 

「あーも、なんでこうなるんだーっ!」

 

千枝が声を上げ、続けて陽介も声を荒げる。

 

「ねえ雪子ぉ、もう帰ろう?」

 

「……千枝、こんな話知ってる?」

 

千枝が雪子にそう言うと突然彼女はそんな事を言い出し、千枝が首を傾げる。

 

「ある女の子が、宿題を忘れて、夜中の学校に忍び込んだんだけど、トイレに行きたくなってね……明かりの消えた女子トイレに無理して入ったの。そしたら、誰もいない筈なのに、手洗い場の鏡に……」

 

「待った! 何の話!?」

 

雪子が突然話し出した話、それに千枝はストップをかけて問いかける。

 

「え? 怪談。確か千枝、好きじゃなかった?」

 

「なぜに今ッ!?」

 

千枝の問いかけに雪子はさらっと答え、それに千枝は叫び返す。その目は少し涙目になっていた。

 

「……そういえば俺が前にいた学校にこんな話があったな……」

 

「わー! わー! 君まで何言い出しちゃってんの!? もう! 知らない!」

 

真はふと思い出したように呟き、それに千枝は涙目で声を上げた後ぷいっとそっぽを向く。と陽介が呆れたように息を吐いた。

 

「ハァ……いっそもう、リーダー様に家まで送ってもらえよ、里中」

 

「ばば馬鹿にしてる!?」

 

「仕方ねーだろ、そのテンパり具合じゃ……」

 

陽介の言葉に千枝が声を荒げると陽介は呆れたようにそう返す。と教室内の電気が点き直した。

 

「あ、点いた! ほら、帰るよ、雪子!」

 

千枝はそう言って雪子と一緒に足早に帰っていく。

 

「な、なぁ真、ところで……」

 

「さて、俺も帰って勉強するか」

 

「せめて話だけでも聞いてくれー!」

 

その後陽介は真に問いかけるが彼はさらっとそう言って席を立ち、陽介が必死に叫ぶか真もすたすたすたと教室を歩き去っていった。

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、5月9日。八十神高校は今日から中間テストとなっており、真は普段通り学校に向かっていた。

 

「おはよう……」

 

するとその後ろから千枝が合流、真に声をかけた。その表情は明らかに沈んでいる。

 

「ついに今日からテストっすねぇ……現実は厳しいっすねぇ……」

 

「勉強はしたか?」

 

「うう……この顔色から察して欲しいですよ……」

 

千枝の言葉に対し真がそう問いかけると千枝は沈んでいる顔を見せながらそう言い、はぁとため息をつく。

 

「……けど、テスト終わっても、まだ事件は終わってないんだよね。気が重いのが続くなぁ……」

 

「ま、頑張れ」

 

千枝の言葉に真はそう返し、二人は学校に向けて歩いていった。

 

 

 

 

 

それから中間テストの日々が過ぎ、5月12日放課後。テストが終了し陽介は伸びをして口を開いた。

 

「やーっと終わったなー。うあー。この解放感! これだけは全国共通だな!」

 

「ちょっと、うっさい!」

 

陽介の声に千枝が声を荒げて注意し、雪子の方を向きなおす。

 

「ね、じゃあ問7は何にした? 文中の“それ”が指す単語ってやつ」

 

「ええと……“悲しげな後姿”にした」

 

「うっわ、間違えた! あたし“机の上の餅”にしちゃったよ……」

 

「餅?……え、そんな話だっけ?……」

 

千枝は雪子の答えを聞くとしまったーというようなリアクションを取るがその言葉に雪子はむしろ驚いたようにそう呟く。

 

「分かった。もう現国は諦める。地学に賭ける」

 

そして千枝はそんな事を言うと真の方を向いた。

 

「“太陽系で最も高い山”って何にした?」

 

「ん? えーっと……ちょっと待ってろ」

 

千枝の問いかけに真はそう言うと鞄の中を探り、テストの問題用紙を取り出す。そして地学の問題用紙を広げると陽介がぎょっとした表情を見せる。

 

「うえ!? お前問題用紙にまで答え書き込んでんの!?」

 

「ああ。自己採点用だ」

 

「うおぉ、数学、数式までびっしり……俺、これの半分も分からねえ……」

 

陽介の言葉に真はあっさりとそう答え、陽介は数学の問題用紙を見ると呆然とした様子で呟く。その間に真は地学の、さっき千枝が問いかけてきた答えを探す。

 

「……あぁ、あった。“オリンポス山”だな」

 

「ギャー! マジで!? 違うのにしちゃったよー……」

 

「あ、私と一緒だ」

 

「おっ、天城も!? じゃあそれ正解っぽいじゃん……」

 

真の言葉に千枝は声を上げ、天城がそう言うと真の数学の問題用紙を見て呆然としていた陽介が反応し、真に問題用紙を返すと頭を押さえる。

 

「あーあー、廊下に貼り出されんのが楽しみだよ、ったく……」

 

そして陽介が呟いた時だった。

 

「聞いた? テレビ局が来てたってよ」

 

突然そんな声が聞こえ、四人は声の方を向く。

 

「どーせ、例の“死体がぶら下がってた”事件のだろ?」

 

「や、違くてさ、幹線道路あんだろ? あそこ走ってる暴走族の取材だってよ。オレのダチで族に顔出してるヤツいてさァ、そいつから聞いたんだよネ」

 

「おま、友達にゾクいるとか、作んなよ? んな事よりさ、明日の合コン、外待ち合わせでヘーキかな? あさってから本格的に雨なんだろ。明日もヤバそうじゃね?」

 

二人の男子生徒がそんな事を話しており、雪子は三人の方を向くと首を傾げる。

 

「暴走族?」

 

「あー……たまにウルサいんだよね。雪子んちまでは流石に聞こえないか」

 

「うちなんか、道路沿いだからスゲーよ」

 

「うちの生徒にもいるらしいじゃん?」

 

「あー確か、去年までスゴかったってヤツがうちの一年にいるとか、たまに聞くな。中学ん時に伝説作ったって、ウチの店員が言ってたっけ」

 

雪子の言葉に千枝がそう言うと陽介がため息をつきながら返し、また千枝が言うと陽介はそう噂に聞いたというように言った後首を傾げる。

 

「んー、けど、暴走族だっけな?……」

 

「で、伝説って?」

 

「あー、たぶん、雪子が考えてるのとは違うと思うけど……」

 

陽介の言葉の後、妙に期待した声で雪子が尋ねる。それに千枝がツッコミを返した。それから真が口を開く。

 

「さて、ところでテストも終わったことだし、気分転換や鬱憤晴らしも兼ねてテレビに行ってみるか?」

 

「「大賛成!!!」」

 

真の提案にものすごい勢いで陽介と千枝が食いつくのであった。

 

 

 

それから彼らはジュネスのフードコートまで移動する。

 

「……」

 

「わっ、なんかいる!? キ、キツネ!? いつの間に……」

 

そこには真が以前あった謎のキツネがおすわりしており、千枝が驚いたように声を上げる。

 

「おわっ、こいつ……一体どっから入ったんだ!?」

 

「てか、地味に目つき怖ッ……」

 

「あ……この前掛け……確か、神社で見かけたことあるような……」

 

陽介も驚いたように声を上げると千枝が声を漏らし、さらに雪子が呟く。

 

「あーえっと、俺が連れてきたわけじゃないんだが……こいつ、もしかしたらテレビで使えるかもしれない」

 

「「「えっ!?」」」

 

真の言葉に三人が驚いたように声をあげ、真はちらりとキツネを見る。

 

「実は以前、神社でこいつとあったんだが……こいつ、不思議な葉っぱを持っていて。足が痛いと言っていたお爺さんがその葉っぱを湿布にすると見る見る内に回復したんだ。それとこいつ、俺達に協力してくれるのかもしれない。まあ、タダでは協力しないそうなんだが……なんだか金をよこせとかいう感じで……」

 

「え?……葉っぱで、回復?」

「え……私達に、協力?」

「マジかよ……見返りに金を欲しがってるってか?……」

 

「コーン!!」

 

真の説明に千枝、雪子、陽介が驚いたように声を漏らすとキツネは肯定するように一鳴きする。

 

「なんだよ、こいつ……まるでこっちの話を分かってるみたいなリアクションだな……」

 

「コーン!!」

 

「また鳴いた……こっちのこと、ホントに分かってたりして……」

 

「で、でも、考えてみたら、警備の人とかにも、見つからなかったって事だよね? あたしたちの後つけて来たんだとしたら、大したもんかも」

 

「コーン」

 

キツネは陽介達の話に通じるタイミングでリアクションを取っており、千枝は困ったように苦笑する。

 

「え……ホントに話、通じちゃってる? どうしよっか……」

 

「でも、捕まえたりするのはかわいそう。悪さをするようには見えないし……ねえ、あなたはどう思う?」

 

千枝の言葉に雪子がそう言い、次に真に問いかける。

 

「俺は協力してもらいたい。不思議な葉っぱの効能をこの目で見ているからな」

 

「……うん。その“回復”っていうの、私達ほんとに助かる話かもしれないし」

 

「え!? それって“あっちの世界”へ連れて行こうって話か?……」

 

真の言葉に雪子も頷き、それに陽介は驚いたように声を上げた後キツネを見る。

 

「んー……実は意外とアリか? 簡単に帰りそうもない雰囲気だし……それに、ヘソでも曲げられて、店内でイタズラでも始められちゃ困るしな……」

 

「確かに。ようやく仕事を覚えてきたのに変な仕事増やされるのもごめんだしね」

 

陽介の言葉の後にそんな声が聞こえ、四人はぎょっとした表情で声の方を見る。

 

「みっ、命さん!? 驚かせないでくださいよ!」

 

「あっはは、ごめんごめん。一応バイト上がったし、僕もテレビに行けるよ」

 

陽介の言葉に命は笑って返した次にそう言い、真もはいと頷く。

 

「よし、じゃあ行こう!」

 

真の言葉に全員が頷き、一行は荷電売り場からテレビの世界に向かった。

 

「あっセンセイ! こっちは平和クマよー!」

 

「そうか。今回は少し腕試しってとこだけどな」

 

彼らが入ってくるとクマが嬉しそうに声をかけ、真が頷いてそう言うと次に命が口を開く。

 

「まあ、腕試しというより今日はペルソナの訓練でもしてみようか。ところで真君、皆の新しい武器って準備できてる?」

 

「あ、はい。試験勉強の合間の息抜きに散歩でかけたついでに購入しておきました」

 

「オッケー。じゃあとりあえず、クマ君、今行けてシャドウが出ないって確証があるのってどこかな? 出来れば広い場所がいいんだけど」

 

「クマ? えーっと……やっぱ、センセイやヨースケがペルソナを出したとこなら安全だと思うクマ」

 

「そっか。じゃあ皆、一回あの商店街に行ってみよう」

 

「「商店街?」」

「うげ、行きたくねえ……」

 

命の問いかけに真は刀や短剣二本、雪子の武器となる扇子を取り出す。ちなみに千枝は以前の夜に真から手渡されたインラインスケートを武器として使用する気らしく既に着用済みだ。

それから命の一声で彼らは真や陽介がペルソナを覚醒させた異様な商店街へと向かう。ちなみにその場所を知らない千枝と雪子は首を傾げており、陽介はげんなりとした表情で声を漏らしていた。そして一行は異様な商店街へと移動し、真は命の方を見る。

 

「ところで先輩、ここで何やるんですか?」

 

「何っていうか、まあ訓練?」

 

「訓練って、そんなの雪子のお城でやればいいじゃないですか」

 

「……」

 

真の言葉に命が返すと千枝が首を傾げながらそう言い、それに雪子はふっと目を逸らす。

 

「まあそうなんだけど、実戦の前にというか、今まではペルソナ覚醒からほとんど間髪入れずに天城さん救出に行ったからね。ここらで一つペルソナの基礎訓練を行おうかと思うんだ。ま、そういうわけで」

 

命はすらすらと説明し、竹刀袋から二本の竹刀を取り出すとその内の一本を真に投げ渡す。

 

「とりあえず、一回実戦形式で見せるから。真君、かかってきて」

 

「え、えっ!?」

 

「あぁ、ペルソナありでいいよ。ハンディとして真君がペルソナを使うまで僕はペルソナなしでいくから」

 

困惑している真に対し命はそう言い放ち、真は少し考える様子を見せるとふうっと息を吐いた後目を研ぎ澄ませる。

 

「分かりました。なら全力でいきます」

 

「オッケー。あ、花村君、一応ディアの準備はしといて」

 

「分かりました!」

 

真の言葉に命は頷いた後陽介に治癒術の準備をお願いしておき、それに陽介が頷くと二人は向かい合って数メートル間合いを取ると構えを取る。それぞれ真は剣道の中段の構え、命は猫背に前屈みの体形で剣を右手で握って突き出すように構え、切っ先は地面に向けている。片手下段の構えとでも称すればいいだろう構えを取っている。そして左手は後ろに下げて拳は軽く開いている。それから少し二人は硬直し、そこで千枝が気づいたような表情を見せる。

 

「あ、え、えっと……は、はじめっ!!」

 

咄嗟に千枝が声を出し、同時に真が地面を蹴りながら竹刀を振り上げ、真が飛び出すのを確認したように命も飛び出す。

 

「めえええぇぇぇぇんっ!!!」

 

真は剣道のように声を上げながら命の顔面目掛けて竹刀を振り下ろす、が命はその竹刀の側面に自分の竹刀を打ち当てて軌道を逸らしながら左の拳を突き出す。

 

「ぬんっ!」

 

それに対し真は無理矢理体当たりをして拳を押し返す。そして突進の勢いで真から少し距離を取りつつ彼の視界から外れている位置で左手にカードを具現する。

 

「イザナギ! ジオ!」

 

そしてほぼ不意打ちの形でイザナギを召喚し、ジオを指示。

 

「おっと!」

 

しかし命はそれを読んでいたのか横っ飛びに飛んで落雷をかわし、その左手に召喚器である銃を構えて銃口をこめかみに押し当てる。

 

「オルフェウス!」

 

召喚器の引き金が引かれ、ガラスが砕けるような音と同時に姿を現す幽玄の奏者(オルフェウス)、それが竪琴を手にイザナギと対峙した。

 

「突撃!」

「スラッシュ!」

 

そして命と真の声が重なり、同時にオルフェウスが竪琴に、イザナギが刀に光を点してその武器を振るいぶつかり合う。そして剣同士で言うならば鍔迫り合いのような状況になり、真は眉間に皺を寄せているが命の方は涼しげな笑みを浮かべている余裕さえ見せていた。

 

「あ、真君。言い忘れてたけどせっかく色んなペルソナを使えるんだし、ペルソナチェンジもありだからね」

 

「そりゃどうも」

 

命の言葉に真はそう言うとイザナギに思考で後退を命じ、オルフェウスの竪琴を振り下ろそうとする勢いを利用して素早く後退、相手が消えたオルフェウスの竪琴がぶんっと空振りする。そしてイザナギの姿が消え去った。

 

「ペルソナチェンジ! ウコバク!」

 

直後真がカードを砕き召喚したのは炎を宿したフライパンのようなものを両手で抱えている小悪魔。

 

「アギ!」

「スクンダ!」

 

直後二人の声が重なり合い、オルフェウスが竪琴をかき鳴らしウコバクがフライパンを持ち上げて相手の方に向けると同時に竪琴から生み出された炎が真を包み込み、同時にウコバクの生み出した光がオルフェウスと命を包む。そして命は炎に包まれたにも関わらずけろっとした表情の真を見るとふっと微笑んだ。

 

「へぇ。火炎耐性持ちか」

 

「はい。これなら先輩のオルフェウスのアギは封じられますし、スクンダで動きを遅くしておけば接近戦を仕掛けてきたのを見てからでもイザナギにチェンジすれば充分対応できます。後の先、ってやつですよ」

 

「ふぅん……」

 

命の評価に真はにやりと笑いながら返し、それに命もまたにやりと笑みを見せる。と同時に突然オルフェウスが竪琴を鳴らす構えを取り、それを真は目ざとくキャッチする。

 

「アギ!!」

 

相手のアギを自らのスキルで相殺しようとしたらしく真が叫び、同時にウコバクのフライパンから炎が噴出す。しかしそれと同時にオルフェウスは竪琴の柄を両手で握った。

 

「えっ!?」

 

竪琴をかき鳴らす動作によって炎を放つスキル、アギと見せかけたフェイントだ。しかし少なくとも真はそこまでペルソナを自在に操る術を持っておらず、そのフェイントについ思考が固まってしまう。

 

「いけ、オルフェウス!」

 

「チェ、チェンジ! イザナギ!」

 

命の声が響き、咄嗟に真もウコバクを消し、スキルを放っている最中のペルソナチェンジの反動か少し痛む頭を押さえながらイザナギを召喚しなおす。そしてオルフェウスとイザナギが再度ぶつかり合うがそこから一方的な戦いとなる。

 

「ぐ、うっ……」

 

オルフェウスは竪琴を回転させて上下左右から連続攻撃をしてくるのに対しイザナギは勢いに負けないように打ち返しているためとはいえ大振りが目立っている。

 

「せいっ!」

 

「ぐぅっ!?」

 

そしてついに防ぎきれなくなりオルフェウスの一撃がイザナギの脇腹に直撃、真も苦しげな声を漏らすとイザナギの姿が消えていった。

 

「ま、ざっとこんなとこかな」

 

命はにこやかな笑顔でそう言うと共に陽介達の方を見る。

 

「はい。じゃあ今の戦いで気づいたこと。花村君」

 

「うえっ!? あ、えっと……や、やっぱ命さん、強いっすね?」

 

「はい次里中さん」

 

いきなり話を振られた陽介は慌てた声を出した後苦笑いしながらそう返すが命はさらっとスルーして今度は千枝に尋ねた。

 

「え? あ、えっと……み、命さんのペルソナって、なんかすっごく動いてましたね~……とか?」

 

「ん~、まあ近いといえば近いかな。皆はペルソナってどう動かしてる?」

 

千枝のこちらも苦笑いしながらの言葉に命は頷き、続けて尋ねる。

 

「あぁ、俺は頭の中でイザナギに動くイメージを与えてる感じですが……」

 

「俺もっす」

「私もそんな感じかな?」

 

命の言葉に真が一番に返すと陽介と千枝も頷く。ちなみにまだペルソナを召喚していない雪子は当然だが話に入れていない。

 

「僕がさっきやったのは、僕達はペルソナとのシンクロって呼んでいる技法さ。簡単に言えばペルソナと精神を通わせることにより、より精密な行動指示を行えるようにした、っていうかペルソナと一体となるって言えば分かりやすいかも」

 

「ペルソナと……」

「一体?……」

 

「ま、百聞は一見にしかず。やってみなよ。心を落ち着けて、ペルソナに身体をゆだねる感じ」

 

命の言葉に陽介と千枝が首を傾げると命はさらっとそう言い、真達は不安げな表情を見せながらもそれぞれのペルソナカードを具現化する。

 

「イザナギ!」

「ジライヤ!」

「トモエ!」

「コノハナサクヤ!」

 

そして真は右手でカードを握り潰すように砕き、陽介は短刀で下から掬い上げるように砕き、千枝は回し蹴りで蹴り砕き、雪子は扇子で払うように砕いた。それと共にそれぞれのペルソナが具現する。

 

「ペルソナは心の海に住まうもう一人の自分。まずはペルソナの身体に慣れてみる事から始めると良い。皆人間型だしまだ楽だと思うよ? 不定形や獣のペルソナになったらシンクロし続けてるとたまに手の感覚とかおかしくなるからね」

 

命はへらへらと笑いながらそう言い、真達は目を閉じると自身のペルソナに精神を集中する。

 

「う……なんか変な感じだ。俺が、俺を見てる?……」

「な、なんだこれ? 俺の身体が、俺じゃない?……」

「な、なんか変な感覚……」

「う、うん……」

 

そしてそこまで呟くと疲れたのか一度ペルソナを消し、命は苦笑する。

 

「まあ、最初はその感覚に慣れてみるべきだね。ちなみにシンクロはペルソナと一体化する手法、ゆえにシンクロの度合いによって自分の意思の通りに動かせるようになるけど代わりにペルソナが受けたダメージが自分にフィードバックする危険性もあるから気をつけた方がいい。あと皆のレベルならシンクロ中は自分も戦おうなんてしない方がいいよ。下手したらペルソナを動かす思考と自分を動かす思考がごちゃ混ぜになって訳わかんない動きすることがあるから」

 

命はシンクロの危険性について説明を行い、それから今日は自称特別捜査隊メンバーのペルソナ訓練に時間を費やし、適当な頃合を見計らってテレビを出て行くとそれぞれ家に帰っていった。




さて今回はテスト期間中に何故か節制コミュ登場。ちなみにそうなったわけは二週目プレイしててたらこの日に“そういえば今日は学童保育の日だ~”的な台詞が出たためです。そしてテスト期間中にも関わらずそんな事を考える主人公椎宮真に敬意を表して行っちゃいました(おい)。
そしてテストも終わって、テレビに行ってのペルソナ訓練です。なおシンクロという単語は当然の話ながら僕のオリジナル設定です。今まで真達はペルソナに対し大雑把な指示、例えば前進とか後退とか斬り下ろし、斬り上げ、とかしか出せなかったんですよ。それに対してスキルは威力が高くかつ繊細な動きも出来るけど一度スキルが走り出したら止まらないという弱点を抱えている。そんでシンクロはペルソナと一体となることで自分の身体を動かすがごとくペルソナを動かせる。まあその代わりその状態になると自分はあまり動けず、ペルソナがダメージ食らうと自分にもフィードバックするという弱点がありますけどね。
分かりやすく言えば――
シンクロ無し:自分も好き勝手動けてペルソナがダメージ負ってもあまり影響ないけどペルソナには大雑把な指示しか出せない。
シンクロ有り:ペルソナを自在にコントロールできるため戦力の質は上がるが自分は動き回ることが出来ず、ペルソナがダメージを負うと自分にも僅かにダメージが来る。
――って感じですね、説明は苦手ですけど。
さてさてもうそろそろ新たなるゴールデン要素登場のはずですし、頑張らないと。それでは~。なお、感想は喜んで受け付けておりますので。

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