ペルソナ4~アルカナの示す道~   作:カイナ

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第十四話 黄金の週間

五月一日。真はなんとなく商店街へとやってきていた。

 

「あ……」

 

と、ベルベットルームへの扉の前にマリーが立っているのを見つけ、真は彼女に歩き寄っていく。

 

「よお、マリー」

 

「あ、来た」

 

「ん?」

 

「キミの事、待ってたの。ね、どっか連れてってくれる? 一人じゃ全然分かんないし……キミ、色んなトコ知ってるでしょ?」

 

真に声をかけられたマリーはそう言い、それに真は少し考える様子を見せる。

 

「分かった」

 

「うん、行こっ!」

 

真の言葉にマリーは嬉しそうに微笑んで頷く。

 

「今日はね、賑やかなとこ。“ジュネス”行きたい。聞いたもん、そういうのあるって」

 

「はいはい」

 

そして注文をつけ、真は苦笑しながら頷いた。

 

 

それから二人は、興味津々のマリーが真を引きずるように家電売り場のフロアまでやってくる。

 

「ね、さっきの……“たいむせーる”って何? “さらだあぶら”? みんな取り合ってた。君も」

 

「あぁ~……」

 

マリーの言葉に真は声を漏らす。ジュネスに来たついでに買い物も済ませようとした彼、ちょうどタイムセールに遭遇したのでサラダ油を購入したのだがそれがまあ激戦区だったとだけ言っておこう。

 

「きっと戦うくらい大事なものなんだ……」

 

そしてマリーは一人納得したような表情で頷いていた、その時だった。

 

「あっれ、椎宮君じゃん。偶然~! 何してんの?」

 

「よお、里中」

 

偶然家電フロアにやってきていたらしい千枝が駆け寄りながら声をかけ、真も軽く右手を挙げて挨拶を返す。と千枝は次にマリーに気づいて分かりやすいびっくりの表情を見せる。

 

「かっわいー……誰、この子」

 

「ちょっとした知り合い。マリーっていうんだ。な?」

 

「え? あ、うん……」

 

千枝の言葉に真はさらっと返してマリーにもそう言い、それにマリーは驚いたような戸惑った様子で頷く。

 

「マリーちゃんって言うんだ? すげー、外国の人みたい……あ、あたし里中千枝。よろしく!」

 

「うん……」

 

明るく挨拶する千枝に対しやはり戸惑いの様子を見せるマリー。するとマリーはテレビに気づいてそっちに顔を向けた。

 

「これ、知ってる。色んなの、映るヤツ……」

 

「あ、マリーちゃんもテレビ見に来た派? あたしも欲しいんだよねー。うちのテレビ、まだ買い替えてなくてさ」

 

「ほ、欲しくないよ! 欲しくないけど……」

 

そう言うマリーの横に千枝が歩き寄ってそう言い、それにマリーはふるふると首を横に振って否定の言葉を出す、がその言葉は途中で途切れ、何か考える様子を見せる。

 

「“野次馬ゲーノー速報”も見れる?」

 

「なんだその番組……」

 

「なんで? やってるんでしょ、“ヤジヤジ~”って。みんな見てるって聞いたもん、まーがれっとに」

 

マリーの言う謎の番組に真がツッコミを入れるとマリーはそう返し、何故か誇らしげに胸を張る。

 

「……」

 

明らかにマーガレットにからかわれている、いるのだがこうも胸を張られて自信満々に言われては否定する気にもなれなかった。

 

「……そっとしておこう」

 

結局そういう結論に至り、そんな彼の心の葛藤を知らないマリーは千枝に話しかける。

 

「ね、どうやったら見れるの?」

 

「え!? もしかして、マリーちゃんって、全然テレビ見ない人!?」

 

「見ないよ、部屋にないもん」

 

「うわ、出た! いるいる、そういう子! キビシイ家って、そんなだよねー」

 

実際は少々違うのだが勘違いした千枝はうんうんと頷き、辛そうな表情で「あたしなら耐えられない。カンフー映画のない生活なんて!……」と漏らしていた。

 

「ね、どうやって見るの?」

 

「えーっとだな…………」

 

自分の世界に入り込んだ千枝をほっといて、マリーの問いに対しテレビの説明をする真。それにマリーはむ~といいそうな顔を見せた。

 

「……でも、あの部屋“こんせんと”ないなー」

 

「ああ……」

「え?」

 

マリーの呟きに真は声を漏らし、千枝は首を傾げる。そしてマリーは踵を返した。

 

「鼻に言っとく、“こんせんと”付けろって。ヒマすぎだよ、あの部屋……」

 

「あ、ちょ、マリーちゃん!?」

 

そう言うやいなやマリーは歩き出し、千枝は慌てて声をかける。

 

「てか、コンセントないってどんだけ!?」

 

「あー悪い。俺マリーを追わなきゃ」

 

「あ、じゃあフードコートでご飯にしようよ! あたし先行ってるから!」

 

「ああ、付き合わせてもらう。マリーを捕まえたら向かおう」

 

「オッケー!」

 

千枝はコンセントがないという呟きにツッコミを入れ、その次に真が言うと千枝は提案。それに真は快く乗ってからマリーを追って走り出した。

 

それからマリーを捕まえた真は千枝に言われた通りフードコートにやってくる。と既に千枝は四人前のビフテキを注文しており――ちなみに真とマリーが一人前ずつ、千枝が二人前だ――三人で一緒に食事にする。そして一番先に食べ終えたのは二人前注文していたはずの千枝だった。

 

「はー、美味しかった! 余は満足じゃ! 久しぶりに食べると、ここのステーキも捨てたもんじゃないねー」

 

「「……」」

 

二人前あっさり平らげてしまっている千枝に流石に二人とも閉口してしまう。

 

「マリーちゃん全然食べてないじゃん。あ、椎宮君もだけどさ。いかんなー。そんなんじゃ、大きくなれないぞー、なんちって」

 

「や、食べるの早すぎだし……太るよ」

 

「うわ、言った! い、痛いトコ突くね……」

 

千枝の言葉にマリーはさらっと女性に対する禁句を告げ、それに千枝は痛いところを突かれたと叫ぶ。

 

「あ、そうだ。あたし、飲み物買って来る!」

 

すると千枝はそう言って立ち上がり、歩いていくが流石にさっきのマリーの指摘が気になったのか「ウーロン茶にしよ……」と呟いていた。

 

「……じゅねす、人多いね。なんであんなにいるの? ヒマだから?……テレビあるなら、見てればいいのに」

 

マリーの言葉に真はなんと説明しようか困ったように苦笑を漏らす。

 

「おかーさん、ジュース買って! 炭酸のヤツ!」

 

「ダ~メ。さっき飲んだでしょ、我慢なさい」

 

「買って、買ってー!」

 

「ダメって言ってるでしょ。また虫歯になっちゃうわよ、ホラ」

 

するとそんな会話をして歩いていく親子を見かけ、マリーはその親子をじっと見送っている。

 

「ね……ああいうのってさ、私にもあったのかな」

 

「う~ん……俺の場合、物心ついた時から両親は共働きで俺は家に一人が多かったからな……だが、普通なら当然なんじゃないか? 俺の例もあるから一概には言えないが」

 

「当然、なんだ。そっか……」

 

マリーの問いに真はそう返し、その言葉にマリーは落ち込む様子を見せる。

 

「……何も覚えてないの。ただ歩いてて……行くトコなんてなくて、なんとなくあの部屋に着いて……そしたらまーがれっとが“ここにいなさい”って」

 

マリーはそこまで言うと一旦言葉を切り、一拍置いてまた口を開く。

 

「マリーって名前も、あの人がくれただけ……名前ないんじゃ、不便だから」

 

「何も思い出せないのか?」

 

「違う。思い出さないの、必要ないから」

 

マリーの言葉に真が尋ねるとマリーはそう返すが、その言葉とは裏腹に彼女の表情には切実なものを真は感じていた。

 

「でも……なんでだろ。この町、懐かしい気がするんだ」

 

「住んでたことがある、とか?」

 

「……分かんない」

 

マリーの呟きに真が尋ねるが、マリーは静かに首を横に振る。とその後気づいたように明るい表情を見せた。

 

「覚えてるって言うか……これだけは、絶対に私のだって知ってる」

 

そう言って彼女が鞄の中から取り出し、真に見せたもの。それは古びた竹櫛だった。

 

「これだけ最初から持ってた……これは絶対、私のもの。でも……だから何?」

 

最初こそ力強くそう言うマリーだったが、やがてその声はしぼんでいく。

 

「こんなの、何の役にも立たないよ……」

 

マリーはふぅと息を吐いて竹櫛を鞄に戻し、真を見る。

 

「キミさ、“真実”を探してるんでしょ?……やめた方がいいよ。ある訳ないし、そんなの」

 

「どうだろうな?」

 

マリーの警告じみた言葉に真はふっと笑って返す、とマリーはふいっと顔を背けた。

 

「……この話、つまんない。もっと別の話がいい」

 

そう、浮かない顔で彼女が呟いた時だった。

 

「おっ待たせ~! やー、売店混んでたから頼んで来ちゃった。出来たら届けてくれるってさ」

 

明るい顔と声でそう言いやってくる千枝、しかし彼女はテーブル近くまで来ると重い雰囲気に気づいたように二人の顔を交互に見る。

 

「……あれ。何かこう、空気重くないっすか。や、やだな、ちゃんと二人の分も頼んで来たってば!……ウーロン茶だけど」

 

「ああ、そりゃどうも……」

 

千枝の言葉に真はとりあえずお礼を言っておく。それから三人でしばらく話した後、真とマリーは千枝と別れて商店街に向かい、真はベルベットルームまでマリーを送り届けてから家に帰っていった。

 

そして五月二日。真は雨が降る中傘を差して学校にやってくる、とその校門で雪子が話しかけてきた。

 

「おはよう……雨だね。夜までには上がるらしいけど。私が“向こう”にいた間は、椎宮君達、きっと雨の度に……」

 

「いや、俺の記憶では天城を助けるまでに雨は降らなかったはずだ」

 

「あ、そ、そう? それとごめんなさい。暗くなっちゃうよね」

 

雪子の心配そうな言葉に対し真はあっさりとそう返し、それに雪子は驚いたように声を漏らした後ごめんなさいと謝って苦笑する。

 

「あ、ところで明日からゴールデンウィークだけど、何か予定はあるの?」

 

「家族サービスってやつだな。ジュネスに行くことになってる」

 

「そうなんだ。お休み中はずっと晴れみたい。せっかくなんだし、ずっと平和だといいけど、でも事件はまだ解決してないんだよね……」

 

「時々は“向こう”に行って、力をつけるようにした方がいいだろうな」

 

「うん……必要にならなければいいんだけどね」

 

真と雪子はそう話し合いながら校舎内に入っていった。

 

 

それから時間が過ぎて夜。真と菜々子は二人、居間でテレビを見ていた。

 

[今日未明、稲羽北にある稲羽信用金庫のATMが、重機で壊され奪われる事件がありました。現場から乗り捨てられた重機は、近くにある土木業者から盗難届けが出ている車両でした。犯人は警備会社が来るまでの非常に短い間に犯行を終えて逃走しており、警察では……]

 

「……おそいね、お父さん……」

 

テレビのニュースがそう言っているのを聞くと菜々子は浮かない表情を見せる。まだ遼太郎は帰ってきておらず、真も少し黙り込む。と突然電話が鳴り始め、菜々子は電話の近くに歩いていくと受話器を取った。

 

「もしもし、お父さん? うん、だいじょぶ……うん……うん……」

 

しかしその表情がどんどん曇っていくものになるのに真は気づいてしまった。

 

「……うん……分かった」

 

そして菜々子はそう言うと真の方に歩いていき、受話器を差し出す。

 

「かわってって……」

 

「ああ……」

 

「お休み、取れなくなったって……」

 

菜々子はそう言うと共に部屋に走っていき、それを見送ってから真は受話器を耳に当てた。

 

[お前か。悪いが今日遅くなる、戸締りして先に寝てくれ。それと、四日と五日の休みの件なんだが……実は若いのが一人、体壊してな……抱えてる事件の内容からいくと、穴は空けられん……俺が出るしかなさそうだ]

 

「……菜々子ちゃんがかわいそうだ」

 

[すまんな、急なことで……菜々子は……どんな風だ? 悪いが、気にしてやってくれ……]

 

「……了解」

 

[じゃあな]

 

真と遼太郎は会話もそこそこに遼太郎がじゃあなというと電話は切れ、真は受話器を元の場所に戻すと部屋に篭ってしまった菜々子に一言「お休み」と声をかけてから自室に戻っていき、来週から中間テストのため少し勉強をしてから眠りに着いた。

 

そして翌日五月三日、真は私服に着替えると一階に下りる。既に居間では菜々子が起きてきており現在はテレビを見ている。

 

「あ、おはよ」

 

「お、おはよう」

 

菜々子は真に気づくと挨拶し、真も挨拶を返す。と突然玄関のチャイムが鳴り、二人は玄関に顔を向けると歩いていった。

 

「おーっす!」

 

「なんだ、里中か」

 

真と菜々子が玄関にやってくると同時にその気配を感じたのかがららっと戸を開けて元気よく挨拶してきたのは千枝。それに真が小さく声を漏らすと千枝はむっとしたように頬を膨らませる。

 

「なんだとは何さー! でもよかった、居るじゃん。ね、今日ヒマなら遊び行かない? 雪子も来るし」

 

千枝は頬を膨らませた後にししというように笑ってそう言い、次に菜々子の方を見る。

 

「奈々子ちゃんも一緒に行く?」

 

「! え、えっと……」

 

千枝の言葉に菜々子は驚いたように目を丸くした後困ったように呟く、と真はふっと穏やかに微笑んだ。

 

「一緒に行こう」

 

「え、い、いいの?」

 

「もっちろん! いいに決まってんじゃん!」

 

真の言葉に菜々子が困惑したように声を漏らすが千枝は明るくそう言いきり、それに菜々子は嬉しそうに微笑む。それから彼らはジュネスのフードコートに集まり、バイト中の陽介や家の手伝いを切り上げてやってきた雪子と合流する。

 

「ゴールデンウィークだってのに、こんな店でじゃ菜々子ちゃん可哀想だろ」

 

「だって他ないじゃん」

 

「ジュネス、だいすき」

 

「な、菜々子ちゃん!……」

 

陽介のぼやきに千枝はそう返すが、菜々子が満面の笑顔でそう言うと陽介は感動したように呟く。

 

「でもほんとは、どこか、りょこうに行くはずだったんだ、おべんとう作って」

 

「お弁当、奈々子ちゃん作れるの?」

 

菜々子の言葉に対し雪子が問いかける、と菜々子は首を横に振って真に視線を向け、それに千枝はニヤニヤと微笑んだ。

 

「へ~、家族のお弁当係? すごいじゃん、“お兄ちゃん”」

 

「お兄……ちゃん」

 

「へー、お前料理とか出来んだ。たしかに、器用そうな感じあるけどさ」

 

千枝の言葉に菜々子がぼうっと呟くと陽介がそう漏らす、と真はふっと笑って頷いた。

 

「まあ、両親が共働きだから自然にな。いくつか前の学校では料理研究部に入ってたこともある……と言っても、命先輩には敵わなかったが……って、そういえば先輩は?」

 

「ああ、命さんなら面接中」

 

真は話の途中で存在を思い出したように命の事を言うと陽介はさらっと返し、今度はそれに皆の視線が集中した。

 

「あ、ああ。昨日、命さんに頼まれたんだ。バイト紹介してくれって……流石に甘えるばっかにもいかないから、とか言ってたけど……とりあえず、俺から親父、店長に紹介したんだ。んで一応履歴書作って、今面接中。つっても命さんなら多分採用されるだろうけどさ……命さん、そんなに料理上手いのか?」

 

「ああ。先輩も元々料理は嗜む程度にやってたそうだし、荒垣って料理上手な先輩に習ったらしい。少なくとも一般的な家庭料理以上には出来たのを何回か食わせてもらったことがある」

 

「へ~……んじゃ惣菜んとこにも回すこと出来るか?……」

 

陽介は面接に至る経緯を説明した後真に命の料理レベルについて尋ね、それに真が頷いて返すと陽介は少し考える様子を見せた。と突然千枝が口を開く。

 

「あ、あたしも何気に上手いけどね、多分。お弁当ぐらいなら、言ってくれれば作ってあげたのに、うん」

 

「いっやー……無いわ、それは」

 

「なんでムリって決め付けんの!? んじゃあ、勝負しようじゃん!」

 

「ムキんなる時点でバレてるっつの……てか勝負って、俺作れるなんて言ってねーよ?……あ、けど不思議とお前には勝てそうな気がするな……」

 

「あはは、それ、分かる」

 

「ちょ、雪子!?」

 

料理のイメージがない千枝の発言のためか陽介が呟いて返すと千枝がムキになってかかり、また二人の言い合いが始まると雪子も笑い、それに千枝が驚愕の声を出した。

 

「じゃあ菜々子ちゃんが審査員かな。この人ら、奈々子ちゃんのママよりウマイの作っちゃうかもよ~?」

 

「お母さん、いないんだ。ジコで死んだって」

 

陽介はさらっと地雷を踏み、菜々子の言葉に真を除く三人が声を失い千枝が陽介を睨みつける。

 

「ちょっと、花村……」

 

「そ、そっか……えっと……ごめん、知らなかったからさ……」

 

千枝の言葉に陽介は心底すまなそうな表情で頭を下げる。とそれに菜々子は困ったように首を横に振った。

 

「菜々子、へーきだよ。お母さんいなくても、菜々子には、お父さんいるし」

 

菜々子はそこまで言うと少し頬を赤くする。

 

「……お兄ちゃんもいるし」

 

そしてにこっと満面の笑顔を向けた。

 

「今日は、ジュネスに来れたし、すごい、たのしいよ」

 

「……そ、そっか」

 

「お姉ちゃんたち、いつでも菜々子ちゃんと遊んであげるからね!

 

「うん、遊ぼう」

 

菜々子の言葉に陽介が安心したように頷き、千枝と雪子が続くと菜々子は嬉しそうに頷く。

 

「よし、奈々子ちゃん。一緒にジュース買いに行くか!」

 

「うん!」

 

陽介の言葉に菜々子は頷き、二人は一緒に歩いていく。

 

「小さいのに、えらいね……」

 

「うん。意外とウチらの方が、ガキんちょだったりして。よしっ、あたしも奈々子ちゃんになんかオゴッてあげよ!」

 

雪子と千枝もそう言うと席を立つ、と入れ替わるように菜々子がやってきて嬉しそうな屈託のない笑顔を真に向ける。

 

「お兄ちゃん、なにかいるー?」

 

「ああ」

 

その屈託のない笑顔を見た時、真は菜々子との間にほのかな絆の芽生えを感じた。

 

 

 

     我は汝……、汝は我……

 

   汝、新たなる絆を見出したり……

 

 

   絆は即ち、まことを知る一歩なり

 

 

  汝、“正義”のペルソナを生み出せし時

 

   我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 

 

頭の中に響いてくる声。それに真は僅かに笑みを浮かべて席を立ち、菜々子の元に歩き寄る。

 

「お兄ちゃん、たこやき、半分こでいー?」

 

「ああ……よし、一緒に買いに行くか」

 

「うん!」

 

菜々子の言葉に真は頷いて返し、菜々子も嬉しそうに返すと二人共にたこ焼きを買いに歩いていった。

 

 

それからまた時間が過ぎて翌日五月四日。真が部屋で封筒貼りをしていると突然携帯が鳴り出し、真は液晶から相手が陽介と気づくと電話に出る。

 

「もしもし?」

 

[もしもしー、オレオレ!]

 

相手はやはり陽介、すると真はピーンとひらめいた表情を見せた。

 

「……もしかして陽介かい、どうしたんだい?」

 

[……あー、いや実はバイクで事故っちゃってさー。今すぐお金が……ってオレオレ詐欺じゃねっつの!!]

 

「ははは、乗ってくれてありがとよ。観客がいないのが残念だ。で、どうしたんだ?」

 

即興のボケに見事に乗ってノリツッコミまで披露してくれた陽介に真は笑いながら返し、本題に戻す。

 

[ああ、昨日の今日でアレだけどさ、今日ちょっと遊ばねーか? 他、適当に誘うし……どうよ」

 

「別にいいぜ」

 

[おう。あ、そだ。菜々子ちゃんもどうだ? 良かったら連れて来いよ]

 

「聞いてみる」

 

[おう。んじゃ切るな、商店街で待ち合わせでいいだろ」

 

「ああ。じゃあな」

 

陽介は遊びの誘いの電話をかけてきており、それに真が頷くと陽介は菜々子も連れてきたらどうだと続け、それにも真は菜々子に聞いてみると返し、最後に陽介が待ち合わせ場所を言うと真は電話を切り、封筒貼りをキリのいいところまで仕上げるとそれらを一旦纏めておいてから居間に向かい、菜々子に陽介と遊びに行かないかと尋ねる。

 

「行くー!」

 

もちろんというように元気よく返す菜々子なのであった。

 

それから真と菜々子は一緒に商店街にやってくる、と書店の前で陽介が待っているのを見つけ、彼と一緒にいる少年達に真は驚いたように声を漏らす。

 

「一条、長瀬」

 

「ん? よっ椎宮」

「遅いぞ」

 

その言葉を聞いて真が来たのに気づいたのか一条と長瀬が右手を挙げて返す。

 

「花村、二人と知り合いだったのか?」

 

「あ? ああ、まあな。さて、んじゃ全員揃ったところで菜々子ちゃん、どこ行きたい?」

 

「ジュネス!」

 

真の問いかけに陽介はそう返し、続けて菜々子に問うと彼女は即答。それに真と陽介は僅かに苦笑を漏らした。

それから四人はジュネスの家電売り場へとやってきて、陽介は嬉しそうに笑っている菜々子を見てまた苦笑を漏らした。

 

「つか、菜々子ちゃんホントここ好きね。“どっか生きたいとこ……”で“ジュネス!”即答だもんなぁ」

 

「まー、でもここってなんでもあってワンダーランドだよなー。妹ちゃんの気持ちも分かる……つか、マジかわいくね?」

 

陽介の言葉に一条が、菜々子に同意するように言った後にししっと笑って続ける。

 

「ウチも妹いるけどさ、やー、奈々子ちゃんみたいになってくんねーかな」

 

「な、菜々子、かわいくないよ……」

 

と、一条の言葉に照れたのか菜々子はそう言って真の後ろに隠れる。

 

「あ、ヤベ、俺嫌われた?」

 

それに一条はそう声を漏らす。

 

「大丈夫、可愛くないよ」

 

しかしその次に長瀬が可愛いと言われて照れた菜々子のフォローのつもりなのかそんな事を口走り、それに菜々子は今度は傷ついたように顔を伏せ、残る男子三人が驚愕の表情を取る。

 

「それダメだろうが!」

「アホかお前は!」

「ていうかアホだ」

 

「アホじゃないぞ! 断じて!!」

 

そして一条、陽介、真の順番に長瀬目掛けて集中砲火。それに長瀬は首を横に振りながら叫び返した。

 

「バカじゃないの?……てか、バカじゃないの? ってかな?」

 

そこに聞こえてきた声、それに真は驚いたように声の方に顔を向け、陽介は右手を挙げる。

 

「あ、命さん。ちゃーっす」

 

「どーも」

 

そこに立っていたのはジュネスの制服に身を包んだ命。その胸には“研修中”のバッジが光っていた。

 

「先輩、採用されたんですね」

 

「まあねー。とりあえず研修と称して人手足りないとこ次々回されてる。もうどこが担当だが分かんなくなってくるよ」

 

真の言葉に命は笑いながら返し、首を傾げている一条、長瀬、菜々子を見るとにこっと笑みを浮かべた。

 

「どうも。訳あってここに滞在しています、真君の前の学校での先輩の利武命です。よろしく」

 

「「あ、ど、ども」」

「初めまして……」

 

命の笑顔での言葉に運動部二人が声を合わせて頭を下げ、菜々子も恥ずかしがりながらぺこりと頭を下げる。

 

「じゃ、次僕食料品売り場に回されることになってるから。ゆっくりお買い物をお楽しみください、お客様。それじゃねー」

 

命はそう言うとすたすたと歩き去っていき、真は陽介の方を見る。

 

「たった一日で採用って……」

 

「いやーうん、こっちも色々大変なんだわ……察して」

 

真の言葉に陽介はそう声を漏らし、苦笑を漏らした。

 

「テレビ、おっきいね……」

 

すると菜々子がそんな言葉を漏らしながらテレビを見、それに長瀬もテレビを見ながら頷く。

 

「こんなデカイ画面でスポーツでも見たら吸い込まれそうだな」

 

「ぜ、ぜんっぜん無理ですよ? うん」

 

長瀬の言葉に慌てたように陽介が声を漏らし、真は今日共に遊びに来た全員の顔をちらりと眺める。

 

(今日は楽しい休日になりそうだ……)

 

そして心の中でそう呟いた。

 

それからまた翌日、こどもの日でありゴールデンウィーク最終日五月五日。真は私服に着替えると考える様子を見せた。

 

(少し、散歩に出かけるか……)

 

真は心中でそう呟くと財布や携帯など必要最低限のもののみを持って家を出て行く。菜々子はこの二日はしゃいで疲れたのかまだぐっすりと眠っているため鍵をかけておくのも忘れない。

 

 

「いらっしゃいませー! こどもの日、お菓子セールが行われておりまーす」

 

店員――陽介でも命でもない――の呼びかけが聞こえる中、真はジュネスの食料品売り場を適当に見て回る。が特に必要になるものもなく、真はお菓子セールだからと適当にあったスティック菓子を手に取ると会計し、ジュネスから出るとそのお菓子を齧りながら歩いていく。

 

「お、神社……そういえば……」

 

それから適当に歩いていると神社までたどり着き、真は少し前に男子二人――一条と長瀬――が神社の境内に何か棲みついているという話をしていたのを思い出し、神社に入る。

 

「……」

 

神社の境内に人影はなく、薄汚れた社はあまり手入れもされていないことを思わせる。

 

「……帰るか」

 

真はそう呟いて神社を出て行こうとする。

 

「はっ!?」

 

しかしその瞬間何者かの気配を感じ、咄嗟に真は身構える。と、突然謎の動物がまるで空を飛んできたかのごとく真の目の前にすたっと降り立った。

 

「キツネ?……ん、これは?」

 

その謎の動物こと謎のキツネに真は驚いたように声を漏らした後、キツネが絵馬をくわえていることに気づく。とキツネは真に近寄って絵馬を突き出し、真はその渡された絵馬を取るとそれに書かれている文字を読む。

 

「“おじいちゃんの足がよくなりますように  けいた”……なんだこれ?」

 

子供が書いたような字でお願い事が書かれている絵馬を見た真は首を傾げる。と、彼は絵馬の裏に“珍しい形の葉っぱ”が貼り付いているのに気づいた。するとキツネは何かの気配を感じ取ったのかどこかに姿を消し、それと入れ替わるようにお爺さんがやってくる。

 

「あンれまー、珍しいね。あんちゃんみたいな若い子が来なさるとは」

 

「はあ……」

 

「この神社、だぁれも住んどらんでな。時々ワシが手入れしとったんじゃが、最近どうにも足が痛くてのー。もっとマシなお社にしてやりたいが、まず先立つもんがてんで足らん。どれ……ワシもお参りしとこうかの。足が治らんと、手入れも出来ん。それに……」

 

お爺さんはぺらぺらと良く喋り、一旦言葉を切るとふうと息を吐いた。

 

「孫の圭太と遊びにも行けんからのー」

 

(けいた……この絵馬を書いた子か? おじいちゃんの足が良くなるように……と書かれているが……)

 

お爺さんの言葉を聞いた真は絵馬に目を落として心の中で呟く、とはいえ流石に老人の足を治すなんて技は彼は持ち合わせていない。

 

「やや、あんちゃんの持ってる、それはもしや!?」

 

「は、はい!?」

 

すると突然お爺さんが声をあげ、真は驚いたように顔を上げる。お爺さんは絵馬の後ろに貼り付いていた葉っぱを凝視していた。

 

「その変わった形の葉っぱじゃ! 間違いないわい!」

 

「な、何がですか?」

 

「……死んだ婆さまの代から、湿布にはこれが一番と言われとっての! いやはや懐かしい!! しかし、あんちゃん、よう見つけたのぉ!? この辺の山じゃ、もう取れんと思っちょったが」

 

「い、いえ、別に俺が見つけたわけじゃ……」

 

「た、たのむ、その葉っぱを、わしに譲っとくれっ!!」

 

「あ……構いませんが……」

 

たどたどしい真の言葉に対し押してくるお爺さん、それに真は押し負け、元々断る理由もないので葉っぱをお爺さんに渡した。

 

「おおー、これじゃこれじゃ……どれどれ……」

 

お爺さんはそう呟きながら、変わった形の葉っぱを足に貼り付ける。

 

「し、しみこむ! 何かがしみこんでくるぞぇ!!」

 

するとお爺さんはそう叫び、足が痛いと言っていたにも関わらずぴょんっと飛び跳ねた。

 

「おほっ、ずーっと取れんかった痛みがみるみる消えていくぞい!! むふ? むふふ!?……おまけに精力までみなぎってきたぞい!?」

 

お爺さんはそう言うと真の方を見て微笑む。

 

「いんやー、あんちゃんと会えてえらい助かってしもうたわい。ありがたや! これで、孫の圭太と遊びにも行けるぞい!」

 

「どういたしまして」

 

「こりゃ、巡り会わせて下さったお社様にも、たんと感謝せにゃいかんのー!」

 

お爺さんはそう言うや否や賽銭箱に賽銭を入れるとすたたたたと凄く軽い足取りで去っていく。

 

「ものすごい回復効果だ……」

 

思わす真もそう呟いてしまう。と隠れてきたキツネが嬉しそうに真の方を見た後、確かめるように賽銭箱を覗き込みだした。

 

(まさか、お賽銭を貰うために絵馬と葉っぱを渡してきたのか……)

 

思わずそんな事を考えてしまう、とキツネは嬉しそうに真の方を向いて「コン!」と一鳴きする。その口にはさっきと同じ葉っぱをたくさんくわえていた。

 

「コーン!」

 

たくさんの葉っぱを必死に見せてくるキツネ、何か頼みごとがあるようなその姿に真は不思議な出会いを感じ、キツネとの間にほのかな絆の芽生えを感じた。

 

 

 

     我は汝……、汝は我……

 

   汝、新たなる絆を見出したり……

 

 

   絆は即ち、まことを知る一歩なり

 

 

  汝、“隠者”のペルソナを生み出せし時

 

   我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 

 

頭の中に響いてくる声。それに真は僅かに笑みを浮かべた後、ふとキツネのくわえている葉っぱを見る。

 

「(さっきの回復効果は凄かった……もしこれがテレビの中でも使えるとしたら心強いんだが…)…っと?」

 

真がそんな事を考えているとキツネが真の周りをくるくると周り出す。

 

(まさか、こっちの気持ちを理解してるのか……)

 

その行動に真が驚いたように心の中で呟くと、キツネは賽銭箱の方に走ってそれをアピールする。それの意味する言葉を予想した真は不敵な笑みをキツネに見せた。

 

「……タダでは協力しない、ってか?」

 

「コーン!」

 

真のくっくっと笑いながらの問いかけをキツネは肯定するように一鳴きし、真はまた一つ微笑を浮かべると絵馬を神社に返し、家に帰っていった。

 

 

 

それから時間が過ぎて夕方頃。仕事帰りのサラリーマンや夕食の材料の買い物にやってきた主婦でごった返している中、堂島遼太郎は衣料品売り場にやってきていた。

 

「いらっしゃいませーって……堂島さん!」

 

「ん? ああ、君か」

 

品物を選んでいる様子のお客様に声をかけた陽介はその相手が堂島であることに気づくと驚いたように声をあげ、遼太郎も陽介の姿を認めると声を漏らす。

 

「どうしたんだい、花村君?」

 

「あっと、命さん……」

 

「む?」

 

すると今は衣料品売り場に回されているらしい命が歩き寄り、陽介が困ったように声を漏らすと遼太郎は命の姿を見て首を傾げる。

 

「見覚えがないな……申し訳ないが、あなたは?」

 

「あ、えっと、ジュネスの新入りバイトっす! い、今は研修中なんで無礼は勘弁してください!」

 

「……」

 

遼太郎は見覚えのない相手である命を不思議そうな顔で見て問いかけ、陽介が慌てて説明するが遼太郎は怪しいというような表情を崩さず、命は笑みを見せた。

 

「この四月からちょっと旅行に来て滞在しています、利武命と申します。初めまして……えっと、堂島さん、でしたっけ?」

 

「……はい」

 

「もしや、甥っ子に椎宮真君がいらっしゃいますか?」

 

「!?」

 

命の最初の問いかけに遼太郎は頷いて返すが、その次の問いかけには流石の遼太郎も目を見開く。と陽介が慌ててフォローに入った。

 

「あ、えっと、違いますよ! 命さんは椎宮の前の学校の先輩なんす! 俺もそれが縁で命さんと知りあったんすから!」

 

「そうなのか……この四月から……」

 

陽介の言葉に遼太郎は一つ頷いた後、刑事の雰囲気を僅かに出しながらそう呟き、命を見ると懐から警察手帳を取り出し、自身の身分を証明してから命に尋ねる。

 

「申し訳ありません。ここには旅行で来たとおっしゃってましたがどこにご宿泊でしょうか?」

 

「天城屋旅館ですが」

 

「天城屋旅館……」

 

遼太郎の問いにまた正直に答える命、それを聞いた遼太郎は事件の関連性を考えたのか考え始め、陽介はぎょっとなって命に近寄り囁く。

 

(み、命さん! なんかすっげー怪しまれてません!?)

 

(まあ、四月に急にやってきたんだから怪しまれて当たり前だよ)

 

(何を暢気な!? 捕まったらどうすんすか!?)

 

(下手に嘘ついて後でばれた方が怪しまれるって。まあ、任せといてよ)

 

慌てている陽介に対し命は端から見れば暢気とも言えそうなほどあっさりと返す。

 

「重ね重ね申し訳ありませんが。この町に来たのはいつでしょうか?」

 

「四月十三日です。天城屋旅館に連絡を取れば……っと、そうだった……」

 

「はい?」

 

「あ、いえ、恥ずかしい話なんですが……実は予約を失敗してまして、宿泊予約自体は四月十四日からになってたんです。その日はこの町にあった神社で寝ましたけど、僕は予約を十三日にしたと思い込んでたので旅館自体には向かいました。従業員の誰かが覚えていると思いますが」

 

「ふむ……失礼ですが、十二日の夜から十三日の朝まではどこに?」

 

「と言われましても……僕がこの町に来たのは十三日の午前中、大体十時頃だったと記憶してます。十二日はたしか、この町から少し離れた町にあるホテルに泊まってました。ホテル名はすぐには思い出せませんけど、たしか領収書受け取ったので、後でお見せしましょうか?」

 

「ふむ……」

 

陽介がはらはらしている横で命と遼太郎はそう話し合う。と話は終わったというように遼太郎から刑事の威圧感が消え、彼は命に頭を下げる。

 

「急に申し訳ありません。ご存知だと思いますがこの四月から起きている連続殺人事件で少しピリピリしていまして」

 

「いえいえ。四月に急に現れた余所者なんて怪しまれてしょうがないですよ。早い事件解決を願います」

 

「どうも……」

 

謝罪する遼太郎に命は笑いながら返し、遼太郎がまた一つ返すと陽介が命の腕を取った。

 

「さて、んじゃ命さん。次あっちの物品整理いきましょうか!」

 

「あ、そうだね」

 

「ではお客様、ゆっくりお買い物をお楽しみください!」

 

陽介はそう言うと命を引っ張るようにその場を去っていき、遼太郎はそれを見送った後、また買い物の続きを始めた。

 

そして真が家に帰り着いてから時間が過ぎて夜。真は菜々子と一緒に居間でテレビを見ていた。

 

[先頃、稲羽北のATMが重機で壊され持ち出された事件で、容疑者逮捕です。逮捕されたのは、重機盗難を届けていた会社の元作業員プメナ・スシン容疑者、二十六歳です。警察の調べによりますとスシン容疑者は……]

「ただいまー。ったく、病欠で何日穴空ける気だ……ほんっと最近の若いのは……」

 

ニュースの途中で遼太郎の声が聞こえ、菜々子はニュースの続きに目もくれず玄関に走っていく。

 

「おかえりなさい!」

 

「……菜々子、悪かったな。また約束破っちまって……」

 

嬉しそうに言う菜々子に対しすまなそうに謝る遼太郎。しかし菜々子は笑顔を崩していなかった。

 

「あのね、お兄ちゃんたちがあそんでくれた」

 

「そうか……ありがとうな」

 

「いえ。俺も楽しかったので」

 

菜々子の笑顔での言葉に遼太郎は静かに呟いた後真に礼を言い、真も軽く首を横に振って返す。と、菜々子は遼太郎の横にある袋に気づいて目を丸くした。

 

「あっ、ジュネスの袋! なぁに?」

 

「はは、もう見つかったか。ま、今日は五月五日だからな。菜々子にプレゼント買ってきたんだ」

 

菜々子の言葉に遼太郎は笑いながらそう言い、袋の中から何かを取り出すと菜々子に手渡す。

 

「あー、服だ」

 

菜々子はそう言って服を拡げる。カモノハシの絵が描かれていた。

 

「選ぶのにえらい時間くったけどな、ハハ。気に入ったか?」

 

「なんか、ヘンな絵がかいてあるー。へんなのー、あはは、やったー」

 

菜々子はカモノハシの絵が描かれたシャツを無邪気に喜んでいる。すると遼太郎は真の方を向いた。

 

「それと、お前にもあるんだ。子供扱いってつもりはないが、まあ公平にな」

 

遼太郎がそう言って差し出してきたものを真は受け取り、拡げる。水着だ。

 

「これは……ハイカラですね」

 

「まぁ、とっとけ。その内いるだろうと思ってな」

 

「はい。それじゃ夕食にしましょうか」

 

「ああ。すまんな」

 

水着を見た真の言葉に遼太郎が返すと真は水着を自分の横に置いて立ち上がりながらそう言い、それに遼太郎が頷くと菜々子も一緒に夕食の準備に向かう。そして家族団らんの時を過ごして時間は過ぎていった。




今回はマリーコミュLEVEL2とゴールデンウィーク。実はマリーちゃんも菜々子コミュ発動メンバーにいれようか迷ってましたけど今回は原作を優先して諦めました。ってか思いつかん……。
しかし何日も一気に進めるからしょうがないとはいえ日にち進める方法がかなり乱暴だなこれ……今度からもっと上手い手段考えないと……ま、それでは。

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