召喚少女のリリカルな毎日   作:建宮

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二百五十一話~side 雨水~

前回のあらすじ

 

暑い→外出は面倒なので別の方法で遊ぶ→ビニールプール→遊びにきた高町一尉とフェイトさんを含め庭で遊ぶ子供達→俺はアイス片手に眺める→ヴィヴィオのアイスだった

 

目の前のそうめんが盛られた器を見ながら俺とウルちゃんだけが静止していた

 

 

「ご主人様。もしかしてボク達は暗殺され掛けているのではないのかい?」

 

「言うな」

 

 

これでも本人は真面目なはずだ

 

他のメンバーは涼しげにキャロ特性のつゆで食べている

 

そして俺とウルちゃんはイクスの手によって運ばれてきた熱々の液体を眺めていた

 

 

「何故彼女は冷めてもいない液体を持ってきたのだろうか」

 

「暑い時期には暑い鍋とかそんな要領で考えたんじゃないのか?」

 

「ボクは市販で我慢するよ」

 

「逃げるな」

 

 

立ち上がろうとしたウルちゃんの手を掴んで止める

 

 

「まさかお前は主人だけ残して去る気か」

 

「ボクは外道と呼ばれるのは慣れている」

 

「にゃはは~! 二人してなに言い合ってるのかしらないけどイクスお姉ちゃんのてづくりなんだから味わえぇー!」

 

 

ちっヴィヴィオの仕向けた事だったか

 

アイスの恨みが重過ぎる

 

 

「意を決すとは正に心理だね」

 

「そうか、決したなら食べろ」

 

「キミが食べたらね、頼れるご主人様」

 

 

段々と無くなる氷水に浸された麺

 

 

「・・・。」

 

 

折角氷水にまで入れて冷ましてあるのに、何故熱々の液体にぶち込まないといけないのか

 

そんな疑問を持っていては食べれないので無心で箸を動かしてみる

 

普通に不味い

 

難の捻りも無く不味い

 

 

「なるほど、これが俗に言う塩と間違えて砂糖を入れたみたいな少女か」

 

「塩が砂糖どころじゃないけどな」

 

 

味の感覚からして、恐らく色んな出汁取れば美味しくなると勘違いし、様々な食材を混ぜいれたってところか

 

俺が食べたのを見計らってかイクスが近づいてきた

 

 

「お父様、実はお父様のだけルシエさんに頼んで私が作らせてもらったのですが・・・その、上手にできたでしょうか? 以前よりは上達していると思うのですが・・・」

 

 

実は・・・などと言われなくても、最初からイクス作と分かってはいたが・・・大体イクス以外は普通に料理できるからな

 

 

「ウルちゃんのはついでか?」

 

「ウルのは本意では有りませんが、距離を縮めると言う意味合いで手料理を振舞うのも良い事とルシエさんに言われたので・・・」

 

「ボクはこれで好意的な関係になれるとは思えない」

 

 

ウルちゃんの感想なんて聞いていないと言わんばかりにイクスはスルーした

 

 

「イクス。直して欲しい部分があるんだが」

 

「はい」

 

 

一端離れると紙とペンを持ってきた

 

この向上心が変な方向に行く事にならないと良いんだけどね

 

 

「まず・・・熱い。もっと冷たくしろ」

 

「はい」

 

「あとお前ヴィヴィオと一緒になって遊んでいたよな? 料理中にあんな長時間も目を離すな」

 

「・・・はい」

 

「最後に、出汁は何でもかんでも入れれば良いって物じゃない」

 

「・・・。」

 

 

瞳が潤んでいた

 

 

「俺が悪いのか」

 

「・・・秋春が悪いですね・・・え?」

 

「イクス?」

 

 

イクスの行動に俺もキャロも驚いた

 

なんと水を持ってきたキャロに抱きついたのだ

 

これにはキャロも俺も驚いた。ヴィヴィオならまだ分かる行動なのだが、あのイクスとなると話が違う

 

 

「失敗でした」

 

 

瞳からポロポロと流れてる

 

 

「え? あ、うん・・・悲しい? それとも悔しい? 頑張ったのに評価してくれなかった秋春の事を怒った?」

 

 

キャロはイクスを慰めるように撫でる

 

極度の人見知り・・・最早人嫌いの領域のイクスが自分から抱きついて頭を撫でる事を許している

 

 

「ぜんぶ、いいえです・・・ただ、自分の不甲斐無さが嘆かわしい・・・ルシエさんには程遠く・・・ルシエさんの料理を食べるお父様の幸せそうな表情を私は得る事が出来ませんでした」

 

 

・・・キャロレベルを目指しているのか・・・それは遠いよな

 

ってか俺はそんなに幸せそうに食べてるのか?

 

 

「・・・秋春」

 

 

イクスに悪気は無いんだろうけど、その行動は心が痛い

 

 

「正直な感想を述べただけです!」

 

 

あと妙に視線が痛いと思ったらヴィヴィオ含め全員が微妙な視線を此方に・・・ってヴィヴィオはその権利は無いぞ!

 

どうやってこの状況を逃れようかと考えているとウルちゃんに肩を叩かれる

 

 

「こう言う場合は男が無条件で悪いのだろう? ご主人様」

 

「いや、なぁ」

 

「ま、諦めるのだね・・・さぁ食べなよ」

 

 

ウルちゃんは自分の分を俺に渡した

 

・・・この野朗

 

 

「イクス。お前が俺のためを思って作ってくれた・・・取りあえずその気持ちを貰っておく」

 

「はい、次は頑張ります」

 

 

いや、もう頑張らないで

 

この後・・・恐らく俺はメインのはずのそうめんを食べる事も無く熱々の液体を飲み続けた




イクスにとってはかなりの自信作だったみたいです

そしてウルはちゃっかり市販のつゆで美味しく頂いています

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