ギャルのパンティおくれ!!   作:真田蟲

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二話

 

 

実家の最寄駅から、三回の乗り継ぎを経て電車で2時間。

隣の県とは思えないほどに時間がかかった。

さすが学園都市というべきか。

春休みだというのにもかかわらず駅のホームは中々に人が多かった。

その多くが10代と20代の人間で、学生ばかりの町だというのが窺える。

俺と同様、この春から入学する者や実家へ帰省していた人間が帰ってきているのだろう。

結構手荷物を持っているやつらが多い。

かくいう俺は、入居予定の男子寮の部屋にほとんどの荷物をすでに送っている。

よって手荷物は肩かけの鞄が一つのみであった。

これから、俺の夢へ向かう新しい一歩が始まる。

そのことを思うと、なかなかどうして胸が期待で高鳴るというものだ。

 

「けっこう集まったな」

 

歩くたびにジャラジャラと音を立てる鞄。

それも俺の胸を高鳴らせる要因の一つだ。

今回の人生で初めて、一番遠くまで来た道のりだ。

この機会を逃すこともないだろうと、俺は今黄金のパンティを穿いている。

おかげで金運が上昇し、ここにくるまでに小銭を拾いまくりであった。

遠足も林間学校も県内の山登りのみだったしなぁ……まぁ田舎の貧乏学校だったし。

今は鞄の中は小銭と試作品のパンティでパンパンである。

普通に歩いていても小銭を見つけることができる。

自動販売機のお釣りを確認すれば、前の人の忘れたお釣りが入っている。

電車の椅子に座ると財布が落ちているのを見つけたのは驚いた。

財布? 駅員に届けたよ……まぁいくらか中身もらったけど。

一番驚いたのは、一度目の乗り換えの駅のトイレに入った時に見つけたトランクケースか。

開けてみると札束の山であった。

さすがにここから中身を全てちょろまかしたら怖いことになりそうなので、一部だけにしておいた。

まぁそれでも束で5つほどもらっておいたのだが。

その分のトランクケースの空白に、パンティを生成して隙間を埋めておく。

そのあと何食わぬ顔で駅員に届けた。

これから新しい生活が始まるという時に、初っ端から面倒事は避けたいしな。

駅員はめちゃくちゃ驚いて混乱してたけど、名前とかを確認される前にさっさと逃げた。

次の乗り換えの駅でも何かあるかなぁ、とトイレに入ってみた。

すると、トランクケースは無かったが脱ぎ捨てられたパンティが個室の中に落ちていた。

男子トイレのはずなのに、何故か女性用の……ギャルのパンティだ。

それもデザイン的に俺と同じ中学生か小学生くらいのものであることが窺える。

駅員に届けると、何故か彼はいい笑顔で自分のズボンのポケットにパンティをしまった。

どうやら持ち主に心当たりがあるとのこと。

パンティの落し物は彼に任せ、俺は麻帆良学園に向かう。

黄金のパンティの効果は絶大である。少し怖いくらいに。

部屋に着いたら拾った金を勘定するのが今から楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二話

 

 

 

 

 

 

 

麻帆良学園男子中等部寮。

それが今日から俺が暮らす寮の名前だった。

膨大な数の生徒がいる麻帆良学園。

初等部、中等部、高等部、大学部と男女に別れてそれぞれで寮がある。

俺は入学する男子中等部が所有している寮に入ることになっていた。

寮とは名ばかりで、五階建てのその大きさはまるでマンションのようである。

うん、学生マンションって言った方がいいような大きさだ。

一階はロビーになっており、食堂やレジャー施設のようなでかい風呂まで完備されている。

内装はむしろマンションと言うよりもホテルだな。これで光熱費込で月々三万とかありえない。

さすがに食堂は金取るみたいだけど。自炊したほうが安上がりではある。

あてがわれた自分の部屋に向かうとどうやら二人部屋のようであった。

だって二段ベッドだったし。二人部屋で考えても十分に広い。

12畳ほどの広さの部屋に、キッチンとトイレが付いている。

でも表札には俺の名前以外載っていない。まさかルームメイトはいないのだろうか?

部屋の中には俺の分の荷物しかない……まぁ、後で確認するか。

段ボールを開くこともせずに、俺はさっそく鞄の中の戦果を確認するのであった。

 

「5034289円か……やばいな」

 

札束はやはり一つが百万円だった。

トランクケースの中身をそのまま全ていただいていたら、一体いくらになっていたのだろうか?

あの拾った財布から抜いた二万もでかかった。まさにパンティさまさまである。

だが小銭ばかりこんなにじゃらじゃらと持っていても使いづらい。

周囲の部屋に挨拶に行こうとも思ったが、寮長が今晩に食堂で新寮生の歓迎会を開くと言っていた。

別に今挨拶しなくてもその時にしたらいいだろう。

周辺の土地を把握するためにも、俺は小銭を銀行に預けることにしたのだった。

さすがに普通の中学生が一度に口座に五百万も入金していたら変かもしれないので、札束は今後数回に分けて口座に預ける方針である。

コンビニのATMではさすがに預けられないだろうし、銀行の支店が近くにあれば便利なんだが……

しばらく歩いていて、それはすぐに見つかった。

個室タイプの小さなATM。

小銭での取引は一度に50枚までだが、無駄に枚数があるのでけっこう時間がかかった。

やはり金は拾うよりも稼ぐほうがいいかもな。

ちなみに、部屋でパンティを穿き替えていたからかここまでの道のりでは金を拾っていない。

今は情熱のパンティを穿いている。

身体能力が上昇し、歩きまわる速度がかなり速くなっている。

最寄りの駅から通うことになる男子中等部の校舎までをぐるりと簡単に確認する。

どうやら女子の校区は駅の反対側のようだ。

駅周辺はやはり他よりも店が多いためか、男女比率が均等に近い。

逆に駅から離れるにつれ比率が男子に傾いてくる。

なるほどなーと感心しつつ、そこそこで探索を切り終えて寮に帰ることにした。

その時、本当になんとなく向けた視線の先に気になるパンティを見つけた。

それは本当に偶然だった。

いきなり突風が吹いたかと思うと、俺の視線の先にいた一人の女の子のスカートがめくれあがったのだ。

 

「あれはっ、まさか!?」

 

時間にして1秒にも満たない短い光景であったが、俺は確かにこの目で見た。

身長からして150もないだろう、小学生と思われる女の子。

春に誘われた小粋な風が彼女の股下を吹きぬけた。

ふわりと舞い上がるスカート。露わになる下半身。

膝上までを包んでいるニーソックスと股間を守護するパンティとの間に存在する肌色空間。

昨今、絶対領域という名称で世の男性の心を鷲掴みにしているそれは、離れた位置にいる俺の視線を引き付けた。

だけど俺の意識は絶対領域の少し上のところに向かった。

小学生のギャルが穿くようなパンティに比べ、下半身を覆う布面積が小さい。

特にクロッチ部分は子供ようのそれと比べて厚みも少し薄めであるのがわかる。

股下から走る皺の線がくっきりと見えた。

いや、問題はそこじゃない。そして小学生らしいプリントパンティでないという点でもない。

誰しも精神が大きくなるにつれて子供のころに履いていたパンティを卒業しようと考えるときがある。

かくいう俺も前世では、丁度小学生の高学年ごろになると無性にブリーフが恥ずかしくなったものだ。

親にせがんでトランクスを買ってもらい、初めてトランクスを穿いた日は自分が少し大人になった気分だった。

男子と女子の違いはあれど、そこまでの差異はないはず。

あの子にとってもパンティが成長するということは、それすなわち自身の精神が成長するのと同じだろう。

だが、さすがにあのパンティは小学生には背伸びのしすぎとも思える。

何故なら彼女のパンティの両サイドには小さくちょうちょ結びされた紐が見えたのだから。

決して装飾目的でつけられたリボンではない。

あれは腰でパンティを固定するための紐だ。

あのパンティは紐パンなのだ。

それだけを見れば、まだ小さいのに無理をしちゃって……と微笑ましくも思えるだろう。

だが彼女には紐パンティを穿いていることにおける恥じらいが少しも見えない。

威風堂々としたたたずまい。

紐パンティを穿いている自分を確固たる自身と認識している証拠である。

人間、穿き慣れないパンティを穿いていれば個人の差はあれど、多少は動きが鈍くなる。

それは新しい自分の発見と、一歩大人の階段を昇る期待と緊張からくる。

それらが彼女の動作には全く見られないのだ。

恥じらいなど、スカートがめくれ上がったことに対する羞恥心しか感じられない。

間違いない。彼女は日常的に紐パンを愛用しているのだと確信する。

その人の本質を見たければ穿いているパンティを見ろとは良く言ったものだ。

小学生の身では紐パンティなど、じゃじゃ馬のごとき扱いにくさだろう。

正直、そのようなパンティを穿きこなす小学生女児など俺は雪奈ちゃんくらいしか知らなかった。

あの子もなかなかどうして、あの年齢で立派なパンティストである。

 

「さすが麻帆良、侮れねぇな」

 

待ってろよ、いつか学園都市中の女子生徒たちに俺のパンティを穿かせてみせる。

あ、あと女教師も。

そしてあの女の子の箪笥の中の一部(パンティの入っているところ)を俺色に染め上げてやる!

 

 

その後、寮で新寮生歓迎会に参加した。

同じ学年のやつらは基本同じ学校に通うことになるので、これで入学前にすでに顔見知りになったことになる。

気さくな奴も結構いて、既に何人かとは友達になった。

喧嘩腰のやつらはパンティで買収した。

最早、この寮内の人間の心はほぼすべて掌握済みである。

少々馬鹿を演じて話しかければ、大概のやつはすぐに俺のパンティに興味を注がれ始める。

ここにいるのは中等部の学生とはいえ、寮生は最年長でも15歳である。

言いかえればつい3年前まで小学生をやっていたやつらだ。

精神が幾分大人びてきていようと、俺がこの数年間小学生相手に行ってきた事が全く通用しないわけではない。

さらにこの麻帆良の土地柄か、話しを聞いている限り学生は比較的にノリがいいという。

悪く言えば、ふざけるのが好きということだ。

人知れず口角が釣り上がる。

小学生の時同様、おふざけ感覚で最初の一歩を踏み出させればあっというま。

この場にいる寮生たちはパンティを口々に素晴らしいと湛えている。

俺が将来の夢はパンティの店を作ると口にすると、皆口々に応戦すると言ってくれている。

先輩の中には、将来彼女ができたらプレゼント用のパンティを作ってくれと頼んできた。

フッ……計画通り。

初日にして寮生の心を味方につけられたのは、順調な滑り出しといえる。

あとは、純粋に俺のパンティの知名度をどれだけ上げられるか、という点だろう。

そんな時、俺にとある妙案が生まれた。

それは先輩達の「一発芸をしろ」という無茶ぶりに新寮生一同は苦笑していた時のこと。

柄にもなく何をするか考え込んだ俺だったが、俺にできることなどパンティを作ることしかできない。

人前で能力をさらけ出すのはどうかと躊躇したが、発想の転換だ。

俺は手品を披露した。

「種も仕掛けもない、無限に手からパンティを取り出す手品」は大受けだった。

 

「すげぇ!?」

 

「どっから出してんだ!?」

 

「企業秘密です」

 

半袖のTシャツで、手の付近を隠すものなど一切ない。

その状況で手のひらから連続で飛びだす無数のパンティ。

まるで水芸の水がパンティに変わったように見えているだろう。

あっという間に、歓迎会の会場である食堂はパンティで埋め尽くされた。

口々に驚愕の声があがる。

 

「今年の一年は有能株だな」

 

「まるで魔法じゃないか」

 

「魔法じゃないです。手品です」

 

手品部に勧誘され入学前にすでに入部が決定した。

部の先輩たちも、入学後は「パンティイリュージョン」の名前で俺を大々的に売り出す予定らしい。

これで名前が売れて、パンティに注目が行けば儲けもの。

胸の内でひそかに計算を企てる俺であった。

 

歓迎会が終わり、部屋に戻る。

どうやら想像通り俺の部屋は二人部屋だが相方はいないらしく実質一人部屋であった。

入居者が新しく来れば、そいつと同室という形になるらしい。

だが言い換えれば、転入生でもこないかぎりずっと一人で使えるということである。

喜々として部屋を散らかすように段ボールを開いて中身をぶちまけていく。

まぁ、散らかすといってもほとんどパンティなんだけど。

以前はできなかったが、今では作り出したパンティを任意で消すことも可能なのでいざとなれば消せばいいし。

実質散らかっているとは言わなくてもいいんじゃないかと思う。

ちなみに、先ほどの歓迎会の際の手品と称して出したパンティの山。

あれらはすべて先輩たちが喜々として山分けして持って帰ってしまった。

まぁいい。先行投資と考えればいいのだ。

二日後の入学式に備え、俺は新たなパンティを開発すべくイメージを練ることにした。

 

 

コンコン。

 

「?」

 

夜も更け、時計を確認すれば時間は真夜中の零時過ぎ。

急に扉がノックされた。

こんな時間に誰だと思いながら、ベッドから抜け出て扉に向かう。

覗き穴から向こうを見れば、廊下に立っているのは隣室になった……たしか、影月鏡耶とかいうやつか。

互いに自己紹介した時は何て厨二的な名前だろうと思ったものだ。

本来なら、名前負けするような名を親につけられて不憫な、と思うものだがこいつは一味違う。

元々漫画の世界だから、そういう無駄に格好いい名前のやつとかもいるんだろうけどさ。

名は体を表すとはよく言ったものだ。

髪は銀髪で、緑と赤のオッドアイといういかにも厨二病な容姿をしている。

おそらく名前と同じくパンティもスタイリッシュなものを穿いているに違いない。

まぁ、俺のパンティには敵わないだろうがな。

この容姿が全て天然由来なら、一体どういう遺伝子してんだと疑いたくなる。

髪は染めてカラーコンタクトなら痛い子確定だ。

だが、この世界は普通に髪の毛が赤やら緑な原色の人もいるので、どちらともいえない。

むしろ髪の毛染めてる人って少ないし。

この影月というやつは、寮生の中で唯一俺のパンティイリュージョンを楽しんでいなかった奴だ。

まるで何かを怪しむかのように懐疑的な表情でこちらを睨んでいたっけか。

はいはい、どうせお前もパンティを卑猥なものだと決めつけてるんだろ。

頑ななやつってのはどこにでもいるもんだ。

今も、扉の向こうのこいつはこっちを敵視しているかのような目つきをしている。

さっきは恥ずかしかったけど、やっぱり僕もパンティが欲しいーとかいうむっつり顔には見えない。

おそらくはパンティを卑猥と決めつけて、こちらのことを一方的に悪と決め付けているのだろう。

そういう奴はまず外堀を埋めてから攻略にかからなければ面倒臭い。

今の状況では何を言っても火に油だ。

過去の経験でそれを知っている俺は、無視して明日に備えて寝ることにした。

 

「扉の向こうにいるのはわかっている。出てこい」

 

だが、扉から離れて寝ようと思った矢先、扉の向こうから声が掛けられた。

思わず立ち止まる俺の脚。なんだ、なんでわかった?

というか今日あったばかりの人間になんでこうも高圧的な態度なのか。

そこは普通、「ちょっと話せないか?」とか言うもんだろう。

出て来いって、なんで命令形なんだよ。

こいつはパンティに否定的だからこういう態度なんじゃない。

もとから嫌なやつだ。確信した。

溜息をつきつつ、これから隣人となる人間相手に初っ端から喧嘩するのも嫌なので扉を開ける。

 

「こんな時間に何?」

 

「単刀直入に聞く。貴様は魔法使いか?」

 

「はぁ? 魔法使い?」

 

何言ってんのこいつ……と思ったが、そこではたと気づく。

そういえばここはネギまの世界。魔法使いがわんさかいるのだ。

それも30歳の童貞ではなく、純粋になんちゃって魔法の使い手たちだ。

もしかしてこいつは、俺の能力を魔法と考えたのだろうか?

ってことはだ。おそらくこいつは魔法関係者の可能性が高い。

表情からして君の魔法の使い方おせーてーって感じじゃないし。

ならば、人前で魔法を使ったことを糾弾しにきたか。

 

「…………何寝ぼけてんの?」

 

「真面目に答えろ」

 

「魔法なんてあるわけないじゃないか。手品に決まってんだろ。頭大丈夫か?」

 

「……それがお前の答えか?」

 

「えっ、何? 君もしかしてその年で魔法とか信じてるの?」

 

そいつは悪いこと言った、みたいな顔を作る。

魔法を夢見る少年の前で夢を否定してしまった罪悪感。

そんな表情で影月を見た。

 

「……チッ、もういい」

 

俺の小馬鹿にした態度が気に障ったのか、影月は舌打ちをして部屋に戻って行った。

まぁ、世間一般の常識では魔法なんて存在しないことになってるしな。

それに嘘は言っていない。

俺の能力は「自由自在にギャルのパンティを作り出す能力」だ。

自由自在とつく通り、そこには対価など必要ない。

イメージすればいいだけで、魔力や気、体力を消耗することなどないのだ。

ましてや錬金術のように素材となるものを用意する必要性も皆無である。

そんな俺が、魔力や気を使えるわけもない。

現に未だに俺はそういうものが感覚として理解できていない。

生きている以上は俺の中にも魔力や気が少なからずあるんだろうが、使えなければないのと同じである。

つまり、俺は魔法を使えない=魔法使いじゃないという図式が成り立つ。

原作で魔法使いがいるという程度の知識はあれど、関係者に知人がいるわけでもない。

立場としては完全な一般人である。

あいつとしても、まるで魔法みたいに見えたのだろう。

だが魔力は一切感じられない。

それで探りを入れてきたのだと推測する。

しっかし、隣室が魔法関係者か……面倒臭いことになった。

だが、この寮内の生徒はあいつ以外はすべて心を掌握した。

大多数の一般人の心を味方につけている俺に対し、やつはこの寮でたった一人だ。

朱に交われば赤くなるは世の理。

いつまでもパンティに対して高圧的な態度をとれると思うなよ?

 

 




主人公は基本的に小悪党な性格です。
この物語は、ただの自己満足な馬鹿から、立派な紳士へと成長していく物語です。

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