ギャルのパンティおくれ!!   作:真田蟲

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遅くなってもうしわけない。
今回かなり短めです。


九話(修正済み)

超鈴音と協力関係になってから一年が経過した。

まずは下地作りのために資金集めや人脈を手に入れることに専念した。

俺は手品部としてパンティイリュージョンを広めつつ、パンティYAMADAで着実に資金を確保しながら各方面へのコネを増やしている。

同様に、超はその頭脳と未来知識を駆使して科学方面で名を売り、天才少女として学会にも名が売れるようになった。

  

この一年は毎日が多忙な日々だったが、充実した一年であったともいえる。

正直、学生の本分である学業は全くの手付かずではあったが計画通りに物事が進めば超曰く来年の学園祭の時期が勝負になるという。

成功すれば世界が大きく変わる。

例え失敗したとしても、今までの行き方をするわけにはいかない。

どちらにせよ俺達はその責任を負うべきであり、成否に関わらず学生という身分はその時点で終了するだろうと思っている。

今の俺が世界に対する覚悟などを語ったところで、それは薄っぺらい言葉にしかならない。

もしかしたら、理解しているだけのつもりで本当は何もわかってなどいないのかもしれない。

客観的に見れば、超がこの一年をかけて俺を騙しているという可能性も0ではないだろう。

でも一年前のあの日あの時、超の涙を見て彼女を信じると決めたのだ。

だからこそ、今の俺でもできる覚悟を決めた。

どのような結末になろうと、俺が選んで進んだ未来ならばその全てを受け止める。

自分の行動に責任を持つ。

善も悪も関係なく、人として当然のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九話

 

 

 

 

 

 

 

 

たかだか一年でシェアの大半を占めるようになるなど無理なことだろう。

未だ下着業界におけるシェアを考えれば、あってないような規模だ。

しかしこの一年で確実にパンティYAMADAは知名度を伸ばし、リピーターを増やしていった。

基本的に魔帆良での屋台は変わらないが、ネットでの通販を開始すると大ヒット。

一枚一枚の値段設定は安いものの元手はタダ。

一定金額以上のお買い上げで国内への送料無料のサービスを開始した。

途端に日本人を問わず世界各国から注文が来た。

どうやら有名な某ハリウッド女優が雑誌のインタビューで俺の作ったパンティを興味本位で入手したら思いのほか良いものだったと語ってくれたらしく注目されたらしい。

背伸びしたいティーン向けの雑誌でも彼女へのプレゼントはコレだ!とかいう企画で紹介されたようで、基本的にノリの良い学生が大半を占めるこの学園都市では特に大流行している。

 

「これくださーい!」

 

「まいど、500円になります。レイニーデイ頼む」

 

「……500円」

 

中には初々しい初等部のカップルが来ることもあり微笑ましい。

少ない月々のお小遣いから奮発しているのだろうと思うと可愛いものである。

別の客の注文を聞いていた俺は、近くにいたレイニーデイに対応を頼む。

彼女は無言で1つ頷くと、小さく呟くように金額を口にする。

一年経つが相変わらず無口なやつだ。

サーカスの本番などでは同一人物とは思えないほどの笑顔で愛想を振りまくくせに、普段は全くの無表情である。

金銭での給料を受け取ろうとはせず、何故か未だにパンティを渡すという現物支給になっている。

手伝ってくれるのはありがたいし、正直彼女に抜けられると店が回らなくなりそうだが何故手伝ってくれるかは未だによく解らない。

魔帆良の新聞部に至ってはレイニーデイが俺に惚れているという疑惑をネタに何度か記事を書いていたりする。

この間など、俺が超とレイニーデイに二股をかけているとか騒ぎ立てられて一部の男子に嫉妬を向けられたりもした。

まぁ、確かに超とはよく一緒にいるし対外的に付き合っているとしたほうが説明も簡単だという結論に至ったわけだが。

何せ互いの店の開店時間と学校のある時間帯以外は、暇なときには計画について話し合ったり、彼女の特技の一つである中国拳法を教わったりと一緒にいることが多い。

最初は表向きのために付き合うということにした俺と超だったが、この一年で互いの心が近づいているのは自惚れではないと思う。

キスなどしたことはないが、女性の腰つきを研究するために彼女の尻を揉みしだくくらいはしているのだから本当の意味で恋人といえなくもない。

しかしレイニーデイからは興味の視線を感じることはあっても、恋愛感情的なものなどは感じられない。

勿論、超とレイニーデイが一緒にいて俗に言う修羅場が発生したこともなかった。

むしろ去年の学園祭には雪菜ちゃんが遊びに来てくれたのだが、その時に彼女と超との間で発生した冷たい空気のほうがそれに近かったと思うのだけれど。

 

「彼女も重要人物ダが、仲良くはなれそうに無いネ」

 

虚しいヨ、と超がそう語ったのを今でも覚えている。

なんでも雪菜ちゃんは、正史において俺の公私とものパートナーであったらしい。

それを思うとなんとも複雑な気分になる。

 

「ごめんください」

 

「はい……あぁ、先生。お久しぶりです。今日はデートですか?」

 

「ええ、新作がいくつか出たって聞いたのだけれど」

 

考え事をしていると、新しい客が来店した。

妙齢の美男美女のカップルだ。

学園の教師を勤める葛葉刀子先生とその婚約者だ。

月に一度くらいの頻度で一緒に来店しては、ひたすらいちゃいちゃしながらパンティを選んで買っていくのが恒例となっている。

殺伐とした独身生活を続ける美人女教師として有名だった彼女に婚約者ができたのは去年の夏ごろ。

なんでも噂では、1つ年下のイケメンが世界樹の広場でパンティを手に「貴女にこのパンティを穿いて欲しい!」と告白したらしい。

それまで堅物で知られていた刀子先生の物腰が柔らかくなったという噂があるが、その真偽は目の前のカップルを見れば一目瞭然だろう。

触れれば切れる日本刀のようと評された女性が、今ではイケメン彼氏と腕を組みながら他人が見れば砂糖をはきそうなほどイチャコラしては二人でくねくねしている。

今では魔帆良一のバカップルの異名を欲しいままにしている。

 

「これなんてどう?」

 

「なによそれ、スケスケじゃないの」

 

「いいじゃない。刀子さんに穿いてほしいな。きっと似合うよ」

 

「もう、どうせ穿くだけじゃなくて見せて欲しいって言うんでしょ?

 本当にスケベなんだから」

 

「だって、刀子さんの下着姿が綺麗なんだもの」

 

「んもう、お馬鹿ね」

 

いやぁ、人って変わる時には変わるもんだなぁ。

この二人を見ているとしみじみと思う。

ただ、いちゃつくのはいいと思うし俺のパンティが二人の仲を成功へと導いたのには感慨深いのがあるのは認めるが、人の往来のある場所でこれはさすがにどうだろうとは思う。

現に道の向こうでは二人のいちゃつきぶりを見て砂糖の変わりに吐血している非モテ男子がいる。

前世では俺も向こう側の人間だったから物凄く気持ちがわかる。

正直、早く買って帰らないかなぁとか思ったりもする。

この二人、月に一度しか来ないし大量に買ってくれるから売り上げは凄い貢献してくれているんだけれど。

他のカップルたちですら気圧されて、この二人が買い物している最中は他の客が近寄ってこないんだよなぁ。

 

結局刀子先生たちが帰ったのはそれから二時間もしてからだった。

その間店で買い物をした猛者は、これまた常連客のギャルくらいだった。

この学園に来て初めて認識した、あの紐パンの小さな少女だ。

彼女は去年のGW公演の時に協力してもらったとき、恥ずかしかったのだと文句をわざわざ店まで言いに来たのである。

それ以来、俺の店によくパンティを買いに来てくれる。

紐パンに並々ならぬこだわりがあるようで、彼女が買っていくのは常に決まって紐パンであった。

よく変な紙パックの飲料を飲んでいる。

今日は『憎いアイツの本気汁』とかいうロゴが書かれていた。

あんなものどこで売っているのだろうかと思うが、そこも彼女のこだわりなのだろう。

超とレイニーデイとはクラスメートだと言っていたし、同じ年齢ということだ。

外見とパンティストとしての実力は必ずしも比例しないという、最たる例こそ彼女だろう。

その後は来客もなく、閉店時間を迎えたので先にレイニーデイには帰ってもらった。

この後は明後日に控えた手品部のGW公演に関することで超と話す約束をしている。

閉店作業を行っていると不意に、周囲から人の気配が消えたのを感じた。

あぁ、あの人が来るな。

最初はわからなかったが、一年も続けば感覚で理解できるようになった。

これは超に教わった人払いの結界が張られたのだろう。

そして、この独特の感覚の後に来るのはいつも同じ人物。

 

「相変わらず盛況なようじゃな」

 

「そういうアンタも、相変わらず閉店してからやってくるな」

 

「ふぉっふぉっふぉ、すまんすまん」

 

全然すまなそうに見えない謝罪を口にするのは後頭部が異様に長い老人。

謎のパンティスト爺さんだ。

本当はその正体が学園長だというのは知っているが、お互いに名前で呼んだことは無い。

人払いをしているくらいだし、あまりプライベートを公表したくないのかもしれない。

結界をしている以上はサングラスとか必要ないのではと思うのだが、いつもどおりその目元は隠されている。

そもそも正体を隠したいのなら、馬鹿正直に口座へ振り込むときに本名を使わなければいいのにと思わなくも無いが、単にノリだけでやっている可能性も否めないだけに判断がつかない。

ただ、俺達の間に名前で呼び合う必要などないのも確かだ。

俺も彼も誇り高いパンティストであり、マスターと客。

それ以上の関係性は今のこの付き合い方を壊す恐れもある。

互いに名乗らないからこそのできる話、注文というのもあるのだから。

 

「今日はまたマスターに頼みたいことがあってのぅ」

 

「また注文かい?」

 

「あぁ、またパンティを作ってもらいたい」

 

「この間の孫用のでいいのか?」

 

「いや、今回は彼女達の分じゃ」

 

そう言って差し出されたのは一枚の写真。

そこに映っていたのは、彼の孫娘と一緒に映っている複数の女性達。

というかどう見ても集合写真って感じだが。

 

「巫女ばっかりだな、どっかのでかい神社ででも撮ったのか?」

 

「まぁそんなところかの」

 

写真には着物姿の孫娘と、仲良く集合して映る20人弱の巫女。

神社で考えても相当な大きさの社だと窺える巫女の人数だ。

いったいどこで撮ったのかは解らないが、詮索する必要もないか。

 

「で、どのギャルに送るんだ?」

 

「全員じゃ」

 

「……は?」

 

「だからその写真に写っている全員にじゃよ」

 

「……おもしろいじゃねぇか」

 

爺さんが言うには、全員に同じデザインのパンティを送りたいらしい。

穿いても袴の上からラインが出たりしない。

それでいてしっかりとした布面積で清楚なデザインに。

サイズは一人一人に合うように。

また難しい注文をしてくれたもんだ。

 

「頼むぞ。関東と関西の仲がどうなるかはお主のパンティの出来にかかっておる」

 

「責任重大だな」

 

正直関東とか関西とか言われても事情は全く見えてこないしさっぱりだ。

だが、俺はパンティYAMADAの看板を背負うマスター。

答えは1つしか許されない。

 

 

 

「任せろ。俺のパンティに不可能はない」

 

 

 

その後、学園長が帰ったあと超包子にて公演における話し合いを行った。

ようは公演の際に超飯子が屋台を出すというのだ。

そして超達には当日、パンティYAMADAの商品も管理して売ってもらう。

その取り決めなどを超とその仲間で四葉達と確認を取る。

人手が足りなくなるかと思ったが、どうやら彼女達のクラスメートが何人か臨時バイトとして手伝ってくれるらしい。

店の方は任せても問題ないようだ。頼もしい限りである。

これで俺は当日はパンティイリュージョンに専念できるというものだ。

 

 




というわけで、話がだらだらになってもいけないのでいきなり一年飛ばしました。

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