SDガンダムフルカラー幻想郷劇場(SDガンダムフルカラー劇場×東方Project) 作:たくらまかん
『紅魔館との共同戦線。総帥からも許可は下りた』
ギャン
「ありがとうございますキシリア様」
----
キシリア
『アッザム』
アッザム
「ははっ」
キシリア
『ギャンから紅魔館と図書館を献上すると聞いたが、私は要らぬぞ? レミリア嬢に悪いではないか』
アッザム
「あー、はい」ヤッパリカー
キシリア
『では、宇宙で待っておると彼女らによろしくな』
アッザム
「……どうしよ」ギャンオチコムシ
☆来訪、未来有望な後輩★
〜ホワイトベース〜
その日、久しく会っていなかった顔なじみがホワイトベースの補充兵として来てくれた。れんぽーに所属して日も浅いがオレにとっては自慢の後輩である。
「お久し、ぶり、ッス先、輩!」
「うん、リッキー久しぶり。元気そうだね」
陸戦型ガンダム、通称リッキー。ソレが彼の名前である。ボールだったのが、いつの間にかモビルスーツに成長を遂げているからビックリだ。しかも姿が自分に少し似た雰囲気を醸し出している。でも微笑ましいことに、何にでも一生懸命なところは相変わらずなようだ。
「ハァ、はいッス! 元、気がっ、取り柄、すぅはぁ、ッスから!」
「みたいだね。ってかさ、ソレ置いて良いよ?」
ただ、ガショガショと見た目にも耳にも重そうなバックパックばかりに視線がいってしまい。思い切って指摘するも彼は勢いよく顔を横に振る。
「い、いえ! 修行ッスりゃ!」
噛んだ。もうダメだコレ。
「はいはい置こう置こう」
「あぁ!? 先輩、やめ、あー! 軽い! 背中が軽くなるぅ!」
もう強制的に外すことにした。お隣にも紹介するつもりだが多分、このまま会っても彼女も同じ反応を示すだろう。修行が修行がと駄々をこねる後輩を引っ張り、オレは戦艦を後にした。
「ガンキャノンー、隣行くわ」
「おー、りょーかい」
「わー! 背中が軽いよ、うわあぁん!」
☆★☆★
〜博麗神社・境内〜
神社が襲われたと聞いたのはホワイトベースでお昼寝をした後だった。帰ったところで魔理沙が犯人を縛り上げていてくれたのだけど、それは人里で会った奴らと同じ組織のモビルスーツだった。
「魔理沙の尊い犠牲は忘れないわ」
「勝手に殺すな」
尋問するとホワイトベースの関わりから魔理沙を襲ったとのことだ。結局は人里でのガンキャノンの言葉を踏まえて、ドムは逃がしたのだが去り際に「また来るわ」と手を振って言われた時は不思議な感覚になった。
何というか。彼らの戦闘というには私達でいう弾幕ごっこの役割を担っているような感覚だ。
「で、モビルスーツとの弾幕ごっこはどうだったのよ」
「うーん。弾幕ごっこと言うには微妙だな。でもあのジャイアント・バズって大砲も衝撃はあるが怪我しないし」
それに加えグフ達にしろ、あのドムにしろ親近感が湧くのだ。れんぽーの敵対勢力って言っていてもそこまで剣呑な雰囲気でもないし。うーん、変なの……。
魔理沙と話し込む中、ひとりで思案しているところへ、件に関わる者の声が私の耳に届いた。
「ガンダムじゃないか。あれ、はじめて見る奴も居るな」
先に振り返っていた魔理沙の声に視線を這わせると、ガンダムがもうひとり知らないモビルスーツを連れてうちとホワイトベースを隔てる森から出て来ていた。見た目の雰囲気はガンダムと似ているが、よく見ると違う姿をしている。そう思いながらも私は先ほどのことについて話を切り出す。
「いらっしゃい。って言ってもさっきは長居しちゃったわね、ごめん」
「ううん。ホントだったら起こしてあげようとしたんだけど、たんくが「ねかせてあげて」って言ったんだ。枕も押入れから出してたし」
「え? ああ。そう……」
「へー、ガンタンクも良いところあるじゃないか」
途端に胸がきゅうんっと高鳴る。意外だった。起きた時、使った記憶のないタオルケットを掛けてくれていたり、枕を置いてくれていたのをてっきりガンダムだと思ってお礼を言ったのだが、まさか彼だったとは思わなかった。
だっていつもぶっ飛ばされたりぶっ飛ばされたり、ぶっ飛ばされたりしてるからそんな……。ってアレ、思い返してもロクなことされてないじゃない。
「ところでそっちの奴は誰だ? さっきホワイトベースにゃいなかったけど」
「そ、そうよ。はじめて見るけどガンダムの弟なの?」
熱くなっていた頬を両手で軽く叩き、ガンダムの隣に居るモビルスーツへ意識を切り替えて問いただす。何やら緊張しているのか、背筋をピンと伸ばして立っている。
「このコはオレの後輩で今ホワイトベースに到着したところなんだ。せっかくだから紹介にね」
「はじめまして! オレは陸戦型ガンダム、れんぽーに入ってまだまだのひよっこッス! よろしくお願いしまス!」
「よろしくな。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」
「私はこの博麗神社の巫女、博麗霊夢よ。こちらこそよろしくね」
真面目さが全面に現れているわね。嫌いではないが、もう少しくだけていってほしいものである。いや、ガンダム達がくだけすぎているのかもしれない。
「ホワイトベースに到着ってことはしばらく居るのか?」
「はい。補充兵として配属されたッス!」
あー、このコ真面目ね。魔理沙の質問に敬礼して答える姿が、何というかガンダム達とギャップがあって面白く感じる。笑ったら可哀想だから我慢しているものの、目の前の友人は堪えられなかったらしく、苦笑いを漏らしている。
「まったく。堅いな、堅いぜお前」
「リッキー、緊張し過ぎだって」
「これが自分ッス!」
可愛いなぁ。先輩のフォローにも胸を張って敬礼している姿が可笑しくて仕方ない。すると、魔理沙の眼が怪しく光った。まさか、いや今の彼にはソレが良いかもしれない。
魔理沙。まだガンダム達にも見せていない、幻想郷のルールを教えてあげて。
「幻想郷には弾幕ごっこってルールがある」
「「弾幕ごっこ?」」
幻想郷にて起こる交渉をこの弾幕ごっこで決裁すること、ルールとしてはその場で使用するスペルカードの枚数を提示して交互に発動、勝負とすること。それらを私達はガンダムとリッキーに教える。
「リッキー、魔理沙と弾幕ごっこしてあげて」
「オレっすか!?」
「せっかくだからあなた達モビルスーツの戦い方を見ておきたいの」
「了解ッス!」
「おー、やる気満々だな」
嫌がるかなと思ったが、逆に良い返事が返ってきた為に私はキョトンとするも傍にいたガンダムから彼が修行好きと聞き、ようやくリッキーの性格に納得がいく。
「あ、ガンダムもやるのよ?」
「えぇぇ!? 誰、魔理沙と!?」
こちらは明らかに嫌そうな顔をされた。さすがに勘にくるものがある。リッキーを見習いなさいよまったく……。不満も込め、皮肉たっぷりに私は自分の中で最大級の笑顔を作り、自分を指して言った。
「わ た し とっ♪」
「イヤだっ!」
「即答された!?」
☆作戦会議★
〜紅魔館・客間〜
緊張が走っていた。今、この場には館の住人とじおんの有力者が相対して席に着いていた。紅魔館からは私レミリアはもちろん、頭脳である親友のパチュリー、特m「お嬢様、怒りますよ」傍に佇むメイドの咲夜様の三人だ。
そしてじおんからはシャアとギャンのふたりが出ている。何故彼らを交えているかというと、これから私がことを起こすために必要であるからだ。それが、幻想郷を私達紅魔の郷とする計画なのだ。
「ではシャア、じおんの返答を聞かせてもらおうか?」
吸血鬼が自由に外へ出るには太陽が邪魔だ。ただそれだけ、太陽さえ隠すことが出来ればフランをより自由な環境で勉強させられる。この話は既にパチュリー達へ通してある。あとは彼らの組織が計画に手を貸してくれるかどうかの是非にかかっていた。
口元のカップを降ろし、シャアが私達に言葉を発する。
「じおんとしても、れんぽーを打倒出来れば問題はない。オマエらの計画にも無論賛同しよう。ギャン、キシリアからは?」
「キサマ……閣下と呼べ。キシリア様からも許可は下りた。これよりじおんのモビルスーツ、モビルアーマー全ては紅魔館の作戦に惜しみなく協力する姿勢だ。感謝してもらおうか」
「ああ、ありがたいよ」
ある運命を覗いた時、シャア達の戦力が加わることでフランを幸せにしてあげられることを知った。それは現にムサイに住まわせたことで妹は自分というものを制御出来るまでに成長を遂げている。あと一押し、あと一押しで彼女に自由をあげられる……。
ひとつの問題が解消したところで私は目の前の紅茶を口に含む。しかし、その味はまだ味気ないものだった。別に咲夜が悪いわけではない。ただ、
「しかし、レミリア殿。太陽の光を遮るなど、れんぽーは黙っていまい。乗り込んでくると考えるべきだぞ」そう、原因はそれだ。
ギャンが指摘した点はそう看過していいモノではない。最初はそんな連中など取るに足らないと高を括っていたものの。れんぽーにも猛者が多いとシャアやグフに知らされてから、そのことが心に引っかかっている。特にガンタンクはムリだと全員が口を揃えて拒否反応を示している。
「あなた達がそこまで言うなんて、ガンタンクってどんな奴なのだ?」
ティーカップを片手にそう尋ねると、モビルスーツ達は揃って口を開く。彼らの口ってどこなのかしら。
「「砲律独弾個人事務所、絶対ぶっ飛ばしてやる!」」
「何それカッコイイんだけど!?」
「「!?」」
何というか紅い悪魔よりも心がシビれる響きである。同意を得ようと親友と従者を一瞥するも私の感想に驚愕の表情を浮かべていた。
あ、アレ。かっこ良くないの?
感性を理解されていない現実を疑問に思っていると、目の前のシャアが咳払いをして意見を出す。
「ま、まあガンタンクのことは置いといて、ともかくホワイトベースは脅威だ」
「ふうん。舐められたものね」
確か、戦力はたったの三人だ。面白い、ついでにそのガンタンクとやらも味見してやろうではないか。未だ見ぬ挑戦者に興味を示していると、隣のパチュリーから小さく手が挙がる。
「報告があるの。良いかしら?」
「報告……? いいわ、教えてもらおう」
「幻想郷には博麗神社があるということも忘れてはならないわ。先に戦闘を仕掛けたガイア大尉が見たそうだけど、そのホワイトベース、神社のお隣だそうよ。間違いnーー」
手で制し、パチュリーの声を遮る。私の考えを察してくれたらしく、彼女からそれ以上の発言はなく、ただ私の眼をジイっと見て視線を離さない。口にしなくても理解できるさ。どれだけ友をやっているというのだ。
つまりは博麗の巫女とホワイトベース隊が揃って私に楯突くということだ。
「面白い、止められるというのなら止めてみろ。シャア」
「何だ?」
「準備が整い次第、宇宙にあがりたい」
「了解だ」
ムサイが大気圏外に出るにはまだ時間が掛かるらしいが、必ずじおんの要塞ア・バオア・クーに渡り、宇宙からこの地上に紅い霧を発生させる。これならば地上で行うよりも邪魔者達に対して長期戦を強いることができる。それに一度、宇宙というものを経験しておきたいし、皆にも味わせてあげたい欲もある。
「お嬢様……」
心配そうにしている咲夜を手で制し、おかわりを要求すると、彼女は直ぐにポットを持ってカップへと紅茶を注ぐ。紅みがかった琥珀色の液体がアーチを描き、白い吐息をと共に私の前に現れた。それに口を付けた瞬間、ようやく至福のひと時を得た気がする。
私はこれを渇望していた。ふと下ろした視線の先、器の中の水面にフランの笑顔を映し込む。
「もう、仕方ないわ。咲夜、諦めましょう」
親友のため息の混じった一言を耳にし、辺りを見回すと咲夜もパチュリーも吹っ切った表情で私を見ていた。ふたりならではの思うところがあるのだろう。でも心配は要らないわ。運命は私が握っているんだから。言い知れない期待が胸の奥底で、紅茶の湯気のように湧き上がっている。大丈夫、大丈夫よ、絶対。
「シャア」
「何だ?」
「私達を助けてね?」
「当たり前田のクラッカー」
そんなちっとも面白くないシャレを言い、シャアは赤く凸の突起物がついた球を差し出してきた。持てというのか。何となく受け取った私はそこで、笑い声をあげてしまった。こんな時に下らないことをしている。そう思った瞬間、憂いのなくなったこの状況が可笑しくて仕方がない。
私は再びお茶を口にする。安心感が調味料となっているのか、今のお茶がやはり美味しく感じる。
片方の手で持っていた球に添えていた人差し指を少しズラし、複数あるうちのひとつの凸の上に乗せた。ふとポチりと小さくノックしてしまった直後、
「あ」シャアから意味深な声があがる。
「なあにシャア」
「そのクラッカーな。今オマエが抑えた指が起爆スイッチだから」
「え? ちょぇうえっ!?」
「シャア、ギャン逃げるわよ。咲夜!」
「了解です。お嬢様、ご無事で」
「では一度キシリア様に報告するか」
「コラぁー!? お前達逃げるなー! あ」
意識などしていなかった。叫んだと同時に手からクラッカーを滑らせてしまう。テーブルに赤い球体が硬質特有の音を立てて転がって破裂する。直後目の前が真っ白に発光し、私の意識はそこで途絶えてしまった。
☆★☆★
小規模の爆発音と悲鳴を聴きながら紅魔館の客間を退室し、私は直ちに館外へ出た。門で職務を遂行している小娘とザクIIに声をかけ、ただひたすらにその場から距離を開ける。そして、あるモビルアーマーの前までやって来たところで私は後ろを振り返った。
「大丈夫だろう。ここの連中は詰めの甘い小娘ばかりだ」
趣味全開の建築物は手のひらにすっぽり収まるまで遠く、こちらを視認することは不可能である。背後に立つ部下へと向き直り、今回の話し合いの顛末を述べた。
「ーーと、レミリアをはじめ館の者達は完全に我々に信頼を寄せているものと見て間違いはないだろう。アッザム」
「じゃあこれからどうする?」
「ただの友人を装っておればよい。機会が訪れれば奪取することも容易だ」
シャア達はあの連中と親しげにしており、何やらその付き合いもおおいにしていこうとしているが私にはあんな小娘のことなど、はっきり言ってどうでもよかったが、あの紅魔館自体や図書館はなかなか興味深い代物である。
ここは是非とも、レミリア達を宇宙へ行かせた後で接収したいものだ。そして、
「献上品として持ち帰ればキシリア様もたいそうお喜びになるであろう」これこそが私がこの作戦に手を貸す真の目的である。
館を手土産に持参し、帰還する未来を頭に描くだけで笑いがこみ上げてくる。
「キシリア様、いやそんなお褒めにならなくとも〜」
(キシリア様、アレに興味無いって言ってたって教えたら傷つくかな……)
そうとなれば、一日でも早く大気圏外突入用ブースターを完成させなくてはならない。敬愛する上司への想いを再確認しながら、私はアッザムと共にムサイへと向かうのだった。
☆これが弾幕ごっこ?★
博麗神社では多彩な種類の弾が豪雨のように飛び交っていた。霊夢と魔理沙はお札や星形ミサイルと、幻想郷ならではのショットを放ち。それぞれの相手を務める白いモビルスーツ達は幻想郷でおよそ見ることのない得物で、文字通り“ショット”していた。
「ひとつ!」
重い一撃を走らせるビームライフル、
「そこッス!」
速連射によって取り回しの良さを発揮するマシンガンと、
彼らは持ち前の武器を多用していた。
霊夢と魔理沙はスペルカードを持たないふたりに対し、はじめのうちに自由に戦ってみることを説いた。その上でビームライフルならばこう、バズーカならああして、ハンマーだったらとそれぞれ試しながら練習を行っているのだが、その汎用性の高さはまったくの予想外だったようだ。
「あやや、光る弾を放つ銃にお抱えの大筒。あっちは砲身の長い銃や機関銃……。ダメ、アタマ痛くなりそう」
「これが基本的なモビルスーツの得物と戦法よ。しっかりメモして後で取材しなさい」
傍でモビルスーツ達の扱う武器を指折り数えている烏天狗こと、射命丸文に対し、私は目の前で繰り広げられている二組の攻防が誇らしく思えた。
彼女にはガンダム達モビルスーツと幻想郷の住人達の弾幕ごっこを、モビルスーツとは如何なる存在かを知り、新聞で広めてもらえば郷中に知れ渡ることは容易である。
私が姿を晒して堂々と観戦するようにしたのは弾幕ごっこが始まって少し後のこと、そこへ新聞のネタ探しに烏天狗が来たのである。隣の戦艦とこの状況を見て飛び込んできたことは、……言うまでもないわね。
「でや!」
「ちょ、ちょっと!? ーーああっ!?」
ふいに盾を前に構え、封魔針を蛇行して避け迫撃するガンダムに霊夢は幣でもって薙ぎ払おうとしたのだけど盾の奥から現れた桃色に光る刃によって焼き斬られてしまう。彼女の手に残ったのは根元部分だけの幣、いやもうあれはただの木材である。
「ガンダム! あんた何てモノ私に使うのよ!」
その目尻に涙を滲ませ、炭素化した幣の切断面を突きつけて激昂する。まあアレは私でも泣くだろう。
「ご、ごめーん、最近使ってなかったからスイッチフルパワーにしてた! 弁償するよ、うちのハタキあげるから!」
「ハタキじゃないからコレ?! もう怒ったわよ!」
ー霊符「夢想封印」ー
「ホントごめんねー!」
紅白の陰陽玉が頭上から降り注ぎ、そのまま彼を下敷きにした。なんというか、押し潰される寸前で謝罪というのをはじめて見た気がする。ふと隣へ振り向くと文はあの様子を眺め苦笑していた。
「紫さん、面白いヒト達ですね。ガンダムさんもそうですけど、あっちもーー」
「ええ、そうね」
彼女が促したのは魔理沙と交戦しているリッキーのことである。リッキーはガンダムと違い、最初からガチガチに緊張しており、マシンガンやバズーカも取り出すたびに手を滑らせて地面へと落としている。流石の魔理沙も呆れ、掲げたスペカを下ろし、親切に落とした武器を渡してあげていた。
「慌て過ぎだ。何か見てて心配になるぜ?」
そう言い、恭しく礼を述べるリッキーを前にしつつ、魔理沙はこちらへ顔を向けて同意を求めてくる。まあ気づいていても不思議ではないが、とりあえず私と文は魔理沙の意見に賛同する。
「何というか、魔理沙さんや霊夢さんの技が綺麗なんで見とれてたッス!」
「そ、そうか? なーんだリッキーも分かっているじゃないか!」
ずっごいッス! と全身で驚きを表現し、尊敬の眼差しを向けるリッキーに魔理沙は途端に嬉しそうに頭を掻き、彼の肩を叩きはじめた。単純ねー。
「っと、さっさと続きしようぜ! まだお前にとっておきを見せてないんだ」
「ホントッスか!? よろしくお願いします!」
リッキーの言葉をきっかけに弾幕ごっこは再開され、魔理沙から箒の一振りが袈裟に繰り出された。距離を開ける為だろう。もちろん、リッキーも新兵だというらしいが流石に状況判断は素早い。ガンダムの物とは違う、小さな盾を構え難なく防ぐ。魔理沙はリッキーにバルカン砲が無いと思っているのかそのまま近接攻撃を続ける。確かに見るところ、彼の頭にはそれらしき銃口は無い。
「あの光る剣も持ってるんだろうがこうもやられては抜けないだろ!」
「使わずとも大丈夫ッス!」
装填される独特の金属音が鳴る。その直後、彼の胸部から速射が魔理沙を目掛けて走った。
「え」油断大敵である。想定外の事態に咄嗟の行動を起こすことが出来ず、彼女は成されるがままにリッキーの銃弾の餌食となる。
「いだだだだ! 痛い痛い痛い痛い!」
「今ッス!」
胸部の射撃を続けながら、これまでのものと形状の異なる銃器を手に添えて魔理沙へ向けて引き金を引く。
「……リッキーさん容赦ないですね」
「あの性格だから一生懸命さは伝わるわ」
「痛ちょ!? 痛いうわっ! 網ぃ?!」
「ネットガンッス! 銃身が焼けつくまで撃つッス!」
「痛い、!? ま、待って! 痛い! いい加減にしろ!」
ー恋符「マスタースパーク」ー
なんだかんだ言っているうちに勝負は決まる。帽子を盾に着弾の衝撃を和らげミニ八卦炉を手にした。直後、魔力の砲が鮮やかに美しく境内で弾ける。
光の奔流が走った石畳には薄汚れた姿のモビルスーツが伏していた。少し間を置けど立ち上がる様子もない。彼へ駆け寄り、涙目で拳を天に掲げる魔理沙のそぶりから、勝ったのは彼女のようだった。
「一応メモはしましたし、取材はあらためて明日行います」
「そうね。それが良いと思うわ」
なんとなく、新聞に載ると聞いて良い意味で騒ぐ彼らの姿が目に浮かぶ。
離れた場所からガンダムとリッキーの姿を写真に収め、翼をはためかせて飛び立つ文をながし目に私は再び四人へ視線を送るのだった。何となしに彼らには踏ん張ってもらいたかった気持ちも少しあったが、今は内緒である。
魔理沙
「ほんっとーに、怖かったんだからなっ!」プンスカ
リッキー
「すいませんでした。オレに出来る範囲でお詫びするッス!」フカブカー
魔理沙
「!? よーし、ならお前の武器全部くれ」
リッキー
「えぇ!? それだけで良いんスか!」ハイ
魔理沙
「ちょ、マジか!?」ジョウダンダゼ
霊夢
「充分大盤振る舞いじゃない」ガンダムニヒザマクラチュウ
ガンダム
「まー、補給入るし。ワンセットなら」カオマッカ
霊夢
「……ホイホイ貸さないでよ?」アブナイシ
ガンダム
「とりま魔理沙には貸さない」ロクナコトニナンナイシ