英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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ルイオス・ペルセウス

~ルイオス視点~

 

「君達の負けだと思うのだが、まだ続けるかね?」

 

 ある程度拮抗していたはずの状況はもう既に崩れた。

 

 ベディヴィエールじゃあ、アーサー王には勝てないし、認めたくは無いが僕ではエミヤには勝てない。

 

 しかし戦う相手を逆にしたところで、勝敗なんて決まってる。

 

 ハデスの兜はアーサー王には通じないし、ベディヴィエールではエミヤの遠距離攻撃に耐えられない。

 

「まあ、勝敗は決しただろうさ。だけど、これでもリーダーなんてやってるんだから負けられないんだよ!」

 

 姿を隠したままヘルメスの靴で空を翔る。

 

 そのとき見たのは、無限とも思える剣がひとりでに浮き上がってくる光景。

 

「まずい! さっさと避けろ馬鹿!」

 

 無差別に降り注ぐ剣の雨にを避けながらベディヴィエールの本へ向かう。

 

 しかし、とっさに声を出してしまったせいで、おおよその位置がつかまれてしまい集中砲火を受ける。

 

 それを何とか弾きながらベディヴィエールをつかんで空を飛ぶ。

 

「くそ、部外者には渡したくは無かったけどしょうがない。これを被れ!」

 

 そう言って兜無理やり被らせる。

 

「いいか? 僕たちじゃあこのままだと勝ち目が無い。だけど馬鹿白髪が起きてくれればまだ分からない」

 

「ええ、三人いても正直足りない気はしますが、今よりも状況が好転することは間違いないでしょう」

 

「違う! 勝利条件としてはお前と光一が起きていれば勝ち目はあるが、僕がいたところで勝利条件は満たせない。だから、お前はハデスの兜を持って光一を回収しろ。あいつが目覚めるまで僕が時間を稼ぐ」

 

「それでは貴方が!」

 

「うるさい。お前はまず王様とやらと全力で戦えるようになってから言え!」

 

 それだけ言って、光一の近くにベディヴィエールを落として、兜を外す。

 

「なんだ鬼ごっこはもう終わりか?」

 

「子供の遊びはもう飽きてね」

 

「では神魔の遊戯(大人の遊び)をするとしよう」

 

「うわ、変態だな」

 

「目隠しプレイ好きよりはマシだろう?」

 

「どちらも大差ないですよ。それと――」

 

 アーサー王がそういうと同時に全身から力が吹き出ているのが見える。

 

「この私を相手にして勝てるとでも?」

 

 他の奴が言ったんならばかな奴だと笑うだろうセリフも、アーサー王なら良く映える。

 

「ハッ! 戦いに勝つのは確かにそっちだろう。だが、ゲームに勝つのはこっちだ!」

 

 そう良いながら僕はこの世界に飲み込まれた盾に炎の矢を連続で放つ。

 

 しかし、その全てがこの世界の剣軍に阻まれて霧散する。

 

「狙いが甘い!」

 

 その声に振り向くと目の前には既にアーサー王。

 

 

 とっさにハルペーでガードするがこんなものでは足りない。

 

 かわいらしい見た目とは裏腹に、龍に薙ぎ払われたかのような錯覚を受ける一撃に僕の体はたやすく吹き飛んでいく。

 

 さらに、吹き飛んだ先にあるのは突き立てられた剣、剣、剣。

 

 触れれば両断されるであろう障害物をヘルメスの靴で方向を変えることによって回避する。

 

「ああ、下だけでなく上も見るといい」

 

 吹き飛ばされている最中にもかかわらず何故か明瞭に聞こえる声につられて上を見れば、僕が姿を現した時に止んでいたはずの剣の雨。

 

 吹き飛ばされることへの抵抗は既に止めて、剣に当たらない位置をスレスレで吹き飛ばされるように集中して制御し、その隙に炎の矢で出来うる限り剣を打ち落とす。

 

 うちもらしはギフトカードにしまってあった鏡の盾によって防ぐ。

 

「くそ! お返しだ!」

 

 僕は兜を被り、姿を消した上で空中から近づき矢を放つ。

 

「温い!」

 

 剣の雨が矢を打ち落とし、僕の逃げ道をなくす。

 

 ハデスの兜の正攻法はこれだ。

 

 ノーネームとの戦いで使われたと言う音響探知機(ソナー)

 

 つまるところ、透明になり、無音になり、あらゆるギフトによる探知を無効化したところで、物質は透過できない。

 

 つまり、回避できないくらいの範囲と密度で攻撃すれば落ちるのだ。

 

 しかし対策は有る。

 

 僕は降り注ぐ剣に合わせて急降下して地面を叩き砂埃を上げる。

 

 これならおおよその位置は分かっても一瞬だけ姿を眩ませる事が出来る。

 

 その一瞬の隙にかつてならアルゴールを召還して終わりだったが、今出来ることは炎の屋を連続で放ち、牽制する。

 

「それは無駄な足掻きだ、ルイオス!」

 

 炎の矢を物ともせずにアーサー王の突撃が来る。

 

「ああ、知ってたさ!」

 

 地上にいるのならそこは騎士王とまで呼ばれた彼女の領域。

 

 なればこそ僕は罠を仕掛けた。

 

 逆袈裟に振るわれる剣に対して、前に出ながら身スリルの盾で防ぎ、そのまま上空に吹き飛ばされながらハルペーでアーサー王の腋の下に刃を入れる。

 

 しかしそれは完全に回避される。

 

「はあ、はあ、くそ。未来視のギフトとか反則だろう!」

 

「いえ、私はそんなものは持っていないですが、感が良いんです。しかし、これからベディヴィエール卿とも戦わなければいけない。ここで終わりにさせてもらおう」

 

「ああ、君が消えれば嫌がおうにも出てこなければならないだろうからな。――ではさらばだ」

 

 剣を構える騎士王、浮かぶ剣軍。

 

 はあ、はあ、はあ、ふー。

 

 息を整えて脅威を全て目視する。

 

 ……これは流石に無理か。

 

 それでも挫けそうになる足に力を込める。

 

「ま、け、る、かぁー!!」

 

 全力で吼えながら騎士王に突撃してハルペーを振るう。

 

「その気概、お見事でした」

 

 全力の一撃を容易く防がれながら剣軍が降り注ぐのをみて、僕の意識は途切れた。

 

~ルイオス視点~

 


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