英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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黄昏と龍殺しの魔剣

 

~エミヤ視点~

 

 

 

「死になさい!」

 

 黒い風は既に黒死病を操るものではなく、死を与える神の裁定となっている。

 

 触れればその場で死という、神からの恩恵(ギフト)が与えられてしまうだろう。

 

 それは既に巻き込まれた木々が証明している。

 

 黒い風にほんの少しかすっただけで木々は萎れて腐り落ちていった。

 

 恐ろしいものだ。

 

 ーーだが。

 

「残念ながらまだ死ねないな」

 

 私が剣を握っている限り死ぬことはない。

 

 それは全て聖剣アスカロンの効果だ。

 

 使用者を危険から遠ざける剣。

 

 故に無敵。

 

 使用者の敗北を無くす無敵の聖剣である以上、劣化していたとしてもこの程度の風を逸らすことなど容易い。

 

 そして私とて唯剣を握って立っているだけではない。

 

「ーー停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)

 

 投影したのは、宝具には届かなくとも鉄くらいなら容易く切り裂けるほどの名剣。

 

 ペストを傷つけることが出来るのは既に証明済だ。

 

 異常な回復能力があるだけで強度はそこまでではないのだ。

 

 二十七の剣群はペストに向かって飛んでいく。

 

 その軌道は回避出来る箇所も潰してある。

 

 防ぐか、剣を食らわないことを諦めて特効するかの二択を強制的に突きつける。

 

「ちっ! 面倒くさいわね!」

 

 ペストが選んだのは前者だ。

 

 防風を操り剣の軌道をずらす。

 

「ーー壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

 射出された二十七の剣群は全て内包された神秘をまき散らしながら自壊した。

 

「くっ!」

 

 爆発によりペストの体が一瞬見えなくなる。

 

 しかし、あれほどの霊格を隠しきることはできない。

 

 これで終わりではない。

 

 私は追撃としてハルぺーを五本投影し射出する。

 

 ペストは何かを察知したのか、追撃が来るのか予測したのか爆風の中から飛び出すように回避する。

 

 しかし一歩遅い。

 

 ハルペーはペストの体を傷つけることに成功している。

 

「傷が治らない!?」

 

「あまり呆けていると終わってしまうぞ?」

 

 そういってから自らの内に埋没する呪文を唱える。

 

「――|我が骨子は捻じれ狂う。《I am the bone of my sword》」

 

 投影したのは愛用の弓と剣。

 

「――偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)

 

「あれは――!」

 

 ペストはとっさに大量の死の風を圧縮して前面に展開しながらよけようとする。

 

 あれは防げないことを理解しているのだろう。

 

 そして両者が回避することも、防げないことも理解している以上、その結果もまた予測できていることだ。

 

 当たる。

 

 偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)はペストの体を過剰なまでに破壊していった。

 

 そのままペストは地面に落下する。

 

「私としてはこれで君が降参してくれると嬉しいのだが」

 

「……馬鹿なことを言わないでくれる? 私はまだ怠惰な太陽に復讐していない!」

 

 ふらふらとよろけながらもペストは立ち上がる。

 

 治癒できない攻撃はハルペ―がかすった場所だけのはずだが、ダメージが大きすぎたのだろう。

 

 いまだにペストはふらついている。

 

「復讐を悪いとは言わんが、君の場合は八つ当たりに近い。君を殺したのは君の司る黒死病だろう?」

 

「そうよ。それがどうしたの? 私は何人もの命を奪ったこの力

で、私たちを助けようともしなかった太陽に復讐する」

 

「確かに黒死病が猛威を振るった時代は太陽の寒冷期と重なっているし、それが原因で黒死病がはやったことも事実だろう。

 しかし黒死病の感染する距離にありながらも死者を少なくした国もある。

 その国は十四世紀にありながら、アルコールなどで除菌を日常的に行っていたり、食べ物は熱を通してから食べる習慣があった。

 さらに黒死病の主な感染経路はネズミが挙げられるが、その国には原始林が多く残されており、ネズミを捕食する生物がたくさんいたため、感染が抑えられていた」

 

「へぇ、よく知ってるじゃない。確かにそういうことがあったのは事実よ。だけど許せるはずがないじゃない」

 

「確かに、理不尽に奪われる辛さは理解できるがね」

 

「英雄になるほどですもの。貴方にも似たようなことはあるのでしょうね。だけど私達は何も悪くなかったのに!」

 

 

 

 

 

 

 

 風を切る()と、死を運ぶ風。

 

 その目的は互いに一つ。

 

 だが過程には大きな差がある。

 

 つまり、人の業で殺すか、神の裁定によって死を与えるか。

 

 人の身で神を殺すことなど出来るはずもなく、矢はことごとく逸らされる。

 

 しかし、この身は人なれど、この魂は英霊だ。

 

 人類を滅びから救うために集められた守護者に過ぎないが。

 

 いや、むしろ守護者であるからこそ不出来な神などいくらでも片付けて来たのだ。

 

 神の裁定を超す神秘などそうそう無いが、乗り越えることが出来る物は幾らでもある。

 

 例えば――

 

「――幻想大剣(バル)天魔失墜(ムンク)

 

 吹き荒れる黄昏の波は暴風となって、死の風を追い返す。

 

 しかしこちらは唯一度攻撃を凌いだだけに過ぎない。

 

 故に追撃がくる。

 

「はぁ! 」

 

 龍殺しの英雄の持つ魔剣は即座に二撃目を放つ。

 

 幻想大剣(バル)天魔失墜(ムンク)は真エーテルを内包しており、それを放つという性質上、消費が少なく、なおかつ速射可能という規格外な性能だ。

 

 最も解放には魔力が必要だが、他の対軍宝具よりも圧倒的に消耗は少ない。

 

 更に私の場合は剣に内包されている真エーテルが尽きようとも。

 

「――投影開始(トレースオン)

 

 もう一度作り直せばいい。

 

「く、反則じゃない!」

 

「それを言ってしまえば死を与える恩恵(ギフト)などまさに反則ではないかね?」

 

「ほら、あたしは魔王だから問題ないでしょう?」

 

主催者(ホスト)がそれでは参加者に恨まれるぞ?」

 

「お互いさまでしょう! 参加者に貴方みたいなのがいたらゲームバランスが崩れるでしょう!」

 

「まったくだ。と言っても私はそこまで反則じみた恩恵(ギフト)は所持していないのだがね」

 

「十分反則よ」

 

 会話を交わしながら合間合間に死と黄昏の衝突による暴風が吹き荒れる。

 

 しかし困った。

 

 いくら魔力の消耗が少ないといっても宝具なのだ。

 

 このままでは後五分もしないうちに魔力が尽きてしまうな。

 

 さてどうするか。

 

 

 

 

 

~エミヤ視点終了~

 




光一「更新が遅くなって申し訳ありませんでした!」

エミヤ「グランドオーダーが楽しかったのが敗因だと思うが、仕方がないだろう」

光一「お前はネタにしたと思ったら超強化が来たんだもんな」

エミヤ「一周年イベントのおかげで宝具レベルが五になり、聖杯によるレベルキャップ開放によりレベル百になり、おまけにスキルは全カードバフにまでなったのだからな」

光一「宝具で等倍四万近く出る全体宝具に早変わりしたおかげで今じゃどこに行くのにも使ってるからな」

エミヤ「絆レベル上げに強制的に一枠取られていたのが戦力になったのだ、ベンチからスタメンに早変わりして最近は忙しい」

光一「まあ、性能だけで見たらアーラシュさんを百にしてたほうが強かっただろうけどな」

エミヤ「かの大英雄と比べないでくれ。彼は強化前から既に全パーティに入っていた英雄だぞ」

光一「ああ、いつも感謝しているくらいだ」

エミヤ「というわけでこれからもステラァァァよろしく頼む!」

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