英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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遅くなってしまい申し訳ありません!

少し仕事が忙しかったのと、FF14が面白くなってきたので書く時間がとれませんでした。

全くいいわけにもらないですけれどね!


グリムグリモワール・ハーメルンの襲来

~エミヤ視点~

 

「おい! オマエの所属と名前は!?」

 

 待合室に戻ると、先程のウィル・オー・ウィスプのコミュニティの少女が春日部嬢に詰め寄っていた。

 

「さっきの戦いは悔しいけど、あたしだけじゃ勝てなかったのは認めてやる!」

 

「うん。ジャックに足止めされてなければ負けなかったし」

 

「んぐぐっ! くそっ。ちったぁ敗者らしくしろっての。だけど次は私だけで勝ってやるからな!」

 

興奮しながら詰め寄る少女に、思いの外負けず嫌いな春日部嬢。

 

 案外負けず嫌い同士気が合いそうなコンビだ。

 

 そしてその後も言葉を交わした後、少女が右手を差し出しながら春日部嬢に近づく。

 

「次はこの、ウィル・オー・ウィスプのアーシャ・イグニファトゥスが完膚なきまでに勝つ!」

 

「上等。次は負けない」

 

 春日部嬢もそれに応じて右腕を出して握手をした。

 

 うむ。

 

 切磋琢磨するライバルがいることは素晴らしい事だろう。

 

 この戦いは双方の成長に繋がるだろう。

 

 ……だけどな。

 

 どうして二人とも男同士の友情みたいになっているんだろうな?

 

 そんなことを考えながら待合室の外に出ようとしたときだった。

 

 とてつもない存在感を持った存在が四人分。

 

 そのうち一人は明らかに住む領域が違う。

 

 つまり。

 

 ――これが魔王か。

 

 その事を理解した瞬間私は赤原礼装を投影し、春日部嬢に渡す。

 

「魔王が来た。春日部嬢は出来るだけ一般人をつれて避難してくれ」

 

「私も行く」

 

「今の君たちでは少し危うい。それに、一般人がいる以上被害が広がりすぎる。避難誘導が終わったら来てくれ」

 

 それ以上の言葉は交わさず、私は闘技場の方に走る。

 

 散りばめられた黒い羊皮紙に空中に浮く四人。

 

 踊り子のような女。

 

 巨大な笛を持った男。

 

 明らかに人ではない巨人。

 

 ――そして圧倒的な霊格の少女。

 

 そこに一筋の風と共に十六夜が現れる。

 

「おい! エミヤはでかいやつ! レティシアとお嬢様は白いやつ! 光一は小さいやつ! 黒いのは俺が行く!」

 

 それはそんなことを言い残して巨大な笛を持った男を壁に叩きつける。

 

 叩きつけられた男は、巨大な笛でガードをしているせいで大したダメージは与えられていないようだが、完全に敵が来たと認識したようだ。

 

「坊主。名前は?」

 

「ヤハハ! 名前を聞くんなら自分からだぜ?」

 

「そうかい。そいつは悪かった、なっ!」

 

 男は言い終わる前に十六夜を笛で弾きとばす。

 

 あいつは楽器そのものを武器にするタイプか。

 

「“グリムグリモワール・ハーメルン”のヴェーザー」

 

「こっちは名乗るコミュニティの名前はないが、“ノーネーム”の逆廻十六夜だ」

 

 十六夜は、初手から完璧に相手を一人封じた。

 

 それを見た瞬間に、私を含めた四人も動きだした。

 

 一番最初に接敵したのはレティシア嬢だ。

 

 ギフトカードから取り出した槍で踊り子のような女に飛びかかる。

 

 初撃をかわし、笛を吹く。

 

 その瞬間にレティシアの動きが止まる。

 

 つまり、音を媒介にした行動支配。

 

 ハーメルンの笛吹道化に最も即したギフトだろう。

 

「動きなさいレティシア!」

 

 そこに響いたのは久遠嬢の一喝。

 

 しかし支配力に差があまりないのか、完全な解除とはいかずにレティシアが力ずくで距離をとった。

 

「気に入ったわ。そこの赤い服のあなた。名前は?」

 

「全く。私のことは無私か?」

 

「あなたは有名だもの。同族殺しの魔王様?」

 

「……確かに名乗る必要はなさそうだな」

 

「大分弱くなっている見たいだけどね? 私はラッテン。あなたは?」

 

「“ノーネーム“久遠飛鳥よ。レティシアに土下座させてあげるから覚悟しなさい?」

 

 久遠嬢も観客席からリングに降りてきて言う。

 

 あの二人なら相性もいい。

 

 前衛と後衛どちらも一定の水準にある以上問題はない。

 

 さて、私ももうそろそろ片付けるとしよう。

 

投影開始(トレース・オン)

 

 ズガガガガガガガガガガガ!

 

 呪文を唱えると共に計二十七本の剣が陶器の人形に降り注ぎ、破壊する。

 

「シュトロムをこんなに早く倒すなんて!」

 

 ラッテンが驚いたように言う。

 

 シュトロム――つまり嵐か。

 

 ギフトゲームの謎が見えてきたな。

 

「ただの陶器に手加減する意味もないのでね」

 

 シュトロムを倒したところで何処に加勢に入ろうかと周りを見渡すと、光一が黒い風から無様に逃げ回っていた。

 

「うわ! あぶねぇ! 死ぬ! 死ねる

! 見るからにあぶねぇじゃねえか! というか俺のお子さま騎士が即死するとか普通じゃねえだろ!」

 

「……うるさいわね。魔王と戦ってるのにこんなに緊張感が無いなんて、嘗められているのかしら?」

 

「そんな余裕あるわけないだろう!? と言うかいくら劣化してるとはいえ、グリフィンのギフトで操れない風ってなんだよ!」

 

「それは病を運ぶ風だからそもそも風じゃないしね」

 

「そうかいいこと聞いた! と言うか一瞬で殺せる流行り病ってなんだよ! 黒死病かなんかかよ!」

 

「あら、もうわかったの? すごいじゃない。誉めてあげる。じゃ、死んで」

 

「嫌に決まっているだろう!?」

 

 そんなやり取りをしながら、止まない黒い風を避け続ける馬鹿がいた。

 

「十六夜。手助けは要るか?」

 

「オマエもいい性格してるな! 春日部はどうなってる?」

 

「観客の避難をしてもらってるが?」

 

「なら、丈夫な剣を一本置いてそっち行け!」

 

 十六夜も、光一を助ける気は無さそうだ。

 

 まあ、仮にも十六夜を倒した“ノーネーム”の切り札だからな。

 

 こんなところで負けないだろう。

 

~エミヤ視点終了~


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