英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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長らくお待たせして申し訳ありませんでした!

次回は再来週くらいにはしたいですね……

まあ、何はともあれ、本編がどっちだか分からなくなるのはこれでしばらくありません!



参加権獲得

~エミヤ視点~

 

「そんで? 目的のモンはとってきたみたいだがレティシアはどうするんだ?」

 

 本拠地に帰り、光一と待ち合わせてから中に入る。

 

 街頭も無く暗い本拠地の中を進むと、そこに二人ほど立っているのが見えた。

 

 そこには腕を組んで待っている十六夜の姿があった。

 

 そう。

 

 レティシアが、黒ウサギとジンに俺達がギフトゲームをクリアしに行ったと伝えられたとき十六夜が驚かなかったのは知っていたからだ。

 

 俺達はレティシアから全てを聞きだした後一度だけ本拠地に戻ってきている。

 

 それは十六夜に他の見事を一つだけするためだ。

 

 十六夜はレティシアにまつわる状況を全て話すと自分がゲームをクリアしてくるといっていたが、その代わりに十六夜には仕事を頼んだのだ。

 

 もちろん最初は渋っていたが最後には星霊アルゴールとの戦闘を全て十六夜に任せるということで落ち着いた。

 

 そして十六夜に任せたことは三つ。

 

 ノーネームの誰かが俺とエミヤを探しに来ないように妨害すること。

 

 レティシアを買おうとした人物を調べ妨害すること。

 

 そして最後に、レティシアを匿うことだ。

 

 現状レティシアを匿うことが出来るのは十六夜以外居なかった。

 

 黒ウサギは本拠地から動くことは出来ず、久遠嬢と春日部嬢はゲームで急がしかった。

 

 そこで十六夜に頼んでレティシアを匿ってもらっていたのだ。

 

 それに、本拠地に居る人だとレティシアを匿っていることがばれる可能性が高い。

 

 そのため十六夜には世界の果ての近くでレティシアを匿いつつ、日ごとにノーネームの本拠地に顔を見せて私達を追わないようにしてもらった。

 

「ああ、二つとも無事とってこれた。これでペルセウスに喧嘩が売れるぜ!」

 

 光一が十六夜に向かって言う。

 

「ヤハハ、もし取ってこれて無かったら説教もんだけどな。まあ、これで少しはましな奴と戦えそうだ」

 

 十六夜は本当に嬉しそうに嘯く。

 

 私はその感情に拒否反応が出る。

 

 しかし十六夜の場合は殺害することは無いとあらかじめ確認してある。

 

 それ故に見過ごすつもりだ。

 

「ヤハハ、そんな心配そうな顔しなくても誰も殺さねえし、殺させない。むやみに殺してお前と戦うのはまだ早そうだ」

 

 顔にでも出ていたのだろうか。

 

 十六夜にすぐさま見破られる。

 

「まあ、分かっているのならそれでいいが。……春日部嬢と久遠嬢はどうしている?」

 

「無事ガルドを無傷で撃破。誰も殺してねえし、死んでもない。上々だろ?」

 

「おお、あいつ等勝ったのか! 流石だな」

 

 光一が感嘆の声を上げる。

 

「まあ、何はともあれ宣戦布告を明日して明後日にはゲームだな」

 

 光一がなんでもないことの用に呟く。

 

 私もそのことに同意して久しぶりのベットに体を預けたいので先を歩く。

 

「ん? もう宣戦布告は済ませてきたぞ?」

 

 後ろからそんなセリフが唐突に聞こえ、光一とともに足を止めた。

 

 言葉を無くした私達に十六夜が今の言葉の注釈をする。

 

「ああ、ルイオス坊ちゃんの部下が吸血鬼はどこだー! って感じで乗り込んできたから返り討ちにしたら次の日に白夜叉立会いの下、ルイオス坊ちゃんとの会談が行われて、その場で黒ウサギ怒らせたからゲームで決めることになった」

 

 ヤハハと楽しそうに笑う十六夜。

 

 何も考えられずぽかんとする。

 

「そ、それって玉いらなかったんじゃ無いのか?」

 

 私より先に唖然とした状態から戻った光一が十六夜に聞く。

 

「まあ、正直いらなかったな」

 

「そんな策があるんなら出る前に言えよ!」

 

 光一が全力で玉を地面に投げつける。

 

 ……流石がギフトだな、地面に投げつけても壊れないなんて。

 

「無くても戦いに挑めたってだけだ。正直あんま使いたい手じゃねえし、サウザンドアイズ自体がクラーケンちグライアイが倒されたことを知ってなきゃ無理だった。だから無駄じゃなかったぜ?」

 

 そおういって十六夜はヤハハと笑う。

 

「それを先に言えよ……。無駄だったかとおもったぜ」

 

 その言葉を聴いて私と光一は肩を下ろす。

 

「ま、とりあえず最初の約束通りルイオス坊ちゃんは俺に任せてもらうぜ?」

 

「ああ、分かった。私はサポートに徹するとしよう」

 

 こうして逆廻 十六夜のお披露目のゲームを明日開催することになった。

 

 

 

 ……それにしてもまた数時間で魔力をためなきゃいけないのか。

 

 私の魔力はいつになったら回復するのだろう?

 

 

 ~エミヤ視点終了~




「とまあ、こんな感じに、私は世界をやり直してもアルルだけを守るためだけにしか動けなかったのだよ」

 異能力者集団シェードの元司令 明日菜さんの話を聞き終わり、その流れでで俺の話もした。

『この人は俺に似ている』

 それが俺の抱いた感想だった。

 一を犠牲に十を救ったエミヤとは真逆で、

 一も十も救った佐藤 光一とも違うもの。

 十がどうなろうと知ったことではなく、一を守るもの。

 そして、今は守りたい一が救われたもの。

 まあ、救ってもらった人が同じなのにも皮肉が利いているが。

「私達はいろんなものを犠牲にしてきたのだろうな。だが、そのことに後悔はあるか?」

「――いえ、俺は後悔するには犠牲を出しすぎました」

「……そうか」

 明日菜さんも思う事があるのか、目を閉じて呟いた。

「……ただ、これから先は蝋の翼で全てを救った救世主みたいに、切り捨てないでいけたらなとはおもうんですけどね」

 そして、馬鹿な救世主と出会った箱庭で得た願いを告げる。

 俺の言葉に明日菜さんは少しだけ笑ってから、席を立つ。

「なら、私も、もう少しだけ守りたいものを増やすとしよう。これでもまだそれなりのところでは発言力は高いんだ。もう少し位なら守れるだろう」

 そういい残したあとまっすぐ台所に向かい聞いてくる。

「もうそろそろ晩御飯の時間だろう。あの子にもご飯を作ってあげなければならないし、きみたちもたべるかい?」

 俺とアルクェイドは同時に元気よく返事を返した。









「今度こそは間違えない様にしようね、志貴」

「分かってるよ。今度は失敗しないさ」

 アルクェイドに言われてもう一度注意を払う。

 今回は俺のナイフにギフトを触れさせて使う。

 これで間違いないはずだ。

 そして、目の前に居る明日菜さんに視線を向ける。

「いろいろと面倒を見てもらってありがとうございました」

「ああ、大丈夫だ。気にしなくて良いよ」

「では、これで行きます」

 そういって俺はギフトを起動する。

 昨日も味わった感覚をもう一度味わう。

 そして、いざ発動するといったタイミングで、明日菜さんが口を開く。

「君のその能力なら、処分される動物にも、食用の生き物にも安らかに殺すことが出来るのではないか?」

「それは確かにそうかもしれないですね」

「なら、食品加工会社にでも勤めてみたらどうだい? まあ、今思いついただけのことだから聞き流してくれてもいい」

「いえ、参考にさせてもらいます。小さな救いだとしても、この能力で安らかに出来そうというだけで嬉しいですから」

 そろそろ転移しそうだ。

 これでお別れだろう。

「では、また会いましょう」

「ああ、また」

 俺と明日菜さんが挨拶をする。

「またね、志貴と似た人」

 そしてアルクェイドが最後に微笑みながらいう。

 その言葉とともに光があふれていく。

 決意を新たに、町に戻り、未来を歩んでいこう。

 俺達には未来があるのだから。

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