英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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戦い=説教?

~光一視点~

 

「……よし! これで大丈夫だ!」

 

 よし! 目的の宝玉をゲットしてやった。

 

「のう。どちらもウィンウィンじゃったの」

 

 グライアイ三姉妹と同時に笑い合う。

 

 このゲームは、英雄ペルセウスがグライアイの三人で一つしかない目玉を奪って脅し、情報と宝を問答無用でうばったという逸話からきているらしく、三姉妹の仲で目玉を交換しようとした隙に目玉を奪い、宝の場所を聞き出すのが正しいクリア方法のようだった。

 

 つまりだ。

 

『目玉と歯が一つしかないのって、生活で不便じゃないのか?』

 

 という感想を口にしたところ『当たり前じゃろ』と勝ちの説教を食らいました。

 

 そして最終的に、入れ歯と義眼を作り、義眼には『幸福夢幻(ドリーマーズハイ)』の劣化である現実を見せる能力を使用することによって実際に見えるようにすることに成功した。

 

 その説教三時間、製作五分の合計三時間五分で俺のゲームは終了した。

 

 いや、この義眼セットを渡す代わりに宝玉をくれと言ったら貰えてしまったのだ……。

 

 い、いや、変な事したとは自覚はあるが……。

 

「まあ、誰も傷つかず、皆がハッピーになったんだ。悪くない、悪くない。こんなゲームになったのも俺のせいじゃない。俺は悪くない。敵に説教されるとは思わなかったけど悪くないんだ」

 

「何言ってるんじゃ。おぬし」

 

 グライアイのうち一人が突っ込みを入れてくる。

 

 いやまあ、悪いことはないんだが、ゲームってこんなので良いのかわからなくなったんだよ!

 

「まあ、とりあえず、これでコミュニティの仲間を取り返しに行くことが出来る。ありがとうな」

 

「なあに。礼を言うのはわしらの方じゃ。見えなくて一人が動いて後二人は動けないということも無くなったしの」

 

「目が二つあるから目測を誤ってコップをとり損ねることもないしの」

 

「それに、目にごみが入ったときに片目は見えるのじゃ」

 

 グライアイ三姉妹が変わりばんこにしゃべる。当然歯の入れ替えもない。

 

 その光景に満足して俺は宝玉をギフトカードの中にしまう。

 

「そんじゃあ、ちょっとばかし、ルイオス坊ちゃんの鼻でも折ってくるぜ」

 

「がんばっての。ああそうじゃ、ルイオス坊ちゃんは唯の雑魚じゃが、アルゴールにだけは気をつけるのじゃぞ?」

 

「アルゴール? あの悪魔のか?」

 

「そうじゃ。ペルセウスのリーダは星霊・アルゴールをギフトとして所持しておる。身体能力も、怪物を生み出す能力も厄介じゃが、一番厄介なのは石化じゃな」

 

「石化の能力か。確かにそれは厄介だな」

 

 石化。

 

 人体を石に変え、身動きすることすら出来なくし、解除する方法すあら限られる。

 

 俺ですら能力を解除するには意識だけでも残っていなければいけないのだから、俺が石化した場合はエミヤに頼るしかないだろう。

 

「それじゃあの、うちの坊ちゃんに存分に痛い目を見せてやるのじゃぞ」

 

「ああ、もちろん。この俺が居るんだ、星霊くらいなんとも無いぜ」

 

 そして、右手をひらひらと動かしながら振り返ることなく去る。

 

 さあ、世間知らずの坊ちゃんに痛い目を見せてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっちは来た方向と逆じゃがいいのかの?」

 

 

 

 ……間違えた。

 

 

~光一視点終了~

 

 




「さて、君達の境遇はなんとなくは分かった。そのネメシス……いや、ギフトとやらは平行世界、異世界かまわず移動できるもの。つまりは君達は異世界人ということだ。ネメシスが無くなってから一月ちょっとしかたっていないのに、こんなファンタジーな事が起きるとはね」

 目の前の赤髪の女性、能登原 明日菜さんに、シェードという組織のある場所につれてきてもらってる。

 たまたま、呟いたときに通りがかってくれてよかった。

 この人は世界を滅びから救うための組織だったシェードの司令で、自身もとてつもない強力な異能であり、アルクェイドの指輪に組み込まれた異能である『怪物(ジャガーノート)』の持ち主だった女性だ。

 今は過剰な戦力となりすぎて政府や軍から目をつけられてしまうため、大急ぎで解体しているところだそうだ。

 ……黒い光。佐藤 光一君が起こした異能を失わせる異能によって能力者の数は着実に減り続けているが、斑 坂介さんのように対価が問題にならなくなった人で、政府の管理下にある人はいまだに能力をも膣図家手居る人も居る。

 危険な人たちは全て能力を消していくそうだ。

 そして、能力を消していないものの中に『他力本願(ノット・トルク)』という、腕力を別の力に変換して溜める異能があり、それによってギフトに必要な力を溜めてくれるらしい。

 これで、帰る算段がついた。良かった。

「ところで、力が溜まるまで時間もあることだし、君達の話を聞かせてくれないか?」

「俺の話なんて聞いたところで面白く無いですよ?」

「まあ、少し興味があってね。異世界の話なんだから気になるだろう?」

「じゃあ、少しだけ」

 そうして俺は自分の過去と、箱庭の事を含めて話し始めた。

 帰りの駄賃として聞いてもらおう。

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