英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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はっはー。

久しぶりにこんな早く投下できました!


吸血鬼

~光一視点~

 

「くそっ! 何が起きているんだよ!」

 

 俺は誰に言うわけでもなく口に出す。

 

「私にもすべてはわからん。ただ、ここをこんな姿に変えたのは吸血鬼――それも高位の存在だ」

 

「ガルドとか言う奴はそんなに強いのかよ! 早く久遠たちに伝えてやめさせないと!」

 

「ああ、どんな手を使ったかは知らんがここまで強化されてるとなると久遠嬢の能力も効かない可能性がある。それに、春日部もただの虎に毛が生えた程度ならまだしも吸血鬼の力まで加わったのでは地球上の生命体の性能の一つや二つじゃ厳しいだろう」

 

 エミヤと一緒にこれからどうするかを探る。

 

 おそらくこの状況になっているからといって久遠と春日部の二人は戦いを止めるなどということはしない。

 

 ならばやる事は一つ。

 

 この異常事態の対処だ。

 

「エミヤ、木を全て切り倒すのと、焼き払うのはどっちがいいと思う?」

 

「焼き払ったりなどしたら周りが危ないだろう。ここは私が全て切り払ってやる。なんだかんだで箱庭に来てから見せ場が無いからな」

 

 エミヤはやれやれと言わんばかりにつぶやく。

 

「そうか、任せたぞ。俺は――」

 

「分かっている。ガルドの強化元を潰しに行くのだろう?」

 

「ああ」

 

 エミヤも俺も話さなくても分かっている事実。

 

 この森の状態はガルドではない。

 

 つまり吸血鬼がガルドに手を貸しているということだ。

 

 正直に言えば吸血鬼を相手にするのならエミヤのほうが断然いい。

 

 だが、いまだにエミヤは魔力が十分では無い。

 

 今日はほとんど何もしていないから半分ほどまで魔力が溜まったらしいが、元々エミヤの魔力は少ないらしい。

 

 エミヤから聞いた話だが、元々投影には世界の修正力というものに対抗するだけの力をこめて行っていたらしいが、箱庭においては修正力が極端に低いらしい。

 

 それを加味しても俺に放った『赤原猟犬(フルンディング)』のような真名開放は一日に十回が限度らしい。物にもよるとは言っていたがそれを基準にしてもいいだろう。

 

 それでも十分に思えるが、殲滅戦においてはそれは大きなハンデだ。

 

 雑魚が多いだけなら剣軍を呼び出して一網打尽にできるが、もしも敵がある程度強い奴らが大量に出ていた場合には厳しい戦いにならざるを得ないだろう。

 

 その点に関しては俺なら問題ない。

 

 理由としては一対他だとしても一対一でも持久戦でも短期決戦でも戦闘力があまり変わらない。

 

 劣化とつくもののコピー能力者の面目躍如といったところだ。

 

 まあ一番の問題としては基準となる戦闘力が圧倒的に低いということだけだがな!

 

 まあ、最悪はあれ(・・)を使えば一網打尽に出来る。から問題ないか。

 

 エミヤと共に森の中に向かおうとした時にがさがさと音が聞こえてきた。

 

「ふむ。まさかこの状態の森に入ってくるとはな。私は明日の準備で忙しい。ここから立ち去ってもらおう」

 

 そいつは俺達に向かってそんなことを言い始める。

 

「なあ、エミヤ。こいつを倒せばあの森って治るか?」

 

「それは分からんが、試してみてもよさそうだな」

 

 俺達はそう言って一歩踏み出し、森から出てきた金髪の女性に向かっていく。

 

「ふむ。子供でも取り返しに来たコミュニティか? 残念ながら人質なら全員殺したと本人から聞いた。ここで無駄に死ぬ必要はあるまい」

 

 金髪の女性は淡々とそんなことを言っている。

 

 こいつがガルドの部下だと?

 

 明らかに強そうじゃねえか。久遠達から聞いた話とぜんぜん違うな。

 

 こんな戦力を持っているのなら人質なんて必要ないだろう。

 

「一つ聞かせてもらおう。――貴様は何が目的だ?」

 

 エミヤが金髪の女性に向かって聞く。

 

「ああ、明日ガルドとやらが戦うコミュニティには少し因縁があってな。力試しでもしてやろうとしているだけだよ」

 

 エミヤが驚きを押し隠しながらもう位置度問い詰める。

 

「何? “ノーネーム”にか?」

 

「ああ、まさか復興させようなどと思っているとは思わなくてな。手ごろな当て馬でもあてがってやろうと思ったんだ。まあ、お前たちには関係ないことだがな」

 

 つまりうちのコミュニティが気に食わないということか。

 

「つまり君をここで止めれば明日の戦いは楽になるということか」

 

 エミヤはそういっていつも通に陰陽の壮健をかまえる。

 

「……ほう。まさかそっちから飛び込んでくるとはな。ちょうどいい、ここで実力を見てやろう」

 

 そう言って金髪の女性も槍を取り出して構える。

 

「私の名前はレティシア=ドラクレア。吸血鬼だ。さあかかって来い」

 

「私は敵に名乗るほどの名前など持っていない。まあ、ここではアーチャーとでも名乗っておこう」

 

「俺の名前は佐藤光一。ダークヒーローだ」

 

 全員が名乗りを上げる。

 

 しかしレティシアはあきれたような声でつぶやく。

 

「……ずいぶんと個性的だな。それにアーチャー。先ほど佐藤がエミヤと呼んでいるのが聞こえたぞ?」

 

 ……ああ、聞こえてたのか。

 

「……敵に呼ばれるる呼び名などアーチャーで十分だからだ」

 

「フフ。そういうことにしておいてやろう。――さあ行くぞ!」

 

「ああ、光一は後ろに下がっとけ」

 

「おう!」

 

 エミヤが言うと同時に全力で後ろに向かって逃げる。

 

「ずいぶんと臆病なようだな。それに逃げ方も下手だ」

 

 レティシアが槍を投擲してくる。

 

 音速を優に超える一撃は俺の背中に向かってまっすぐに飛んでいく。

 

「まあ、ヘタレなのは否定しないが、あれでも中々に骨があるやつだぞ?」

 

 しかし槍はエミヤが双剣で弾き飛ばす。

 

 ……やっぱりあいつ等おかしいだろ。

 

 悩んでいてもしょうがない。

 

 エミヤとレティシアの槍と剣の押収は既に俺の対処できる域を超えている。

 

 ひたすらに力任せに振るわれる槍を、エミヤは体全体の動きを使っていなし続ける。

 

 エミヤ自身も反応できる速度では有るのだろうが、膂力の圧倒的な違いのせいか、体を大きく動かして受けなければならないようで、結果的に動きが大きくなり速度についていけなくなって来ている様だ。

 

 しかし、圧倒的に性能の違う身体能力にて繰り出される連撃ですら、エミヤは一切の怪我すらなく防ぎきる。

 

 しかも俺に対する攻撃を警戒しているのかレティシアが距離をとろうとすると一気に距離をつめて攻撃を加える。

 

 俺はエミヤのサポートをする気ではいるが、もはや二人の戦闘に手を出せるほどに優れた能力は少ない。

 

 せいぜい攻撃をくらいそうな瞬間に補助するくらいだ。

 

「光一! 今だ!」

 

 エミヤが俺に向かって叫ぶ。

 

 それと同時に双剣を同時に槍に叩きつけてレティシアの体制を崩す。

 

「くっ!」

 

 レティシアはエミヤの技後硬直に追撃を与えることもせずに俺を警戒して一歩下がる。

 

 しかし俺は何もしない。

 

 盾を敷こうにも攻撃など無いし、崩れた体制のまま弓を構えているエミヤの邪魔にしかならない。

 

 先ほど投影していた双剣のうち一本をレティシアの頭部に向けて放つ。

 

 レティシアは俺に意識を向けていたせいで回避が一瞬遅れる。

 

 それでも頭部という小さい的に対して放たれた矢に対しては回避が間に合ったらしく髪の毛を切っただけで終わる。

 

 しかし今の攻防で距離をとることが出来たレティシアは槍を二本取出して俺とエミヤに投げつける。

 

 エミヤはその槍を難なくかわすが、そのせいで俺に対する防御は間に合わない。

 

 だからここでようやく俺が能力を発動する。

 

 能力という弾丸をカートリッジに入れて打ち出すイメージ。

 

 そして込めた力は――

 

「『不屈の卵殻(ハンプティダンプティ)』!」

 

 俺が知る限り最も硬い防御。

 

 サイズは前に使ったときと同じだが、今回は生産性能ではなく強度を高める。

 

 それでも大気の壁を簡単に越えるものに対して耐え切れることなど無い。

 

 それを槍の穂先に対して少しだけずらして配置する。

 

 突き出した左腕の手のひらから一メートルほど離れた場所に出てきたそれは、飛来してきた槍の軌道をほんの少しだけ捻じ曲げてはじけ飛ぶ。

 

 しかしそのほんの少しの軌道の歪みで、槍は体のすれすれの所を通って夜闇の中に消えていく。

 

「曲芸じみた真似を!」

 

 そうつぶやきながらレティシアは後ろに下がる。

 

 そしてもうエミヤは追いかけることはしない。

 

 唯、弓に残った双剣の一本を番えるのみ。

 

 レティシアは、ジグザグに動くことによって的を絞らせないようにしているが、アーチャーと名乗れるだけの技量を持つエミヤが外すはずが4無い。

 

 レティシアは何とか打ち落とそうとまた槍を取出して構える。

 

 そして飛来してきた矢を打ち落とすことに成功する。

 

 ――と同時に、レティシアの胸から黒い刃物が飛び出てくる。

 

「カッハッ!」

 

 レティシアは大量の血反吐を吐く。

 

「今使っていた剣、干将と獏耶は化け物に対して効果がある剣でな。君にはさぞ効くと思ってね」

 

 エミヤは得意げな笑みでそう呟いてレティシアの元へ近づく。

 

「……フフフ。驚いたな。こんなに簡単に負けるとは」

 

 レティシアはもはや逃げる気も無いのか自嘲げな笑みを浮かべながら近くの木にうずくまる。

 

「出来れば……、教えてもらいたいのだが、どうやって私の胸を打ち抜いた?」

 

「ああ、干将と獏耶は互いに引き合う性質を持つ剣でね。干将が戻って来るのを見計らって獏耶を放っただけだよ」

 

「私がこうも簡単にしてやられるとは。末恐ろしいな」

 

「光栄だな。ではこちらの質問にも答えてもらおうか」

 

 エミヤは質問をして、俺とエミヤは何が起こっているのかを把握し、敵が誰なのかを思い知った。

 

 

~光一視点終了~




光一「えーっと。また手紙が届いたんだが、コレはどうしたらいいんだ?」

エミヤ「知らん。読まないほうがいいだろう」

光一「確かに今までろくな目にあってないしな」

エミヤ「よし。私はいい加減魔力を回復させたいのでな寝る事にする」

光一「ああ、お休み。……エミヤの魔力不足は一年くらい続いているのかね」

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