英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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中二病の一念

 ~光一視点~

 

 なんだここは!

 

 まさにすごいという言葉しか出てこない!

 

 一瞬で世界を展開できるんだぞ!

 

 これは驚くしかないだろう!

 

 俺も『付け焼刃(イカロスブレイブ)』を使えば出来るのか?

 

 出来るとしても相当なイメージを固めなければならないな。

 

 後で聞けるのならここがどういう風に作ってるのかを白夜叉に聞いてみて、足りない部分を他の能力で補ってやれば…………。

 

 ん? 

 

 そこまで考えてからようやく周りのやつらの顔を見てみる。

 

 なぜだかは知らないがなんか注目されている。

 

「フッ。ようやく俺のかっこよさに気づいたか」

 

 決め顔で言ってみたらエミヤに拳骨を落とされる。なんなんだ一体。

 

 なぜか白夜叉は爆笑している。

 

 黒ウサギですらあきれた表情をしている。十六夜、久遠の二人も同様の様子であきれているようだ。まあその中でも春日部だけは無表情でいるが。

 

 良く状況が読み込めないが、取りあえずは白夜叉が笑い終えるまで待てば答えは出るだろう。

 

 三分くらい待った後、白夜叉が笑い終えたのかこっちを見て言う。

 

「そこのおぬし名前はなんという?」

 

「フッ。俺の名前は佐藤光一だ。よろしく頼む」

 

 ニヒルな笑みを作って返す。

 

「うむ。覚えておこう。おぬしのようなのはなかなかおるまい」

 

 白夜叉はまだ笑い足りない様子だが、取りあえず俺のことを悪くは思っていないと思われる。

 

「で、元魔王様はどうやって俺たちを試すんだ?」

 

 十六夜が待ちきれなくなったのか、いまだに笑いが収まりきっていない白夜叉を催促するようにいう。

 

 白夜叉はあごに手を当てて考え込んでいるようだ。なかなか良い試練が思いつかないのだろう。

 

 そのとき遠くのほうにある山から甲高い声が聞こえてくる。なんかの動物のようだ。

 

 春日部はその謎の声にいち早く反応して、声が聞こえたほうに素早く振り向く。

 

「何、今の鳴き声。初めて聞いた」

 

 春日部が不思議そうに声のしたほうを眺めているると、白夜叉が何かを思いついたように言う。

 

「ふむ…………あやつか。おんしら五人を試すのには打って付けかもしれんの」

 

 白夜叉はそうつぶやいて甲高い声が聞こえてきたほうに手招きする。

 

 すると遠くのほうから何かがやってきた。だんだんと近づいてくる影は、相当な遠くにいるのに、鳥ではないということだけはわかる。羽は確かにあるが、それでも鳥では無いと断言できる。

 

 それは俺たちの近くまでやってくると羽をたたんだ。

 

 そいつは体長五メーターはある巨体で、鷲の上半身と獅子の下半身の生物だった。

 

「グリフォン…………嘘、本物!?」

 

 これまでほとんど感情をあらわにしていなかった春日部がとても驚きながら口を押さえる。

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力”“知恵”“勇気”の全てを備えた、ギフトゲームを代表する獣だ」

 

 白夜叉が胸を張りながら自慢するように言う。

 

 それにしてもまさかグリフォンと会える日が来ると思わなかった。鳥と獣の王か。後は空と大地の生物の王ってことは、後は海の生物も足したら生物の王になるんじゃね?

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしら五人とこのグリフォンで鬼ごっこをしてもらう。そして王の背中にまたがって湖畔を一周できたらクリアだ」

 

「へ? 鬼ごっこ? あのタッチしたら鬼になるやつ?」

 

 俺は白夜叉の言葉にまぬけな声を上げてしまう。鬼ごっこだぜ?

 

 白夜叉は俺に向かってちっちっちと指を振ると俺の考えを引きしめるように説明をしてくれる。

 

「鬼ごっこといっても“力”“知恵”“勇気”の全てを使うようになっておる。おぬし等でも簡単にはクリアできんぞ?」

 

 白夜叉はそういうとパンパンと拍手を打つと虚空からいちまいの羊皮紙が現れる。

 

 

 

『ギフトゲーム名 “王の捕縛”

 

 ・プレイヤー一覧

  ・逆廻 十六夜

  ・久遠 飛鳥

  ・春日部 耀

  ・佐藤 光一

  ・エミヤ シロウ

 

 ・ゲームルール 

  ・右手のひらで触れると捕縛する事が出来る。

  ・一度右手で触れて捕縛した場合、ゲームをリタイアとする。

  ・捕縛後、王の背中に乗り湖畔を一周する事によりゲームクリア。

 

 ・クリア条件

  ・王を捕まえて湖畔を一周する。

  ・敗北条件に引っかからないこと。

 ・敗北条件

  ・王を捕まえられなかったとき。

  ・プレイヤーが全員捕縛できなくなったとき。

  ・降参したとき。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印』

 

 

「私がグリフォンに乗る」

 

 ルール(『契約書類(ギアスロール)』というらしい)を読み終えるやいなやピシ! っと指先まで綺麗に挙手したのは春日部だ。

 

「私はかまわないわ。どうせ落ちてしまうでしょうしね」

 

「俺もかまわない。捕まえるほうが面白そうだ」

 

「私もだ。乗りたいというなら乗ればいい」

 

 久遠、十六夜、エミヤの順に春日部に許可を出す。その次に春日部の視線は俺のほうにも向いてくる。

 

「俺もいいぞ。別に乗りたいとも思ってないしな」

 

 俺も少し考えてみたが、春日部に譲る。特に乗りたい訳ではないからな。乗りたい人が乗ればいい。……それにもうドナられるのは嫌だ。

 

 全員から承諾されると春日部は小さくガッツポーズをしていた。グリフォンに凄い乗ってみたかったのだろう。

 

「おし。じゃあ俺たちはあのグリフォンを捕まえればいいんだろ?」

 

 みんなに問いかける。

 

「らしいな。確か久遠嬢は相手を支配することが出来るのだったな? それで動かないようにしてもらえるかな? その間に十六夜と私が捕まえよう」

 

 エミヤは十六夜と久遠に作戦を伝え始める。俺も穴がないようには思える。

 

「分ったわ。取り逃すことなんて無い様にしなさいよ?」

 

「誰が取り逃がすかよ。ま、お嬢様が捕まえ損ねたとしてもなんとかしてやるよ」

 

 上から目線でツンデレな事を言う久遠に十六夜が突っかかる。

 

 しかしそれ以上発展することなく春日部が言う。

 

「それじゃあ初めでいいのかな? そっちも準備できてる?」

 

 春日部がグリフォンに向かって至って普通に準備ができてるかを聞いている。

 

 するとグリフォンが驚いた様子で春日部を見る。……俺には言葉はわからないがな。

 

 春日部は猫だけじゃなくてグリフォンとも話せるのか。…………使い勝手のよさそうな能力でいいな。

 

 俺の『付け焼刃(イカロスブレイブ)』なんて虚仮脅しにくらいしか使えなかったのになあ。

 

 それを見て白夜叉は驚いていた。

 

 やはりこの幻獣や神獣がたくさん居るらしい、この箱庭では春日部のギフトは使い勝手がいいのだろう。

 

 本当に俺の『付け焼刃(イカロスブレイブ)』はどんだけだったんだよ……。

 

「もう初めてもいいって」

 

 春日部がグリフォンのほうも準備が整っていることを教えてくれる。

 

「そうか。行くぞ!」

 

 春日部の言葉を聞くなり、十六夜が一気にグリフォンの元まで踏み込む。

 

 速すぎるだろう! せめて合図くらいしてから行けよ!

 

 白夜叉もエミヤも感心した様子で見ている。……なぜだ? これが普通なのか?

 

 十六夜の反則にも思えるほどのスタートの速さに対し、グリフォンのほうも幻獣としての意地からか初撃は空を飛んで回避する。

 

 しかし十六夜は羨ましすぎる反射神経で切り替えして空に跳躍し、グリフォンの腹に右手で触れた。

 

 その瞬間にグリフォンの両手両足は縛られて落ちてくる。

 

 捕縛は成功したようだ。

 

 そしてグリフォンが地面に落ちると同時に十六夜は白夜叉や黒ウサギの居るところまで転送されていった。

 

 ルールにのっとってリタイアしたのだろう。

 

「初めまして春日部 耀です。えーっと。ゲームのルールだから貴女の背中に乗せてもらうね?」

 

 春日部は捕まえたグリフォンの元へ行き話しかける。グリフォンと対話しているようでグリフォンの鳴き声も聞こえてくる。

 

 しかし春日部の顔が見る見るうちに青ざめていく。

 

「みんな! まだゲームは終わってないよ! 向こうのほうからもっといっぱいグリフォンが来るって!」

 

「何!? 一匹だけではなかったのか!」

 

 エミヤが苦虫を噛み潰したようにいう。

 

 グリフォンはいっぱいいたという事は王が別に居るという事か!

 

 見れば向かってくるグリフォンの数は二百体は居るだろう。

 

「なら今度はあいつ等の中から王を見つけないと!」

 

「いや、それでは駄目だろう。敗北条件に王を捕まえられなかったときと書いてある。つまり鳥と獣の王であるグリフォンは全て捕まえなければならない。右手で捕まえられるという事はブラフだ!」

 

「という事は右手で捕まえるのではなく自分達のギフトで捕まえなければならないという事かしら?」

 

「おそらくそうだろう。そしてすでにリタイアになった十六夜は参加できない」

 

 エミヤが顔をしかめながら言う。久遠もエミヤの言葉で気付いたようだが、既に状況は悪くなり始めている。

 

 つまり、まとめると。

 

 ルールで指定されている右手で捕まえられるのは一体までで、自分たちの力で捕まえなければならなくて。

 

 なのに敵の数は二百は居て。

 

 春日部はルール上リタイアになったらだめだから捕縛に加われなくて。

 

 絶大な戦力であった十六夜は既にリタイアしている状況で。

 

 その次に身体能力が高いエミヤは朝の時点で魔力がほとんど切れている状態。

 

 満足に運用できる戦力は、久遠と俺のみだ。

 

 既に詰みかけている気もするが何とかするしかない。

 

「捕まえるって事は動けなくすればいいんだろう?」

 

「……おそらくそうだ。何か思いついたのか?」

 

「私達だけでグリフォンを捕まえる方法を?」

 

「……しかも二百匹も?」

 

 エミヤと久遠と春日部が聞いてくる。

 

「ああ、エミヤも久遠も協力してくれ」

 

 それに俺は一切の迷いなく答える。そしてすぐに作戦を伝える。

 

 一応は分ってもらえたようなのですぐにでも準備を始める。

 

 俺達の初ギフトゲームなんだ。

 

 絶対に負けたくない。

 

 ~光一視点終了~

 




光一「はい。今回で舞台裏コーナーの二回目だ! よろしく頼む! 俺、佐藤光一とエミヤことエミヤシロウがこの話の説明不足なところや質問などをやる場所だ! 質問どしどし送ってくれ!」

エミヤ「なんかもうお前二回目にして慣れてないか? 一回目と二回目の間に何があったんだ……」

光一「ああ、なんと俺の出ているドラマCDを作者がようやく手に入れられたらしい!そのおかげで今日更新ということになったらしい!」

エミヤ「ああ、それでか。どこかの馬鹿のテンションが上がり、それにつられてこっちの馬鹿もさらにテンションが上がっていると。納得だ」

光一「ああ、近場には一切なかったのが秋葉原に行ったらあったらしいぞ!」

エミヤ「ふむ。相当中の人が豪華らしいな。……一巻の時点でどれだけ期待されていたんだ」

光一「そりゃあ、最終的には他では類をみないほどの規模で世界を救った英雄だからな!」

エミヤ「……だんだんいらついてくるな」

光一「さあ、褒めろ! もっと俺を褒めるんだ! ふっははあっはははは!」

エミヤ「……すまんな手が滑るようだ」

光一「そげぶっ!」

エミヤ「うるさいのが沈黙したところでここからは宣伝だ。
    RE:バカは世界を救えるか? のドラマCDとライトノベルは好評発売中だ。気になった方はぜひ購入してくれ。私からは以上だ。




……しかしどちらかが黙らないとこのコーナーは終わらないなんていう呪いでもかかっているのか? 今回と言い前回といい。……偶然だといいんだがな」

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