英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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爪痕

 ~エミヤ視点~

 

 黒ウサギのコミュニティに向かうまでの間、もう光一に対する質問はされなかった。

 

 おそらくこの後何度も驚かされる事になるという事を本能的に察知したのだろう。

 

 肩を落としながら歩く黒ウサギにそれを支える十一歳の少年ジン君。

 

 ヤハハと笑いながら黒ウサギをからかう十六夜に、それに便乗して黒ウサギをからかう久遠嬢。

 

 我関せずと黙りながらも、要所要所で口を開く春日部嬢。

 

 歩きながら決め顔の練習をする光一。

 

 そのメンバーに後ろから付いていって思う。

 

 濃い。

 

 キャラが濃い。それも特濃だ。

 

 他人に合わせようとしている奴なんて黒ウサギとジン君くらいしか居ないんじゃないかと思う。

 

 それでも黒ウサギはまだ自分の意見を言えるだけの強さがあるが、ジン君はこの濃いメンバーの中でどう育つのだろう。

 

 少なくとも道端で決め顔の練習をするような男にはならないで欲しいと切実に感じる。

 

 そんな事を思いながら黒ウサギの後を付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 噴水が綺麗に彩る広場を抜けて半刻――つまり約一時間ほど歩くと黒ウサギのコミュニティ“ノーネーム”の居住区画の門前に着いた。

 

 見上げてみると旗掛けみたいな物があり、旗が存在した事を匂わせていた。

 

「この中が我等のコミュニティでございます。生かし本拠の館は入り口から更に歩かねばならないのでご容赦ください。この辺はまだ戦いの名残がありますので…………」

 

「戦いの名残? 噂の魔王って素敵ネーミングの奴との戦いか?」

 

「は、はい」

 

「ちょうどいいわ。箱庭最悪の天災が残した傷跡、見せてもらおうかしら」

 

 十六夜はジン君に聞き返す。

 

 先ほどの話に出た黒ウサギのコミュニティを“ノーネーム”に変えた魔王との戦いの傷跡。

 

 おそらく生半可なものではない。

 

 久遠嬢は怯むことなく言っていたがおそらくその想像を絶するほどの傷跡なのだろう。

 

 私もこの箱庭に来るまで才無き身とはいえ、そこそこ強い自信はあった。

 

 サーヴァントと戦ってもやり方によってはほとんどの者に勝てるだろうし、生涯で一度も戦場を敗走はしたことが無い。

 

 その私に優に追いつくほどの速さで走る事が出来、なおかつまだまだ力を隠していそうな黒ウサギ。

 

 その黒ウサギが入っていたコミュニティが解散の寸前まで追い込まれるような戦いの傷跡だ。

 

 生半可なものではないだろう。

 

 私のその予想は当たっていた。

 

 しかし私自身の想像すら絶する形で(・・・・・・・・・・・・・)

 

 黒ウサギが躊躇いつつも門を開けると、私達の間に乾ききった風が吹きぬける。

 

 吹き荒れる砂埃から顔を隠して、砂埃を回避して目の前の光景を見ると視界には廃墟が広がっていた。

 

 しかし人が住んでいないという意味での廃墟では意味が違う。

 

 十六夜はその光景(・・・・)に目を細めた後、木造の家だったものに近づく。

 

 そしてその残骸を手にする。

 

 その残骸は少し手に力を入れただけで砂のように、乾いた音を立てて崩れていってしまった。

 

「…………おい、黒ウサギ。魔王とのギフトゲームがあったのは――――今から何百年前の話だ?」

 

 そう。

 

 この廃墟は、人が居なくなって数百年もしたかのような風体をようしていたのだ。

 

 美しく整備されていたであろう白い石が敷き詰められた道は、風化して砂になった家の残骸で覆い隠されている。

 

 家だと分るのは主な柱や、土台などの強化に使われていたであろう鉄筋や針金がいたるところから覗いているからだ。

 

 最もその全てが腐食し、自重や支えていた建築物の重さに耐え切れず折れ曲がっているが。

 

 更に木も植えていたのか街路樹まで見える。

 

 しかし、もうすっかり枯れ果てて、真っ白になっていた。

 

「魔王とのギフトゲームがあったのはわずか三年前でございます」

 

 さっきまで明るかった黒ウサギもすっかり沈んだ声音で言う。

 

 しかし、この惨劇がたった三年前に起こされたものだと?

 

 それは何の冗談だ?

 

 どこをどう見たって三年前まで賑わっていた寂れ具合ではない。

 

「ハッ、そりゃ面白いな。いやマジで面白いぞ。この風化しきった町並みが三年前だと?」

 

 十六夜もさっきまでの余裕が無くなっている。

 

 久遠嬢や春日部嬢はもう言葉も出ないのか目を丸くしている。

 

「俺も世界が滅びかけていた姿は何度も見たが、たった三年じゃ、ここまで崩れるはずが無い。五十六億の平行世界でもこんな光景見たことがない!」

 

 光一が取り乱しながら言う。

 

 光一は世界が滅びかける瞬間を何度もみてきたのだろう。

 

 その光一が言うのだから間違いはないのだろう。

 

 かく言う私も三年前の戦いと聞いている筈なのに臨戦態勢を取って止められない。

 

 体中の魔術回路がいつでも起動できる状況になっていて、頭の中は設計図で一杯だ。

 

「ベランダにティーセットがそのまま出ているわ。これじゃまるで、生活していた人間がふっと消えたみたいじゃない」

 

 やっと口を開け利くらいまで落ち着きを取戻せたであろう久遠嬢がそう言う。

 

「…………生き物の気配も全く無い。整備されなくなった人家なのに獣が寄ってこないなんて」

 

 久遠嬢と同じく話せるようになった春日部嬢がそう言う。

 

 最も春日部嬢はただ喋っていなかった可能性も有るには有るが。

 

 しかし二人とも十六夜のように平静を保つだけの余裕が無いようで声が沈んでいる。

 

「…………魔王とのゲームはそれほど未知の戦いだったのでございます。彼等がこの土地を取り上げなかったのは魔王としての力の誇示と、一種の見せしめでしょう。彼等は力を持つ人間が現れると遊び心でゲームを挑み、二度と逆らえないように屈服させます。僅かに残った仲間達もみんな心を折られ…………コミュニティから、箱庭から去っていきました」

 

 力あるものたちが戦うとどうしても周りに被害が出る。

 

 それを魔王は見せしめにしたのだろう。

 

 黒ウサギは表情を無くしながら廃墟の道を進んでいく。

 

 その後を久遠嬢と春日部嬢とジン君が続く。

 

「魔王――――か。ハッいいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか…………!」

 

 十六夜は不敵な笑みを浮かべながらつぶやく。新しいおもちゃを見つけたかのようだ。

 

 私も……いやオレもこの箱庭でやる事が出来た。

 

 このやる事を光一に話せば協力してくれるだろう。もしかしたら黒ウサギや、他のコミュニティのメンバーが聞いたら反対するかも知れないがその時はその時だ。

 

 ただの余生を過ごす場所としてやって来たつもりだったがそうも言ってられん。

 

 凜と約束した事を果たすにもいい機会だ。

 

『魔王の根絶』

 

 それがオレの今心に決めた新しい目標だ。

 

 正義の味方を諦めるつもりは毛頭ない。

 

 ならばどちらもこなすだけだ。

 

 いろいろなものにチャンスを貰ってここに立っている。

 

 だとするならば今度はオレはそのチャンスを掴み取ろう!

 

 

 〜エミヤ視点終了〜




 エミヤさんの箱庭での目的が決定しました!

 まあ、いろいろいじくってやるつもりでもあるんですけどね!

 まあ、そんなことは置いといてアニメ開始おめでとうございます!

 もう来週も楽しみでヤヴァイです!

 これはもうクラス中に布教する必要がありますね!

 あ、それとギフトゲームのネタがあれば送ってもらえるとうれしいです。

 ネタが詰まったとき等に使わしてもらうので!

 まあ、まだ一度もギフトゲームしてない気もしますが……
 
 二次ファン時代には一度だけやれたんですがその時も読者様の意見で決まっていたりもしますしね!

 そんな感じでネタお願いします!

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