英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『宗教革命~狼煙~』

「……………それで、結局誰が教会を掌握したんだ? 」

 

あの後、子供達は運良く帰って来たティオに任せて 部屋を一室開けてもらった

 

……まぁその前に一発しばかれたが

 

ただ、今回の件………あまりにも手際が良すぎる。こ の面子が一日経たずに追い込まれるとは……

 

「あれ?ケイジは初めからこうなるってわかってた んじゃ無いの?」

 

「いや、計画通りに進んでたなら俺達がここに来る ことはなかった

 

…反乱分子を炙り出して、それを押さえた後の上位 の腐った司祭階級の処断が目的だったからな」

 

俺がそう言うと皆が総長の方を向き、総長は黙って 頷く

 

「……で、もう一度聞くが…今回の首謀者は誰だ?」

 

「それは………」

 

「正直私達にもわからないのよ」

 

リーシャとティアが困ったように言う

 

「俺らもや。むしろ今でさえまだ状況がようわかっ とらんしな」

 

「……任務から帰って来たら総長達が追われていて 、味方したら異端者だって…」

 

「ワジ達はどうなんだ?」

 

「僕たちにもさっぱりさ。偶々アッバスが報告に行 くのに着いてきたらいきなり攻撃されたからね」

 

「恐らく、俺が総長派だと知っていての事だろう。 俺の姿を見るなり襲って来たからな」

 

「手掛かり無しかよ………」

 

いきなり手詰まりじゃねぇか

 

そうして、暫く沈黙が続いたが……

 

「……………その事は私から説明しよう」

 

今まで黙っていた総長が突然立ち上がり、その沈黙 を破った

 

「まず、事が動いたのは一ヶ月前。ちょうどケイジ の殉職の噂が流れていた時だ」

 

なんつー縁起でもない噂が…まぁ仕方ないって言え ば仕方ないんだけど

 

「教会にいきなり多額の寄付金が飛び込んで来たん だ。それこそ一生遊んで暮らせるほどの金額の寄付 金が」

 

「誰がそんなお金を?」

 

「まぁそう慌てるなシャル。 ………当然、あの守銭奴のバカ共は飛び付いた。中に は直接面会して更に金を巻き上げようとした奴まで いたようだ」

 

「……腐っているな」

 

レーヴェが心底嫌そうな顔でそう呟く

 

「……今さらだろ。侵される事の無い権力はいつか 必ず地に堕ちる。その堕ちきったタイミングが偶々 俺らの代だったってだけだろ」

 

「盛者必衰、か」

 

「そういう事だな………話を続けるぞ。

 

その数日後辺りから、騎士団…いや、封聖省の空気 が変わった

 

あのバカ共が何やら裏でコソコソし始めたんだ」

 

マジかよ……あの飲み物すら自分で食堂に取りに行 かずに部下に取りに行かせるようなあいつらがか… ……

 

「ああ……その時はバカ共が金策に走っていると思 って放っておいたんだが…襲撃された日にとんでも ない情報が手に入った。上位司祭の買収、従わない 有力な騎士や司教への強制服従の暗示や洗脳、そし て……守護騎士の暗殺」

 

『!?』

 

守護騎士暗殺!?何の武力も持たない奴らがどうや って!?

 

「…………殺されたのは?」

 

ワジが恐る恐る聞く

 

「六位と十二位。十二位は任務中に猟兵団『西風の 旅団』の強襲を受けて。六位は先日の反乱の時に混 乱に乗じてだ」

 

「………それにしても、流石にあのバカ共がそんな面 倒くさい罠を考えるとは思えないんだが…」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

「そうだろうなって…」

 

「まぁ落ち着けケイジ。あらかた原因はわかってる 」

 

原因?

 

「これは多分ケイジ以外は知ってるだろうが……ち ょうどバカ共の行動が始まった時に法王が配流され た

 

そして…新たな法王…………今は聖王か。そいつが今 回の件の首謀者だ」

 

なっ……!

 

「法王が………敵…」

 

「要するに敵はアルテリア法国そのものや言う訳か ………」

 

「流石に今回はヤバイね………国一国が相手とかいく ら僕達でも………」

 

急に静まり返る皆。

 

…国が相手、なぁ

 

「…………だから、なんだ?」

 

『!!』

 

「まぁ確かに実力はこっちが上でも数では圧倒的に 負けてるな。けどあっち側には守護騎士がいないん だろ?」

 

「確かにそうですけど…」

 

「それに話を聞く限り、聖王とやらに本心から付い てるのは腐った上位司祭だけなんだろ?だったら騎 士は暗示さえ解いちまえば味方になるだろうが」

 

幸いこっちには守護騎士四人+αに正騎士一人、従 騎士三人がいる。洗脳を解くくらいわけない

 

「それに…あのサボり魔の総長がこんだけ頑張った んだ。何か策も考えてあるんだろ?」

 

「フフ……流石に鋭いな。勿論あるさ。取って置き がな」

 

ほれみろ

 

そして、総長が俺の言葉を引き継ぐ

 

「国が相手?上等じゃないか。だったら国ごと全て ひっくり返してやればいい

 

…………さぁ、『宗教革命(ジハード)』の始まりだ」

 

そう言い残して、総長はニヤリと笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

「………………………」

 

「ん?ティオ?何かあったのか?」

 

「…………………って」

 

「ん?」

 

「やっと出れたと思ったら放置とは…………死んだフ リをしていた時といい、良い度胸ですねお兄ちゃん 」

 

「いや、出番無いのは俺のせいじゃ…」

 

「問答無用です」

 

「もがっ!?………………………………………………………………… ……………………………」

 

「………お兄ちゃん?」

 

「…………」

 

バタッ

 

「………流石はヨナが作ったチョコレート……ほぼレ シピ通りに作らせたはずなのにお兄ちゃんを昏倒さ せる程の攻撃料理以上の効果を発揮するとは…」

 

「…………」

 

「……………お兄ちゃん?」

 

「………」

 

「…………息を…していません…!」

 

『救急車ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

この日、顔すら出てきていないヨナ少年が総長派の 面々に危険人物認定されたとか…


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