英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『銀の軌跡』

「そ……そんな…“輝く環”が……き、消えてしまった だと……

 

馬鹿な……そんな馬鹿なああああっ!!」

 

そう叫んで、ワイスマンは杖を掲げて姿を眩ました

 

「逃げたか……!」

 

「あんな奴どうだっていいわよ!それよりも……! 」

 

「レーヴェ!!」

 

ワイスマンが逃げてすぐにヨシュア達がレーヴェの ところに駆け寄っていく

 

「レーヴェ!しっかりして!」

 

「……ヨシュアか…」

 

「レーヴェ…!意識があったんだね!今すぐに手当 てを……!」

 

「いや、その必要はない」

 

そう言うとしっかりと自分の足で立ち上がるレーヴ ェ

 

「レ、レーヴェ!?大丈夫なの!?」

 

「ああ」

 

「いやはや驚いた……あんな攻撃をモロに受けてピ ンピンしているとはな」

 

「ケイジが何かしたのかしら?」

 

「でもシェラ姉、ケイジって『譜術』が使える代わ りにアーツが使えないって言ってたよ」

 

「別に平気だった訳ではないのだがな……

 

実の所俺自身何が起きたのかよくわかっていないん だ。致命傷を受けたと思って最期のつもりでケイジ と話していたはずなのだが……」

 

どうやらレーヴェはケイジの台詞を最期の直前の質 問だと思っていたようだ

 

「……良かった…レーヴェが無事で……」

 

ヨシュアがへなへなとその場に崩れ落ちる。どうや ら安心した反動で力が抜けたらしい

 

「フッ……成長したかと思ったが、やはりまだまだ 子供だな」

 

「余計なお世話だよ……それにその子供に負けたの は誰だっけ?」

 

「む………」

 

和やかな空気がその場に流れるが、不意にヨシュア が

 

「…ねぇレーヴェ。これからどうするの?」

 

「そうだな…」

 

「え?レーヴェはヨシュアと一緒にいるんじゃない の?」

 

「初めは僕もそう思っていたんだけどね……事ここ に至って問題があるのに気付いたんだよ」

 

そう聞いてもエステルは?を頭上に大量に出現させ る

 

「……俺は表に出過ぎた。情報部の件に古龍の件、 それに今回の騒動……如何にリベールが寛容な国だ とは言えお咎め無しとはいかないだろうな」

 

「そんな……」

 

レーヴェの過去を知ったこともあって、エステルは 悲痛な表情を浮かべるが、対照的にレーヴェは微笑 すら浮かべていた

 

「気にするなエステル・ブライト。遅かれ早かれ俺 は目的が成ったら罪を償うつもりだった。それが少 しばかり早くなっただけだ」

 

「でも…」

 

「それに俺はすぐに捕まるつもりは無い。その前に ケイジに恩を返し、今までの俺が関わった人や殺め た人に謝罪をする必要があるからな

 

だから俺は一先ずケイジの所に厄介になるさ。リー シャ・マオのように協力者と言う形で恩を返しなが ら謝罪をしていくために」

 

レーヴェの言葉に少ししんみりする皆だったが、エ ステルが大切なことに気付いた

 

「………そう言えばケイジはどこに行ったの?」

 

『………………あ」

 

ーーーーーーーー

 

~同時刻・中枢塔(アクシスピラー)某所~

 

「馬鹿な……そんな馬鹿な……こんな事態……『盟主』 の予言には無かった……」

 

傷を押さえながら通路をさまよい歩くワイスマン

 

その顔はひたすら憎々し気に歪んでいた

 

「……ま、待てよ………た、試されていたのは……私も 同じだったと言うことか…… くっ…戻ったら問い質さなくては……」

 

「悪いけど、それは無理やね」

 

「!」

 

通路の反対側からケビンがゆっくりと姿を現す

 

「ケビン・グラハム……いつの間にこんなところに… …」

 

「ケビンだけじゃねぇさ」

 

ケビンとはまた反対側からケイジが現れる

 

……謀らずして騎士二人に挟まれる形となったワイ スマンだが、余裕は崩さなかった

 

「フン……教会の騎士風情がぞろぞろと……そこを退 け。貴様らのような雑魚に関わっている場合ではな い……」

 

そして魔眼を発動させるワイスマンだったが、ケビ ンは聖杯の紋章を掲げて防ぎ、ケイジに関してはそ もそも魔眼を向けてすらいなかった

 

「……なっ!?いくら騎士団とは言え新米騎士に魔 眼を防げる訳が……」

 

「……貴様の握っている情報が全てだとは限らない ぞ?」

 

「あ~、スマン。ちょいと三味線弾いてたわ。俺は 騎士団の第五位。それなりに修羅場は潜っとる」

 

……実際は『外法狩り』の渾名の通り、それなり何 てものではないのだが

 

「ぐっ………第二位(ケイジ)は囮だったと言う訳か……!」

 

「ま、それでも本調子のあんたに勝つのは難しかっ たけど……」

 

「今の満身創痍の貴様になら付け入る隙がいくらで もあるからな」

 

「……なに……」

 

ワイスマンが何かを言う前に、瞬時にケビンがボウ ガンを構え、矢を放つ

 

それはワイスマンの右足を貫き、ワイスマンに片膝 を付かせた

 

「くっ…」

 

「……俺らの本当の任務は“輝く環”の調査やない」

 

「元封聖省の一員にして、現“結社”の『使徒《アンギス》』…最 悪の破戒僧、ゲオルグ・ワイスマン……貴様の始末 だ」

 

冷たい目でワイスマンを見据えるケイジとケビン

 

しかしワイスマンは尚も余裕を崩さない

 

「クク……なるほど、そう言うことか……だがこの程 度の攻撃でこの『白面』を滅するなど……」

 

パキキキキ……

 

「!……な、なんだ…」

 

突然ワイスマンが崩れ落ち、更にワイスマンの身体 が白い結晶に変わっていく

 

「し、『塩の杭』……かつてノーザンブリア北部を 塩の海に変えた禁断の呪具……私一人を始末するた めにこんなものまで持ち出したのか!!」

 

ワイスマンは何か『塩の杭』に思い入れがあったら しく、心の底から忌々しそうに叫んでいた

 

「……そいつは上の都合だから知らねぇが…貴様はや り過ぎた。いくら教会が中立でも見過ごせなくなる くらいに、な」

 

「まぁそう言うことや。…大人しく滅びとき」

 

「おのれっ………狗があああッ!!!」

 

その叫びを最後に、ワイスマンは完全に塩と化した

 

「……狗、か。確かにその通りだな…」

 

「……あんまり気にし過ぎたらあかんで?総長の準 備が終わったら全部変えられんねんから」

 

「……そうだな」

 

「ほら行くで。エステルちゃんとか姫殿下とかが待 っとんねんから」

 

「………そうだな」

 

ケイジは、通路の奥を横目で一瞥すると、ケビンを 追いかけて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………あらら、気付かれちゃったかな?

 

まぁいいか。今回の僕は見届け役。何が起きても全 てをそっくりそのまま『盟主』にお伝えするのが僕 の任務だしね」

 

ーーーーーーーー

 

「急げ!予想以上に崩壊が早いぞ!!」

 

リクを先頭に、全員がアルセイユが停まっている『 公園区画』に向かって走る

 

……空賊達の船は中枢塔(アクシスピラー)の近くに停めてあったらし く、途中で別れた。多分今頃離陸準備にかかってい るだろう

 

俺は最後尾で走っている……というより走っている 内に最後尾になってしまった

 

……正直、着いていくので精一杯だ……!こんなとこ ろで宮比神(アメノウズメ)の影響が来るとはな…

 

「くっ…」

 

「ヨシュア!?」

 

突然ヨシュアが足を止める

 

それにエステルが反応し、すぐに駆け寄るが…

 

「先に行けエステル!ヨシュアは俺に任せろ!」

 

「でも…!」

 

「いいから行け!!」

 

少し強い口調で言うと、渋々先に行く

 

そして俺はヨシュアに声を掛けた

 

「…立ちくらみか?」

 

「うん……」

 

チッ……こんな時に“聖痕”が消滅した影響が……

 

「でも大丈夫…走れるから……!!」

 

「…なら、早く行くぞ。もうかなり先頭から離され てる」

 

ヨシュアの目から無理はしていないと判断し、俺達 は再び走り始めた

 

「ケイジ!早く!」

 

少し先で、クローゼが自分が危ないにも関わらず、 俺達を待っていた

 

…そして、後少しでクローゼと合流する。その時だ った

 

「…!!ヨシュア!!」

 

「え…?うわっ!?」

 

思いっきりヨシュアをクローゼがいる方へ投げ飛ば す

 

その直後に俺が今いる柱とクローゼとヨシュアがい る柱を繋ぐ道が崩れ落ちた

 

「ケイジ!?大丈夫!?」

 

「ああ、大丈夫だ!早く先に行け!」

 

「ケイジはどうするの!?」

 

「…確か少し手前に行きではロックされてた非常用 の通路があった!俺はそっちから回る!!」

 

「………絶対……絶対に戻って!」

 

「……わかってる!」

 

「待ってるから……『アルセイユ』で!!」

 

そう言って、クローゼはヨシュアと先へ走って行っ た

 

そして俺はクローゼ達が行ったのを見届けると、深 く息を吐いてその場に座り込む

 

……本当は全部嘘だ。ロックが解除された通路を見 つけたと言うのも………後で追い付くと言うのも

 

実際はもう走るどころか立ち上がる余力すら残って いない…クローゼとヨシュアの前では気力で何とか 立てていたが

 

「……フッ、ろくでもない死に方をするとは思って たが…まさか10代で死ぬとは思わなかったな…」

 

そして俺は、柱が崩れるのと共に、空に身体を預け た

 

ーーーーーーーーーー

 

「離してユリアさん!」

 

「駄目です殿下!!」

 

「…アルセイユ、離陸(テイクオフ)

 

「!?」

 

「ミュラー!もう少し待てないのかい!?」

 

「……これ以上は……」

 

「お願いします!!もう少し、もう少しだけ!!」

 

「殿下……わかって下さい………私達とて一人でも多 くの人を無事に地上に送り届ける義務があるのです ………!」

 

「……………」

 

「……アルセイユ、離陸(テイクオフ)

 

『………………イエス・マム…』

 

「約束……したのに…………アルセイユで会おうって… ……約束、したのに………………」

 

「………クローゼ」

 

「いや………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! !」

 

そして、その後ケイジがクローゼ達の前に姿を現す ことは………無かった

 

Next to the 3rd…


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