英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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閑話『異世界リリカル滞在記』ろくっ!

「………ケイジ…」

 

「殺したって……」

 

「…………」

 

三人がそれぞれケイジの発言について考え込む

 

……あの後、ケイジはすぐに部屋を出て行ってしま ったので、追求すら出来なかった

 

「………」

 

「……それで、あなた達はどうするんですか?」

 

「「「!!」」」

 

不意に、近くから声が聞こえて、その方向を見ると 、リーシャが立っていた

 

「リーシャ…」

 

「…あなた達は今ケイジさんが人を殺している事を 知りました …その事を踏まえて聞きます。あなた達はこれから 私達をどうするつもりですか?」

 

「「「…………」」」

 

三人は何も答えない

 

当然と言えば当然か。今まで笑っていた相手がいき なり犯罪者…しかも殺人犯だと言われて冷静になれ るはずはない

 

「殺人は……悪い事なんだよ…?」

 

それでも、辛うじてなのはがリーシャにそう言う

 

だが、リーシャは全く動じる事なく

 

「知ってますよ?…ですけど、殺人が必ずしも悪だ なんて誰が決めたんですか?」

 

「!?」

 

そう、言い切った

 

「「………」」

 

「…そうですね、たとえ話をします

 

ある所に、身よりの無い子供を沢山保護してる人達 がいました しかしその保護と言うのは見かけだけ。中身は子供 達を奴隷のように扱う非道な団体でした 毎日の食事はパン一切れだけ。動けなくなれば路地 裏に捨てられる ……この時点で、悪は団体ですか?子供達ですか? 」

 

「団体に決まってるよ!」

 

フェイトがそう答えると、残りの二人も頷く

 

「そうですね。では……その奴隷のように扱われて いた子供達が、反乱を起こして、団体を皆殺しにし ました

 

………さて、悪いのはどっちですか?」

 

「「「………」」」

 

「あなた達の言う『殺人は悪』で言うなら悪いのは 子供達でしょうね ……あなた達は、遠回しに子供達に大人しく死ねっ て言っているんですよ」

 

三人は、リーシャの言葉に黙り込む…いや、黙り込 む事しか出来なかった

 

「他にもありますよ?少し宗教的になりますけど… とある所に、残虐神崇拝の宗教団体がありました。 その団体は子供達を次々と誘拐し、生贄と称して非 道な人体実験を行っていました …それを知ったある人が、その団体に乗り込み、団 体を一人残らず殺しました」

 

「「「……ッ!!」」」

 

「その時、その人が見つけた子供達は30人。その 内29人は人体実験の結果、普通の生活はおろか、 人として暮らす事すら出来ないくらいの異形に変わ り果ててしまっていました…救う手だてなど無く、 そこでどうにかしなければ一般人も危ない…その人 は29人の被害者の子供達を殺しました

 

……さて、その人は悪ですか?」なのは達は、やは り何も答えない。答えられない

 

…今まで、三人はそこまで究極論に出会った事が無 かった

 

いつだって、悪者は誰だとはっきりしていた

 

唯一例外と言えるのは闇の書事件くらいだろう

 

「…因みに、前半のは作り話ですが……後半は事実で す。ケイジさんの…」

 

「「「!!」」」

 

「まぁ話を聞いていただけですけど…ついでに言う と残りの一人は今ケイジさんの部下です

 

それに…私も元暗殺者ですし」

 

次々と発覚するハードな事実に、三人は少し唖然と なってしまっている

 

「…あなた達が私達を悪と言うなら別にそれでいい です……ただ、その時はケイジさんがどうであろう と、私は…一切容赦しません」

 

「「「……!?」」」

 

三人はリーシャが出す異様な威圧感に思わず後ずさ る

 

…殺した事がある者と、無い者…本気の命のやり取 りを最前線で繰り返して来たリーシャの殺気に、犯 罪者相手とはいえ非殺傷と言うシステムの中で自分 の手を汚す事なく生きてきた三人が耐えられる道理 は無かった

 

「…とにかく、言う事は言いました。後はあなた達 で決めて下さい

 

……フェイトさん。ケイジさんに少しでも疑問を抱 いたなら……

 

早めに諦めた方がいいですよ?」

 

「!!」

 

フェイトは、その言葉に過剰に反応する

 

「(私、は………)」

 

「(殺す事が全部悪い訳やない…か……)」

 

「(…………難しいの…私達は…)」

 

そして、リーシャもまた部屋を出て行き、その部屋 は静寂に包まれた

 

――――――

 

「………」

 

「ケイジさん」

 

「…リーシャか。お前余計な事はしてないだろうな ?」

 

「…してませんよ?………あんまり」

 

「………はぁ… まぁいい。こんな所にクライフが来ているのは恐ら くは俺のミスだ。奴を滅しきれなかった俺のな

 

……だからこそ、今此処で奴を滅する。今度こそ、 魂諸共跡形もなく」

 

「………」

 

「…お前はアイツ等についとけ。奴相手なら俺一人 の方がやりやすい」

 

「わかりました…気をつけて下さい」

 

「わかってる」

 

そう言うと、ケイジはスペルビアの大地に降り立ち 、そのまま姿を消した

 

 


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