「怨…敵……?」
黙って頷くケイジ。自然とその場の空気も重くなっ ていく
「怨敵とまで言われるとは思わなかったぜ…」
大袈裟に頭を振ってみせるリーヴ
「…アンタにはいくら返しても返しきれないほどの 大恩があるよ。けどなぁ…
それ以上にアンタに対する怒りの方がでかいんだよ !!」
一喝し、瞬時に片目を万華鏡写輪眼に変化させる
また、リーシャは今まで見たことがないほどのケイ ジの怒気に唖然としていた
「へぇ…あれから少しは成長したみたいだな」
「…やっぱり学園で襲ってきたのはリーヴ…アンタ だったか」
「御名答♪まぁ正確には俺の
「通りで気配が薄かった訳だ…」
吐き捨てるように言うケイジ
対してリーヴはケイジの
「やだなぁそんなピリピリしちゃって~。そんなに 俺ばかり見てると…
死んじゃうぞ?」
「「!?」」
前方にいたはずのリーヴの声が背後から聞こえる
そしてケイジが振り向いた瞬間…
ドスッ
ケイジの腹にナイフが突き刺さった
「ケ……ケイジさん!!」
「ぐっ…」
「…ほら、致命傷喰らっちゃった♪」
やたらニコニコしながらそう言うリーヴ
しかし…
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ…」
「!」
「サンダーブレード!」
譜で形どられた雷の剣がこれまた背後からリーヴを 貫く
そしてケイジがリーシャの頭に手を置いた状態で姿 を現した
「大丈夫だ…心配すんな」
「…はい!」
「やっぱり成長してんのなぁ…オッサン年の差感じ るぜ…」
「!」
「…やっぱりアレも氷人形だったか」
気付けばリーヴは再び初めにいた位置に戻っていた
そして先程ケイジにナイフを刺して、サンダーブレ ードで貫かれたリーヴは氷に戻って溶けていた
「年の差発言は無視かよ…姉さん、弟子の反抗期だ よ…あ、俺姉さんいねぇや」
「何でこの空気でボケられるんですか!?……あ゛ 」
不意のリーヴのボケについつい反応してしまうリー シャ
「嬢ちゃん…」
「リーシャお前……なんか…ごめんな?」
「そんな憐れみの目で見ないで下さい!?」
二人から憐れみの視線を向けられて半泣きになるリ ーシャ。まさかツッコミが反射レベルまでなってい たとは…
「…兎に角、お前も“理”に至ったみたいだな」
「“理”になんか至ってねぇよ…ただ俺が闘う理由を …あの時誓った信念を思い出しただけだ」
そういうケイジを見てリーヴは薄く笑みを浮かべる
その笑みは、敵対している者とは思えないほど慈愛 に充ちていた
「それでいい…そうあることでお前はどんどん強く なる」
「………」
ケイジの返事は、幻術を用いた背後からの斬撃だっ た
「だが惜しいな…背後からばかりだとわかりやすい んだよ!」
「ハッ…言ってろ。“もう一度”女神行きにしてやる よ…!」
刀とナイフが、交差した
――――――
「(…私、夢でも見ているの…?)」
リーシャは、未だに一歩も動けずにいた
何故なら…
「「――!!」」
ガギィ!
「チッ…また氷人形か…」
「そういうお前も幻覚じゃねぇか…どうやって実体 化させてんだよ。それにお前目開かないんじゃなか ったっけ?」
「敵に手の内を見せるバカはいないんだろ?」
「…ま、それもそうだ」
単純に、二人の戦いのレベルが異常だったのだ
実体かと思えば幻覚(氷人形)。幻覚(氷人形)か と思えば実体。
また、様々なダミーを用いながら時折致命傷になる 一撃を放ち、防ぐ
「(まるで…御伽噺の戦いみたい…)」
リーシャは、幻想的な戦いに魅せられていた
――――――
…打ち合いが始まって以来、どうやったのかは知ら ないがケイジの左目が開いている
「……チッ」
「…?はっは~ん、さてはお前…左目を開けてられ る時間に制限があるな?」
「………」
リーヴの言った事はケイジにとって図星であった
イザナギを使って“左目が開く”と言う幻覚を現実に 変えている事で左目を使っているのだが…いかんせ んイザナギは禁術と言われるだけあってダメージが 大きかった
現に徐々にケイジの左目の視界はぼやけてきていた
「大丈夫か?そんなんじゃ俺には勝てねーぞ、と! 」
そしてそれを見抜いたリーヴがここぞとばかりに攻 勢にでる
「………!」
「ほらほらホラホラァ!守ってばっかじゃ勝てねー ぞ!」
そしてリーヴは一旦距離をとったかと思うと、氷人 形を使い、前後左右からナイフを無数に投げてきた
「(――避けられない!)」
「(さて…何もできなきゃ本当に死んじまうぞ?) 」
ケイジに無数の刃が襲いかかり、その衝撃で土煙が 舞う
「ッ!……!?」
「動くなよお嬢ちゃん?動いたら首から上が体とオ サラバだぜ?」
何時の間にかリーヴの氷人形がリーシャの後ろにい て、リーシャにナイフを突きつけていた
リーシャは涙目ながらにリーヴを睨むが…
「嬢ちゃんに殺気飛ばすのはまだ早いなぁ…痒い痒 い」
リーヴは全く気にしておらず、逆に挑発される始末 であった
「…まぁ、この程度で死んだんなら奴も「勝手に殺 すな」…!」
リーヴが再びケイジのいた方に視線を向けると、そ こには骸骨のようなものに覆われているケイジがい た
「…なんだそれは」
「…『須佐能乎』」
ケイジが手を動かす動作に連動して、骸骨が動く
「お前本当に何個能力持ってんだよ…!」
「さぁな…どうでもいいが時間がねぇんだ…速攻で 終わらせてやる…!」
ニヤリと笑って余裕の表情を見せるケイジだったが 、内心はかなり焦っていた
「(イザナギをかけてる分、須佐能乎でどんなフィ ードバックがくるかわからねぇ…感覚的に持ってあ と五分…!)」
戦いは、まだ終わらない