英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『三度めの正直』

~星杯騎士団所属、特務飛行艇メルカバ弐号機~

 

「………」

 

「…何か静かなケイジさんって…違和感ありますね… 」

 

「どういう意味だコラ」

 

普段から俺は冷静沈着なクールボーイだ

 

「リーシャ、気を抜かないで。ただでさえ人手不足 なのにさらにシャルもいないのよ?」

 

「あ、すみません」

 

「ティア?普通ここは俺をフォローするところじゃ ね?」

 

「ケイジも余所見しない。三人でメルカバを動かす のも無理があるのに…これ以上人手が減ると…」

 

「「減ると?」」

 

「ガチで墜ちるわよ」

 

「リーシャ、絶対気ィ抜くなよ!」

 

「了解です!」

 

一瞬にして真面目になる俺達。当たり前だろ!命か かってんだよこっちはよォ!

 

「全く…貴方がこんな時にリベール強行を決めたん でしょ?ならきっちり働きなさい!」

 

「アイ・マム!」

 

…最近、割と切実に上下関係をきっちりしようか悩 んでんだ…

 

俺達が何故ずっと使ってなかったメルカバを使って までリベールに向かってるのか、説明すると長くな るが…

 

――――――

 

案の定退屈な書類まみれの療養生活。俺はいつもの ように…

 

「はい、革命」

 

「うにゃああ!!」 「ちょっと待てケイジ!お前ここでそれは無いだろ !」

 

リーシャと総長と大富豪をして過ごしていた

 

「いや仕事しろォォォォォ!!ていうか総長まで何 やってんですかァァァ!!」

 

「総長…私に押し付けて遊ぶなんて許さない…!」

 

「「げっ、ティア(リース)!」」

 

そして大富豪を始めてから一時間、ティアがリース を引き連れて部屋に踏み込んで来た

 

「ほら!早く戻るわよ!ただでさえこんな時くらい しか仕事しないんだから…」

 

「書類仕事嫌いなんだから仕方ないだろ」

 

「……何か文句が?」

 

「ナンデモナイデス」

 

…何でだろ。あれから一向にティアに勝てる気がし ない

 

「ほら総長。早く戻って下さい。みんな困ってます 」

 

「後二時間!後二時間だけ!な!?」

 

「ダメです」

 

…総長、あんた一応リースの師匠だよな?それでい いのか?

 

…今の俺が言うのもなんだけど

 

「…こう見ると星杯騎士団ってこれでいいのか?っ てなりますね」

 

「「お願いだから言わないで…頭痛くなるから」」

 

ティアとリースが同時に溜め息をつく

 

…ストレスか?

 

「原因は多分ケイジさん達ですけど…」

 

「リーシャ、心を読むな」

 

「口が動いてました」

 

…声に出さなかっただけ頑張ったんだと思ってくれ

 

「さぁ、ケイジ、総長。早く仕事に戻って下さい」

 

「はっ!そんな脅しに屈すると思うなよ!」

 

「そうだ!私達は仕事から逃れて自由な日々を掴み 取るんだ!」

 

「(このニート共が…!)」 「そんな駄目人間宣言はいらない。早く行きますよ 」

 

俺達の必死の抵抗虚しく、ゆっくりと連行されて行 く

 

しかしちょうどその時…

 

PPPPP!

 

「導力通信…?」

 

「番号は?」

 

「………?どこにも所属してない番号ですよ?」

 

リーシャが不思議そうにみんなに告げる

 

「…多分大丈夫だろ。ティア」

 

「わかってるわ…もしもし?」

 

ティアが俺を解放して通信に出る

 

番号がわからないって事は…多分オリビエだろうが 、油断は出来ない

 

もしオリビエ以外の奴で敵対戦力の通信だった場合 、俺が二位と言う事が露呈してしまう

 

…今までなんやかんやで記憶いじったりして俺が二 位ってのはあまり知られないようにしてたからな…

 

『もしもしティア?』

 

しかし、警戒してたのとは裏腹に、聞こえてきたの は金髪天然娘の声だった

 

「シャル!?」

 

『うん!久しぶりだね!…色々話したいけど今は置 いとくね。ケイジにどうしても聞いておきたい事が あって…』

 

そして本当に今更だが騎士団の通信設備は基本的に 今で言うスピーカーフォンだ

 

そのため会話は部屋にいる全員に筒抜けだったりす る

 

「…俺に何を聞きたいんだ?」

 

『あっ!ケイジ!久しぶり~!何で本部に帰ってる のさ~!』

 

通信を変わってそうそう文句を言われる俺

 

「いや、俺大人しくアルテリアで待ってろって言っ てただろ?」

 

『そんなの知らないもん!』

 

理不尽だ

 

「まぁそれは置いといて…」

 

『置いとくな~!』

 

「聞きたい事って何だ?」

 

『あ、そうだ!すっかり忘れてたや…』

 

忘れてたのかよ…

 

『…ねぇ、前にケイジが話してくれた人の名前って“ リーヴ”だったよね?』

 

「…ああ、そうだが」

 

『…あの、ね?今日結社の人間と接触したんだ』

 

「?それがどうした?」

 

定期報告で既に三人の執行者と闘ったのは聞いてい る。今更結社の人間と接触したって聞いてもな…

 

『うん…その人の名前が…“リーヴ”だったんだよ』

 

「「!!?」」

 

「け、ケイジさん!?」

 

「…総長?」

 

「シャル!そいつのファミリーネームは!?」

 

『え!?いや…“ただのリーヴだ”って言ってたけど …』

 

チッ…わざと名前以外を明かさなかったな…!

 

「総長!」

 

「駄目だ」

 

「!」

 

俺はすぐにでもリベールに行こうとするが、総長が ダメ出しをする

 

…くっ、総長の許可無しに“アレ”の使用は出来ない …かといって今からクロスベルに行って飛行艇に乗 り換えたんじゃ時間がかかりすぎる!!

 

「頼む総長!」

 

「…駄目だ」

 

「何で!?」

 

「…もしそいつが本当に奴だった場合、今のお前が 勝てるのか?片目が開かないお前が」

 

「………」

 

一気に何も言えなくなる俺

 

「そんな状況のお前を総長として送り出す訳には行 かない…気持ちは痛いほどわかるがな」

 

「………っ!」

 

それでも…俺は…

 

俺は…!

 

「…だが、お前に勝ち目があるなら別だ」

 

「…!」

 

「冷静に、客観的に自分を評価しろ …守護騎士第二位、ケイジ・ルーンヴァルト。お前 は仮に今奴を相手にしたとして勝てる見込み…いや 、確信はあるか?」

 

…さて、チャンスは得たんだ。落ち着いて整理しよ う

 

…今の俺は片目が使えない。そして図らずも天照も 使えない

 

譜術や剣術はいつも通りに使える。聖痕も問題ない

 

問題は如何にして左目をカバーするかだが…

 

……カバー?

 

「…行ける」

 

「本当にか?」

 

「ああ」

 

むしろこんな簡単な事に気づかなかったのが不思議 だ

 

…俺が何で片目の視力を失ったのかを考えればすぐ にわかっただろうに

 

「そうか…なら私が言う事は何もない。思う存分に ケリを付けて来い!」

 

了解(ヤー)!!」

 

そして俺はリーシャとティアを連れて部屋を出た

 

…ただ、総長。リースに首根っこ掴まれながら良い こと言われても…

 

――――――

 

ってなわけで、今俺達はメルカバを使ってリベール へ向かっている

 

「ロレントが見えました!…霧がすごい濃いですけ ど」

 

「センサーを使って人気の無い場所を洗い出せ!そ こに降りるぞ!」

 

「…出たわ。最寄りの場所で…マルガ山道の僻地…翡 翠の塔の近くよ!」

 

「じゃあそこに着陸するぞ!リーシャ!準備してお け!」

 

「わかりました!」

 

「…また私サポートなのね」

 

…今度どっかに遊びに連れていくんでそれまでスト レス解消は我慢しといて下さい

 

そうして、この短期間で三回目のリベールに降り立 つ俺だった


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