英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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『騎士と凶手』

「(“銀”…もし噂が本当なら… ちょっと張ってみるか)」

 

俺はバーを出た後、これからどうするかを考えなが ら歩いていた

 

「(つーか張るにしても何するにしてもティア達と 連絡取らないと殺されるよなぁ…)」

 

「きゃっ!?」

 

「ん?」

 

突然女の子らしい短い悲鳴が聞こえ、自身に何かぶ つかったような感触があって、我に返る

 

すると、目の前に薄めの紫髪の女の子がいた

 

「あ~…悪い。大丈夫か?」

 

「は、はい。すみません…余所見をしてしまって… 」

 

「気にするな。俺も考え事してたから」

 

…そうだ!

 

俺はすぐに星杯手帳のページを一枚破って速記する

 

「あ、あの…」

 

「すまない、これを駅前の宿屋にいるピンク髪と栗 色の髪の女の子に渡してくれないか?」

 

「え?は、はい。いいですよ」

 

いきなりで面食らっていた様子だったが、すぐに笑 顔で了承してくれた。出来た子や~

 

「ごめんな。じゃあ頼んだ」

 

「はい」

 

そうして別れる

 

「(俺にぶつかる…ねぇ)」

 

――――――

 

「遅いわね…」

 

「はぁ…お腹すいた」

 

「リースが腹ペコなのは今に始まった事じゃないで しょう?」

 

スッ、とティアから目をそらすリース

 

「とにかく私達だけで情報を「あの…」…?」

 

整理しよう、と言いかけたティアだったが、突然話 しかけられてその方を向くと、紫髪の女の子がいた

 

「どうしたんですか?」

 

「あ…実は…さっきぶつかった男の人に頼まれて…」

 

女の子は二つ折りにされた紙をティアに渡す

 

「手紙…?」

 

「ケイジからみたいね」

 

「あ、じゃあ私はこれで」

 

一礼して女の子はすぐに去っていった

 

「………」

 

「ティア、なんて?」

 

「…私達が情報調べに行った意味、あったのかしら …?」

 

そこには、今回の事件の詳細、それにまつわる噂、 加えて教団の現在の拠点が書かれていた

 

――――――

 

時間は変わって夜。俺はとある店の屋根の上にいた

 

リースの調べが正しいなら、一日に一件以上は間違 いなく誘拐事件が起きている…そして、もし“銀”が 本当にこの街を守っているとしたら…

 

「何かしら起きない事はない…ってか」

 

そして俺の言葉と呼応したように、静かな夜の街に 銃声が響きわたった

 

「!来たか!」

 

すぐさま音の方向に全力で駆ける

 

「全く…ラッキーと言うか何と言うか…こんな早く 手掛かりが見つかるとはな」

 

“銀”…今度こそその仮面剥ぎ取ってやらぁ…

 

――――――

 

「…遅かったか」

 

俺が現場であろう場所にたどり着いた時には、すで に惨状が広がっていた

 

「こっちは…符術。こっちは剣。こっちも剣…あ~ あ、せっかくの情報源が…」

 

被害者…と言っていいのかわからないが、死んだの は四人。内二人は剣で斬られて失血死、一人は符で 体の中心が爆発して恐らく即死。残りの一人は首の 骨を折られていてこっちも即死

 

とりあえず教会式の祈りを捧げてその場を去ろうと すると…

 

『…何故祈りを捧げた?この者達は教会の意に反す る者達だろう?』

 

カモ…もとい情報源…もとい“銀”が現れた

 

「王族だろうと乞食だろうと死にゃあ全員同じ死人 だ。何ら違いなんてねぇよ」

 

『フン…』

 

というか何でコイツの声ってエコーかかってんだ? むしろどうやってエコーかけてんだろうか?

 

…ま、いいや。とにかく

 

「で?俺に何か用か?“銀”もとい紫髪の嬢ちゃん? 」

 

『ッ………何のことだ?』

 

はい正解~。カマかけてみるもんだな

 

「はい0点。動揺隠せないと半人前だろ」

 

『くっ…』

 

「あと『何のことだ』ってのもアウト。人の事言っ てんのに何のことだって…文脈考えような?』

 

『………』

 

キィン

 

突然“銀”が斬りかかってくる

 

『!?』

 

「危ねぇな…普通に話し合いで解決しようとか考え ろよ」

 

防がれるとは思っていなかったのか息を呑む“銀”

 

…その一瞬の隙が命取りになる

 

「はいチェック」

 

「あっ!?」

 

縮地で一気に背後に回って“銀”の面を取ると、案の 定昼に通りでぶつかった紫髪の女の子だった

 

「くっ……!?」

 

「舌噛み切って死ぬとか俺が許すかよ…一応これで も神父なんだけど?」

 

女の子が大きく口を開けた所にギャ〇ボールを入れ て自殺を阻止する

 

…なんで持ってんだとか聞かないで。こんな仕事や ってると舌噛み切って死ぬ奴多いんだよ…(遠い目 )

 

「さて…とりあえず質問に答えてもらいます」

 

「………」

 

女の子が睨んでくるが息苦しさのせいか涙目なので 全く恐くない。むしろ何かイジメたい

 

…ゲフンゲフン

 

「コイツ等を殺したのは…というか東方人街を守っ ていたのはお前だな?」

 

「………」

 

「答えず…な。まぁいい。答えないなら…視るまで だ」

 

――――――

 

銀side

 

いつものように、東方人街に入って来た誘拐犯達を 始末していたら、突然凄い速さで何かが迫ってきて いたのでついつい隠れてしまった

 

そうしたら男の人がやってきて…あれ?よく見たら 昼にぶつかった人だ…

 

その人が誘拐犯達に祈りを捧げていたので多分教会 の神父様か何かだと思って、ちょっと警戒した

 

…この誘拐犯達が自身を『グラトニアス教団』と名 乗っていたのを知っていたから

 

もし、教団の人だったら…そう思って話し掛けたの が間違いだった

 

あっという間に私が昼に会った人だとバレて、実力 の差を思い知らされ、しかも面まで外された

 

それでこれ以上“銀”の名を貶める訳にはいかなると 舌を噛み切って死のうとしたら、それも防がれた

 

…何でかわからないけど…無性に恥ずかしい状態に なってる気がするよ……うぅ…///

 

「さて…とりあえず質問に答えてもらいます」

 

「………」

 

答える答えないの前に喋れない状態でどうやって答 えろと?

 

その他にも色々な思いを込めて男の人を睨む

 

…何故かイジメられそうな気がしてすぐに止めたけ ど

 

「東方人街を守っていたのはお前だな?」

 

「………」

 

私は答えなかった。当たり前だろう。バカ正直に答 えていたら命なんかいくつあっても足りない。…捕 まった事自体ダメなんだけども

 

「まぁいい。答えないなら…視るまでだ」

 

そう言って私の顔だけ自分の方向に向けられた

 

その時に見た男の人の瞳は…紅かった

 

――――――

 

「!?~~~~!~~~~~!?」

 

ものっそい悶えてる“銀”。そりゃそうか。自分の頭 の中覗かれるとか気持ち悪くてしゃ~ないだろうし

 

…よく勘違いされるのだが、別に写輪眼は聖痕じゃ ない。勿論聖母ノ祈リも違う。

 

二つともティアの譜術みたいな先天技能だ…あ、俺 も譜術使えんじゃん

 

そしてなんやかんやの間に“銀”…いや、リーシャ・ マオの記憶は解析した

 

…なるほど

 

「俺がやり合ったのは先代だったのか」

 

「!?」

 

急に態度が変わり、何かを伝えようとするリーシャ

 

とりあえず口の拘束を外そうとしたが…

 

「…自殺しない?」

 

とれるんじゃないかってくらい激しく首を縦にふる リーシャ

 

それを確認してから拘束を外すと…

 

「お父さんを知ってるんですか!?」

 

「うおぅ!?ちょっと落ち着け!」

 

「どこで会ったんですか!何で私が銀だとわかった んですか!というかあなたは何者なんですか!私が 手紙を届けた二人は誰なんですかぁ!!」

 

「落ち着けェェェ!!」

 

~しばらくお待ち下さい~

 

「…ゴメンナサイ」

 

「わかればいい」

 

少しばかりOHANASHIして落ち着かせた

 

「とりあえず一個ずつ答えるとだな…俺はケイジ・ ルーンヴァルトって名前だ。お前の親父さんとは… まぁ、殺し合った仲だな。んでお前が銀だとわかっ たのはお前が俺とぶつかったから」

 

「…何でぶつかったら銀なんですか?」

 

「まぁ…なんて言ったらいいのか、俺の能力みたい なもんで俺の意志で人に認識されなくなったり、無 意識に俺をよけて通ったりするんだよ。んでその状 態の俺にぶつかれるのは符とか気とか…導力以外の 何らかの異能をかなりのレベルで使える奴だけなん だ」

 

…何故かクローゼには認識阻害が一切効かないんだ が。アイツ気も符も、ましてや譜も使えないのに

 

「そうだったんですか…」

 

「んで何者かってのは…見ての通り教会の者です。 あ、七曜の方な」

 

「見ての通り…?」

 

そこは聞かないお約束

 

「話続けるぞ?あの二人も教会関係。つーかシスタ ー服着てただろうが」

 

と、こっちの事情を(一部ぼかして)教える

 

「じゃあ次はこっちの質問に答えてもらおうか」

 

「え?」

 

「え?じゃねぇよ。世の中そう思い通りに進むと思 ってたら大間違いだぜぇ?」

 

「な、なんか怖いですよ?」

 

「ケッケッケ…さぁて…どうしてやろうか…?」

 

「ひ、ひっ…」

 

何か凄い怯えて涙目のリーシャ。コイツイジメたら 楽しいタイプの奴だ。

 

「…と、冗談はここまでにして」

 

「ふぇ?」

 

一瞬ポカンと呆けるリーシャ

 

けどすぐに顔を真っ赤にして

 

「ひ、酷いですよ!本当に何かされるかと思ったじ ゃないですか!」

 

「騙される方が悪い。というか俺始めに『質問に答 えてもらおうか』って言ったし」

 

「それでもですよ!何であんなに危ない雰囲気出せ るんですか!?」

 

「いや、俺演技派だし」

 

「知りません!」

 

「いや、俺神父だし」

 

「全く関係ない!?」

 

「何か腹減ったなぁ…なんか食いに行こうぜ?屋台 ならまだ開いてんだろ」

 

「どこまでマイペースなんですか!?あ!ちょっと !?待って!置いて行かないで~!!(泣)」

 

…つくづく楽しい奴であった


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