『ヒルダさん、殿下の様子は…?』
『ダメです…一向に立ち直る様子がありません』
『一度街にでも連れ出した方が…』
『それもいい考えですが…そっとしてあげるのも優 しさですよ?』
『『陛下!?』』
『ユリア、クローディアを街に送ってあげてもらえ ますか?その後はしばらく一人にさせてあげて下さ い』
『しかし…』
『大丈夫ですよ。クローディアなら自分で答えを出 すはずです。私達はその答えを精一杯支えてあげま しょう』
――――――
ケイジが姿を消してから2日。未だに私は立ち直れ ずにいた
それを見かねたのか、お祖母さまに街に出てはどう か、と言われて大人しくその通りに街に来たのだけ ど…
「…はぁ」
どうしても気分が沈んでしまう
こんなことじゃいけない…わかってる
でも…そんなに簡単には割り切れなかった
キュッ…
ケイジの残した刀…蒼燕を抱き締める
この2日、私はこれを肌身離さず持ち続けていた
「…はぁ」
街に来たのはいいけど…したいこと、ないなぁ…
そんなことを考えながら歩いていたのがいけなかっ た
「きゃ!」 「ひゃっ!?」
マーケットを出たところで、誰かにぶつかった
…あれ?なんかデジャヴ?
「ご、ごめんなさい」
「ううん、僕こそ前を見てなくて…」
と、そこでぶつかった相手がフリーズした…という か、私を見て動かなくなった
「………」
「あ、あの~」
私この子と知り合いだったかな?
…少なくとも、一人称が僕って女の子は…それに、 こんなに綺麗な金髪、一度見たら忘れないと思うん だけど…
「ああ~~~!!」
「えっ!?何!?」
固まってた女の子が突然叫んだ
…さすがに不意打ちすぎると思うんだ…つい、飛び 上がっちゃったし
「ねぇ!その刀…もしかして蒼燕!?」
「ふぇっ!?」
何でこの刀の名前を!?
「何で知ってるの!?」
「ふぇ~…良かったぁ~…ケビンさんはどっか行っ ちゃうし、私リベールにケイジとティア以外知り合 いいないし…」
心底安心したようにその場にへなへなと座り込む女 の子…ってちょっと待って!
「あなたケイジの事知ってるの!?」
「ふぇ?そりゃ知ってるよ?だって僕ケイジに「ケ イジは今どこにいるの!?というか何でいなくなっ たの!?堕ちたって何よ!?」ふぇぇ!?何で僕が 質問責めされてるの!?揺らすの止めて!?吐く! 吐くってばぁ!」
これが私と、シャルことシャルロット・フィルレイ ンの出会いで、私の人生のターニングポイントだっ た
――――――
「ケイジがいない!?」
「うん…つい2日前だけど…」
「うーん…おっかしいなぁ…」
シャルちゃん(敬語で話されるのも話すのも嫌いら しい)の話しを聞くと、どうもケイジの居場所を知 っている訳ではなく、むしろシャルちゃんもケイジ を追っているらしい
「ケイジってここの大佐なんだよね?」
「?そうよ?」
「じゃあさ!ケイジの上司の人に聞いたらわかるん じゃない?」
――――――
「という訳でおじさま、ケイジの居場所を教えて下 さい」
「殿下…何と言うか…いらん所だけケイジに似て行 動的になりましたな」
「あら、そうですか?」
「ダメだ。物凄い図太くなっている…」ボソッ
ケイジの上司=おじさまorモルガン将軍
という訳でシャルちゃんとおじさまの執務室にお邪 魔しています
「お願いします!…ってカシウスのおじさん?」
「おじ…… ってアルテリアのマイナスイオン娘か?」
「むー!僕そんな名前じゃないもん!」
…何でだろう。シャルちゃん見てると…こう、ぎゅ ~~ってしたい
「……はっ!おじさま、それでケイジの居場所は? 」
「私が知ってるの前提で話してませんか!?」
「おじさまが知らないことなんてあるんですか?」
「ありますよ!?別に情報屋じゃないですから!」
「「………」」
「その『コイツ使えねぇな』見たいな視線止めてく れます!?結構傷つくんですが」
「それでおじさん、ケイジの居場所知ってるの?知 らないの?」
「……知ってどうするんだ?言っておくが…」
「大丈夫だよ。僕星杯騎士だもん」
…星杯騎士?
「シャルちゃん、星杯騎士って?」
「殿下、そ「んー…アルテリア法国の軍隊…みたい なものだよ」……」
おじさまが『あ~あ』って顔してるけど…今はどう でもいい
「ケイジの騎士ってどういう事?」
「僕がケイジの部下ってことだけど?」
「シャルちゃん…一応星杯騎士団の事って機密事項 なんだろう?」
「……あ″。」
『やっちまった』って顔をするシャルちゃん。でも もう遅い
「…さて、おじさま?シャルちゃん?全部話してい ただけますよね?」
「「…………(汗)」」
「…話していただけますよね?」ニコッ
「「は、はいぃぃぃぃ!!」」
久しぶりの、黒ーゼ降臨の瞬間であった