英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

33 / 161
SC 編~light and darkness ~
SC 編プロローグ『任務』


~アルテリア法国・封聖省・星杯騎士団本部~

 

「守護騎士第二位、只今帰還致しました」

 

「うむ。よく決断したな第二位よ。貴様の英断、教 皇様はもとより女神様もお喜びになられているだろ う」

 

「………」

 

よく言う…てめぇが半強制的に脅しを掛けたから俺 はここにいるんだろうが…!

 

今、俺の前には樽豚…もといアルテリア法国の封聖 省のトップが立っている

 

この豚は二年くらい前から上に圧力を掛けられてい たらしく、『軍を辞めて騎士団の一員になると誓え 』とやんややんや言って来ていた…

 

…終いに『リベールがどうなってもいいのか?』と 脅してくるくらいに

 

正直足蹴にしても良かったのだが、文献を調べてい た時に昔聖痕持ちであり、同時に王であった人を、 法国がその国を滅ぼして王を守護騎士にした、とい う記録を見て、渋々守護騎士の任務も請け負ってい たが…とうとう我慢できなくなったという訳だ

 

「では、戻るがよい。教皇様には私が伝えておく。 後の事は第一位から連絡するようにしておく」

 

「…大司祭殿、あの件は……」

 

「おお、それならば問題ない。確か…貴様が完全に 守護騎士に迎合するのと引き換えにリベール、並び に王家に関する情報と任務は貴様に一任する、だっ たか」

 

「はい…御恩赦、感謝致します」

 

「うむ、くるしゅうない」

 

何を偉そうに…今すぐこの場で挽き肉にしてやろう か…!

 

…自分でも青筋がひくついてるのがわかる

 

我慢だ俺。耐えろ俺…!

 

「…では、失礼します」

 

バタン!

 

「はぁ~~~~…」

 

「ははは…どうやら相当絡まれたらしいな」

 

「ほぼアンタのせいだけどな!なんだよ帰った瞬間 “樽豚ジジィが呼んでるから早く行け”って!」

 

そう、俺は帰るなり速攻であのジジィの所に送られ たのだ

 

…長旅の疲れもあるってのに

 

「お前はただ座っていただけだろう?」

 

「お願いだから地の文に突っ込むのやめてくれませ ん?」

 

「それは無理な相談だな」

 

止めようよ。マジで

 

「お久しぶりです。第二位」

 

「ん?お、アッバスじゃねぇか!いつ戻って来たん だ?」

 

総長の横に、昔馴染みの正騎士のアッバスがいた

 

「たった今です。クロスベルの近況報告をしに…」

 

「……何かあったのか?ここ数年の間に…」

 

「…はい。報告は二つ…まず、ガイ・バニングスが 殉職しました」

 

「「!」」

 

アイツが…

 

「犯人、動機は不明。…ただ、例の教団は関係して いないと思われます」

 

「そうか…もう一つは?」

 

「アリオス・マクレインが遊撃士に転向しました」

 

「ふむ…事件との関係は?」

 

「おそらくないかと」

 

「なら、調査はいい。とりあえずは現状維持だ。エ ラルダ大司教にバレないようにな」

 

「はい…そして“幻狼”の件ですが…現地に神狼伝説 というものがあること以外はまだわかっていません 」

 

「ん~…とりあえずその神狼伝説の中身だけわかっ たら教えてくれ」

 

こっちもそう簡単に見つかるとは思ってないし。俺 の立場が立場だからそうそうクロスベルに入れない し

 

「わかりました」

 

そう言ってアッバスはさっさと戻って行った

 

…相変わらず淡々としてんなぁ…

 

「んじゃ総長。俺もこれで」

 

「まぁ待てケイジ。そう慌てるな」

 

もう色々面倒になってさっさと自分にあてられた部 屋に戻ろうとすると、総長に引き止められた

 

「…なんすか総長。もう疲れてしゃーないんスけど 。さっさと寝たいんスけど」

 

主にあの樽豚のせいで

 

「いやいや、寝るのは鉄道に乗った後でも遅くない だろう?」

 

「…まさか」

 

ヤバい。冷や汗が止まらない

 

「そのまさかだ。お前には共和国に行ってもらう。 今すぐな」

 

マジかよ…どんだけスパルタだよ。毎日宿直の病院 よりキツいだろーが。過労死確定コースだろーが!

 

…と、ゴネた所でどうしようもないわけで

 

「…内容は?」

 

「最近活動が活発になっている教団を潰してもらう 。従騎士はティアと…リースを預ける」

 

「…大丈夫なんで?」

 

「…万が一の場合はフォローしてやってくれ」

 

「了解」

 

…この心配は人を殺せるか、という事ではない。耐 えられるか、という心配だ

 

新興宗教にしろ、何らかの教団にしろ…この七曜教 会が全面信仰されてる現在。そういう類はマニアッ クかつ残酷な類が多い

 

そういう問題には必ずと言っていいほど教会が介入 する。勿論制裁のために

 

そして、騎士団関係者の退団理由の九割五分は精神 的な問題だ

 

…ここまで言えばわかるだろう?この仕事の、騎士 団の“仕事”が、どんなものか。どれほど闇に近いか が

 

「…で?その教団の名前は?」

 

「“グラトニアス教団”。それがヤツらの名前だ」

 

“暴食”…?七罪の一つを教団の名前にするとはな…

 

「…あの時の少年の件のような輩ですか?」 「…それだったら、まだ救いようがあっただろうよ 。それに、わざわざお前を送ったりしないさ」

 

そこで一拍置いて、総長は再び口を開いた

 

――『カニバリズム』って…知っているか?


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。