英雄伝説・空の軌跡~銀の守護騎士~   作:黒やん

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星の扉『ある日のジェニス王立学園』

~二年前・ジェニス王立学園~

 

キーンコーンカーンコーン

 

「……………はい、じゃあ今日はここまでにします」

 

教師の言葉と共に、教室の雰囲気が一気に弛む

 

友達と話しをする者、そのまま机に突っ伏す者、部 活に慌てて向かう者…その反応は様々である

 

………ある特殊な二人を除けば

 

「「ッ!!」」

 

授業終了の合図と共に全力で教室から出ていくケイ ジ。そして鬼の形相でケイジを追いかけるクローゼ

 

クラスの皆はもう恒例行事と思っているらしく、す でに道は開いていた

 

「またなのね……」

 

「もはや放課後の恒例行事だからなぁ……」

 

ジルとハンスが溜め息を吐くと同時に、学園にケイ ジの断末魔が響いた………今日は新記録である

 

ーーーーーーーーーーー

 

「全くケイジはいっつもいっつも………」

 

「…………………………(泣)」

 

二人が生徒会室に入ると、ケイジがクローゼに説教 されていた

 

……完全に嫁と尻に敷かれている夫の図である

 

そしてケイジが二人を見つけると、

 

「(二人共!!HELP!!)」

 

「(諦めなさい)」

 

「(ケイジが悪い)」

 

「(この裏切り者どもがぁぁぁぁぁぁ!!)」

 

以上、アイコンタクトでの会話である

 

何とこの間、一秒にも満たない

 

「ケイジ!聞いてるの!?」

 

「はい!」

 

「「(完ッ全に夫婦喧嘩の絵面なんだよなぁ……) 」」

 

しばらくは生暖かい目で見守っていた二人だったが 、ジルがおもむろにハンスを連れて隅に移動する

 

「…………で?結局どうなの?クローゼは見ての通り ベタぼれだけど…」

 

「見たらわかるだろ?進展ナシ。本当に鈍感にも程 があるぜ……あいつ、下級生に大人気なのにも気付 いて無いみたいだしな」

 

「ウソ!?結構露骨にアピールしてる娘もいるじゃ ない!?」

 

「ああ。その全てをスルーしてやがる」

 

「…………ドンマイ、クローゼ」

 

恋愛は惚れた方の負け。その意味がよくわかった二 人はクローゼに向かって合掌するのだった

 

~男子side~

 

「生きてるか~?」

 

「………………」

 

へんじがない。ただのしかば「勝手に殺すな……」

 

「生きてたんなら返事しろよ………」

 

「というか判定が生きてるか死んでるかの二つって ……」

 

「こまけぇこたぁ気にすんな!」

 

何言っても無駄だと判断したのか、溜め息を吐いて ベッドに座るケイジ

 

「全く…早く気付いてやらないとクローゼが不憫だ ろ」

 

「…気付く?何に?」

 

「お前本気で言ってんのか!?」

 

「?ああ!」

 

「(ようやく気づいたか…)」

 

「最近クローゼの攻撃に殺気が混ざってる気がする な」

 

ハンスが吉本芸人顔負けのズッコケを披露する

 

「どうしたハンス?」

 

「……もういい。黙れリア充。爆発しろ。というか モゲロ」

 

「何故に!?」

 

この頃のケイジは、男女の感情の機微にはとことん 鈍かったのだった…

 

~女子side~

 

「………………………」

 

「クローゼ……そろそろ機嫌直しなさいよ…」

 

クローゼはベッドで枕を抱き締めたまま動かない。 これはジルが見る限り、目の前の親友が拗ねた時に 見せる反応そのものであった

 

「(珍しく本気で怒ってるわね…) そんな意地張ってると他の誰かに取られるわよ?」

 

「それは嫌!!!」

 

一瞬でジルの目の前に来て叫ぶクローゼ……それだ け好きなら早く告れば良いのにとジルは思った

 

「なら機嫌直しなさい。今日はどうしたの?」

 

「……いつもと同じ」

 

「ああ…」

 

ここで言ういつもとは

 

昼飯をクローゼと約束

 

→後輩に誘われる

 

→「(……まぁ、いっか)」

 

→クローゼが弁当を持って戻ってくる

 

→ケイジが後輩(女子)に囲まれているのを発見

 

→黒ーゼ召喚

 

である

 

「そりゃ初めの方は『仕方ないなぁ』くらいに思っ てたよ!?でももう三ヶ月なんだよ!三ヶ月!一年 の四分の一だよ!二人で食べようって言っても全く わかってくれないんだよ!?」

 

「どうどう…………」

 

「うぅ~~~~~~~~~~!!」

 

半泣きのクローゼを何とか宥め、あの鈍感リア充野 郎にどうやったらクローゼの気持ちに気付かせる事 が出来るのかを考えるジルであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………もういっそのこと襲っちゃえば?むしろヤっ ちゃいなさい」

 

「ム、ムムムムムムムムリだよ!!///」

 

この初なクローゼが一年後に超積極的ヤンデレ系肉 食女子になるとは、この時は誰一人として予想する 事が出来なかった…


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